仕事終わりに、某動画投稿サイトで懐かしいポケモン実況動画を見て、書きたくなりました。
ただポケモンに関する知識はかじる程度しかないので、初心者と同義です。
ゲームの設定と矛盾や相違がありますが、何となく、テキトーに読んでいただけたらと思います。
「なんで技を出さないんだよぉぉぉ!」
短パン小僧は困惑していた。
ポケモントレーナー同士のバトルとは、お互いのポケモンを出し合い、技を繰り出すことで相手の手持ちのポケモンを全て瀕死に追い込む勝負のことである。
しかし、今まさにバトルしている相手は一度たりとも技を出さない。何より、ポケモンへの攻撃指示すら出さないのだ。ただポケモンを出して交代、ポケモンを出して交代を繰り返していた。
「交代し続けても、交代したタイミングで僕のポケモンからの攻撃を受けるのなら、いずれ僕の勝ちだ!」
今までに見たことのない戦法に困惑しつつも、短パン小僧は勝利を確信していた。と言うのも、相手がダメージを受けたポケモンを交代したところで、手持ちのポケモンは最大6体までしかバトルに参加させることはできない暗黙のルールがある。つまり、交代し続けてもダメージは蓄積されてゆく。ポケモンバトルにおいて、交代は戦術の一つだ。タイプ相性を逆転させたり、状態異常を避けたり、場の有利を取るために使われる。しかし、どれだけ巧みに交代を繰り返しても、手持ちの6体という制限がある以上、ダメージの蓄積からは逃れられない。
「そろそろやね」
この辺りの方言ではないイントネーション。相手が微かな声でそう言ったのを、短パン小僧は確かに聞いた。短パン小僧は相手のポケモンに警戒する。しかし相手が行ったのはこれまで何度も見た交代の動作だった。
「また交代か! 攻撃しないと何も変わらないぞ!」
短パン小僧が発した言葉と同時に、相手が出したのはスボミーという、この辺り202番道路の草むらでよく目にするありふれたポケモンだった。スボミーの体はその風景に溶け込むように、淡い緑黄色の色合いで輝いていた。小さな足でしっかりと地面を踏みしめ、瞳には迷いのない光が宿っている。これからのバトルが変わる——そんな印象を与えるポケモンだった。
スボミーがフィールドに立った瞬間、短パン小僧のポケモン——ムックルが短パン小僧からの指示に従い、攻撃のため前に出た。だが、短パン小僧はすぐに違和感を覚えた。これまで交代していたポケモン達と同様、スボミーはただじっと立っているにもかかわらず。
ムックルの体当たりが、スボミーの小さな体を弾いた。軽い衝撃音とともに、スボミーは地面に転がり、葉っぱが舞う。
「よし、決まった!」
短パン小僧は拳を握る。出てきたばかりのスボミーの隙を突いたムックルの素早い攻撃は、確実にダメージを与えた。更に短パン小僧はムックルに体当たりの指示を出し、ムックルの攻撃は、追い打ちをかける様にダメージを与えた。短パン小僧は相手の動きに注視した。初めて、相手がポケモンの交代以外の行動を取ろうとしていたのである。
「来る…!」
短パン小僧は息を呑み、ムックルに向かって声を張った。ムックルは身を低くし、羽を広げ、いつでも飛び立てる準備をしていた。だが次の瞬間、相手トレーナーが懐から取り出したのは——麻痺直しだった。 スボミーの体に優しく薬を塗ると、彼は満足げに頷いた。
短パン小僧は思わず叫んだ。
「いや、攻撃しやんのかい!」
その声は、202番道路の静かな草むらに響き渡り、近くでバトルを見ていたコロボーシが驚いて跳ねた。
シンオウ地方——古代より「時」と「空間」が交わる場所とされ、神話の中ではアルセウスがこの世界を創造したと語られている。テンガン山はその中心にそびえ、山の奥深くには時を司るディアルガ、空間を操るパルキアが眠ると信じられている。そんな数多くの伝説が語られるこの地には、幾つかの湖がある。その一つが心情湖である。
心情湖は、シンオウ地方の北西に位置する静かな湖である。まるで古代の神話を語るかのようだった。その湖のほとりから見ていた男は思った。彼は様々なポケモンと共に各地を回っていた。道中に話す人々から聞かされた「湖の精霊」の話が、ずっと心に残っていたのだ。
「この湖には、心を映すポケモンが眠っている——」
