鋼鉄闘域(ゴーレムバトル)〜ホビーアニメ設定の貞操逆転異世界でオタク男子は希少種〜 作:白うに
炎帝の介入と、ローニャの傷
ガルザの【マギウスカイザー】の左腕を新たなハルバート『オルタヴァリス』によって切り飛ばしたニクスは、追撃の一撃を入れようと、再度オルタヴァリスを振りかぶった。
その時、視界の端に捉えた赤熱した強大な魔力光を確認すると、ニクスは即座に回避行動へと移行した。
ズドドドォッ!!
極太の極光が、さっきまで【アサルトフェリス】がいた場所を通り過ぎた。
「ふむ、不意打ちでも当たらんか。やはり、射撃回路はもう少し発展の余地があるな。」
そこには、赤熱した魔力残滓を振りまきながら佇む、ヴィオレッタの【マギウスエンペラー】の姿があった。遠距離からの精密な狙撃。皇族専用カスタム機の底知れない火力が、戦場に重くのしかかる。
ローニャが咄嗟に【石弾】で牽制しながら、ニクスへのフォローに入った。
「ニクスさん!引いて、一旦体制を整えて下さい!」
「だめ。距離を取ったら、爆裂系魔術で制圧射撃を受ける。」
ニクスは冷静に分析していた。
思い出すのは、ゾルディアーク帝国の留学生チームとの試合だ。一糸乱れぬ射撃は、まるで正規軍の演習を見ているようだった。この炎熱地獄で距離を取ることは死を意味する。
ローニャが次の思考している一瞬の隙を突き、紫電を纏った影が突入してきた。
ザシュ!!
左腕を失ったはずのガルザの【雷剣】が、雷のような速度でローニャの【グリニテカノン】を正面から斬り裂いた。
「ぐっ!?」
【グリニテカノン】がたたらを踏む。防御の厚いのローニャでさえ、装甲を深く抉られ、同調していたローニャにまで衝撃が伝わる。
「ローニャ!?下がって!」
ニクスが咄嗟に声を上げる。
「腕の方っぽくらいで、気を抜くんじゃねーぞ!」
ガルザが追撃に入ろうとする。
ローニャは咄嗟に【石壁】を全面に発動。幾重にも重なる石の壁が、ガルザの猛攻を辛うじて防いだ。
ホッとするのも束の間、石壁の一点が突如として赤熱化する。
ジュゥゥゥ!
ローニャが振り返った時にはもう遅かった。
極太の熱線が、ローニャの【グリニテカノン】の横っ腹を貫いた。
「ローニャ!?」
ニクスが悲痛に叫ぶ。ヴィオレッタは容赦なく追撃を入れる。
「【超爆裂炎弾】」
いつの間にか、ガルザは後方へと下がっており、炎熱のステージにはローニャとニクスの二機のみが残されていた。完璧な連携だった。
「装備換装!大魔導杖!」
その時、ローニャは膨大な量の魔力を注ぎ込み、装備を変更した。横っ腹に穴が空いた【グリニテカノン】の手に、巨大な魔導杖が出現する。
「刻印発動!【岩盤障壁】!」
昨夜、ゼノンの装備を見たことでインスピレーションを得て、ローニャが寝る間も惜しんで作成した、新たな武装である。
刻印された【岩盤障壁】は【石壁】の上位魔術であり、その頑強さはヴィオレッタの【超爆裂炎弾】を防ぎきった。
しかし、その代償は小さくなかった。大量の魔力を消費し、腹部に穴が空いた【グリニテカノン】はその動きを鈍らせた。
「すみません…ニクスさん、暫く動けそうにありません…。」
ローニャは申し訳なさそうに呟く。
ニクスはローニャを気づかいながら答えた。
「大丈夫、ローニャはそこにいて」
ニクスは一人でのゾルディアーク陣営の攻略に思考を巡らせた。
ゾルディアーク陣営では、ヴィオレッタが淡々と分析していた。
「ふむ、新たに【耐熱】を組み込んだようだが、やはり高位魔術を連発すると熱が籠るな。これは報告が必要だろう。」
エルシアが即座に冷却を開始する。
「すぐに冷却いたします。【冷気】発動。」
エルシアの【マギウスカイザー】から【冷気】が発せられ、ヴィオレッタの【マギウスエンペラー】の冷却を始める。元々赤熱していた【マギウスエンペラー】には、その程度の冷気であればダメージを受けない。
そこに飛び込んでくるニクス。
冷却中のヴィオレッタに代わり、エルシアの【マギウスカイザー】が前に出る。エルシアは【氷結障壁】を展開。透明な氷の障壁が防御を固める。
それを砕こうと、『オルタヴァリス』を振りかぶるニクス。
「【超冷閃】発射。」
エルシアは、氷結障壁の内部から閃光を放った。術者の力量次第では、氷結障壁は維持したまま、同質の魔術で攻撃を貫通できるのだ。
咄嗟に回避行動を取るニクスだが、『オルタヴァリス』を持つ方の腕が凍りついてしまった。
射線からは離脱できたが、武装を取り落としてしまう。
ニクスは【鋭爪】を発動し、障壁に斬り掛かったが、その分厚い氷の壁を突破できない。
そして、冷却が終わったヴィオレッタの【マギウスエンペラー】から魔術が放たれた。
「魔力充填超過、【超熱閃】」
削れていた氷の障壁の向こうから、絶死の閃光がニクスに迫っていた。
そのエルシアとヴィオレッタの注意がニクスに集中している裏で、闇の戦場が激化していた。
