鋼鉄闘域(ゴーレムバトル)〜ホビーアニメ設定の貞操逆転異世界でオタク男子は希少種〜   作:白うに

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第28話「逆転の超高速!絆のロマンが時を穿つ」

 

究極の非効率:囮と閃光

 

 魔力残量10%を切ったタクトは、リュドミラの計算を破るため、究極の非効率な行動、すなわち「全身全霊の特攻」を選択した。

 

 ガルツの【スタールミエール】から放たれた【爆裂光弾】の榴弾の雨がタクトを襲う。

 

「ニクス!」

 

 ニクスは、極限の集中をもって【アサルトフェリス】の【模倣】を発動。【爆裂光弾】の爆発特性をコピーし、タクトを包む直前で対消滅させた。

 

 爆煙が立ち上る一瞬の隙。タクトは【爆風】ブーストを最大出力で起動させ、直線的な光の軌跡を描きながら、リュドミラが潜む闇へと舞い戻った。

 

 リュドミラは、ニクスが防御に回ったデータを見て、冷徹な確信を得る。

 

「愚かだな。魔力残量が底を尽きかけているここに来て、直線機動とは。効率の悪い、そして予測のしやすい動きだ。」

 

 リュドミラのゴーレム、【ギアシュヴァルツ】の黒い影が、闇塵の中からタクトの【アブソルトレイル】の腹部めがけて【縮地】で一気に距離を詰める。

 

ザグッ!

 

【暗撃】を込めた短剣が、タクトのゴーレムの胴体中央を深々と貫いた。

 

「君のロマンとやらも、これまでのようだね、タクト君。」

 

 リュドミラの声には、一切の感情がなかった。ただの事実の読み上げだった。

 

 バキバキと音を立て、腹部の装甲が崩れ落ちる。ゴーレムのコア部分が露わになり、刻まれている魔術刻印の光が次第に弱まっていく。

 

「タクト!?」

 

控え席で見ていたルッコが、悲鳴のような叫びを上げた。

 

 

 リュドミラは次の敵を探るために、【ギアシュバルツ】に索敵行動を取らせようとした。だが、その時、崩れ落ちるゴーレムの後ろから声が聞こえてきた。

 

「そうなんだ、私、タクト君に見えてたんだね…。何か嬉しいな…。」

 

タクトの姿が次第に崩れ、その内から、腹部を押さえながら、それでも嬉しそうな表情を浮かべるクローナの姿がそこにあった。彼女のゲイルハルトは、タクトのアブソルトレイルに【擬態】していたのだ。

 

「お前は!?先程機能停止させたはずだ!?」

 

リュドミラの声に、初めて驚愕の感情が滲む。

 

 クローナは、ゴーレムとの高い同調率が招いた腹部への鈍痛傷を庇いながら微笑んだ。

 

「タクトくんを信じてたからね!私、この戦いの前に【自動回復】の代わりに新しい魔術を刻印したんだ!」

 

【ゲイルハルト】に刻印されていたのは、【擬死】という極めて難しい魔術。大ダメージを受けた時に、一度だけ周囲のゴーレムの感知回路に『機能停止』の誤情報を送信する魔術だ。

 

 これにより、クローナは機能停止した振りをして、リュドミラの感知から消えていたのだ。そして、時を見て【アブソルトレイル】に【擬態】し、タクトの「囮」となった。

 

 リュドミラは、【擬死】の存在に驚愕し、【擬態】が違和感なく発動していたことに戦慄する。

 

「【擬態】は、発動する瞬間を察知できない特性があります。そして、二体同じゴーレムが存在する違和感を感じさせにくい特性も!」

 

ローニャが冷静に状況を解説する。

 

そして、クローナは、人狼族の血を持つ。

 

「いにしえの時代、人間族は最も人狼族に騙されてきた種族です。人間族ばかりのバルトチームには、この魔術の本質的な違和感に気がつける者がいなかったのです。これは、絆と歴史を絡めた、クローナさんのロマンです!」

 

 リュドミラは、予想外の要素によって、計画が完全に崩壊したことを悟る。

 

 リュドミラが愕然として真のタクトを探すその時、【ギアシュヴァルツ】の背後から鋭い爪が伸びてきた。

 

ザクッ!

 

爪は、深々とその背中を貫いていた。

 

「【静音】、【暗撃】、中々いい。参考にする」

 

【ギアシュヴァルツ】を貫いたのは、ニクスの【アサルトフェリス】だった。ニクスは、リュドミラの【闇塵】を利用して【静音】と【暗撃】を模倣でコピーし、リュドミラの影そのものとなって奇襲を仕掛けたのだ。

 

「なっ…!?」

 

 闇に潜み、闇を喰らう。リュドミラの哲学は、彼女自身のそれによって打ち破られた。

 

 この混乱の中、ガルツが本物のタクトを見つけ、【スタールミエール】で突撃を仕掛ける!彼のプライドが、諦めではなく最後の意地を選ばせた。

 

しかし、急に【スタールミエール】の速度が落ちる。

 

ローニャが、勝利を確信した声で話し始めた。

 

「ガルツさん。あなたの【スタールミエール】は、タクトさんの【アブソルトレイル】と同じように、【光塵】や【閃光】で高速機動を補助するスタイルです。」

 

ローニャは、勝利の鍵を握っていた。

 

「私は、リュドミラさんの【闇塵】とあなたの【光塵】に紛れさせながら、粒子を大きく調整した【砂塵】で、あなたの刻印を削り続けたのです。」

 

 ローニャの精密な計算と魔術操作が、【スタールミエール】の生命線である黄金の魔術刻印を摩耗させていた。

 

「もう【スタールミエール】は輝けません!」

 

 ガルツは絶望に顔を歪ませた。彼の孤高の力は、データと精密さという最も苦手な要素によって封じられたのだ。

 

 

 

【ギアシュヴァルツ】はニクスに貫かれ、【スタールミエール】は機動力を失い、【ゲイルハルト】は【擬死】で生き残っている。

 

 カレンとグレタが、動揺しながらもフォローに入ろうとする。二人とも、リュドミラの立場が傷つくのを見るに堪えなかったからだ。

 

その時、リュドミラから驚くような命令が下った。

 

「試合停止、降参する。」

 

「なぜ!?」リュドミラを除く三人のバルトチームメンバーが、同時に憤りの叫びを上げた。

 

リュドミラは、冷徹な表情を崩さぬままの声で告げた。

 

「これ以上戦闘を継続すると、例え勝利しても、お前たちのゴーレムに深刻なダメージが入ってしまう。これからの連戦に耐えられん。特にガルツ・アレクシス、あなたのゴーレムの修繕術式に必要な資材と魔力は限界がある。」

 

 彼女にとって、ここでの無茶な勝利よりも、チームの効率的な運用が最優先事項だったのだ。

 

「ちっ……」ガルツは悔しさに顔を歪め、「はい…」と言いかけたカレンは言葉を失い、グレタはリュドミラの苦労を思って静かに俯いた。

 

こうして、ゴルディアス王国チームの勝利が告げられた。

 

 タクトは、魔力枯渇でよろめきながら、勝利の咆哮を上げた。リュドミラの冷徹な計算は、仲間への絆とロマンを信じる情熱というデータにない要素によって、打ち破られたのだ。

 

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