テキトーに読んで下さい。
ここはコトブキシティ 人が集う幸せの街。
昼下がりの陽射しが、石畳を柔らかく照らしていた。街路樹の葉が揺れ、遠くから子どもたちの笑い声が聞こえる。そんな穏やかな空気の中、私は街の入り口に足を踏み入れた。突然、コウキが勢いよく駆け寄ってきた。明るい声が耳に飛び込んできて、主人公は思わず立ち止まる。あまりに唐突で、心の準備もないまま言葉を浴びせられた。
「どれだけポケモン捕まえた? もっと捕まえた方がいいよ!」
その言葉に、胸の奥が少しざわついた。自分なりに旅を進めているつもりだったが、足りないと指摘されたような気がして、わずかに自信が揺らぐ。焦る必要はないと分かっていても、誰かに急かされると、心が落ち着かなくなる。
「そうそうコトブキにはスクールがあるんだ! 行くといいよ!」
スクールという響きに、自然と視線が街の方へ向く。知識を得る場所。シンオウ地方について、予め情報を仕入れていたが、現地でしか得られない情報がそこにあるかもしれない。
彼は助言し終えると去っていく。コウキの言葉が、風のように通り過ぎていった。その明るさと勢いに、主人公の胸の奥がわずかにざわめく。自分の歩幅で進めていた旅が、誰かの言葉で揺らぐとは思っていなかった。けれど、否定する気にはなれなかった。「スクールがあるんだ。行くといいよ。」その一言が、心の奥に静かに残った。知らないことを知る場所。自分の未熟さを受け入れる場所。そんな場所が、今の自分には必要なのかもしれない。
空を見上げると、雲がゆっくりと流れていた。風が街の方角へと吹いているように感じられる。コウキの言葉が頭の中で繰り返されるたび、足が自然とコトブキシティへ向かっていた。何かに導かれるような感覚があった。
街に入ると、整然とした建物が並び、どこかよそよそしい雰囲気が漂っていた。見慣れない景色に少しだけ圧倒されながらも、目に留まったのは、ひときわ目立つ学校らしい建物だった。迷うことなく見つけられたのは、ありがたいような、少し悔しいような気もした。 私の選択ではなく、誰かの言葉に背中を押されてここまで来たことが、心の奥に小さな棘のように違和感を生んだ。
けれど、今こうしてスクールの前に立っているのは、誰でもない、私自身だ。 足を動かしたのは私であり、街へ向かう道を選んだのも私だった。誰かの言葉がきっかけだったとしても、それを受け入れるかどうかは、私の判断に委ねられていた。
心の奥にあった小さな不安や期待に、コウキの言葉が触れたのだ。その触れられた感情に素直になったからこそ、今ここにいる。誰かに導かれたようでいて、実際には私がその導きを選んだのだ。
風に押されて歩き出すことは、流されることとは違う。風を感じて、進むと決めたのは私だ。
扉の前に立ったとき、胸の内にわずかな期待が芽生えていた。知らないことを知る場所。今の私に足りない何かが、ここにあるかもしれない。スクールの扉を押し開けると、室内には穏やかなざわめきが広がっていた。
何人もの子供たちが、それぞれの机に向かい、ポケモンについて学んでいる。黒板にはタイプ相性の表が描かれ、教師らしき人物が前で説明をしている。
その入り口正面、黒板の前に、見覚えのある金髪の少年が立っていた。彼は、少し背を伸ばしたように見えた。制服の袖をまくり、チョークを手に持ち、何かを書き込んでいた。ジュン。彼がここにいる理由は分からない。教師でも、生徒でもなさそうだ。けれど、彼の立ち姿には、妙な説得力があった。
私は、ハニーを抱えながら、そっと一歩踏み出した。ジュンは、こちらに気づいて振り返った。
「おっ! お前も勉強か? 俺なんか黒板に書かれていることバッチリ覚えたぜ! 最強トレーナーへの道が始まるのであった! じゃあな!」
ジュンはいつも通りだった。勢いよく話しかけてきて、こちらの反応などお構いなしに走り去っていく。黒板の内容を「バッチリ覚えた」と胸を張るその姿は、どこまでも前向きで、どこまでも真っ直ぐだった。
