鋼鉄闘域(ゴーレムバトル)〜ホビーアニメ設定の貞操逆転異世界でオタク男子は希少種〜   作:白うに

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第29話「祝杯と災難!のじゃロリ精霊使いの拘束術」

 

歓喜の勝利と和気あいあい

 

 ゴレリンピック初戦、強豪バルト人民共和国を「絆のロマン」で打ち破ったタクトたちは、勝利の余韻に包まれていた。

 

 リュドミラ将軍の降参宣告の瞬間、フィールドの緊張が解け、タクトは魔力枯渇で膝をついた。勝利の歓声が響き渡る中、控え席で悔しさと焦燥に駆られていたルッコが、歓喜のあまりベンチを飛び出した。

 

「タクトのバカァアアア!」

 

 ルッコは、タクトの安堵した顔を見るや否や、衝動のままタクトの首に抱きついた。

 

「心配させて!あんなにギリギリになるなんて!」

 

 タクトは、ルッコの勢いと、薄い胸板に押し潰されながら、満面の笑みで彼女の頭をポンと叩いた。

 

「ルッコ、見ててくれたか!お前のロマンも、いつか必ずぶつけるからな!」

 

 次の瞬間、ルッコは我に返り、真っ赤な顔でタクトから数メートルも飛び退いた。

 

「な、ななな何を勘違いしとるのよ!わ、私はただ、あんたが負けたらゴルディアスの恥になるから慰めに…!べ、別に心配なんかっ…!」

 

 その強烈な反応に、タクトはうれしそうに苦笑した。

 

 

 

 バルトチームは、勝利に沸くゴルディアスチームと静かに対峙していた。

 

 リュドミラは、冷徹な表情を崩さぬまま、タクトの前に進み出た。

 

「タクト君。あなたの非効率な情は、今回はデータ外だった。しかし、最終的な勝利のため、最良の判断をしたことに後悔はない。」

 

 リュドミラの瞳には、バルト再建という苦労人の使命感が宿っている。彼女は自身の哲学を信じ、カレンとともに次の戦いへと去っていった。

 

 ガルツは、悔しそうにしながらも、タクトにサムズアップを送った。

 

「タクト!君のロマンは、本当に輝いていたよ。俺の【スタールミエール】の刻印をコソコソと削った女、君の戦術眼にも敬意を表する。また会おう、最高のライバル!」

 

 ガルツは、清々しいほどのイケメンスマイルを残して去っていった。彼にとって、タクトというロマンに出会えたことは、彼の冷めた日々の中で唯一の情熱だったのかもしれない。

 

 そして、無言の巨体戦士、グレタ・ヴェーラは、タクトたちをじっと見つめた後、一礼して、チームの最後について帰っていった。彼女の視線には、リュドミラへの複雑な親愛が込められているようだった。

 

 

 

 

 勝利の興奮冷めやらぬまま、タクトたちは一度宿舎に帰り、気分転換と祝杯(もちろんノンアルコール)を上げるため、聖教国の街に繰り出した。

 

 賑やかな街路を歩きながら、タクトはクローナの腹部を気遣った。

 

「クローナ、大丈夫か?ゴーレム越しとはいえ、【ギアシュヴァルツ】の攻撃、かなり深かっただろ?」

 

 タクトがクローナの腹部にそっと手を当ててさすってやると、クローナは顔を赤らめた。

 

「う、うん、大丈夫だよ!タクトくんの手が温かいから、魔力が回復してる気がする…くすぐったいけど、嬉しいな…。」

 

クローナの人狼族の耳が、嬉しそうにピクピクと動く。

 

その隣で、ニクスは無言で自分の腹部を見つめていた。

 

ローニャは、そんな和やかな空気を一刀両断する。

 

「クローナさん、【ゲイルハルト】からクローナさんに流れ込んだダメージは、通常よりも大きいものです。ゴーレムとの同調率が高いクローナさんは、今後の戦いでもそのリスクを考慮する必要があります!」

 

お腹を擦ってもらいながら、神妙な顔で頷くクローナ。

 

「いちゃついてんじゃないわよ!」

 

とルッコが、羞恥と嫉妬に顔を紅潮させながら怒鳴った。

 

 

 

 タクトたちは、聖教国の荘厳な建築群の中、良い感じのお店を見つけて中に入った。席に座って食事を注文。ゴルディアスとは趣きが異なる、ハーブと香辛料を多用した料理に舌鼓を打つ。

 

 タクトたちが食事を楽しんでいると、隣の席で何かトラブルが起きているのが聞こえた。

 

「わしはこの酒を飲むのじゃ!ゴレトルで勝って望みのものを手に入れるのがこの世界のルールなのじゃろう!」

 

 背の低い森人族の少女が、テーブルの上に乗って喚いていた。エメラルドブロンドの長髪と、翡翠色の瞳を持つその少女は、見た目は10歳前のようだが、その口調はまるで古い里の長老のようだ。

 

 彼女の傍には、大きく筋肉質な豚鬼族の青年が、困惑した表情でなだめている。

 

店主は困り果てている。

 

「お客様、当店は聖教国の定める年齢制限を遵守しております。この国では、飲酒は18歳からですので、どうかご容赦を…。」

 

リリエットは、頬を膨らませて怒りを露わにした。

 

