鋼鉄闘域(ゴーレムバトル)〜ホビーアニメ設定の貞操逆転異世界でオタク男子は希少種〜   作:白うに

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第36話「炎帝の覇道:タクト不在の戦場と帝国の業火」

 

勝利の余韻と、ニクスの微笑み

 

 ゴレリンピック3回戦、エクサリス聖教国との激戦を制したゴルディアスチームは、歓喜に包まれていた。

 

 フィールドの出口で待っていたニクスが、興奮と喜びで駆け寄ってくる。ルッコやクローナがタクトに抱きつくのを見ていたニクスは、それを真似しようとするが、直接的な感情表現に不慣れなためぎこちない、おかしな動きになってしまう。

 

 タクトは、そんなニクスを愛おしそうに見て、優しく頭を撫でた。

 

「ありがとう、ニクス。君の応援のおかげだ!」

 

「…くすぐったい。」

 

 ニクスはぼそりと呟いたが、その表情には、くすぐったいような、小さな微笑みが浮かんでいた。感情を動かさないはずの少女が、かすかに心を通わせる瞬間だった。

 

 敗れたエクサリス聖教国チームは、複雑な感情を抱えていた。

 

「もう一回やろーぜ!面白かったわね、ルッコ!」

 

 聖女クラリスは負け惜しみではなく、純粋な闘争心から再戦を熱望している。天使族のフィナと悪魔族のノエルが、やれやれといった感じで彼女を引き止めていた。

 

 エリスは、クローナの巧みな擬態とローニャの正確な射撃に引っかかった自分に苛立ちながら、自らのゴーレムを指輪に収納していた。

 

 そして、フィナもまた、タクトの無謀なカウンターと、勝利を喜ぶ彼の笑顔を胸に刻むように見つめ、静かにフィールドを去っていった。

 

 

 

 宿舎に戻ったタクトは、自身のゴーレム、【アブソルトレイル】の損傷に愕然とした。

 

「【アブソルトレイル】…壊れた…。」

 

 タクトは、ニクスがハルバートを失った時の真似をしながら、ゴーレムの大きなダメージに悲しむ。

 

 脚部の噴射口だけでなく、【爆風】の反動でひしゃげた槍杖の腕の損傷は深刻だった。

 

ニクスは、今度は感情を込めて、優しくタクトを慰める。

 

ローニャは即座に修繕術式を回すが、顔を曇らせる。

 

「ごめんなさい、タクトさん。このレベルの損傷だと、修理には丸一日では足りません。明日の試合は、タクトさん抜きでやらなければならないかもしれません。」

 

タクトは申し訳なく思い、チームメンバーに謝罪した。

 

「ごめん、俺の判断ミスだ。【爆風】の反動を甘く見ていた…」

 

チームメンバーは、優しくタクトを励ました。

 

「何を言うのよ、タクト!私の【クリムゾンヘイト】の勇姿を見て震えてればいいのよ!タクト抜きでも勝てるって、証明してやるわ!」

 

ルッコは、自身のプライドを全開にして豪語する。

 

 クローナは、無言でタクトの隣に立ち、心配そうに【アブソルトレイル】を見つめる。

 

 ニクスは、腰元に装備したゼノン製の新型ハルバートをそっと握り、その調子を確かめる。新型は軽量化され、【アサルトフェリス】との相性は格段に向上していた。

 

 ローニャは、タクトたちの絆に心を温められながらも、内心では「静かにしてください、修繕術式が乱れます」と思っていた。

 

 

翌日。ゴレリンピック5日目、4回戦。

 

 【アブソルトレイル】が修理中のため、クローナ、ニクス、ローニャ、ルッコの四人で出場となった。

 

 対戦相手は、ゾルディアーク帝国。軍事大国にして、強大な魔力を誇る帝室が治める国だ。

 

 フィールド中央に現れたゾルディアークチームのメンバーは、異様な威圧感を放っていた。

 

 氷のような青い瞳と鋭角的な銀髪を持つエルシア・ヴォルテ。彼女は、以前タクト達が戦った留学生アリシアの姉だった。

 

