乙骨弟、呪を喰らう   作:キューチャンタロー

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続き放出します!

それでは続きどぞ


1話

あれから数年が経った。

 

 

兄の憂太は、原作通り――いや、原作以上に――とても優しく、それでいて何処かオドオドした少年に育っている。

 

その反面には、人の身では膨大な呪力総量を誇る怪物の一面もあるが、今はまだ本人も、周囲も、まだ気づいていない。

 

何も知らない顔で日常を歩いている。

 

この世界にとって、彼がどれほどの“特別“かということを知らずに。

 

あとは妹が産まれた。優奈である。

 

一方の僕はというと、あの臨死の産声のあとに実は一つの騒動があった。

 

産まれた時心臓が止まってしまった為、“もしも”に備えてと、色々と調べられたのだが

 

結果――「脳の形が他の人間と違う!」

 

恐らくだが、天与呪縛の影響ではないかと思うが、そんな事を伝えられるはずも無く…。(と言うかまだ言葉も発せない赤子)

病院がざわつき、脳外科のスペシャリストを呼ぶとか呼ばないとか、大人たちが右往左往した。

 

その頃から、“見え方”は少し普通と違っていた。

室内の空気が温冷の縞模様で流れて見える。

声色の感情に色が見え、時折、世界がスローモーションになる様に遅くなる。

 

自身の思考はその遅い世界でも何なく発揮して、物が何処に落ちるかを正確に予知する事も出来た。

 

そして呪力の方もより繊細に明確に、輪郭を伴って視界へ入り情報を拾ってきた。

 

 

 

この世界は案外フィジカルでものを言う場面が何かしらと多い。

 

そのため二歳の頃から、呪力を回しながらの体の土台作り。

三歳になると、この目を最大限に活用するのと自身を虎杖悠仁や禪院真希並のフィジカルにする為に、近所の道場で体術を学び、より厳しい鍛錬を始めた。

 

「押忍!」と腹から声を出し、立ち方、重心、呼吸。蹴りはただ闇雲に蹴るのでなく、地面を踏み締め軸を安定させて、渾身の力で放つ。

 

正拳突きは、身体中の関節を筋肉を連動させ最大限の力を発揮させる様に突く。

 

それを複数の思考で客観的に見て、より良く、より最大限に、より効率的に反射レベルで出る様に繰り返し動作を繰り返す。

 

 

 

まああとなぜ武術にしたのか、理由を挙げるとすれば…、僕は呪具を持っていない。

 

呪霊を対処するためには、己の拳が一番使い勝手がいいと言うのもあった。

 

 

 

 

 

そして、肝心の術式だが…。

 

 

二歳のときに発現した。

 

***

 

その日は兄の憂太がぐずった。

 

「……あそこ、いやだ」

 

指さしたのは、家の奥の物置部屋。いつもは聞き分けの良い大人しい兄が、父のシャツをぎゅっと掴んで離れない。

 

何かいる? 

 

 

――そう直感した僕は、親の足もとにくっつきながら、ガラリと開けられた部屋の中を慎重に見る。

 

すると…。

 

 

いた。

 

 

豚みたいな顔。脂ぎった皮膚に、下卑た笑みを貼り付けた小型の呪霊。

 

 

世の中の嫌悪と恐怖の残り香でできた、薄汚れた塊。

憂太の嫌悪感は正しかった。

 

両親は部屋を見渡して、何かいないかを確認している。

 

今がチャンスか…。

 

やらねばならない。祓わなければ…。

 

そうして喉の奥で、何かが形になった。

 

言葉ではない。

それでも、この言葉が僕の中では術式の“開放句”だと分かる。

 

「――ちょうだいする」

 

空気の味が変わった。呪力が廻る。術式が発動する。

 

呪霊を玉にし、呑み込む呪霊操術とは違う。

 

ーープギャァァァァァァァ⁉︎

 

 

豚面の呪霊が突如として、内側に内側に圧縮される様に折りたたまれて行き…。

 

 

ものの数秒で目の前には、呪霊が姿を変えた五センチ四方の立体型の肉塊が、宙を漂っていた。

 

思わず…。ごくりと喉が鳴った。

 

 

躊躇いがちに紫色の血が滴るそれを掴む。

 

まるで洗わずにそのまま放置していた濡れ雑巾の様な、そんな嫌な感触にうげぇーっと舌を出しそうになるのを堪え。

 

 

恐る恐る…、震える口元へ運び…。

 

 

噛んだ。

 

 

 

噛み砕いた。

 

 

 

飲み込んだ。

 

