不戦勝のポケモントレーナー   作:ぼくの友達

3 / 6
3話目まで開いてくださり嬉しい限りです。

うーん。内容問題ないか心配ではありますが。
ダメだった時はその時で考えます。
相変わらず、稚拙な文章です。
テキトーに読んでください。


3)よるだった。

「トレーナーさんみっけ! ポケモン勝負お願いしまーす!」

 

 ミニスカートのルミが勝負を仕掛けてきた!

 眩しいほどの笑顔。 まるで太陽の欠片でも抱えているかのような元気さで、私に勝負を仕掛けてきた。恒例の目と目が合えばなんとやら、である。ポケモントレーナー同士における視線の交差はポケモンバトルの宣戦布告に等しい。

 にしても、元気そうな女の子だ。その声の張り、足取りの軽さ、モンスターボールを握る手の迷いのなさ。これが若さというものだろうか。その元気がバトルの最後まで続くかどうか。それを見届けるのも、また一興である。

 

 まずはコリンクの特性である“威嚇“をバトル開始と同時に使いたい。私の手持ちは、コリンクとエロっちゃま――ポッチャマ。この二匹を交互に入れ替え、コリンクの特性“威嚇”を最大限に活用する。交代のたび、“威嚇“は発動する。それを5回繰り返し、初回の出撃を含めて合計6回。相手に“威嚇“することで、最大限相手の攻撃を下げるつもりだ。

 

 ルミの手持ちも私と同じく、2体のポケモンを使うようだ。彼女はやる気に満ちた笑顔で、モンスターボールを高く掲げる。赤い光が弾け、地面にぽてんと着地し、飛び出してきたのは、どこか間の抜けた顔のビッパ。だが、ルミの気合いに引っ張られるように、ビッパも気合い十分に鳴いた。

 私はコリンクを選び、モンスターボールを軽く投げる。赤い光が瞬き、黄色と黒のコリンクが姿を現す。その瞬間、コリンクは一直線に私の元へ駆け寄り、私の手をくんくんと匂い始めた。ジト目でこちらを見つめ、バトルの準備を一向にしない。何かを待っている。その姿は、まるでコリンクのぬいぐるみが命を得て動き出したかのようだった。

 無言の圧。

 無言の餌の要求。

 私は渋々、バッグから私が独自に調合した特製の餌を取り出す。その瞬間、コリンクのテンションは急上昇。ぴょんぴょんと跳ねながら、私の周りを回り始めた。その跳ね方は、もはやミミロップのそれ。ルミはその様子を見て、首をかしげていた。

 

「……あの、バトル……始まってます?」

 

 私はハンカチでコリンクの涎だらけになった手を拭きながら、静かに答える。

 

「ええ、始まってはいるんだと思うけれど、たぶん、うちのコリンクなりに」

 

 餌を与えて、いざバトル開始と思ったが。コリンクの表情が、ふにゃりと緩んだ。瞳がとろりと潤み、口元はうっすらと笑みを浮かべている。これはもう、完全に“キマって”いる顔だ。餌を与えてしまったからだね。彼女の中で、バトルよりも報酬が優先されてしまったのだ。

 通常であれば、こうした状態は技の命中率や行動の安定性に影響を及ぼす。 集中力の欠如、反応の遅れ、技の不発――どれもバトルでは致命的な要素だ。

 だが、私の戦法においては違う。攻撃を耐えてくれさえすればいい。技が当たらなくても、出せなくても、問題にはならない。目的は、相手の技を使い切らせること。それだけだ。コリンクの特性“威嚇がルミのビッパに効果を与えたことを確認した私は静かにモンスターボールを取り出し、コリンクを戻す。彼女は名残惜しそうに、最後まで私の手を見つめていた。

 

「エロっちゃま、交代だ」

 

 ポッチャマがくちばしを鳴らしながら、前に出る。その足取りは、どこか誇らしげで、どこか演技がかっていた。そして、対戦相手を見た瞬間。エロっちゃまの瞳が、ハート型になった。いや、実際にはなっていない。だが、そう見えるほどに、彼はカッコつけ始めた。