 軍服を纏い、人懐っこそうな表情の長い黒髪の人狼族の少女、ナリア。

 

 同じく軍服を纏い、筋骨隆々で浅黒い肌の鬼人族の女性、ガルザ。

 

そして、中央に静かに立つ、長い青髪の幼い少女。

 

 彼女こそ、ゾルディアーク帝国皇帝の末の娘、ヴィオレッタ・ゾルディア皇女殿下だった。

 

 エルシアがリーダーを務めているが、これはヴィオレッタの命令だ。

 

 エルシアのゴーレムは、氷の結晶で装飾された【マギウスカイザー】。ナリアは闇の結晶、ガルザは雷の結晶で装飾されており、それぞれが異なる属性の魔力を常時纏っている。

 

 そして、ヴィオレッタの【マギウスエンペラー】は、炎の結晶で装飾された、赤熱する皇族専用カスタム機だった。

 

 エルシアが、タクト不在のゴルディアスチームに向けて、冷たい声で言い放った。

 

「妹が世話になったな、あの戦闘データは役に立った。しかし、魔力熱暴走とはな。おかげで、皇室直属の頭でっかちなお抱え工廠どものあたふたする姿を見ることができて痛快であったよ。」

 

 留学生アリシアのゴーレムが熱暴走したのは、タクトたちとの戦い方が原因だった。

 

「アリシア、言わんでやってくれ。奴らとて、帝国の大事な頭脳たちなのだ。」

 

 幼さを色濃く残すヴィオレッタだが、その言葉と佇まいは、王者のオーラを醸し出している。

 

「はっ、申し訳ありません。」

 

アリシアは即座に頭を下げる。

 

「責めているわけではない。現に私も同じように考えていたからな。」

 

ヴィオレッタは静かに微笑んだ。

 

 

 

審判の合図とともに、試合が開始された!

 

アリシアが、皇女に先陣を命じる。

 

「殿下、申し訳ありませんが先陣をお任せいたします。」

 

ヴィオレッタは満足そうに頷く。

 

「ふむ、一番槍だな。名誉な事だ。」

 

試合開始早々、ヴィオレッタは【マギウスエンペラー】で、規格外の超火力を解放した。

 

「【超爆裂炎弾】!多重発動!」

 

【マギウスエンペラー】の炎の結晶が赤熱し、巨大な炎の弾が連続して射出された。

 

ゴオオオオオオオッ!

 

 一瞬でステージは炎熱地獄と化した。その火力は、学園トーナメントで戦った帝国留学生の全員分の火力を、【マギウスエンペラー】の一機のみで引き起こしている。

 

 ローニャの【グラニテカノン】が、急いで【石壁】を展開するが、炎熱の壁は周囲を焼き尽くし、逃げ場がなくなっていく。

 

「この火力…あの時の【デミマギウス】なんて比べ物にならない!」

 

ローニャは戦慄した。

 

 炎熱の壁を両翼から飛び越えて、ゾルディアークチームの二機が躍り出る。

 

 闇の結晶を纏ったナリアの【マギウスカイザー】と、雷の結晶を纏ったガルザの【マギウスカイザー】だ。

 

 ルッコとローニャの注意がヴィオレッタの炎熱に引きつけられているのを見計らい、ゾルディアーク帝国の二機が奇襲をかける。

 

「クローナさんは闇の【マギウスカイザー】を!ニクスさんは、雷の【マギウスカイザー】をお願いします!」

 

ローニャが必死に指示を出す。

 

 ナリア【闇塵】で自身の姿を消し、クローナは【頑丈】を発動して警戒する。

 

 ガルザは【紫電】を纏った豪剣を振りかざし、ニクスに襲いかかる。

 

 ニクスは、ガルザの剣を回避し、腰元に装備していた新しい武装に手を伸ばす。

 

「…コイツの力、試す。」

 

 ゼノン製の新生ハルバート『オルタヴァリス』が、雷鳴轟く戦場で鋭利な輝きを放った。

 

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