 

 

 

臭い悪意が舌を襲う。

 

その味はまるで、牛乳に浸したパンをそのまま腐らせて食べている様なそんな味。そしてゴムの様な固い弾力が、余計に口元いっぱいにその味を行き渡らせる。

 

舌に張り付く味で脳が、胃が拒絶する。

 

 

――だが、残すと駄目だ。

 

 

残す=成功率の低下。

吐き戻し=その肉塊での取得不可。

 

 

本能が術式のルールが、それを叩き込んで来た。

だから、飲み下す。

俺は二歳の体で、喉で、複数の思考が周る脳の理性で、それでも“完食”を選んだ。

 

【ピコーン――。呪蓄点2獲得】

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

名 乙骨優斗 2歳 呪蓄点 2

呪力量 5+ (155/300)

筋力 1+ (18/30)

耐久 1 (1/30)

俊敏 1+ (18/30)

五感 9 (2/7500)

器用 7 (2/1000)

出力 4 (0/100)

 

 

スキル

多重並列思考 高速思考 基礎値画面

 

 

術式スロット

1 呪喰昇華 level1

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

間の抜けた、しかし確かに耳に届く電子音と見知らぬ女性の声。

それと同時に、まるでゲームキャラのステータス画面が目の前に現れる。

 

 

そして…。

 

「――――っっ!!」

 

 

体が激痛を訴えた。

泣き叫ぶ。足がつって、床を掻く。

 

そして訪れるのは痛みとともに、何かが蓄積するそんな感覚。

 

 

 

「優斗!? どうしたの、優斗!」

 

母が駆け寄り、俺を抱き上げる。

 

父が電話に手を伸ばし救急車を呼ぼうと番号を入力する。

 

「救急車……!!」

「だ、だいじょぶ…!!あしつっただけ…」

 

 

しかしそれに僕は待ったをかける。

 

 

両親が心配して足を揉みながら、触りながら仕切りに心配する中、そのステータス画面を舐め回す様に見つめる。

 

はは…。何だこれ?まるでゲーム仕様じゃないか…。

 

術式は…、“呪喰昇華”。

 

 

その画面へ気を取られていた時、戸口の向こうで、憂太が半泣きで覗いていた。

 

「うう…。ゆうと大丈夫…?」

 

「う、んだいじょぶだよにいちゃん」

 

親たちは互いに顔を見合わせ、安堵と困惑の中間みたいな表情になった。

 

母の胸に顔を押し付けて、呼吸を整える。

痛みはまだ残っている。だけど、さっきまでの不快感は引いていく。

 

さっきの声は何だ?僕の中の“誰”かか?

このステータス画面は?

どのくらいが一般術師の数値何だ?

呪蓄点?かっこの数字の意味は?まさか振替ができる…??

 

 

天与呪縛の副産物か、術式のガイダンスか、それとも――

 

 

(今は、良い。憂太が無事でよかった。検証は後でじっくりやろう)

 

多重列思考が反射的にタスクを振り分ける。

痛みの処理。

呼吸の最適化。

家族を心配させるな。

憂太の安定化。

 

そして術式の確認。『ちょうだいいたす』の言葉で術式が開放する誓約。恐らくは食する為だとは思うけど…。

 

全部食べられなければおそらくポイントが貰える確率が落ちる。

 

吐けば二度と食えない。

 

 

――よし覚えた。忘れない。

 

母の掌が背をとんとんと叩く。小さなリズムが心拍を落ち着かせる。

 

憂太が、おそるおそる近づいてきた。

 

「……ゆうと、いたい?」

 

首を横に振り、できるだけ崩れない笑顔を作る。

 

「だいじょぶ。もう、ないない」

 

憂太の目が、ほっと緩む。

その瞬間、胸の何処かで護らなければと誰からか語りかけられた様な気がした。

 

(分かっている。いつか、原作が示した“運命”が先に待っている)

 

 

なら、できるだけ多くの呪を喰って、兄をそして原作キャラ達の悲運の死を迎える彼らを守ってやる。

 

“必要死を歩む人たち”の前に立つために。

 




読んでくださりありがとうございます…!

もうちょい長く書きたい…!次回もう少し長く描くかもです

引き続き皆様からのお気に入り、評価、感想等もお待ちしております。
励みになります。感想気兼ねなく送ってくださると助かります。
これ直して欲しいとか気に入らない!!とかめちゃくちゃ待ってます

誤字報告待ってます。自分でもちょくちょく見て修正します。

それじゃあ次回に………ではでは

懐玉・玉折編にて天内理子を

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