その湖畔に立ったのは、実際にその湖を見てみたかったこと、そしてナナカマド博士と進化についてお話しする機会があればいいなという期待からだった。そのため、私の片手にはナナカマド博士が好きだと噂のいかりまんじゅうを念の為、用意してきた。その香りは、まるで秋の陽だまりのように甘く、穏やかになるものだった。
ふと気づけば、一羽のムックルが音もなく近づいていた。小さな羽を揺らしながら、好奇心に満ちた瞳でこちらを見上げている。私は微笑みながら、そっとその柔らかな頭に手を添えた。羽毛の感触はふわりと軽く、まるで綿菓子のようだった。
「これは君にあげられないんさ、ごめんね」
手元にある「いかりまんじゅう」を、そっと遠ざけるようにしながら、私は優しく語りかける。ムックルは一瞬じっと見つめたあと、諦める様子もなく、つんつんと私の腕を小突いてきた。その動きはどこか遠慮がちで、痛みはなく、ただくすぐったい。
きっと、わざと優しくしてくれているのだろう。その思いやりに、胸の奥がふわりと温かくなる。静かなひととき、私はムックルと共に、ほんの少しだけ、優しい世界を共に過ごした。
「おい、そこのカバンにあるポケモンを使うんだ!」
突然、草むらの奥から響いたその声は、鋭く、切迫していた。 私は反射的に声の方へ顔を向ける。金髪の少年が、草をかき分けながらこちらへ駆け寄ってくる。 その瞳は焦りに満ち、額には汗が滲んでいた。彼の目線の先には、大きな影が空からこちらへ鋭い勢いで、向かっていた。彼の足を速め、声を荒げさせているのだ。
少年が放ったカバンは、乾いた音を立てて私の足元に転がった。緊迫感に釣られ急いで手に取り、ジッパーを開けると、中には一つだけモンスターボールが収められていた。赤と白の球体が、まるで私の選択を待っているかのように静かに輝いていた。
そのボールに指をかけた瞬間、突如、空が鳴った。鋭い風を切る音とともに、巨大な影が頭上を覆う。ムクバードだ。鋭い眼光をこちらに向け、翼を広げて急降下してくる。傍らにいたムックルが鳴き続けるが、ムクバードの動きには迷いがない。狩り慣れた猛禽ポケモンのそれだった。
ポケモンバトルが始まる。
ムクバード——ムックルから進化に至るには、数多のバトル経験が必要とされる。つまり、今目の前にいるこの野生の個体は、冒険をはじめたばかりのトレーナーでは太刀打ちできないほどの実力を持っている可能性が高い。私は息を呑み、モンスターボールを強く握りしめた。このポケモンに、すべてを託すしかない。
...て、くれるだろうか。そんな祈りにも似た思いを込めて、私はモンスターボールを握りしめた。 指先に伝わる冷たい感触が、心のざわめきを少しだけ静めてくれる。
「ゆけ…!」
放たれたボールは空を切り、地面に着地する寸前で眩い光を放った。 その光の中から現れたのは、小さな青いポケモン。ポッチャマ。その姿は、まるでぬいぐるみが命を吹き込まれたかのように、存在がふわふわとしていた。丸みを帯びた頭で、誇らしげにこちらを見上げている。短い足で一生懸命に歩くたび、ぷにぷにとしたお腹が揺れて、見ているだけで頬が緩んでしまいそうになる。
ポッチャマはこちらを一目見て、ぱちりと瞬きをした。
「ポチャ…」
ポッチャマの小さな声が漏れる。 何気ない仕草のようでいて、その視線は妙に長く、妙に低く、こちらの足元からゆっくりと這い上がるように動いていた。 まるで何かを探るように、何かを期待するように。
くちばしの動きが、どこか落ち着きなく、妙に艶めいて見えたのは気のせいだろうか。
ポッチャマは小さな胸を張り、くちばしをわずかに上げて、相手に真正面から向かい合う。まるで“できるオトコ”を演じているかのような、妙に気取った仕草。 しかし、羽毛の奥でそわそわと動く足元が、彼の内心を物語っていた。
その姿を見た瞬間、私は悟った。このポッチャマは、ムッツリだ。本当に大丈夫なのだろうか。そんな不安が、心の隅に静かに芽吹いた。
視線は真っ直ぐ…のようでいて、時折ちらりと私の胸元や腰回りに泳ぐ。 そのたびに、ポッチャマは自分のくちばしを軽く咳払いで誤魔化す。その瞳の奥には、抑えきれない好奇心と、ほんのり滲む欲望がちらついていた。カッコつけたポーズのまま、ポッチャマはじっと相手を見つめる。 その姿は、滑稽そのものだった。
