鋼鉄闘域(ゴーレムバトル)〜ホビーアニメ設定の貞操逆転異世界でオタク男子は希少種〜 作:白うに
第40話「禁断の一手:戦争とゴレリンピック」
ゴルド公国の悪手
聖都エクサリスの闘技場に響く歓声も、ゴルド公国の公王宮には届かない。
ゴレリンピックの新人枠リーグで、最下位が濃厚となったゴルド公国。その玉座で、公王アウレリオ四世は怒りに震えていた。
豪奢な金色のローブに身を包み、額に汗を浮かべ、玉座の肘掛けを握り潰さんばかりに力を込める。
「新人枠リーグでの敗北は許されぬ!この国の命運が、あの小僧どもの試合一つで決まってたまるか!」
アウレリオ四世の声は、宮殿の壁に反響し、廷臣たちを震え上がらせた。ゴルド公国は、豊富な財力と狡猾な策略で知られ、ゴルディアス王国から独立した新興国家だ。
アウレリオ四世は追い詰められた末に、禁断の一手を選択した――ゴルディアス王国への侵攻。
戦時状態に移行すれば、ゴレリンピックに出場中の実力者たちは戦場へ送られ、最終日のゴルディアス王国との試合は不戦敗となり、ゴルド公国の不戦勝が確定する。これで最下位を免れ、首の皮一枚で利権を繋ぐことができるのだ。
この禁断の一手を可能にしたのは、ゾルディアーク帝国への「貸し」の精算だった。ゴルド公国は何世代にもわたり、ゾルディアーク帝国に莫大な投資を行ってきた。その全ては「ゴレトルによる契約」で締結され、絶対の効力を持つ。
特に、先代皇帝が経済危機の際に軍事費捻出のために結んだ契約は、歴史上類を見ない愚行とされていた。
その内容は、「有事の際、ゴルド公国の要請で一個師団を派遣する。その際の軍権はゴルド公国に一時的に貸与されるものとする。」
アウレリオ四世は魔導通信を握りしめ、冷徹に宣言した。「直ちに、契約を履行してもらう!」その声は、ゴルド公国の命運を賭けた最後の賭けだった。
ゾルディアーク帝国の宿舎。
月光が差し込む静かな部屋で、末の皇女ヴィオレッタ・ゾルディアが魔導通信を受け取る。
青髪を優雅に束ね、紫の瞳に冷笑を浮かべる彼女の顔が、情報を確認した瞬間、初めて明確な怒りに歪んだ。
「…あのクソジジイめ、何と言う契約を遺して逝ったのだ!」
ヴィオレッタの声は、普段の冷笑を欠き、純粋な憤怒に震えた。ゾルディアーク帝国は、自国の軍を他国の指揮下に置く屈辱的な契約の履行を強いられていた。
ゴルディアス王国からは恨まれ、自国の軍部からも非難される考えられる限り最悪の手。ヴィオレッタは拳を握り、唇を噛む。
「ゴルドの新参の尻拭いのために、我々の国力を削るなど…馬鹿げている!」
しかし、「ゴレトルによる契約」は絶対だ。彼女は冷徹に命令を下した。
「エルシア、ナリア、ガルザ。本国からの司令を待て。侵攻に備えよ。」
エルシア・ヴォルテは氷のような青い瞳を細めた。
ゾルディアーク帝国チームは、ゴレリンピックを中断し、戦場へ向かう準備を始めた。
翌朝、ゾルディアーク帝国軍の一個師団がゴルディアス王国の国境を越えた。魔導力発電所や有力なダンジョンが、【デミマギウス】の猛攻に晒される。
この世界では、「勇者と魔王の魔法」による不戦協定があり、露骨な侵略は禁じられている。だが、ゴルド公国は狡猾な準備を整えていた。
ゴルディアス王国内の有力施設の所有権を、潜入させたスパイや内通者に金で買収し、水面下で書き換えていたのだ。
魔導力発電所は「ゴルド公国の資産」として登録され、ダンジョンも同様。侵攻は「所有物の処分」という名目で正当化され、施設の破壊が開始された。避難勧告は出されたが、恫喝に等しい脅迫だった。
さらに壊滅的な情報がもたらされる。ゴレリンピックに出場中のゴルディアス王国宮廷騎士のゴーレム魔導記録が、ゴルド公国の買収や記録への術式干渉で全て抜き取られていた。
タクトたちの戦術、弱点、刻印構成が敵の手に渡り、戦場での不利が確定していた。
ゴルディアス王国の王宮は混乱に包まれた。
国王が怒りと驚愕で倒れ、急遽、マリー王女が実権を握る。金髪を厳粛に束ね、青い瞳に疲労を滲ませつつ、王女は魔導通信でタクトたちに呼びかけた。
「タクト、ニクス、ローニャ、クローナ、ルッコ!事態は一刻を争います。ゾルディアーク帝国軍の侵攻を受け、王国は戦時下にあります。」
マリー王女の声は、気品と毅然とした意志を宿していた。
「戦力が著しく不足しています。宮廷騎士には全員戻ってきて貰う予定です。本来なら、君たちには直ちに戦線に向かい、国を守るために戦ってほしいと思っている。」
一瞬の沈黙後、彼女は深い決意を瞳に宿した。
「しかし、君は学生であり、宮廷騎士ではない。それに、ゴレリンピックの新人枠リーグで勝利することが、外交と利権において、この国の未来を繋ぐ最善策となる可能性も否定できん。判断は君たちに委ねる。タクト、お前がこの国の為に、最もお前のロマンを貫けると信じる道を選べ!」
通信が終了し、タクトの表情は凍りつく。
タクトは拳を握り、絆と国の未来を天秤にかける。その時、別の魔導通信が学園から入った。
「オーホッホッホ!心配無用ですわ、タクト様!」
凛々しい声で現れたのは、ミーサ先輩だった。学園の戦時制服を纏い、愛機【ノーブルルージュ】の横に立つ姿が映る。
彼女の後ろには、執事のセバスチャンをはじめ、学園の先輩たちが戦闘準備を整えていた。
「私たちが前線に向かいます!心配御無用ですわ!この国の為に立ち上がるは、この国に生き、戦う力がある者の勤めですの。オーホッホッホ!」
ミーサの真っ直ぐな視線がタクトを貫く。
「あなた達もこの国の為に、自分ができることを全力でおやりなさい!新人枠リーグでの勝利が、この国の未来にどんな利益をもたらすか、考えなさい!」
ミーサの格好良い姿に、タクトは息を飲む。
タクトは決意を固める。
「ミーサ先輩、国の防衛をお任せします!俺たちはゴレリンピックでロマンを燃やし尽くす!」
仲間たちが頷き、絆が再び燃え上がる。