鋼鉄闘域(ゴーレムバトル)〜ホビーアニメ設定の貞操逆転異世界でオタク男子は希少種〜   作:白うに

38 / 50
第38話「悪魔の涙と、屈辱の宣言」

 

炎帝の介入と、ローニャの傷

 

 ガルザの【マギウスカイザー】の左腕を新たなハルバート『オルタヴァリス』によって切り飛ばしたニクスは、追撃の一撃を入れようと、再度オルタヴァリスを振りかぶった。

 

 その時、視界の端に捉えた赤熱した強大な魔力光を確認すると、ニクスは即座に回避行動へと移行した。

 

ズドドドォッ!!

 

 極太の極光が、さっきまで【アサルトフェリス】がいた場所を通り過ぎた。

 

「ふむ、不意打ちでも当たらんか。やはり、射撃回路はもう少し発展の余地があるな。」

 

 そこには、赤熱した魔力残滓を振りまきながら佇む、ヴィオレッタの【マギウスエンペラー】の姿があった。遠距離からの精密な狙撃。皇族専用カスタム機の底知れない火力が、戦場に重くのしかかる。

 

 ローニャが咄嗟に【石弾】で牽制しながら、ニクスへのフォローに入った。

 

「ニクスさん!引いて、一旦体制を整えて下さい!」

 

「だめ。距離を取ったら、爆裂系魔術で制圧射撃を受ける。」

 

ニクスは冷静に分析していた。

 

 思い出すのは、ゾルディアーク帝国の留学生チームとの試合だ。一糸乱れぬ射撃は、まるで正規軍の演習を見ているようだった。この炎熱地獄で距離を取ることは死を意味する。

 

 ローニャが次の思考している一瞬の隙を突き、紫電を纏った影が突入してきた。

 

ザシュ!!

 

 左腕を失ったはずのガルザの【雷剣】が、雷のような速度でローニャの【グリニテカノン】を正面から斬り裂いた。

 

「ぐっ!?」

 

【グリニテカノン】がたたらを踏む。防御の厚いのローニャでさえ、装甲を深く抉られ、同調していたローニャにまで衝撃が伝わる。

 

「ローニャ!?下がって!」

 

ニクスが咄嗟に声を上げる。

 

「腕の方っぽくらいで、気を抜くんじゃねーぞ!」

 

ガルザが追撃に入ろうとする。

 

 ローニャは咄嗟に【石壁】を全面に発動。幾重にも重なる石の壁が、ガルザの猛攻を辛うじて防いだ。

 

 ホッとするのも束の間、石壁の一点が突如として赤熱化する。

 

ジュゥゥゥ!

 

ローニャが振り返った時にはもう遅かった。

 

 極太の熱線が、ローニャの【グリニテカノン】の横っ腹を貫いた。

 

「ローニャ!?」

 

ニクスが悲痛に叫ぶ。ヴィオレッタは容赦なく追撃を入れる。

 

「【超爆裂炎弾】」

 

 いつの間にか、ガルザは後方へと下がっており、炎熱のステージにはローニャとニクスの二機のみが残されていた。完璧な連携だった。

 

 

 

「装備換装!大魔導杖!」

 

 その時、ローニャは膨大な量の魔力を注ぎ込み、装備を変更した。横っ腹に穴が空いた【グリニテカノン】の手に、巨大な魔導杖が出現する。

 

「刻印発動!【岩盤障壁】!」

 

 昨夜、ゼノンの装備を見たことでインスピレーションを得て、ローニャが寝る間も惜しんで作成した、新たな武装である。

 

 刻印された【岩盤障壁】は【石壁】の上位魔術であり、その頑強さはヴィオレッタの【超爆裂炎弾】を防ぎきった。

 

 しかし、その代償は小さくなかった。大量の魔力を消費し、腹部に穴が空いた【グリニテカノン】はその動きを鈍らせた。

 

「すみません…ニクスさん、暫く動けそうにありません…。」

 

ローニャは申し訳なさそうに呟く。

 