 ルミの口角は引き攣っていた。その理由は明白だった。エロっちゃまの視線が、ルミのタイツに釘付けなのである。

 ビッパが鳴き声を放つ。エロっちゃまの攻撃が下がる。だが、彼は動かない。タイツに釘付けなのである。

 ビッパが体当たりをする。エロっちゃまは吹き飛ばされる――はずなのに、動かない。タイツに釘付けなのである。

 再び体当たり。それでも、彼の瞳は飛び出しそうなくらいに開かれたまま、タイツに吸い寄せられていた。常にタイツに釘付けなのである。エロっちゃまの目は飛び出しそうなくらいに開かれていた。

 

 私は頭を抱えたが、予定通り今回も悪あがき自滅作戦を遂行する。

 ルミのビッパが使う技は、体当たり(PP35)と鳴き声(PP40)の合計75回。それを耐え抜けば、ビッパは自ら悪あがきを使い始める。

 エロっちゃまは、タイツを見つめながらも、なぜか耐え続けた。もはや執念か、愛か、あるいは単なるバグか。途中、コリンクと何度か交代し、回復を繰り返した。やっとの思いでビッパに悪あがきを使わせ、自傷ダメージが蓄積。4回目でビッパは瀕死になった。

 その頃には、ルミの目は完全に虚空を見つめていた。ビッパの体当たりが何度目かもはや分からない。 鳴き声も、もはや環境音のように耳に馴染んでいる。エロっちゃまの視線にも、彼女は何も感じていない様子だった。それは、感情の遮断ではなく、魂の一時退避。

 だが、ポケモンバトルは続く。続けなければならない。ルミの2体目のポケモンも、まさかのビッパ。使う技も同じ体当たり(PP35)、鳴き声(PP40)。つまり、さらに75回。耐え続ける。

 

 何度も攻撃を受けるたび、何度もポケモンを回復した。夜は更け、空には星が滲み始めていた。どこからか、ポケモンの鳴き声が聞こえる。それは、まるでこの異常な持久戦に対する自然界からの嘆きのようだった。

 

 疲労で座り込み、虚空を見つめ続けるミニスカートの女の子が一人。その隣には、彼女を下卑た視線で見つめ続けるポッチャマ――エロっちゃまの姿があった。彼は一切の攻撃を受け止めながら、一切の視線を逸らすことなく、ただひたすらに、ルミのタイツを見つめていた。その集中力は、もはや戦術ではなく執念。その執念が、75回の攻撃を耐え抜いた。そして、ついに――ビッパは悪あがきを使い始めた。

 悪あがきを4回使用し、4回目の自傷ダメージで、2体目のビッパも瀕死。

 バトルは終わった。

 

 勝敗の余韻はすでに遠く、夜の静けさが辺りを包み込んでいた。

 コリンクの“威嚇“で攻撃を下げたとはいえ、コリンクとエロっちゃまで合計70回体当たりを受けている。キズ薬で応急処置は施したが、蓄積されたダメージは確実に残っている。私は、長いバトルを共に乗り越えたポケモン達に労いの言葉をかけた。

 

「……君らがいてくれて、嬉しいよ。ありがとう」

 

 バッグからきのみを取り出し、そっと差し出す。エロっちゃまは、私の手からきのみを受け取ると、ルミと私の姿を交互に見ながら、もぐもぐと食べ始めた。その表情は、まるで温泉に浸かった後のように、とろけていて幸せそうだった。何よりだ。ただし、視線はとても気になるが。ルミが少し身じろぎすると、エロっちゃまの瞳がそちらにぴくりと動く。きのみを口に運びながらも、視線は完全にルミのタイツにロックオン。その集中力は、もはやバトル中の相手への警戒よりも高い。いい加減にしなさい。

 私はそっとモンスターボールを取り出した。

 

「……そろそろ、戻ってもらおうか。」

 

