鋼鉄闘域(ゴーレムバトル)〜ホビーアニメ設定の貞操逆転異世界でオタク男子は希少種〜   作:白うに

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第39話「悪魔の慟哭と、鬼子の鬼神:ゼノンの真の力」

 

敗北の夜:傷ついた絆の修復

 

 ゾルディアーク帝国チームとの試合に敗北し、ゴルディアス王国チームは、魂が抜けたようにステージを降りてきた。

 

 ルッコの苦渋の決断はチームを救ったが、全員の心に深い傷を残していた。

 

ローニャは唇を噛みしめていた。

 

「私の…作戦が…悪かったんです。炎熱地獄への対応が…遅れました…。その後の立て直しも…。」

 

 司令塔としての大きな責任が、彼女の小さな肩にのしかかる。

 

ニクスは無表情の中に深い悔恨を滲ませる。

 

「新しい装備…、活かせなかった…脚を…止められた…。」

 

 自身の不甲斐なさを分析するように、悪かった点を上げ連ねる。

 

クローナは頭を垂れた。

 

「皆を、守れなかった…。相手の策に嵌ってばかりだった…。私の強みが全然活かせなかった…。」

 

 チームの守り手としての役割を果たせなかったことに打ちひしがれている。

 

ルッコは顔を覆い、嗚咽を押し殺す。

 

「私…、諦めちゃった…。まだ、何かできたかも知れなかったのに…。」

 

 自分のロマンを自らへし折ったという屈辱が、彼女を内側から苛む。

 

 タクトは、傷ついた仲間たちを一人一人、強く抱きしめるように労いの言葉をかけた。

 

「皆、お疲れ様。大変な試合だったね。」

 

「ローニャ。司令塔として大きな責任がのしかかったのに、精一杯、自分の役割を全うしてくれてありがとう。」

 

「ニクス。いつも俺と一緒に前線を支えてくれたのに、俺の不始末で大きな負担をかけてしまった。次は必ず、一緒に戦おう。」

 

「クローナ。チームの守り手として、何時も一番前で戦ってくれた。クローナの暖かさには皆、助かっているんだ。」

 

 そして、ルッコへ。タクトは優しく、しかし真剣な瞳で彼女の顔を見つめた。

 

「ルッコ。自分のロマンを砕いて、チームの為に決断してくれてありがとう。本当なら俺がその判断をしないといけなかった。不甲斐ない俺を許してくれ。」

 

 タクトからの労いの言葉は、彼女らの心の傷に静かに沁み込んだ。皆は下を向いて、言葉にならない感情を噛み締めていた。

 

 

 

 互いの傷を気づかいながら、タクトたちは帰路についた。まだゴレリンピックは後1戦残っている。傷ついてしまったゴーレムたちを、急ピッチで修復しなければならない。

 

 宿舎に着くと、ローニャを中心にゴーレムの修復に取り掛かった。作業は夜遅くまで続いた。タクトが夜食を持って部屋に戻ると、大体の作業は完成し、残るは最後のメンテナンスという段階だった。

 

 タクトは夜食を机に置き、周囲を見回した。どうやらみんな疲れて眠ってしまっているようだ。

 

 すると、隅でルッコだけが起きていて、みんなのゴーレムの最終調整を行なっていた。

 

タクトはそっと声をかけた。

 

「ルッコ、大丈夫?」

 

 ルッコは驚いたように振り向いた。その目は赤く腫れ、涙が流れていた。

 

 ルッコは強がろうとしたが、タクトの優しい瞳に抗えなかった。

 

「正直になってもいい」というタクトの慰めに、ルッコはぽつぽつと話し出す。

 

「今日の試合で、私が負けを認めてしまったのが、本当に良かったのかなって…。悪魔族なのに、途中で諦めるなんて…私は、私らしく戦えたのかな…。」

 

 そして、涙で声を詰まらせながら、最も辛い言葉を口にした。

 

「次の試合。最終戦は私を外して…。きっともう、私は戦えない…。」

 

タクトは何も言わず、ルッコを強く抱きしめた。

 

「ルッコは格好よかったよ!今日のルッコは、今までで一番誇り高い戦いだった。俺が好きな、ルッコの戦いであったよ。」

 

「…本当?…私、おかしくなかった…?」

 

「そんな事ない!いつものように勇敢で、いつものように力強くて、そして…、いつものように優しいルッコだった!!」

 

 タクトの真摯な言葉が、ルッコの心を縛り付けていた鎖を解く。

 

「そっか…。」

 

ルッコの表情に微かな光が戻る。

 

「もう少しだけ…、頑張ってみる!」

 

「ああ!最後まで俺たちのロマンを燃やし尽くそう!」

 

「当たり前でしょ!」

 

ルッコはいつものように立ち直った。

 

 

 

 

「…楽しそうだね。」

 

ルッコの後ろから、闇の住人でも恐れ慄くような声音で、クローナがそっと首に腕を回す。

 

「暇そうで羨ましい。」と、ニクスは無表情で新しいハルバートを研ぎ続ける。

 

「最終調整終わってませんよ?」と、ローニャが修復術式を書き加えながら、威圧的に言い放つ。

 

