稚拙な文章です。
テキトーに読んでください。
ポッチャマとの戦闘で消耗した道具を補充するため、私はフレンドリーショップへと足を運んだ。
今いるマサゴタウンへ向かう途中、店員からキズ薬を十個ほど譲り受けてはいた。私のバトルスタイルは激しくないにも関わらず、道具の消費量は常人の比ではない。だからこそ、キズ薬はありったけ買い込んだ。ついでにモンスターボールも数個、念のために。
その後、202番道路へ向かう途中、コウキとすれ違った。彼はモンスターボールを手渡してくれたが、その顔は微妙だった。まるで汚物でも見るかのような、眉間にしわを寄せた表情。
そういえば、研究所で博士と話した時、一緒にいた彼はこう言っていた。
「やさしい、ひとで…よかっ…たよ……ああかんがえるのはやめよう」
その言葉が、ふと脳裏に蘇る。 やめてくれ。誤解だ。汚物は私ではない。
汚物は、エロっちゃまだ。私は正常だ。 少なくとも、マシなはず。
202番道路。 幾つも重なる草むらのざわめきが、風に揺れて耳に心地よい。 マサゴタウンを出発し、次の街に向かう。私はこの地で、シンオウ地方の仲間を増やさなければならない。無理やり博士にシンオウ図鑑というものも渡されてしまった。タブレット型のそれはポケモンにかざすと、過去のデータからそのポケモンの特徴を知ることができる優れもの。できる限りでは良いと言われているが、シンオウ地方を回り、まだ見ぬポケモンのデータを集めることになったのである。
「クルオオッ!」
矢先、草むらの奥からぬっと現れたのは黄色と黒の毛並みを持つ、小柄なポケモン。渡された図鑑をかざす。画面に表示された名は「コリンク」。見覚えのある配色とは少し違うが、間違いなくコリンクらしい。
私がエロっちゃま――ポッチャマを出すと野生のコリンクとのバトルが始まる。同時に、コリンクは低く唸り、威嚇の姿勢を取った。 エロっちゃまは、その瞬間、わずかに肩をすくめた。攻撃の威力が下がる。“威嚇“。それは、数ある特性のうちの一つ。
ポケモンには、それぞれ生まれつき備わった“特性”という能力がある。同じ種でも異なる特性を持つことがあり、バトル中はもちろん、時に日常の中でもその力を発揮する。私はこれまで、その特性を最大限利用することで、技を繰り出すことなく、幾度もバトルを乗り越えてきた。このシンオウ地方でも、その方針は変えないつもりだ。
仲間が少ない今、“威嚇“は貴重な戦力になる。これは好機と、何度もモンスターボールを投げるが、なかなかゲットできない。対面しているエロっちゃまにドン引きして、一緒にいたくないと言っているようだった。ここで逃してしまうのも癪だったので、最終手段を使うしかない。エロっちゃまの攻撃技でダメージを与えて弱らせる?そんなことはしない。私には攻撃の選択肢はない。ポケモンを力でねじ伏せることに、どうしても馴染めなかった。だからこそ、私には私なりの方法がある。
餌だ。それは、私が独自に調合した特製のもの。見た目は何の変哲もないが、一度口にすれば、誰もが抗えぬほどの幸福感に包まれる。舌の上でとろける甘味、鼻腔をくすぐる香り、そして体の奥から湧き上がる安堵と満足。それは、まるで生まれて初めて“安心”という感情に触れたかのような感覚になるのである。まあ、これは以前、人間の言葉を話すポケモンに試食させたときに得た感想でしかないのだが。
私はそれを、そっと草むらの先に投げた。 コリンクの瞳が一瞬だけ揺れる。 警戒と好奇心がせめぎ合い、やがてその小さな体が餌へと歩み寄る。
一口。そして、もう一口。
コリンクの表情が緩み、瞳がとろりと潤む。その瞬間、私は確信した。 この子は、もう私の仲間だ。力ではなく、食で結ぶ絆。 それが、私のやり方だった。