 エロっちゃまは、名残惜しそうにルミを見つめながら、赤い光に包まれて消えていった。きっと脳裏には、タイツの記憶が焼きついているのだろう。

 一方、コリンクはきのみを渡しても、じっと見つめるだけ。食べる気配はない。その瞳は、明らかにこう言っていた。

 

「……他の、あるでしょ?」

 

 私はため息をつきながら、バッグの奥から特製の餌を取り出す。私が独自に調合した特製の餌。それを差し出すと、コリンクは一転して夢中になって食べ始めた。もちろん、私の指についた餌の粉まで、丁寧に舐め取る。その執着ぶりは、もはや愛情というより依存である。私の存在が餌の供給源であることを確信しているかのように、彼女は一心不乱に舐め続ける。そして、足りないと判断したのか、コリンクは自分の体を私の足に擦り付けながら、「もっともっと」と言わんばかりにアピールを始めた。尻尾で私の足をくすぐるように絡めてくる。私はため息をつきながら、バッグの中を探る。

 

「……さっきあげたばかりなんだけどな」

 

 コリンクは、私の言葉など聞いていない。瞳はキラキラと輝き、耳はぴくぴくと動き、全身で次の一口を待っている。その姿は、どこか愛らしく、どこか恐ろしい。依存とは、こうして育つのだろう。

 私は、そっと特製の餌をもう一粒だけ差し出す。コリンクは歓喜の声をあげながら、それを頬張った。そして、再び私の指先を舐める。その舌には、感謝と甘えと、少しの独占欲が混ざっていた。

 

 ルミは、そんな様子を見ながら、私にいくつも質問を投げかけてきた。独特なバトルスタイルに興味を持ったのだろう。

 

「どうしてあんな戦い方を? どうして交代ばかり? どうして攻撃しないの?」

 

 長時間のバトルで疲れているはずなのに、私の答えを聞くたびに彼女はよく笑っていた。その笑顔は、夜の闇を少しだけ明るくするような、柔らかな光を帯びていた。

 元気なことは、いいことだ。

 私は空を見上げた。星が、静かに瞬いていた。

 ーー妙に明るい夜だった。私はレポートに書いた。

 

 

 バトルは終わった。

 勝者は、タイツに釘付けだったポッチャマを抱える彼。 敗者は、虚空を見つめ続けたまま、何も言えずに立ち上がった私。

 2体のビッパが自傷によって瀕死になったという事実よりも、75回×2の攻撃を耐え抜くという、常識を超えた戦術に、彼女の思考は追いついていなかった。

 

「……かなわない……」

 

 ぽつりと漏れたその言葉は、敗北の悔しさではなく、何か新しい世界を見てしまった者の驚きに満ちていた。

 彼は淡々とキズ薬をしまい、ポッチャマをモンスターボールに戻す。その姿は、まるで攻撃せず耐えることを当然とする聖人そのものだった。戦場に立ちながら、剣を抜かずに勝利する者。

 ルミは、そっと主人公の横顔を見つめて尋ねる。

 

「ねえ……あの戦い方、どうやって思いついたの?」

 

 声は、どこか甘く、どこか興味深げだった。それは、ただの質問ではない。 その奥には、理解したいという気持ちと、少しだけ近づきたいという願いがあった。

 

「相手のポケモンをなるべく傷つけたくなくて。臆病なだけだよ」

 

 その返答に、ルミは小さく笑った。相手のポケモンは傷つけたくないといいながら、自分のポケモンが傷つくことは許容する違和感を抱きつつ。

 その笑顔は、さっきまでの虚無とは違う、 ほんのりとした好意の色を帯びていた。

 

「……なんか、かっこいいね」

 

 その言葉が空気を震わせた瞬間――コリンクの耳がぴくりと動いた。コリンクは、ゆっくりと顔を上げた。瞳は潤み、耳は伏せ、尻尾は小刻みに揺れている。そして、じっと私を見つめる。いや、見つめているのではない。問い詰めているのだ。「……誰のこと、かっこいいって言ったの?」そんな声が聞こえた気がした。もちろん、実際には鳴いていない。だが、視線が語っていた。コリンクは、彼の足に体を擦りつけながら、ぐいぐいと頭を押しつけている。その動きは、甘えではない。自慢である。「ねえ、彼は私のことが好きだから、こうやって甘やかしてくれるんだよ?」そんな圧が、無言のまま伝わってくる。コリンクは、じっと私を睥睨していた。その瞳は、まるで“威嚇”。「彼は渡さない」というメッセージを宿していた。

