不戦勝のポケモントレーナー   作:ぼくの友達

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相変わらず、読みづらいかもです。
テキトーに読んで下さい。


6)睨まれている。

 203番道路の入り口に差し掛かったとき、私はすでに警戒していた。短パン小僧が一人、ミニスカートの少女が一人、そしてまた短パン小僧が一人。彼らは皆、周囲を見回しながら、モンスターボールを握りしめていた。あの目だ。あの視界に入ってはいけない。ポケモントレーナーの本能が告げていた。目が合えば、バトルが始まる。それがこの世界のルールだ。

 私はできるだけ視線を逸らし、草むらの陰を縫うように歩こうとした。だが、その瞬間、スカートの裾に柔らかな引っ張りを感じた。ハニーだった。彼女はモンスターボールからいつの間にか出てきていて、私のスカートを噛みながら、細い道へと導こうとしていた。木々と小さな泉の間を縫うように続く、誰も通らないような静かな道だった。

 

「こっちに行こうってこと?」

 

 ハニーは小さく鳴いて、尻尾を揺らした。まるで「私だけが、あなたを守れる」と言いたげに。泉のほとりを慎重に歩きながら、私はハニーの背中を見つめた。彼女は何度も振り返り、私がちゃんとついてきているかを確認していた。野生のポケモンにも、トレーナーにも遭遇せず、無事に道を抜けたとき、私はバッグから特製の餌を取り出した。

 

「ありがとうね、ハニー」

 

 差し出すと、ハニーは照れたように一瞬だけ目を逸らし、それから勢いよく餌に飛びついた。尻尾が左右に揺れ、耳がぴくぴくと動いている。その仕草は、まるで「もっと褒めて」と言っているようだった。私は笑いながら、彼女の頭を撫でた。

 そのとき、ふと気づいた。ハニーの瞳が、私の手元のモンスターボールをちらりと見ていた。ドクエミルのボールだ。彼女は何も言わない。ただ、尻尾の揺れが一瞬だけ止まり、ピクッと震えた。

 

 岩肌が剥き出しになったそのトンネルは、クロガネゲート。入口すぐで、ポケウォッチを得たばかりのトレーナーは山男に話しかけられる。私もその一人だった。彼は笑顔で「岩くだき」のわざマシンを渡してくれた。ついでと言わんばかりに、ポケッチにアプリを追加してくる。断る隙もなかった。

 トンネルの中は、思ったよりも歩きやすかった。岩の壁は荒々しく、ところどころ水滴が光っている。先にはキャンプボーイとピクニックガールがいた。モンスターボールを握りしめ、ギラギラした目で周囲を見回している。あれはもう、バトルをしたくて仕方がない目だ。私はそっと息を殺し、彼らの背後を静かに通り過ぎる。ポケモンバトルを避けられるなら避けるべきだ。

 

 

 トンネルを抜けると、太陽の光が差し込んできた。そこはクロガネシティ。整備された土の道が広がり、道路の端には通気口が並んでいる。街の周囲には掘削された土が盛られていて、炭鉱の名所らしい風景が広がっていた。

 ジムの場所を確認するため、街の中心へと足を進める。ジム前には、見覚えのある金髪の少年――ジュンがいた。彼はすでにジムを攻略したらしく、ジムバッチを自慢げに見せてくる。

 

「これがジムバッチだぜ! 俺、もう次に進むからな!」

 

 彼は風のように去っていった。残された私は、ジムバッチの意味を改めて考える。ポケモントレーナーとしての証。ショップで買えるものが増えたり、リーグに挑戦できたり。私の旅はシンオウ伝説を楽しむためのものだ。図鑑やジム戦は二の次。けれど、バッチはあって損はない。ジュンの話によると、ジムリーダーは炭鉱にいるらしい。私は街の南へ向かい、クロガネ炭鉱の入り口へと足を踏み入れた。

 

 

 クロガネシティの南には大きな炭鉱がある。掘削機や大きく長いレールで地下から鉱物を取り出しているようだった。クロガネ炭鉱の入り口には注意書きがあった。どうやらポケモンがとびだすらしい。炭鉱の空気は重く、湿り気を帯びた土の匂いが鼻腔にまとわりつく。広いはずの通路も、岩肌が迫ってくるようで、息苦しさを覚えるほどだった。目の前では、イシツブテが無言で岩に体当たりを繰り返している。その姿は、まるで己を鍛える修行僧のようで、炭鉱の静寂に不気味なリズムを刻んでいた。

 クロガネジムでは岩タイプのポケモンが主に使われる。このことから岩タイプの技を相手が使ってくると想定できる。岩と地面タイプのイシツブテであれば、岩タイプの技のダメージを半減にして受けられることから、有利にポケモンバトルを進められる。ゲットしようと、私は、何の気なしにエロっちゃまを呼び出した。モンスターボールから現れた彼は、ぱちぱちと瞬きをした後、炭鉱の空気に触れた途端、ピクリと体を震わせた。そして、まるで何かを思い出したかのように、目をぎゅっと閉じて、身を縮めるように立ち竦んだ。

 

「……どうしたの?」

 