その背中を見送るたびに、私は少しだけ置いてけぼりを食らったような気分になる。まるで、彼の世界では立ち止まることが許されていないかのようだった。けれど、そんなジュンだからこそ、コウキは私に会わせたかったのだろう。スクールを勧めてきたのは、きっとそのためだ。
最初は、誰かの言葉に導かれてここまで来たような気がしていた。自分の意志ではなく、流れに乗っただけのような、そんな曖昧な感覚があった。だが、ジュンの姿を見ているうちに、少しずつその気持ちが変わっていく。
彼は誰かに言われたから動いているわけではない。自分で決めて、自分で走っている。だからこそ、あんなにも迷いがないのだ。その姿に触れたことで、私は気づいた。スクールに来たのは、コウキの言葉がきっかけだったかもしれない。けれど、ここに立っているのは、私自身の選択だ。誰かに背中を押されることは、悪いことじゃない。大切なのは、その一歩を自分の足で踏み出すこと。ジュンの背中が遠ざかるのを見ながら、私は静かに胸の内でそう思った。
ジュンの背中を見送ったあとも、しばらくスクールの中で立ち尽くしていた。彼のように迷いなく走り出すことは、まだ自分には難しい。けれど、彼の言葉や姿勢が、心の奥に小さな火を灯したのは確かだった。
スクールで得た知識は、ほんのわずかだったかもしれない。けれど、それ以上に、自分の旅に対する向き合い方が少しだけ変わった気がした。誰かに言われたから動くのではなく、自分が望むから動く。その感覚を、ようやく掴みかけていた。
だからこそ、次に向かう場所はもう決まっていた。実は、シンオウ地方に来る前から、ある程度ポケモンの生息情報は調べていた。旅は偶然の出会いが醍醐味だとは思うけれど、どうしても仲間に入れたいお目当てのポケモンがいたのだ。
それが、コトブキシティの北、204番道路に生息するスボミー。小さな体に、愛らしい蕾のような姿。けれど、その見た目に反して、持っている特性はなかなかに厄介だ。“毒の棘”。直接攻撃を受けた時、30%の確率で相手を毒状態にする。その一刺しが、じわじわと相手の体力を削る。私は、“毒の棘”を持つスボミーを狙っている。もちろん、特性はランダムだ。スボミーが一般に有する特性には“自然回復”もある。けれど、私の旅には、“毒の棘”が必要だった。耐えるだけではなく、触れた者に代償を与える力。それは、ハニーやエロっちゃまとは違う、もう一つの戦い方。
204番道路は、もうすぐそこだ。風が、草の香りを運んでくる。私は、モンスターボールをそっと確認した。スボミーとの出会いは、きっと近い。
204番道路。水辺の周りに広がる草むらは、風に揺れて、陽光を受けてきらめいていた。私は、静かに息を整えながら、ポケモンとの遭遇を待っていた。そして、現れた。スボミー。小さな体に、花のような笑顔。しかし、ハニーの”威嚇”が確かにスボミーの攻撃を下げても、その笑顔は維持されていた。大樹がそこにあるような、全く動じない朗らかな表情。
モンスターボールを手に取り、そっと投げる。スボミーは驚くこともなく、ふわりとボールに吸い込まれていった。そして、モンスターボールに吸い込まれる瞬間、まったく抵抗せず、まるで「最初からそのつもりだった」と言わんばかりの自然さ。
揺れるボール。一度、二度、そして静止。捕まえた。
私は、すぐに端末を開いて特性を確認する。“毒の棘”。狙っていた特性。直接攻撃を受けた時、30%の確率で相手を毒状態にする。静かな毒。
スボミーは、棘に毒を潜ませ、笑っていた。その笑顔は、誰に向けられているのか。敵か、味方か。それとも、ただ、毒を撒くことに喜びを感じているだけなのか。
ハニーは、ボールを見て一歩下がった。まるで「あいつ、闇深そう」とでも言っているようだった。
コトブキシティに戻ると、まずはフレンドリーショップに立ち寄った。キズ薬、どくけし、必要最低限の回復道具を揃える。この街は人が集う幸せの街。けれど、旅人にとっては、次の一歩を踏み出すための通過点でもある。ついでに、店先で勧められたポケモンウォッチなるものも手に入れた。時間や道具の管理ができるらしく、旅には便利そうだ。腕に装着すると、少しだけトレーナーらしさが増した気がした。街の人々から話を聞くうちに、次なる目的地が自然と定まった。
