乙骨弟、呪を喰らう   作:キューチャンタロー

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完全なる息抜き作品です。

作者は何も考えず描いてますw矛盾点や差異多くあるかもですが

頭空っぽにして呼んでくださると嬉しい

そんな訳でどぞ



誕生編
プロローグ


 

 

「乙骨さん! 息を吹き返しましたよ!! 元気に泣いてます!」

 

空気が喉を焼く。

吸い込んで、吐き出して、また吸い込む行為を何度も何度も繰り返す。

 

 

――幾月ぶりの“呼吸”なんだろう。

 

 

そんな感覚が、なぜか胸の奥に確かにあった。

 

喉が裂けるほど泣いた。

肺いっぱいになるまで空気を取り込み生きるための糧とする。

 

次の瞬間、体がふっと浮く。持ち上げられる

 

 

――その浮遊感が堪らないくらいに怖くて…、人目も憚らずに大きく泣き叫んだ。

 

けれど、柔らかな温もりが急に包み込む。

誰かの腕。匂い。心音。安堵、幸福。

様々な感情が規則的な鼓動に同調して、涙がゆっくりと引いて変わりに眠気が誘ってきた。

 

「本当に……本当に良かったぁ。生きててくれてありがとう……! あなたは優斗よ……。誰にでも分け隔てなく、星のようにみんなを優しく照らして。――ほら、憂太、あなたの弟よ」

 

乙骨――。

 

乙骨憂太?

 

「おぉと??」

 

ガラスの向こうで、小さな影が首をかしげる気配がする。

2歳くらいの男の子が、父親に抱かれて不思議そうにこちらをのぞきこんでいる。

 

あの名を、知っている。知っている?何故だ?

 

 

――胸の奥がざわめいた。

 

ああ……まじか。そうかここ、呪術廻戦の世界か

 

心臓が一度、止まっていた記憶が身体だけに刻まれている。

 

真っ暗な沈黙。

 

そこから引き戻された瞬間、世界の“ゆらぎ”が見えた。

皮膚の下を、熱と冷えが行き交う。

 

 

これは――呪力だ。はっきりと感じる。流れ、渦。

術式? まだ知らない。

 

名も、形も、輪郭も掴めない。

 

けれど、触れてはいけないものと、触れなくてはならないものの境目が、うっすら光って見える。

 

と言うかさっきから目が見えないはずなのに何で周囲が鮮明に分かるんだ…⁇

 

 

思考が…、妙にクリアだ。

頭の中で、複数の思考が同時に走る。

一つは、周囲の温度と匂いを解析している。

 

一つは、呪力の循環に微細な呼吸を合わせようと試みている。

 

一つは、この先の“原作”の時間軸を思い出せる限り並べて危険度順に色分けしている。

 

また一つは、いま泣き止むべきか、もう少し泣いて肺を広げるべきかを判断している。

 

――速い。速すぎる。何だ、この頭の回り方は。

 

前世――、何一つ思い出せない。

“自分”という個人史、家族、友人、恋人…、子供がいたかすら知らない。

手触りのある名前は、どこにも引っかからない。

だけど、この“世界の仕組み”は知っている。

 

術師、呪霊、特級、領域。物語で見た惨劇の数々、推しの死。

 

サブカルの断片、一般常識の骨組みだけが残っている。

 

自分自身の積み上げてきた前世の人生。その一切の記憶の輪郭を削って、脳の性能を身体の感覚を上げる――そういう縛り。

 

 

……天与呪縛、か?

 

喉の奥で、ちいさな音がもれた。赤子の身体は、言葉にならない。

けれど胸の内では、はっきりと言葉になっていく。

 

この世界では、人が羽より軽く死ぬことがある。

ひとつまみの不運、ちょっとの油断、ボタンをかけ違う様なすれ違い、善意と悪意、強欲に傲慢、何が連鎖して死に繋がるかまるであみだくじの様に分からない。

 

 

原作を知っている。この先の未来を知っている。自身が歩くこの先で“死”が置かれている人たちがたくさんいる。

 

「……(全員を救う事なんてできない。だって…。)」

 

 

彼の死が、彼女の死が、あの人の死が多くの人を救うトリガーとなるから、あの呪いの王に勝つ為の鍵となるから。

 

 

でも…。それを込みにしても救えるのなら…??

 

自分と言うイレギュラーの存在が潤滑油変わりになるのなら…?

 

でもそれでもどうしても救えない人が出てきてしまうだろう…。

 

 

声にはならない。けれど、誓う。

 

 

その誓いに答えるが如く呪力の流れに、微かな歪み生まれる。

 

吸って、吐く。

吸って舌が、胃が――世界を吟味する様に“味”を、覚える。

いまはまだ術式の名も知らない。

 

けれど、予感がする。

 

喰らうと。

 

 

誰かの絶望を、誰かの悲鳴を、誰かの終わりを。

自分の身なんて、あとでいい。痛みは、あとで数えればいい。

 

その時は自身の命をかけて、自分の全力で1人でも多く人を救おう。

 

 

母の腕が、そっと力をゆるめた。

ガラスの向こうで、兄がこちらに小さく手を振った。

世界は、優しく見えるふりをして、牙をしまっている。

それでも――。

 

 

この温もりを、二度と手放さないために。

 

吸って、吐く。

心臓はちゃんと動いている。呪力の味をしっかりと味わう。

 

自身の名は、乙骨優斗。

 

この世界で誕生したもう一つの可能性だ。

 




お読みださりありがとうございます。



この作品を見つけて下さった皆様に感謝。
皆様からのお気に入り、評価、感想等もお待ちしております。
感想気兼ねなく送ってくださると助かります。
これ直して欲しいとか気に入らない!!とかめちゃくちゃ待ってます。

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誤字報告待ってます。自分でもちょくちょく見て修正!


次話はまたいつか

それじゃあ次回に……ではでは

懐玉・玉折編にて天内理子を

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