鋼鉄闘域(ゴーレムバトル)〜ホビーアニメ設定の貞操逆転異世界でオタク男子は希少種〜   作:白うに

44 / 50
第44話「赤ずきんの目覚めと、少女たちの誓い」

 

炎と光の交錯:ルッコの犠牲

 

 ゴレリンピック最終試合は、二手に分かれたタクトチームによって混沌を極めていた。

 

 レオニス王子の【マギウスカイザー】が最低限の修復を終え、放たれた【爆裂光弾】と【超光閃】が、ミラリスとの激戦を終えたばかりのルッコとクローナに向かって、一直線に迫る。

 

 ルッコは射線から避けようとしたが、糸の拘束から抜け出そうともがくクローナを視界の隅に捉えた。

 

(クソッ!考える時間なんてない!)

 

 ルッコは咄嗟に【クリムゾンヘイト】の両翼を全面に展開し、ボロボロの右腕と共に防御姿勢を取った。

 

 攻撃が命中する瞬間、ルッコは猛烈な衝撃と熱量に意識が遠のくのを感じた。

 

爆煙が上がる。

 

 煙が晴れると、両翼と大破した右腕を盾にした【クリムゾンヘイト】が、全身がボロボロの状態で立っていた。装甲は熔解し、内部の魔力回路が剥き出しになっている。

 

クローナが半狂乱で叫ぶ。

 

「ルッコちゃん!どうして!?」

 

ルッコは痛々しい息遣いで答える。

 

「知らないわよ…、クローナ…。勝手に身体が動いただけだわ。」

 

 満身創痍のルッコの状態を確認すると、後方でずっと待機していたトリスが動いた。

 

 トリスの【クリスセプター】が、魔術の刻印コストの大半を注ぎ込まれた【転移】を発動し、後方で一瞬、姿を消す。

 

 瞬時にルッコの右側面に現れると、【光剣】を発動した騎士剣で【クリムゾンヘイト】に斬り掛かった。

 

 先ほどのダメージで避けきることができないルッコ。元々、致命的に傷ついていた右腕と右翼が斬り砕かれ、【クリムゾンヘイト】はバランスを失い、崩れ落ちる。

 

 トドメを刺そうとトリスが剣を振り上げた、その時だった。

 

 クローナが会場を爆破したかのような咆哮をあげながら、獣化を始める。それに同調した【ゲイルハルト】も咆哮をあげ、背中から赤黒い、まるで血のようなオーラが噴出する。

 

(【血染ノ外套】…。) 

 

 闇の中から何かが聞こえたような気がする。そう思ったか否か。

 

【クリムゾンヘイト】の背後を、紅い閃光が通り過ぎた。

 

 何が起こったか分からないトリスは、トドメを続けるように【クリスセプター】に司令を送るが、彼女のゴーレムは反応しない。

 

 それどころか【クリスセプター】は、レオニス王子の【マギウスカイザー】の横をのそのそと通り過ぎると、後方で糸の陣地を作製しようとしていた【イゴールクネア】に急接近する。

 

 理解が追いつかないミラリス。【クリスセプター】が腕を振るうと、元々、ルッコによって大ダメージを負っていた【イゴールクネア】は、何かに弾き飛ばされたかのようにステージから落とされ、戦闘不能となった。

 

 何かが起こっている。何が起こっているかは分からなかったが、何か悪い事が起こっているのは確かだ。

 

 レオニス王子は錯乱しそうになりながらも、味方の【クリスセプター】に【爆裂光弾】を撃ち込む。

 

 左腕で受ける【クリスセプター】。そのままダメージを省みることなく、勢いをつけて【マギウスカイザー】に突撃。やっと、修復してなんとかなっていた腰部の傷に狙いを定めると、【マギウスカイザー】に取り付き損傷部を右腕で掌握して砕き出す。

 

 たまらず【超光閃】で、【クリスセプター】を焼き払うレオニス王子。

 