 

 そんな空気の中、夜風が静かに吹き抜ける。ルミはコリンクの視線にあえて気づかなかったふりをした。そっと視線を外し、彼に向き直る。ルミはふと彼の服装に目を留めた。目が合った時から、気になっていた。フリルのついた袖、淡い色合いのスカート、リボンのついた帽子。それは、どこから見ても女の子のような服装だった。

 

「男の人だよね? ねえ……なんでそんな服着てるの?」

 

 その問いは、好奇心からくるものだった。バトルの余韻が残る空気の中で、ぽつりと落ちた言葉。

 彼は少しだけ目を細めて、夜空を見上げた。私も同じように空を見上げる。星が瞬いていた。

 

「ひらひらした服装はね、なぜかポケモンの警戒心を薄めて、好かれやすい気がするんだ。」

 

 その言葉は、冗談のようでいて、どこか本気だった。語り口は穏やかで、まるで長年の観察から導き出された結論のようだった。

 ルミは一瞬、ぽかんとした顔をしてから、ふっと笑った。

 

「……それ、ほんとに意味あるの?」

 

 彼は肩をすくめる。

 

「コリンクは毎回手を舐めてくるし、エロっちゃまはスカートに夢中だし。たぶん、効果ある、はず」

 

 彼の挙動不審な手の動きと返答にルミは声を上げて笑った。 その笑いは、バトルの疲れを吹き飛ばすような、澄んだ音だった。

 

「……なんか、嘘っぽいけど……いいね。そういうの」

 

 風が吹いた。 草むらが揺れ、遠くでポケモンの鳴き声が響く。

 ルミは、ミニスカートの裾を押さえながら、少しだけ彼に近づいた。その距離は、バトルの間に生まれた尊敬と、少しのときめきの分。そして、彼女は思った。この人と、もう一度バトルがしたいと。

 

 

 コリンクは同じ言葉を繰り返していた。彼に頭を優しく撫でられながら言われた言葉。

 

 「……君がいてくれて、嬉しいよ」

 

 コリンクにとって、それは選ばれたという証。他の誰でもなく、私を見てくれているという確信。コリンクはその言葉を聞いた瞬間、ぴたりと彼の足元に寄り添った。胸の奥に、未曾有の感情が渦を巻いていた。温かくて、苦しくて、どうしようもなく彼に触れていたかった。そんな時、女が一歩、彼に近づいた。その距離はほんの少し。けれど、コリンクにとっては決定的だった。瞳は潤み、耳は伏せ、尻尾は勝手に揺れていた。彼が女に視線を向ける。コリンクはそっと彼の足元に身を寄せる。まるで「ここにいるよ」と主張するように。彼が何気なく女に返事をすると、コリンクは彼の指を噛んだ。軽く、しかし確実に。その仕草は、甘えでもじゃれつきでもない。静かな抗議。静かな独占。そして、コリンクは静かに、彼の手を舐めた。その舌には、餌の味ではなく、独占欲が滲んでいた。

 ーー静かな決意の夜だった。

 

 

 

 




3話も最後まで読んでくださりありが乙ございます!
1話目、2話目の勢いからどんどんと落ちて、字数の減少が甚だしく、恥ずかしい限りです。
コリンクの性格は私の趣味です。リアルでは遠慮しますが、結構好きです。


そういえば最近、大阪万博行ってきました。最後の滑り込みです。大阪ヘルスケアパビリオン一択のために行きました。めちゃめちゃ楽しめました。画質良すぎで、音楽や体感するものに笑顔が止まりませんでした。ああ、XDのゲーム発売待ってます。天才の皆々様、どうか開発よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。