ナリアは【擬態】と【闇塵】を組み合わせて、クローナとルッコを翻弄し続けていた。
「ルッコちゃん!今度は私が先に行くよ!」
クローナは【紅月纏】で【闇塵】の影響をかき消しながら、闇の中に潜むナリアの微かな魔力を追う。
【ゲイルハルト】の鋭い爪が、闇を切り裂く。
ナリアは笑いながら、闇の中に罠系魔術【奈落】を設置し、クローナの移動を阻害する。
「闇を追うのは、闇に魅入られることですよー。」
ルッコは、【クリムゾンヘイト】の破損した翼から魔力の火花を散らせながら、紅蓮の魔力を煮えたぎらせる。
「うるっさいわよ!闇なんて、私の【クリムゾンヘイト】が叩き潰してあげるわ!」
ルッコは【超剛力】を発動し、闇の罠を振り切って、ナリアが潜んでいると推定される場所へ突撃した。
翼を失っても、ルッコのロマンは尽きることがなかった。
闇と熱情の衝突:ルッコの覚悟
炎熱地獄と化した戦場で、ルッコの【クリムゾンヘイト】とクローナの【ゲイルハルト】は、闇の戦術家ナリアの【マギウスカイザー】に追い詰められていた。
翼を片方失い、【犠牲】による自傷で耐久力を消耗している【クリムゾンヘイト】と、闇の罠に動きを阻害されるクローナ。
対照的に、ナリアは【闇塵】と【擬態】を駆使し、優位を保ち続けている。
「熱情だけでは勝利できませんよー、小さな悪魔族さん?」
ナリアは、闇の奥からクローナとルッコを煽る。
この屈辱的な状況に、クローナの瞳が再び燃え上がった。彼女は再び【狂化】を発動させると、ナリアが仕掛けたと推定される闇の罠を無理やり突破した。
「今だよ、ルッコちゃん!」
人狼族の一瞬の爆発力が生み出した隙を、ルッコは逃さなかった。ルッコは残る魔力を全て、闇の呪縛魔術に注ぎ込む。
「【黒血呪縛】!」
闇が闇を捕らえる。黒い鎖がナリアの【マギウスカイザー】の装甲に巻き付き、その動きを一瞬だけ拘束した。
ナリアは、わずかに焦った声を上げる。
「あれー?捕まっちゃいました?…さすがに悪魔族の呪いは強力ですねー。」
ルッコは、魔力と耐久力の消耗を厭わず、大鎌に【破滅】の魔術を重ねがけし、最大威力の破壊力をナリアのゴーレムに叩き込んだ。
ドゴオオオォン!
ナリアは驚異的な反応速度で身を捩らせたため、直撃は免れたが、片足を完全に吹き飛ばされた。闇の結晶が砕け散る。
戦闘不能寸前のナリアは、【擬態】で完全な状態を繕いながら部位の欠損を隠し、何とか逃げようとする。
しかし、クローナの【ゲイルハルト】が、傷ついた体に鞭打って、ナリアに迫った。
「もう、逃さない!」
その時、クローナの背後から紫電を迸らせながら、雷のような速度で疾走してきたガルザの【マギウスカイザー】が、雷剣でクローナの【ゲイルハルト】を斬りつけた。
バチバチッ!
【帯電】の追加効果により、一瞬痺れたクローナ。
逃走を中止したナリアの【マギウスカイザー】から、その痺れが解ける前に、極光が放たれた。
「【超闇閃】!」
闇の閃光が、防御の間に合わなかったクローナの【ゲイルハルト】の胴体を貫く。
致命傷を負った【ゲイルハルト】は、膝をついた。
ルッコは咄嗟に、傷ついた【クリムゾンヘイト】を前に出し、周囲を見回す。
ローニャの【グリニテカノン】は、胴体に大穴が空き、魔力も枯渇寸前で大魔導杖を持ったまま動けない。
ニクスの【アサルトフェリス】も、ヴィオレッタの熱閃によるダメージで、両腕が完全に機能していない。『オルタヴァリス』は落ちたままだ。
そして、クローナは今、絶命の衝撃を叩き込まれ、起き上がろうと必死だが回復が追いついていない。
動けるのは、片翼を失い魔力を使い果たした自分、ルッコだけだ。
頭をよぎったのは、今までの対戦相手の冷静な判断だ。リュドミラもゼノンも、勝利の可能性が残っている状況でも、仲間のゴーレムの消耗を考慮して降参した。
悪魔族は好戦的な種族で、絶望的な戦場でも決して最後まで諦めることをしない一族だ。「ロマン」とは、最後まで戦い抜くこと。特攻して最後のひと暴れをし、一矢報いて敗北する。それが、悪魔族の流儀であり、ルッコの信条だった。
降参なんて、もってのほかだ。
ルッコは全身を震わせながら、下を向いた。
(このままやれば、【クリムゾンヘイト】は完全に動けなくなる。修理には何日もかかる…)
ゾルディアーク帝国チームは、ヴィオレッタの【マギウスエンペラー】とアリシアの【マギウスカイザー】がほぼ無傷。ガルザは片腕、ナリアは片足を失ったが、戦闘は可能だ。
そして、背後の三人の仲間の大ダメージが、ルッコの心を決めた。
屈辱に涙を流し、歯を食いしばりながら、ルッコは絞り出すような声で宣言した。
「私たちの…、負けよ…。」
ルッコは、己の信条をへし折って、仲間を守るという苦渋の選択を下した。ゴルディアスチームの希望は、ルッコの涙と共に、炎熱のステージに沈んだ。