目の前に立ちはだかるのはムクバード。 鋭いくちばし、広げた翼、そして何よりもその眼差しが、バトルの経験を物語っている。 空を裂くような鳴き声が響き渡り、ポッチャマの小さな体が一瞬だけ震えた。
「耐えてね」
私の声は、風にかき消された。 それでもポッチャマは一歩前へと踏み出す。その動きはぎこちなく、まるで初めて水に飛び込むような勇気の一歩。 ムクバードが羽ばたき、空気が震える。
朝露に濡れた草原は、まだ眠りの余韻を残していた。だがその静寂を切り裂くように、空を舞うムクバードが鋭く鳴いた。風を裂く翼音とともに、彼は容赦なく突進してくる。野生の本能が、何かを守ろうとする怒りに変わっていた。
ムクバードの姿が、先ほど短い時間を共に過ごしたムックルと重なって見えた気がした。あのとき、ムックルは無垢な瞳でこちらを見つめていた。もしかすると、攻撃しているムクバードは共に時間を過ごしたムックルの友であり、私が仲間を傷つけていると誤解しているのではないか。そんな思いが、心に根を張り攻撃の指示をポッチャマに与えられなかった。
ポッチャマは、小さな体を震わせながらも、私の前に立ち続けた。その瞳には、恐怖だけではない。何かを得ようとする、確かな意志が宿っていた。ムクバードの攻撃が彼の体を打つたび、私はそっとキズぐすりを取り出し、傷口に優しく吹きかける。ポッチャマは一瞬だけ身をすくめたが、すぐに目を細め、どこか恍惚とした表情を浮かべた。 それは、癒しの感触に安堵したというより、痛みから解放される瞬間を惜しむような、奇妙な表情。マゾ気質なのだろうか。そうであれば話は早い。最後のキズ薬を使い切ったときでも、私は攻撃の指示を出さなかった。ポッチャマは、私の沈黙を理解したように、静かにうなずいた。痛みを超えた先にある奇妙な満足をポッチャマが得ようとしていることがはっきりとわかってしまった。
ポッチャマはもう耐えられそうにないはずにも関わらず、黙って立ち続けていた。二撃、三撃……。そのたびに、空気が震え、草がざわめいた。耐える。耐える。耐える。
やがて、ムクバードの動きが止まった。
傍らで鳴き続けていたムックルの声が、ようやくムクバードの耳に届いたのだろう。彼の瞳が揺れ、そして理解の色を帯びていく。ムクバードは静かに頭を下げた。ムックルもそれに倣い頭を下げた。そして、風に乗って去っていった。ムックルは何か言いたげにこちらを振り返った。小さな瞳に、別れの言葉が宿っていた。だが、ムクバードの一声に従い、名残惜しそうに草原の向こうへと飛び去っていった。
私はそっと膝をつき、ポッチャマの頭を撫でた。風が彼らの羽音をさらい、再び静寂が訪れた。残されたのは、傷ついたポッチャマと、私の胸に残る温かな絆の余韻だった。もちろん奇妙な絆ではあるが。私はそっとポッチャマを抱き上げた。彼の体は傷だらけだったが、瞳にはまだ期待の光が宿っていた。
「ポッチャマ、君は変態だね」
その言葉に、彼は小さく鳴いて応えた。声はかすれていたが、誇らしげだった。 まるでそう言われるのを待ち望んでいたかのように。だがその直後、彼の視線がふと私の胸元に落ちたのを、私は見逃さなかった。ポッチャマはすぐにくちばしを咳払いのように鳴らし、視線を逸らす。 まるで何事もなかったかのように、澄ました顔で空を見上げる。ムッツリ親父か。
そのとき、背後から陽気な声が響いた。
「ふわー! お前のポッチャマすごかったな!」
振り返ると、草むらから顔を出した少年が、目を輝かせてこちらを見ていた。彼の言葉に、ポッチャマは胸を張り、得意げに鳴いた。まるで「当然!」とでも言いたげに。
「だけどオレのナエトルのほうがもっともっと強かったけどな!」
金髪の少年もなぜか誇らしげに胸を張った。その瞳には、妙な対抗心が燃えている。だが、次の瞬間、彼はふと不安げに眉をひそめた。
「…ってオレもお前も他人のポケモン使っちゃったけど大丈夫だよな……?」
え? このポッチャマ、君のじゃないのか? しかも、さっき自慢していたナエトルも、どうやら他人のものらしい。勝手に使うなんて、ロケット団顔負けの所業ではないか。これはもう、私のトレーナー人生も終了のお知らせである。
