鋼鉄闘域(ゴーレムバトル)〜ホビーアニメ設定の貞操逆転異世界でオタク男子は希少種〜 作:白うに
絶望的な戦場と、ローニャの秘策
聖都エクサリスの会場は、フィナの聖光、ノエルの呪詛、エリスの疾風、そしてクラリスの聖杖が織りなす完璧な連携によって、ゴルディアスチームにとって絶望的な戦場となっていた。
中央では、ルッコの【クリムゾンヘイト】がクラリスの【ルミナリア】を削りきるどころか、フィナの【聖光】によって回復され、ルッコの消耗だけが進んでいる。
右翼では、クローナの【ゲイルハルト】がノエルの【呪詛】による微細な魔力撹乱に足止めを食らい、行動を制限されていた。
そして左翼では、タクトがエリスの鳥人型ゴーレム【ファルコン】の速度と小回りに完全に翻弄されていた。
「くそっ!加速力は互角なのに、小回りが違いすぎる!」
エリスは、プロとしての即興の対応力と経験で、タクトの単純な直進機動を読み切り、【風翼】による精密な姿勢制御でタクトの死角に入り続ける。
「君の機動力は見切ったよ、素人くん!」
【ファルコン】の爪付きガントレットが、タクトの【アブソルトレイル】の脚部噴射口に連続して打撃を叩き込んだ。
ドガガガッ!
大ダメージを負った【アブソルトレイル】は、推進力を失い、横転する。
「タクトさん!」
ローニャの焦燥が頂点に達する。
トドメを刺そうと、エリスが【ファルコン】を急旋回させる。
その時、ローニャの冷静な思考が、極限の状況で一つの作戦を閃いた。
ローニャは、思考を加速した。ローニャの【グラニテカノン】が、フィナの【セレスティアル】に向けて、魔力を込めた【石弾】を連射しながら強襲をかけたのだ。
ガキン!
【セレスティアル】の白銀の装甲が、ローニャの猛攻によって僅かなダメージを受けた。
「ちっ!面倒くさい!」
エリスは舌打ちをした。
【セレスティアル】は直接戦闘力が最も低い。エリスは、目の前のタクトへのトドメを諦め、回復役のフィナを守るため、救援へと向かおうと後ろを向いた。
エリスがフィナの救援に気を取られた、僅か一瞬の隙。
横転し、行動不能を装っていたタクトの【アブソルトレイル】が、背後から素早く振り返った。
タクトは、横転の衝撃で折れ曲った槍杖を掴み、【爆風】の魔力を一点に収束させて放つ。
「【爆風】!収束射出!」
凄まじい衝撃が、無防備な背中を晒したエリスの【ファルコン】を撃ち抜いた。
ドシュウウゥッ!
直線軌道の魔術なら、【ファルコン】の機動性能があれば回避は可能であっただろう。だが、収束されているとは言え【爆風】は発動地点から扇のように広がって放出される。
距離が離れるほど直接的な破壊力は落ちるが、装甲の極端に薄い【ファルコン】にとっては致命的な攻撃となった。
流線型の銀灰色装甲は一瞬にして大破。エリスの【ファルコン】は回転しながら吹き飛ばされ、背中の巨大な翼もへし折られた。
反動で、タクトの槍杖を持つ腕も完全にひしゃげてしまったが、タクトの瞳には勝利の確信が浮かんでいた。
「思った通りだ、エリス!【ファルコン】は【アブソルトレイル】より速いけど、耐久力は俺の機体より低い!」
翼を失った空の王者は、もはや飛ぶことも、まともに動くこともできない。
そして、戦場は最大の驚愕に包まれた。
大破した【ファルコン】が吹き飛ばされた場所で、【セレスティアル】の装甲がボロボロと剥がれ落ち始めた。
中から現れたのは、人狼型ゴーレム、クローナの【ゲイルハルト】だった。
「【擬態】解除!」
クローナは試合中盤、ノエルの【爆裂闇弾】に紛れて【擬態】を発動させ、【ゲイルハルト】をフィナの【セレスティアル】に見せていたのだ。
エリスが後ろを振り返ると、そこには無傷で目を丸くしている本物のフィナと、純白の【セレスティアル】が存在していた。
「なっ…騙しやがったな!?」
エリスは憤怒の表情で叫ぶ。
フィナもまた、クローナの戦術に驚愕していた。
(あの高精度の【擬態】…まるで伝説に謳われる魔王軍最高幹部、人狼将軍のよう…!)
いにしえの人狼将軍は、単騎で勇者に化け、勇者軍の部隊一つを泥沼に沈めたという伝説が聖教国にも残されていた。
いつの間にか、ノエルの【ディアボルム】はローニャの【グラニテカノン】の狙いに晒されていた。
ノエルがクローナの【擬態】に驚愕し、制御が乱れた一瞬を、ローニャは見逃さない。
ローニャは、ノエルの薄い装甲に向けて、【石弾】の嵐を叩き込む。
ガガガガッ!
ダメージを受けた【ディアボルム】は、飛行の制御が覚束なくなる。ノエルは急いで回避しようとするが、クローナが擬態を解いたことで自由になった今、戦場は一気にゴルディアス側に傾いた。
戦線を押し込まれた事で、フィナは慌てて数々の回復系魔術を多重発動させる。回復はゴレリンピックでは制限されているとはいえ、聖なる魔力を最大限に活用し、チームメンバーの回復を図った。
しかし、この多重発動の負荷が、フィナの対応を遅らせた。
クローナは、この機を逃さず、【狂化】と【剛力】を発動し、【セレスティアル】に強襲をかける。
クローナの【ゲイルハルト】は、砕けたステージの瓦礫を巨大な塊として掴み、フィナの【セレスティアル】に向かってぶん投げた。
ドォン!ドォン!
必死に、純白の翼を広げて避けるフィナ。彼女の優美な動きは、戦場で生き残る術を持っていなかった。
体勢を崩したフィナは、地上付近を飛行しながら逃げようとするが、その逃走ルートにはローニャの【グラニテカノン】が待ち構えていた。
ローニャは冷静に、至近距離から魔力を限界まで凝縮した【石砲】を撃ち込む。
「チェックメイトです!」
【セレスティアル】の白銀の装甲は、石砲の直撃を受け、一瞬の閃光と共に機能停止した。
フィナの援護が完全になくなったことで、中央の殴り合いは決着を迎えた。
クラリスの【ルミナリア】は、ルッコの猛攻による累積ダメージと、【破滅】による耐久力削りにより、限界を迎えていた。
ルッコは、最後の魔力を大鎌に込め、クラリスの腹部に突き立てた。
ズンッ…!
聖女が悪魔の大鎌に腹部を貫かれるという、聖都エクサリスにとっては地獄のような絵面が完成した。
「あああああ!まだ遊びたかったのにー!」
クラリスの心からの叫びが響く。
クラリスの【ルミナリア】が機能停止となり、フィナの【セレスティアル】は撃ち落とされ、エリスの【ファルコン】も大破したことで、エクサリス聖教国チームは敗北を宣言。
タクトチームの勝利が、歓声と共に告げられた。
タクトは、損傷した【アブソルトレイル】に目を向けながら、見事な戦術を成功させたクローナとローニャに最高の笑顔を向けた。
「クローナ、ローニャ!最高の連携だったぞ!」
クローナは、人狼将軍を思わせる冷徹な戦術とは裏腹に、心底嬉しそうな笑顔でタクトの賞賛を受け止めた。
ローニャも照れくさそうに、眼鏡をクイッと上げた。