 全て見られていたことに、ルッコは羞恥に悶える。タクトも慌てて謝った。

 

 そして、張り詰めていた空気が一気に弾け、みんなが笑い出した。タクトもルッコもみんな。

 

 ゴルディアスチームは、敗北という試練を乗り越え、互いの絆を再確認し、立ち直ることができたのだ。

 

 

 

 

 翌日。休息日を得たゴルディアスチームは、午後からスタジアムに向かい、試合の様子を見に行くことにした。

 

 明日対戦するゴルド公国チームの試合はとっくに終わっていたが、今はゾルディアーク帝国チーム対、スティア連合国チームの試合が最終盤に差し掛かった所だった。

 

 ゾルディアークチームは大きなダメージを負っているようだが、未だ誰一人欠けていない。対するスティアチームは、残すところあと一人。ゼノンの【ギガントオニキス】だけだ。

 

 ゾルディアーク帝国が勝利すれば全勝で大会結果が確定する。スティア連合国が勝利すれば、ゴルディアス王国を含めた、三チームによるプレーオフとなる。タクトたちは固唾をのんで試合を観戦した。

 

 

 

 

 ステージ上では、ヴィオレッタからゼノンに向けて言葉が放たれていた。

 

「これが、小鬼族に生まれた鬼子の力か。お前の後ろに倒れている三人を倒した後も、だいぶ粘られてしまったな。」

 

 ゼノンの【ギガントオニキス】の後ろには、ルナの【ムーンヴェイル】、ボルグの【オルクハンマー】、リリエットの【フォレスタルナ】の三体が機能停止していた。ゾルディアークの圧倒的な火力の前に、善戦も虚しく追い込まれたのだ。

 

【ギガントオニキス】も無傷ではない。勇壮なボディにはいくつもの深い傷が刻まれ、恐ろしい面貌も左半分が溶け落ちていた。

 

「そなた、ゾルディアーク帝国に来ぬか?そなたの力ならば、帝国の中でもすぐに頭角を現そう。小さな部族の長で終わらせるには、惜しい者よ。」

 

 ヴィオレッタの勧誘に、ゼノンは焼け落ちかけた左目を輝かせ、言い返す。

 

「皇女殿に、そのような寛大な言葉をかけて頂けて光栄だ。だが断らせてもらう。俺にはまだここで、なすべき事がある。」

 

「ふむ、良いだろう。最後まで足掻いてみせよ。」

 

 ヴィオレッタは号令をかける。ゾルディアークのゴーレムが一斉攻撃の構えを取る。

 

「超閃射系魔術!一斉射撃!!」

 

エルシアからの号令で全ゾルディアークのゴーレムから各属性の極大レーザーが発射された。

 

 

 

 

「…【鬼神転身】、発動。」

 

 ゼノンが何か魔術を行使した瞬間、恐ろしい程の膨大な魔力が会場を駆け抜けた。観客の中には気を失ってしまった人もいる。

 

 ステージを見ると、【ギガントオニキス】が構えた大盾は城門ほどに巨大化し、ゾルディアークチームの一斉射撃を防ぎきっていた。

 

そして、ゼノンはもっと異常な変化をしていた。

 

 少年のようだった身の丈が、まるで鬼人族の青年ほどにまで伸び、頭の角も大きく逞しくなっている。何より腕が四本に増え、元々多かった魔力も残滓が零れるほど強大なものとなっていた。

 

「なんだ…、その姿は?」

 

 ヴィオレッタの顔から初めて余裕が消え、冷や汗をかきながら問う。

 

「すまんが、説明している時間はない。」

 

凍てつくような威圧感が籠もった声でゼノンが答える。

 

【ギガントオニキス】は手に持つ大太刀を水平に構えた。

 

「【鬼刃一閃】」

 

 聞き覚えのない魔術が発動される。【ギガントオニキス】から迸る魔力が大太刀に呑み込まれ、斬撃の瞬間に何倍にも膨れ上がって放たれた。

 

 ゾルディアークのゴーレムは、その津波のような斬撃が去った後、静かにその機能を停止させた。ゴーレムの魔力回路をズタズタに寸断したようだ。

 

ゾルディアークチームは絶句。

 

ゼノンは魔術を解き、元の姿に戻った。

 

試合終了。スティア連合国チームの勝利である。

 

 

 

 

 

ここはゴルド公国、公王宮。

 

 公王アウレリオ4世は、今回のゴレリンピックの結果にワナワナと震えていた。団体戦、個人戦、ほとんどの競技で最下位。

 

 ゴレリンピックは国力を表す指標であり、新参国であるゴルド公国にとっては死活問題だった。特に新人枠リーグでの最下位は致命的な利権を逃すことになる。

 

 公王は追い詰められていた。禁断の手段を取る程度には。

 

「…。ゾルディアーク皇帝に魔導通信を。例の契約の履行を迫る。」

 

 ゴルド公国とゾルディアーク帝国の間で結ばれた、不穏な契約。

 

タクトたちの最終戦の裏で、巨大な陰謀が動き始めていた。

 

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