クロガネシティ。岩タイプのジムリーダー、ヒョウタがいる街。ポケモンバトルを申し込むために、そこを目指す。
コトブキシティから東へ進み、203番道路を通れば辿り着けるらしい。道のりはそれほど長くない。
コトブキシティで泊まることも考えた。けれど、空はまだ青く、陽は高い。
ハニーは、私の足元で尻尾を揺らしながら、前方を見つめている。
私は、深く息を吸い込んだ。風が、東の方角から吹いてくる。
行こう。
203番道路に足を踏み入れた瞬間、砂利の音に混じって、せわしない足音が駆け寄ってくる。金髪の少年――ジュンだった。目を輝かせ、息を弾ませながら、私の前に立ちはだかる。
「少しは強くなったか? さあ勝負だぜ!」
言葉が終わるよりも早く、ジュンはモンスターボールを手にしていた。私は静かにうなずき、ボールに手を伸ばした。
風が再び吹き抜ける。今度は、戦いの始まりを告げる風だった。
今の手持ちは、エロっちゃま(ポッチャマ)、ハニー(コリンク)、そしてスボミー。今回のバトルでは、スボミーの特性“毒の棘”を中心に据えた戦略――私が毒システムと呼ぶ作戦を実行する。まずは、ハニーを繰り出す。“威嚇”で相手の攻撃を最大限まで下げる。攻撃力が削がれればスボミーの特性を活かせるからだ。そして、スボミーが相手の攻撃を受けた瞬間“毒の棘”が発動する。スボミーの特性”毒の棘”で相手を毒状態にする。毒状態になれば、そのポケモンは技を使用するなどの行動後にダメージを受ける。回復しなければどんなポケモンでも8回毒のダメージを受けると瀕死に瀕死に至る。
これにより、悪あがき自滅作戦よりも圧倒的に短い時間でバトルを終えることができる。そして何より、僧を大量生産しなくて済むのだ。
ジュンとのポケモンバトルが始まる。ジュンは、ムックルを繰り出した。羽を広げ、鋭い鳴き声を上げる空気が少しだけ張り詰めた。
私は、ハニーをモンスターボールから出す。光の中から現れたハニーは、まず私の指先をぺろりと舐めた。そして、何の前触れもなく、私の足に体を擦り付ける。一度、二度。 まるで、何かを塗りつけるように。それから、満足げな顔でムックルの方へと向かっていった。尻尾を揺らしながら、ゆっくりと。
私は、しばらくその背中を見つめていた。
――なんだったんだ。
バトルが始まる。
ハニーの特性“威嚇”が発動し、ムックルの攻撃が下がる。
自慢げな顔で私の方へと向かってきた。「やってやったわよ」とでも言いたげな、誇らしげな尻尾の揺れ。私はハニーによくやったと頭を撫でる。
私はすぐにハニーを戻し、エロっちゃまを繰り出す。エロっちゃまは、両腕を広げてムックルを見つめる。「早く痛みを頂戴」とでも言いたげな、恍惚とした表情をしている。
ジュンのムックルが電光石火で襲いかかる。だが、ハニーの“威嚇”が効いている。エロっちゃまに受けるダメージは浅い。私はキズ薬の節約になると内心喜んだが、エロっちゃまは物足りなさそうに首を傾げていた。その後、私はハニーとエロっちゃまを交互に入れ替え、初回の出撃を含めて合計6回“威嚇”を入れる威嚇ループを実行。ムックルの攻撃は、もはや羽ばたき程度の威力しかない。そして、毒システムの主役、スボミーをモンスターボールから出す。スボミーは、ふわりと現れた。朗らかで、無垢で、そして、毒を秘めた笑顔で。
ジュンのムックルの技構成は体当たり(PP35)、電光石火(PP40)、鳴き声(PP40)。この中で攻撃技は体当たりと電光石火。そして、このどちらもが物理技つまり直接攻撃なのである。スボミーの特性“毒の棘”は、直接攻撃を受けた時に発動し、30%の確率で、相手を毒状態にする。条件は全て整った。あとはジュンのムックルの技を受けて、毒システムの発動を待つだけだ。
スボミーは、動かない。ただ、笑っている。
ムックルが羽ばたき、距離を詰める。ジュンの声が飛ぶ。
「ムックル、電光石火!」
空気が裂けるような速さで、ムックルが突進する。