そんな空気を切り裂くように、赤い帽子の青年が、砂利を蹴り上げる勢いで駆け寄ってきた。息を切らしながら、彼は地面に転がっていたカバンを抱き上げると、安堵の声を漏らした。
「よかった……! カバンあった……! 博士に怒られるところだった……!」
だが、その目がポッチャマとナエトルに向けられた瞬間、彼の顔色はみるみる青ざめていった。
「えっ! えっ? もしかしてきみたちポケモン使った!? うわ……博士にどう説明しよう……」
青年はカバンを抱え直すと、ポケモンたちを一瞥し、ため息混じりに言った。
「……このカバンは博士のだから持っていくからね」
そう言い残し、彼は足早にその場を去っていった。どうやら、彼が“博士”と呼んだ人物――ナナカマド博士――のポケモンだったらしい。博士がこの辺りに来ているという話は聞いていた。
金髪の少年は、ナエトルとの別れを惜しむように、名残惜しげな視線を送っていた。ポケモンとの時間を邪魔はしたくなかったので、私はシンジ湖を後にし、201番道路へと向かった。
道中、見覚えのある人物が視界に入った。赤い帽子の青年と、豊かな口髭を蓄えた老年の男性――その姿は、ポケモンの進化に関する書籍で見た写真そのものだった。その男性には見覚えがあった、と言うのもポケモンの進化に関する書籍に写真があったからである。ナナカマド博士である。
目が合った瞬間、私は軽く会釈し、ポケモンを使ってしまったことへの謝罪と、返却の意志を伝えようと口を開いた。だが、ナナカマド博士の低く響く声がそれを遮った
「コウキから聞いたがポケモンを使ったそうだな? 見せたまえ」
私は素直に、モンスターボールからポッチャマを呼び出した。博士はその姿をじっと見つめ、眉間に皺を寄せながら深く考え込むような仕草を見せた。そして、突然踵を返す。
「コウキ!! 研究所に戻るぞ!」
赤い帽子の青年――コウキと呼ばれた彼は、大きく返事をした。だがすぐには博士の後を追わず、私に向き直ると、少し戸惑いながら助言をくれた。
「あとで研究所に来たほうがいいかも。……じゃ、じゃあまた!」
そう言って、彼は元気よく博士の背中を追いかけていった。
「なんだ今の……。怒るなら怒ればいいのに……。それにポケモン返さなくて良かったのか?……」
いつの間にか背後に立っていた金髪の青年が、安堵と戸惑いの入り混じった表情でこちらを見ていた。怒られなかったことに胸を撫で下ろしながらも、どこか釈然としない様子がその瞳に浮かんでいる。
ナナカマド博士――彼は、書物の中では厳格な研究者として描かれていた。豊かな口髭に鋭い眼差し、威厳に満ちた立ち姿。だが、噂によればその外見とは裏腹に、甘いものを好み、子供にはとびきり優しいとう。そのギャップが、博士をただの学者ではなく、どこか人間味のある存在として語られていた。
だからこそ、金髪の少年に対して博士が怒ることはないだろう。私はと言えば、童顔なだけで、すでに成人してしまっている。年齢を告げれば驚かれることも多いが、博士の目にはどう映ったのだろうか。子供として見られたのか、それとも――。
ポッチャマが足元で小さく鳴いた。その声に、思考がふと途切れる。私は久しぶりのバトルの感覚に焦燥感と安心感を思い出していた。そっとモンスターボールを取り出し、ポッチャマをモンスターボールの中へ戻す。赤い光に包まれて消えたその姿を脳裏に焼き付けながら研究所のあるマサゴタウンへと向かう。
マサゴタウンへ向かう道は、午後の陽光に照らされて穏やかだった。金髪の少年――先ほどまで一緒にいた彼の姿は、もう見えない。どうやら先に行ってしまったようだ。すれ違う人々と交流しながら私も後を追いかけた。
町に入ると、視界の先に比較的大きな平屋が見えた。その前に立っていたのは、コウキだった。彼は私を見つけると、ぱっと顔を輝かせて手を振った。
「あっ! 待ってたよ! こっちに来て! 博士が待ってるんだ。ほら、ここがポケモン研究所! 中で――」
彼の説明が続く中、突然研究所の扉が勢いよく開いた。 そして、勢いそのままに飛び出してきた金髪の少年と、私は正面からぶつかった。