エロっちゃまが興奮した様子でコリンクを見ていることは無視して、私はモンスターボールをコリンクに向ける。モンスターボールが宙を描く。赤い光が瞬き、コリンクの体を包み込む。もちろんコリンクは争う様子もない。ボールは地面に落ちて、数回揺れた。
一度。 二度。 三度。カチリ。
音が鳴った瞬間、私は息を吐いた。コリンクは、私の仲間になった。
色違いのポケモンに出会うこと、ましてや仲間にすることは極めて稀である。その奇跡を噛みしめるように、改めて観察させてもらおうと、モンスターボールからコリンクを呼び出した。まだ餌の効能が抜けていないのか、コリンクの焦点は合っておらず、口元にはうっすらとした笑みが残っていた。 幸福の余韻に浸るその姿は、まるで夢の中にいるようだった。
観察して気づいたのだが、このコリンクは頭のたてがみ部分が私の知るコリンクより短い。加えて後ろ足の黒い部分が足首までで黄色い足先が見えていた。どうやらメスのようだ。
背後からエロっちゃまの荒い息遣いが聞こえる。すでに一歩、また一歩とコリンクに近づいていた。くちばしはわずかに開き、はあはあと熱気が漏れている。エロっちゃまの守備範囲だったようだ。だが、正気を取り戻しつつあるコリンクは、じりじりと後ずさっていた。
エロっちゃまは、それに気づいていない。 いや、気づいていて敢えてなのかもしれない。私は慌ててモンスターボールを取り出し、エロっちゃまを戻した。 赤い光が彼を包み込む直前、彼は名残惜しそうにコリンクを見つめていた。
遠くでムックルの鳴き声がかすかに響く。コリンクは小さくくしゃみを一つした。ふわりと私のそばに寄ってきたコリンクは、そっと私の手の匂いを嗅ぎ始める。瞳はどこかとろりとしていた。そして、これを待っていたと言わんばかりの勢いで、ためらいもなく私の指先をぺろりと舐めた。一度。もう一度。夢中になって、舌先で私の指をなぞるように。その仕草には、警戒心のかけらもなく、ただ純粋な安心と甘えが滲んで….。
あ、違うわ。これ手に残っていた餌の粉を舐め続けている。私の指には、とうに粉など付いておらず、既にコリンクの唾液でベタベタになっていた。この状況はヤバいやつだ。本日二度目ではあるが、私は慌ててモンスターボールを取り出し、コリンクを戻した。これまで依存作用など発現した事例はないのだが、一旦気にしないことにした。貴重な色違いのポケモンを変な依存体質にしまったとなれば、ポケモン保護を謳う団体に何を言われるか分からない。
「倫理的に問題がある」
「ポケモンの権利を無視している」
そんな言葉が、きっと雨のように降り注ぐだろう。言い訳させてもらえるであれば、このコリンクは私の手で幸福を知った。それは誰が何と言おうと、偽りではない事実である。しかし、甘いものを食べることに幸福を感じる。辛いものを食べることに幸福を感じる。ポフィンを食べることに幸福を感じる。サンドイッチを食べることに幸福を感じる。一体これらと何が違うというのだ。餌を食べることに幸福を感じる。何も問題ないはずだ。
それに、彼女には“威嚇“という特性がある。バトルの場で、何度も私を助けてくれるだろう。その力を、私は大切にする。依存だろうが、執着だろうが、絆だろうが。この旅の中で利用できるものは、利用する。だからこそ、私は胸を張って言える。
「大切にしますとも」
そう返事を想定しながらも、私はふと事情気味に笑った。このコリンクの詳細な状態を博士やコウキに見せれば、眉を潜められるのがオチだろう。
