鋼鉄闘域(ゴーレムバトル)〜ホビーアニメ設定の貞操逆転異世界でオタク男子は希少種〜   作:白うに

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第42話「黒い閃光と金色の糸:ミラリスの奇術」

 

瞬間の【模倣】:ニクスの一撃

 

 ゴレリンピック最終試合が、ゴルディアス王国チーム対ゴルド公国チームのコールと共に開始された。会場の熱狂とは裏腹に、ステージ上は戦時下の緊迫感に満ちている。

 

 ゴルディアス王国チームの欠けた一枠――ローニャの不在が、タクトたちの背中に重くのしかかる中、ニクスが開幕早々、動いた。

 

 ニクスの【アサルトフェリス】が微かに震え、青白い魔力を放つ。

 

「【模倣】…。」

 

 それを見たレオニスは、公国を継ぐ者としての余裕と傲慢を滲ませ、嘲笑した。

 

「【模倣】だと?その情報はもう得ているよ。我々の装甲には、微細な魔術の乱れを発生させる特殊な塗膜が施されている。戦闘で使えるレベルの魔術をコピーできるかな?」

 

レオニスの言葉が言い終わるか否か。

 

 金と黒の獅子をあしらわれた、レオニスの兵器型ゴーレム【マギウスカイザー】の横を、一陣の黒風が通り過ぎた。

 

「『オルタヴァリス』。」

 

 ニクスの静かな声が響くと同時に、振り返ろうとした【マギウスカイザー】の腰を、【アサルトフェリス】のハルバートが叩き砕いた。魔力回路が剥き出しとなり、火花を散らす。

 

「ぐぅっ!」

 

不意を突かれたレオニスは呻き、体制を崩す。

 

 レオニスの危機に即座に反応したのは、ピンクブロンドの天才宮廷騎士、トリスだった。

 

 彼女の魔法剣士型ゴーレム、【クリスセプター】は魔法水晶と鋼でできており、透明な装甲に金の術式が輝く。

 

【クリスセプター】が魔導剣を構えると同時に、光弾を連射してニクスを追いやる。

 

「きっ!貴様!?殿下のゴーレムをよくも!」

 

 トリスは怒りを露わにするが、ニクスは軽やかに【回避】すると、スルスルと離脱していく。

 

 レオニスは驚愕していた。【マギウスカイザー】は体勢を立て直すが、その動きは明らかに鈍い。

 

「何だ、あの速度は…!記録ではあれほどのスピードはなかった…!何を【模倣】した…?」

 

 レオニスは戦術の全てを読み込んできたが、この事態は想定外だった。

 

「あれほどの速度…、まさか…!貴様、味方の【アブソルトレイル】のスピードをコピーしたな!?」

 

ニクスはレオニスの睨みつけに素っ気なく答える。

 

「秘密…。」

 

 苛つき、歯を食いしばるレオニス。【マギウスカイザー】は先ほどの攻撃で移動系の魔力回路が致命的に損傷してしまっていた。ゾルディアークから借り受けた機体に傷を負わせたことへの屈辱が、彼を内側から苛む。

 

 仕方なしにレオニスは、猫背の少女ミラリスに指示を飛ばす。

 

「ミラリス!俺のゴーレムを動かして、守れ!」

 

「はっ…、はい。レオニス様…。」

 

 オドオドとし、視線をキョロキョロと彷徨わせるミラリスは、自らのゴーレム【イゴールクネア】に指示を飛ばした。

 

「【イゴールクネア】…、【金糸支縛】でレオニス様のゴーレムを縛って…。」

 

 金と黒の蜘蛛人型ゴーレム、【イゴールクネア】から金色の糸が、レオニスの【マギウスカイザー】に向けて放たれる。

 

 

 話は代わるが、この世界のゴーレム使いは原則、自分の種族か、自分と形の近い種族の形をしたゴーレムを使用する事が多い。

 

 ゴーレムを操作するのには、ゴーレムとの高い同調率が重要となるからだ。

 

 しかし、ミラリスが使用しているのは、脚の数も感覚器官も大きく違う蜘蛛人族型ゴーレム。通常であれば同調率が上がりきらず、ゴーレムを動かすことすら難しいだろう。

 

 だが、彼女は違った。田舎の屋敷で引きこもって暮らしていた彼女は、蜘蛛を見る機会が多かった。複雑な罠を組み立てて獲物を捉える、蜘蛛の姿に興奮していたのだ。

 

 誰も教えていないのに、彼女は蜘蛛人族型のゴーレム作成に没頭した。親族から不気味に思われても関係なかった。

 

 彼女が外に出されるきっかけは、母に領地の豪農の家に嫁に出されそうになった時。社会不適合者のミラリスを、無理やり従わせるためのゴレトルでの契約を、彼女は利用した。

 

 斬りかかってくる母の騎士型ゴーレムは、あっという間に【イゴールクネア】の巣の中で高速された。その悍ましい戦い方に、誰もが腰を抜かした。

 

 その後、家では手に負えないため学園に放り込まれると、みるみるその実力を開花させ、瞬く間に学園トーナメント個人戦で優勝。公王の策謀が重なり、本当は19歳だが年齢を偽って、18歳以下の新人枠リーグ代表となったのだ。

 

 彼女は学園に入ったのが遅く、栄養状態が悪かったため背が低く、貧相な身体つきであり、運動不足でひょろひょろだったため、誰一人として年齢について疑う者はいなかった。その事実にミラリスは、少し傷ついていた…。

 

 

 

 

【イゴールクネア】から放たれた金色の糸、【金糸支縛】は、瞬時に【マギウスカイザー】の各部に接続される。ミラリスは、この魔術で敵を絡め取るだけでなく、その動きを自在に操り、レオニスのゴーレムの補助に利用したのだ。

 

【イゴールクネア】に操作された【マギウスカイザー】は、損傷したボディでありながらも滑らかな動きを取り戻す。

 

 ニクスはそれに気づき、糸を切断しようと【アサルトフェリス】を踏み込ませる。しかし、既のところでニクスは踏みとどまった。

 

 地面には、無数の糸が張り巡らされていた。もしそのまま突っ込んでいたら、黒い閃光は黄金の巣に捕らえられていただろう。

 

 その隙を逃さず、レオニスの【マギウスカイザー】から【爆裂光弾】が撃ち出される。ニクスはそれを避けながら、タクトたちと合流した。

 

「タクト、あれ、少し面倒。」

 

 ニクスは注意深く【イゴールクネア】を観察している。ミラリスの存在が、予想以上に戦闘を複雑にしていた。

 

タクトは一瞬で状況を把握し、決断を下す。

 

「よし、それならクローナ!ルッコと協力して、【イゴールクネア】を頼む!あの蜘蛛の糸を無効化できるのは、君たちのタッグだけだ!」

 

「ニクスは俺と一緒にあの『綺麗なゴーレム』――竜人族のゴーレムを狙う!あいつは何をしてくるか分からない!俺たち2人で徹底的に撹乱するぞ!」

 

タクトはチームを二つに分けると、作戦を説明した。

 

 クローナとルッコ、タクトとニクス。二つのタッグは、国の命運を賭けた、最終決戦の敵に向かって、同時に走り出した。

 

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