スボミーは、じっと動かない。依然笑っている。
衝突。
その瞬間、私は息を止めた。スボミーの体に、ムックルの攻撃が触れる。
そしてムックルの動きがふらつく。羽が重たげに落ちる。毒状態。
スボミーの広角が少し上がった気がした。
“毒の棘”が発動。
素晴らしい。一度目の攻撃でムックルは毒状態になったようだ。スボミーは朗らかに笑っている。こうなれば、あとは7回攻撃を耐えるだけで、勝手にムックルは瀕死になる。悪あがき自滅作戦では、合計PP分、115回の攻撃を受けなければならない。それに比べれば、十数回で終わるこの毒システムは、まさに革命だ。効率的で、冷静で、そして静かで残酷。
スボミーは、ムックルの苦しむ様子を見ながら、笑っている。ずっと、笑っている。ムックルは、毒に蝕まれながらも、必死に羽ばたいていた。その動きは徐々に鈍り、呼吸も荒くなっていく。スボミーは、そんなムックルの様子をじっと見つめていた朗らかな笑顔のまま、微動だにせず。その瞳には、同情も、驚きも、焦りもなかった。ただ、純粋な興味だけが宿っていた。まるで、毒がどれほど効くのかを観察しているかのように。まるで、苦しみがどんな形になるのかを楽しんでいるかのように。その笑顔は、風に揺れる花のように、どこまでも無垢だった。私は、ふと背筋が冷えるのを感じた。
気づけば、ムックルは倒れていた。毒に蝕まれ、静かに崩れ落ちるように。依然、スボミーは朗らかに笑っている。ジュンはムックルを戻し、ナエトルを繰り出す。私もこのタイミングで再度ハニーをだす。再度“威嚇”ループを重ね、攻撃を最大限下げる。その後、スボミーを出し、ナエトルの攻撃をスボミーで受ける。
ナエトルの体当たりがスボミーに触れる。その瞬間、毒の棘が発動。ナエトルの技構成は体当たり(PP35)、殻に籠る(PP40)のようで、この情報がわかる頃にはナエトルも問題なく毒になった。
スボミーは朗らかに笑っている。ムックルのときと、何も変わらない。ナエトルが苦しんでも、何も変わらない。
そして、7回の行動後、ナエトルも倒れた。スボミーは朗らかに笑っている。ジュンのポケモンは2体。私の勝利である。
だが、勝利の余韻よりも、スボミーの笑顔が気になる。毒で2体のポケモンを瀕死に追い込んだ当の本人。その顔には、罪悪感も、達成感も、誇りもない。
ただ、笑顔だけがあるのみ。サイコパスかな?
「なんだってんだよーっ! 俺負けちまったよ!? だけど俺が負けるのはこれが最後だからな! よし! まずはクロガネジムに挑戦だな!」
そういうと、ジュンはまた走り去っていった。風のように、せっかちに。
私は、彼の背中を見送りながら、静かに息を吐いた。どうやら、彼もクロガネシティに向かうようだ。
ハニーは、ジュンの消えた方向を見て、「……あの人、いつも走ってるね」と言いたげに尻尾を揺らした。
私は、スボミーのボールを手に取り、そっと口元に笑みを浮かべた。
「ニックネーム、つけようか」
ハニーがちらりと私を見上げる。私は、少し考えてから、言った。
「ドクエミル」
毒。笑み。そして、見る。 毒を撒きながら、朗らかに笑い、相手の苦しみを観察する者。
その瞬間、モンスターボールがわずかに震えた。中から、ふわりとスボミーが現れる。いつものように、朗らかな笑顔。けれど、何かが違う。その笑顔が、ほんの少しだけ深くなったような気がした。目元が、わずかに細くなり、口角がほんの少しだけ上がる。
「……気に入った?」
私はそう問いかけたが、スボミーは何も言わない。 ただ、笑っている。スボミーいや、ドクエミルは、ゆっくりと私の方を向いた。その瞳は、まるで名前を得たことで、何かが始まったかのよう。
朗らかに、静かに、毒を撒く者。 ドクエミル。毒を撒くときも、相手が苦しむときも、勝利を手にしたときも。その笑顔は、変わらない。そして、私はその笑顔に、名前を与えてしまった。
ーー彼は、笑っている。ずっと、笑っている。私はレポートに書いた。
読んでくださりありがとうございます。
やっと、キーポケモンのスボミー登場できました。