そのとき、視線を感じた。遠目からでも分かるほどギラギラした目つきで、短パンの少年がこちらを見ていた。草むらの向こうで、モンスターボールを握りしめている。先に進むにはどうしても彼の前を横切らなければならない。私はできるだけ視線を逸らし、草むらの陰を縫うように歩いた。 だが、運命は残酷だ。目が合ってしまった。あー、こっちに来る。これはもう、ポケモンバトルの開始である。目と目が合えば、なんとやら。この世界では、それが“合図”なのだ。こうなってしまえば、逃げることは許されない。どちらかのトレーナーの手持ちポケモンすべてが瀕死になるまで容赦なきバトルが始まってしまう。
「君もポケモントレーナー! 僕もポケモントレーナー! 目が合ったら、いざ勝負!」
短パン小僧のユウタと名乗る少年は案の定バトルを仕掛けてきた。
トレーナーとのポケモンバトルは久しぶりだ。
私は静かに息を整えながら、頭の中で戦略と順序を整理する。自分で言うのもなんだが、私のバトルスタイルは少し変わっている。私はポケモンに技の指示を出さない。代わりに、ポケモンの特性を利用してバトルする。戦略は幾つかある。だが、有効な特性を持つポケモンが手持ちには少ない。
そのため、私は悪あがき自滅作戦を行うつもりだ。
この作戦の根幹は、私の仮定に基づいている。
ポケモンは、休息や回復をしなければ、技を使える回数に限界がある。そして、同じ技を使い続ければ、ある時点でその技に抵抗を示し、やがて使えなくなる。もっと言えば、技の使用ができない状態に近い。
技ごとに決まっている使用回数を私はPP(パワーポイント)と呼んでいる。使用できる技全ての回数を限界まで使う、つまり全ての技のPPを0にすると、そのポケモンは悪あがきという技を決まって行う。この技は、ノーマルタイプの技で相手に直接攻撃する物理技と呼ばれる分類をしている。そして、この悪あがきという技の最大の特徴は自傷である。使用するたびに、自らもダメージを負う。回復を行わず4回使用すれば瀕死になるのである。
私はその自傷ダメージを利用して、相手のポケモンを自滅させる。目には見えない。PPという数値を考慮し、相手のポケモンのPPが0になるまで耐え、自傷ダメージによる自滅を誘う。それが今回行う悪あがき自滅作戦だ。
今の私の手持ちはポッチャマとコリンク。まずはコリンクの特性である“威嚇“をバトル開始と同時に使いたい。それが、今回の戦略の第一手だ。
短パン小僧のユウタはムックルを繰り出した!
赤い光が弾け、空気を切るように現れたのは――ムックル。
「コリンク行くよ!」
私はコリンクをモンスターボールから出し、バトルの準備を促そうとした。赤い光が瞬き、コリンクが姿を現す。その瞬間、彼女は一直線に私の元へ駆け寄り、何のためらいもなく、私の手を舐め始めた。一心不乱に。
「ちょ、コリンク……その顔やめて! キマってるみたいになってるから!」
瞳はとろりと潤み、口元は緩みきっている。幸福の余韻がまだ抜けていないのか、まるで“餌の幻覚”でも見ているような表情だった。私はベタベタになった手をハンカチで拭きながら、コリンクを無理やり引き離し、バトルの場へと押し出す。
彼女は一瞬だけ振り返り、名残惜しそうに私の手を見つめた。その視線に、妙な罪悪感を覚えながらも、私は目を逸らす。
コリンクの瞳が鋭くなり、相手のポケモンがわずかに怯んだ。ようやく、バトルが始まった。コリンクの瞳が細まり、低く唸るような声を漏らす。その瞬間、彼女の特性――“威嚇”が発動した。ムックルの動きが一瞬止まり、羽ばたきがわずかに鈍る。その瞳には、確かに恐れが宿っていた。攻撃の威力が下がる。それは、戦いの流れを左右する小さな一手。だが、私にとっては確かな手応えだった。