ニクスはローニャを気づかいながら答えた。

 

「大丈夫、ローニャはそこにいて」

 

 ニクスは一人でのゾルディアーク陣営の攻略に思考を巡らせた。

 

 

 ゾルディアーク陣営では、ヴィオレッタが淡々と分析していた。

 

「ふむ、新たに【耐熱】を組み込んだようだが、やはり高位魔術を連発すると熱が籠るな。これは報告が必要だろう。」

 

エルシアが即座に冷却を開始する。

 

「すぐに冷却いたします。【冷気】発動。」

 

 エルシアの【マギウスカイザー】から【冷気】が発せられ、ヴィオレッタの【マギウスエンペラー】の冷却を始める。元々赤熱していた【マギウスエンペラー】には、その程度の冷気であればダメージを受けない。

 

そこに飛び込んでくるニクス。

 

 冷却中のヴィオレッタに代わり、エルシアの【マギウスカイザー】が前に出る。エルシアは【氷結障壁】を展開。透明な氷の障壁が防御を固める。

 

 それを砕こうと、『オルタヴァリス』を振りかぶるニクス。

 

「【超冷閃】発射。」

 

 エルシアは、氷結障壁の内部から閃光を放った。術者の力量次第では、氷結障壁は維持したまま、同質の魔術で攻撃を貫通できるのだ。

 

 咄嗟に回避行動を取るニクスだが、『オルタヴァリス』を持つ方の腕が凍りついてしまった。 

 

射線からは離脱できたが、武装を取り落としてしまう。

 

 ニクスは【鋭爪】を発動し、障壁に斬り掛かったが、その分厚い氷の壁を突破できない。

 

 そして、冷却が終わったヴィオレッタの【マギウスエンペラー】から魔術が放たれた。

 

「魔力充填超過、【超熱閃】」

 

 削れていた氷の障壁の向こうから、絶死の閃光がニクスに迫っていた。

 

 

 

 

 

 そのエルシアとヴィオレッタの注意がニクスに集中している裏で、闇の戦場が激化していた。

 

 ナリアは【擬態】と【闇塵】を組み合わせて、クローナとルッコを翻弄し続けていた。

 

「ルッコちゃん!今度は私が先に行くよ!」

 

 クローナは【紅月纏】で【闇塵】の影響をかき消しながら、闇の中に潜むナリアの微かな魔力を追う。

 

【ゲイルハルト】の鋭い爪が、闇を切り裂く。

 

 ナリアは笑いながら、闇の中に罠系魔術【奈落】を設置し、クローナの移動を阻害する。

 

「闇を追うのは、闇に魅入られることですよー。」

 

 ルッコは、【クリムゾンヘイト】の破損した翼から魔力の火花を散らせながら、紅蓮の魔力を煮えたぎらせる。

 

「うるっさいわよ!闇なんて、私の【クリムゾンヘイト】が叩き潰してあげるわ!」

 

 ルッコは【超剛力】を発動し、闇の罠を振り切って、ナリアが潜んでいると推定される場所へ突撃した。

 

 翼を失っても、ルッコのロマンは尽きることがなかった。

 

 

闇と熱情の衝突:ルッコの覚悟

 

 炎熱地獄と化した戦場で、ルッコの【クリムゾンヘイト】とクローナの【ゲイルハルト】は、闇の戦術家ナリアの【マギウスカイザー】に追い詰められていた。

 

 翼を片方失い、【犠牲】による自傷で耐久力を消耗している【クリムゾンヘイト】と、闇の罠に動きを阻害されるクローナ。

 

 対照的に、ナリアは【闇塵】と【擬態】を駆使し、優位を保ち続けている。

 

「熱情だけでは勝利できませんよー、小さな悪魔族さん?」

 

ナリアは、闇の奥からクローナとルッコを煽る。

 

 この屈辱的な状況に、クローナの瞳が再び燃え上がった。彼女は再び【狂化】を発動させると、ナリアが仕掛けたと推定される闇の罠を無理やり突破した。

 