「ムキー!ワシは18歳なのじゃ!里では飲めないから、ゴレリンピックで国外に出れば飲めると思っていたのに!ゴレトルで勝負じゃ!勝ったら酒を出せ!」

 

『ゴレトルで勝敗を決め、敗者が勝者の言うことをきく』というルールは、この世界では一般的な決闘の合意であり、ゴレリンピックの期間中は特に熱狂的だ。

 

 ボルグが慌ててリリエットを止めようとするが、リリエットは聞く耳を持たない。

 

タクトは、あんまりな状況に見かねて席を立った。

 

「ちょっと待ってくれ!君は、確かゴレリンピックの選手だろ?君が、一般の人を相手に飲酒を賭けてゴレトルを挑むのはるのは、あまり褒められた行為じゃない!それに、見た目が子供なのに…」

 

タクトの正義感は、リリエットの火に油を注いだ。

 

「なにおう!お主もワシを子供扱いするのじゃな!よかろう!ちょうど良い。お主でいいから勝負じゃ!お主が勝ったら酒!負けたらお主がワシの言うことをきくのじゃ!」

 

その上から目線の態度に、ルッコの怒りが爆発した。

 

「ちょっと待ちなさいよ!何よ、お前でいいって!あんたみたいなチビにタクトなんかとやらせないわ!私が相手よ!」

 

 ルッコのツンデレと嫉妬心が爆発し、有無を言わさず勝負が決定した。ボルグは頭を抱えている。

 

 タクト、ニクス、ローニャの困惑と、ルッコの強引な勢いにより、彼らは店の裏の小さな広場で勝負を行うことになった。

 

 リリエットが繰り出したのは、精霊型ゴーレム【フォレスタルナ】。半透明の樹木のような装甲に、葉や花びらが舞うオーラをまとう、幻想的な美しさを持つ機体だ。

 

 ルッコは、怒りをそのまま魔力に込めて、悪魔型ゴーレム【クリムゾンヘイト】を召喚した。

 

「見てなさい!あんなヒョロヒョロの精霊、私の【クリムゾンヘイト】で一撃よ!」

 

 しかし、ルッコの怒り任せの突撃は、リリエットの計算の前に無残に砕かれた。

 

【フオレスタルナ】の華奢な両腕から、魔力の蔦がルッコの巨体めがけて射出される。

 

「【蔦縛】!」

 

 力強く踏み込むルッコのゴーレムを、蔦がしなやかに追尾し、そのの四肢に巻き付いた。

 

「なっ!速い!」

 

【蔦縛】は、柔軟で回避が難しいだけでなく、命中すると小さな芽が生え、【クリムゾンヘイト】の魔力を徐々に吸収し始める。ルッコのパワーは、封じられた腕では発揮できない。

 

【フオレスタルナ】は、優雅に舞いながら、【樹精召喚】を発動。光の蝶と花びらが戦場に舞い、自身の魔力回復速度を微増させつつ、ルッコの視界と移動能力を惑わせる。

 

 そして、【蔦縛】で拘束されたルッコめがけて、【フオレスタルナ】は蔦を鞭として使用する【鞭撃】を、正確にルッコのバランスを崩す位置に叩き込んだ。

 

ドシン!

 

 バランスを崩され、拘束されたままの【クリムゾンヘイト】は、そのまま地面に叩きつけられた。

 

 ルッコは、一発も有効打を入れられないまま、いい所無しで敗北した。

 

 

 

「ふふーん!見たか!ワシの【フォレスタルナ】は、お主のゴリラパワーなどには負けんのじゃ!」

 

リリエットは、小さく可愛らしい顔に大袈裟な得意顔を浮かべた。

 

「よかろう。敗者は勝者の言うことをきくのがルールじゃ。ルッコとやら!余興として、ここで踊るのじゃ!」

 

 合意されたゴレトルの勝敗は、絶対のルール。ルッコは屈辱に顔を染めるが、拒否は出来ない。

 

「な、なんで…なんで私が…!」

 

ルッコは羞恥に顔を染めながら、その場で踊り始めた。

 

タクトは困惑するしかない。

 

 ゴレトル後の命令は、社会常識の範囲内で、拒否できないのが決闘の鉄則だ。

 

 その時、豚鬼族の青年、ボルグ・グラントが、優しくも強い力でリリエットを抱き上げた。

 

「リリエット様、もうよろしいでしょう。我々は次の試合の戦略会議に戻らねばなりません。彼女に恥をかかせるのは、我々の名誉に関わります。」

 

 ボルグは、タクトたちに深く頭を下げ、リリエットを連れて去っていく。

 

「離すのじゃ!まだよく見ていないのじゃ!ワシが次期族長になるためには、勝利の余韻が必要なのじゃあああ!」

 

喚くリリエットの声が、だんだん遠くへ行く。

 

 タクトは、踊るルッコを視界の隅に入れながら、真剣な顔で考察を始めた。

 

「あの少女はスティア連合国代表の一人、リリエット・シルヴァ。そして、彼女の勝敗は、森人族の権益、そして彼女自身の未来に直結しているようです。」

 

ローニャが即座に情報を提示する。

 

「いいから早く止めて!こんな羞恥プレイ、もう我慢できないわよ!」

 

 ルッコが、羞恥に顔を染めながら絶叫する中、タクトたちのゴレリンピックは、最初の勝利と新たな強敵、そして世界の複雑な背景に直面し始めたのだった。

 

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