私の手持ちは、コリンクとエロっちゃま――ポッチャマ。この二匹を交互に入れ替え、コリンクの特性“威嚇”を最大限に活用する。交代のたび、“威嚇“は発動する。それを5回繰り返し、初回の出撃を含めて合計6回。ムックルの攻撃力は、もはや羽ばたく風のように軽くなる。もちろん、交代の隙は生まれる。その瞬間、ムックルは容赦なく攻撃を仕掛けてくる。相手の技を受ける中で推測されるムックルの技はおそらく3つ――体当たり(PP35)、鳴き声(PP40)、電光石火(PP40)。
“威嚇“の効果は確かに現れていた。ムックルの攻撃は、もはや一撃でこちらを瀕死に追い込むほどの威力はない。私は要所要所でキズ薬を使い、ポケモンたちの体力を回復させる。
目的はただ一つ。
ムックルの技の使用回数――PPをすべて使い切らせること。
その合計は115回。それを耐え抜けば、ムックルは自ら悪あがきを使い始める。そして、自傷ダメージによって、静かに、確実に――自滅する。
ムックルの攻撃は続く。体当たり、鳴き声、電光石火。繰り返される技の応酬は、まるで壊れたオルゴールのように単調で、そして容赦がない。コリンクとエロっちゃまを交互に出し入れしながら、私は淡々とPPを削っていく。キズ薬を使い、交代の隙を埋め、ただ耐える。そして――ユウタが、変わり始めた。最初は元気だった。
「ムックル!電光石火だ!」「よし、いいぞ!その調子!」
だが、30回目を超えたあたりから、彼の声に張りがなくなってきた。
50回目には、ムックルの名前を呼ぶのが「ム…」で止まり、70回目には、ただ腕を上げるだけになった。
90回目。 ユウタは地面に座り込んでいた。目は虚ろで、口は半開き。虚無だった。ムックルも、どこか疲れていた。羽ばたきは鈍く、鳴き声もかすれている。それでも、律儀に技を繰り返す。
そして、ついに――115回目。115回目の攻撃が終わった瞬間、次の攻撃にはムックルはふらりと宙に浮き、何かを悟ったような顔で、静かに悪あがきを繰り出した。
一撃目――自傷。
二撃目――自傷。
三撃目――自傷。
そして、四撃目。ムックルは自らの攻撃で瀕死となり、バトルは終わった。
勝者は、私。だが、ユウタの顔は清々しいほどに晴れやかだった。まるで夏休みの宿題をすべて終えた小学生のように、あるいは、期末テストが終わった瞬間の高校生のように、いや、もはや断食明けの焼肉屋に入店した修行僧のように、彼の顔には、解放感が満ちていた。
「……終わった……」
その声は、敗北のものではなかった。それは、115回の技コールを乗り越えた者だけが得られる悟りの声だった。
「……ポケモンって、こんなに長いんだね」
ユウタは言った。その声には敗北の悔しさも、勝利への執念もなかった。あるのはただ、長編映画をノーカットで観終えたような、静かな達成感。
私はそっとキズ薬をしまい、コリンクの頭を撫でる。彼女はまた、私の手を舐めようとしていた。この依存ぶりは、愛嬌の域を超えている。
バトルは終わった。
ムックルは瀕死。
ユウタは開眼。
悟りの境地に達したその姿は、まるでポケモン道を極めし者のよう。草むらに座り込み、風に吹かれながら、彼は静かに目を閉じていた。その短パンは、もはや修行着。そのモンスターボールは、もはや数珠。
私は先へ歩き出す。背後に残された少年は、もはやただの短パン小僧ではなかった。
ーー短パンの僧であった。私はレポートに書いた。
2話も最後まで読んでくださりありが乙ございます!
1話目の勢いはどこへやら、もう字数の減少が甚だしく、恥ずかしい限りです。
近々、私の誕生日です。きっと、色々な方々から祝いの言葉とプレゼントをもらえるのでしょう。
別世界のビジュの良い私であれば。ちょっと、楽しい気分になれる動画見てきます。
甘いお菓子も準備して、今日という日を楽しく締めます。