 打ち払われた【クリスセプター】の傷跡から、まるで、衣装を脱ぐかのように血塗れの【ゲイルハルト】が這い現れる。

 

 いや、血ではない。血液のように濃厚な魔力残滓だ。クローナが*【血染ノ外套】の強制発動と【擬態】の暴走によって、トリスの【クリスセプター】に擬態し、敵陣に潜り込み、ミラリスとレオニスのゴーレムに攻撃を仕掛けたのだ。

 

もう一度、【マギウスカイザー】に飛びつく【ゲイルハルト】。

 

必死に剥がそうともがくレオニス王子。

 

 本物のトリスに救援を求めようとするも、トリス自身も、自分のゴーレムがどこにいるのか見失ってしまっている。

 

【ゲイルハルト】の右腕が【マギウスカイザー】の顔面をギリギリと締め上げる。

 

 するとそこで、【マギウスカイザー】を絞め上げていた万力のような力が、急に途絶えた。

 

 呆然とするレオニス王子。耐久力を使い果たした【ゲイルハルト】と魔力が完全に枯渇したクローナが、同時に地面に倒れ伏した。

 

静まるステージ。

 

 ふと笑い出すレオニス王子。【マギウスカイザー】で【ゲイルハルト】の動かないボディを蹴り飛ばし、罵詈雑言を浴びせる。

 

「よくも驚かせてくれたな!俺は貴様らの絆ゴッコなどに付き合っている暇はないのだ!この駄犬め!」

 

その瞬間。

 

【ゲイルハルト】の腹の中から、漆黒に紅い刻印を奔らせた巨腕が伸び、【マギウスカイザー】のコアへ手を伸ばした。

 

驚き、振り払おうとするレオニス王子だが、もう間に合わない。

 

その巨腕にコアを有らん限りの力で握り砕かれた。

 

【マギウスカイザー】は機能停止。レオニス王子は敗北した。

 

 全身を這い出してきた【クリムゾンヘイト】を確認し、ルッコは呟く。

 

「まったく、こんな手段が有るなら先に説明しとけっての…!」

 

 ルッコはクローナが何をしたのか、何をしているのかは完全には理解できていなかった。しかし、何を目指しているのかが、ゴーレムを通して、魂の奥底で浮かんでくるのだ。ルッコはそれに従って動いただけ。

 

 ルッコは隣で気を失っているように眠るクローナを見つめ、口の端をあげた。二人の少女は互いの命を賭けた、最高のロマンを実現させたのだ。

 

 

 

 控え席で応援しているローニャの心臓は、激しい戦闘の展開に合わせて、激しく、不規則に鼓動していた。

 

(私はもう、祈る事しかできない…!)

 

 技術面での協力しかできないもどかしさ。最後まで、調整しきれなかった新しい魔術刻印。ボロボロにされるルッコの惨状に、ローニャは小さな悲鳴を漏らす。

 

 その後のクローナの暴走のような行動に驚くが、クローナが動けなくなってしまったことと引き換えに、新たな魔術刻印、【血染ノ外套】の擬態効果が上手く戦況を動かしてくれたことに安堵する。

 

 ローニャは目を上げ、サフィラと戦うタクトたちに視線を向ける。

 

 タクトが自分の刻印したゴーレムで戦場を走り回っているのを見ると、彼女の心は熱くなる。

 

 こんな事は、今年の春までは全くなかった。タクトたちに出会ってから、自分の世界は何倍にも膨れ上がってしまった。

 

(別に、責任を取れとは言わないけど…。)

 

 自分をここまで、ロマンの世界に巻き込んだのだから、自分の声援に応えてほしいという強い思いで、ローニャは思いっきり、タクトを応援した。

 

 タクトが一瞬、こちらを見たような気がした。

ドキッととするローニャ。

 

「…責任、取ってもらっても良いかもしれません…。」

 

 少し、頬を染めながら、ローニャは小さく呟いた。タクトの一つ一つの選択に、彼女は自身の全てを託す。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。