「今だよ、ルッコちゃん!」

 

 人狼族の一瞬の爆発力が生み出した隙を、ルッコは逃さなかった。ルッコは残る魔力を全て、闇の呪縛魔術に注ぎ込む。

 

「【黒血呪縛】!」

 

 闇が闇を捕らえる。黒い鎖がナリアの【マギウスカイザー】の装甲に巻き付き、その動きを一瞬だけ拘束した。

 

ナリアは、わずかに焦った声を上げる。

 

「あれー?捕まっちゃいました?…さすがに悪魔族の呪いは強力ですねー。」

 

 ルッコは、魔力と耐久力の消耗を厭わず、大鎌に【破滅】の魔術を重ねがけし、最大威力の破壊力をナリアのゴーレムに叩き込んだ。

 

ドゴオオオォン!

 

 ナリアは驚異的な反応速度で身を捩らせたため、直撃は免れたが、片足を完全に吹き飛ばされた。闇の結晶が砕け散る。

 

 戦闘不能寸前のナリアは、【擬態】で完全な状態を繕いながら部位の欠損を隠し、何とか逃げようとする。

 

 しかし、クローナの【ゲイルハルト】が、傷ついた体に鞭打って、ナリアに迫った。

 

「もう、逃さない!」

 

 その時、クローナの背後から紫電を迸らせながら、雷のような速度で疾走してきたガルザの【マギウスカイザー】が、雷剣でクローナの【ゲイルハルト】を斬りつけた。

 

バチバチッ!

 

【帯電】の追加効果により、一瞬痺れたクローナ。

逃走を中止したナリアの【マギウスカイザー】から、その痺れが解ける前に、極光が放たれた。

 

「【超闇閃】!」

 

 闇の閃光が、防御の間に合わなかったクローナの【ゲイルハルト】の胴体を貫く。

 

致命傷を負った【ゲイルハルト】は、膝をついた。

 

 ルッコは咄嗟に、傷ついた【クリムゾンヘイト】を前に出し、周囲を見回す。

 

 ローニャの【グリニテカノン】は、胴体に大穴が空き、魔力も枯渇寸前で大魔導杖を持ったまま動けない。

 

 ニクスの【アサルトフェリス】も、ヴィオレッタの熱閃によるダメージで、両腕が完全に機能していない。『オルタヴァリス』は落ちたままだ。

 

 そして、クローナは今、絶命の衝撃を叩き込まれ、起き上がろうと必死だが回復が追いついていない。

 

 動けるのは、片翼を失い魔力を使い果たした自分、ルッコだけだ。

 

 頭をよぎったのは、今までの対戦相手の冷静な判断だ。リュドミラもゼノンも、勝利の可能性が残っている状況でも、仲間のゴーレムの消耗を考慮して降参した。

 

 悪魔族は好戦的な種族で、絶望的な戦場でも決して最後まで諦めることをしない一族だ。「ロマン」とは、最後まで戦い抜くこと。特攻して最後のひと暴れをし、一矢報いて敗北する。それが、悪魔族の流儀であり、ルッコの信条だった。

 

降参なんて、もってのほかだ。

 

ルッコは全身を震わせながら、下を向いた。

 

(このままやれば、【クリムゾンヘイト】は完全に動けなくなる。修理には何日もかかる…)

 

 ゾルディアーク帝国チームは、ヴィオレッタの【マギウスエンペラー】とアリシアの【マギウスカイザー】がほぼ無傷。ガルザは片腕、ナリアは片足を失ったが、戦闘は可能だ。

 

 そして、背後の三人の仲間の大ダメージが、ルッコの心を決めた。

 

 屈辱に涙を流し、歯を食いしばりながら、ルッコは絞り出すような声で宣言した。

 

「私たちの…、負けよ…。」

 

 ルッコは、己の信条をへし折って、仲間を守るという苦渋の選択を下した。ゴルディアスチームの希望は、ルッコの涙と共に、炎熱のステージに沈んだ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。