「なんだってんだよー! ……って、お前か!」
彼は驚いたように目を見開き、すぐに不満げな顔を見せた。
「あのじいさん……怖いっていうか、むちゃくちゃだぜ。まぁ、いいや……オレ、行くよ! じゃあな!」
言葉を矢継ぎ早に吐き出すと、彼は風のように駆けていった。 その背中は、どこか誇らしげで、どこか寂しげだった。その様子を見ていたコウキが、ぽつりと呟いた。
「君の友達、せっかちだね」
私は少し困ったように笑いながら、首を横に振った。
「……友達ってほどじゃないよ。さっき初めて会ったばかりで、名前も知らないんよね」
その言葉に、コウキは目を丸くした。
「えっ、そうなの!? あんなに話してたのに……」
驚く彼に、私は肩をすくめる。 コウキはしばらく考え込んだ後、思い出したように言った。
「あの子、ジュンっていうんだ。隣町に住んでる少年らしく、さっき博士からポケモンをもらって旅に出たところなんだよ。まあ、いいや。中に入ろうよ」
コウキに促され、私は静かに研究所の扉を押し開けた。 中に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。そこはまさに“研究施設”と呼ぶにふさわしい空間だった。片側の壁は、整然と並べられたポケモンに関する書籍で埋め尽くされている。背表紙の色とりどりが、知識の森のように広がっていた。その対向には見たこともないような大型の機器が並び、低く唸るような音を立てて稼働している。目移りするほどの情報と機械の海に、私はしばし足を止める。だが、部屋の奥に立つ人物の存在が、それを許さなかった。
ナナカマド博士が、静かにこちらを見つめていた。
「……やっと来たか」
低く、重みのある声が響く。
「オーキドが言っていたのは君のことだね。戦わないトレーナー。……それはそうと、もう一度ポケモンを見せたまえ」
私は頷き、モンスターボールを手に取る。赤い光が瞬き、ポッチャマが姿を現した。博士はその姿をじっと見つめ、しばらく沈黙した後、ふと口元を緩めた。
「このポケモン……なんだか嬉しそうにしておる」
その言葉に、ポッチャマが小さく鳴いた。だがその鳴き声の直後、彼はちらりと私の方へ視線を投げた。 一瞬だけ、くちばしの端がわずかに上がったように見えたのは気のせいだろうか。ポッチャマの無邪気なふりをしながら、視線は妙に低く、妙に長い。私にとっては微妙である。
「ウム、わかった! 君にプレゼントしよう。せっかくだ、ニックネームをつけるかね?」
「つけます」
私は少しだけ考えたあと、ふっと笑って言った。
「……そうだな。名前は、“エロっちゃま”にしよう」
ポッチャマはその名を聞いた瞬間、くちばしをピクリと震わせた。 一瞬、目を見開いたが、博士がいることを思い出したのか、すぐに何事もなかったかのように澄ました顔でうなずく。
「ポチャ……」
その声は、どこか諦めにも似た響きだった。 逃げない限り、彼はその名を受け入れる他ない。
「そのニックネームでいいのかね?」
博士はあからさまに眉をひそめたが、ニックネームについてはそれ以上、何も言わなかった。その沈黙は、呆れとも諦めともつかない空気を孕んでいたが、私は頷いた。
ポッチャマ。いや、“エロっちゃま”は、私の足元で誇らしげに胸を張っていた。 その瞳は、どこか艶めいていて、名を得たことで己の存在が肯定されたかのような満足を湛えていた。
ーーこのポッチャマ、Mか、終わっている。私はレポートに書いた。
読みずらいにも関わらず、最後まで読んでくださりありがとうございます。
初めて書いて思ったのですが、やはり小説家様の設定、文章力、構成は素晴らしいなと思いました。
原作という元ネタがあったとしても、話を考えるのにどうにも限界が。
話は変わりますが私は、ポケモンDPと剣盾の記憶が殆どで、その他はあまり知らないにわか中のにわかです。
最近のポケモンだと、ポケポケしかしていないです。しかもランクはハイパー2が限界です。しかも、なんとなく飽きてきてしまっているのも相まってやばいです。とりあえず、ホウオウ、ルギアのパックから後6種類のカードを出してコンプを目指します。