 声をかけるよりも早く、エロっちゃまは私の手元のモンスターボールへと飛び込んだ。逃げるように、否、避けるように。彼の小さな体が光に包まれて消えていくのを、私はただ呆然と見つめていた。

 静まり返った炭鉱の中で、私はそっとボールを握りしめた。暗闇、閉所、湿った空気――この場所は、彼にとって何か深い恐怖を呼び起こすものなのかもしれない。かつて経験した何か、あるいは本能的な拒絶。

 代わりに、私はハニーを呼び出した。モンスターボールから現れた彼女は、いつものように真っ直ぐ私の元へ歩み寄り、柔らかな体をそっと擦りつけてきた。炭鉱の冷たい空気の中で、その仕草はひときわ温かく感じられた。

 私はハニーの顔をイシツブテの方へ向け、静かに捕獲の意思を伝える。彼女は一瞬だけ私を見つめ、私が後で餌を与えることを示すと、くるりと尻尾を揺らして鳴いた。

 私はモンスターボールを投げる。イシツブテは抵抗することなく、静かにボールの中へ吸い込まれていった。ハニーはすぐに私の元へ戻ってきて、尻尾を左右に揺らしながら、満足げに鳴いた。その瞳は、まるで「どう? やったでしょ」と言っているかのように、勝ち誇った色を帯びていた。

 私は笑みを浮かべながら、褒め言葉とともに餌を差し出す。ハニーは嬉しそうにそれを頬張りながら、ふと視線を逸らした。ちらりと、ドクエミルのボールを見たのだ。ボールが、わずかに揺れた。中にいるドクエミルの表情は見えない。けれど、ハニーの尻尾がピクッと震えた。苛立ちか、焦りか――その揺らぎは、彼女の中にある何かを刺激したようだった。

 もう一体、イシツブテを捕まえることにした。エロっちゃまをはじめに出すが、すぐにボールへ戻ってゆく。また代わりにハニーを出す。ハニーは、何も言わずに前に出て、同じように捕獲を成功させた。餌をもらうと、今度はドクエミルのボールを睨むように見つめた。「……私の方が、役に立ってるでしょ?」そんな声が、聞こえた気がした。

 

 あのエロっちゃまの怯えようは確かな恐怖だった。予想に過ぎないが、彼が震えた理由は、暗闇と閉所にあるのかもしれない。旅は始まったばかりだというのに、彼はもう戦えないかもしれない。そんな予感が胸の奥に沈殿していた。だからこそ、私はイシツブテを二体捕まえた。万が一に備えて。炭鉱の奥へ進むにつれ、通路は徐々に狭まり、光は薄れていく。おそらく、クロガネジムも似たような空間だろう。そのような場所に再び呼び出すことはできない。そう判断した。

 

 最深部では、ワンリキーと作業員が黙々と掘削作業を続けていた。岩を砕く音が、炭鉱の静寂に響く。そのさらに奥、岩の裂け目の向こうで、クロガネジムのジムリーダー、ヒョウタが秘伝技を使って落石を粉砕していた。

 

「僕に勝って、ジムバッジを手に入れたら、これくらいできるようになるよ。」

 

 炭鉱を出ると、私はエロっちゃまをボールから出した。外の空気で少しは気分が和らぐと思ったのだ。外はまだ昼の光に包まれている。けれど、彼の表情には影が差していた。光の中にいても、心は暗がりに囚われているようだった。

 

「バトル、できそう?」

 

 そっと問いかける。だが、エロっちゃまは俯いたまま、何も答えない。その沈黙が、すべてを語っていた。私は静かに決断する。彼を、戦いの場から遠ざけることにした。無理をさせるべきではない。

 短い間だったが、それでも仲間としてバトルを乗り越えてきた。エロっちゃま。エロくて、ドMで、どうしようもない。一緒に戦ってくれた仲間。私はこのような時、手を差し伸べたり、復帰できるまでの手助けはしない。何も語らない、自分の殻にこもり、意思表示しないのであれば、捨てる。ポケモンであろうが人であろうが利用できるものは利用する。逆なら、それだけのこと。

 

 

 クロガネシティ。岩タイプのジムリーダー・ヒョウタとの初戦は、まさに岩のように重く、硬く、そして冷たかった。

 初手、ヒョウタはイシツブテを繰り出した。ヒョウタのイシツブテのステルスロック。ステルスロックは交代するたびに出てきたポケモンの体力の1/8のダメージを与える。ただタイプに対する相性分のダメージを与える。例えば、岩タイプのイシツブテは1/16のダメージ。交代するたびに体力が削られる罠のような技である。私の得意戦法――威嚇サイクルは、開始3秒で崩壊した。ハニーが得意げに尻尾を揺らしていたのも束の間、交代するたびに彼女を含め入れ替えた私のポケモンの体力がじわじわと削られていく。

 ヒョウタの使うイシツブテの他の技も強力だった。防御力を1段階上げる「丸くなる」からの「転がる」コンボは、まるで岩が意思を持って襲いかかってくるようだった。「転がる」の威力はターンを重ねるごとに倍々ゲーム。最大5回、当てるたびに威力が2倍になるだけでなく、「丸くなる」使用後に使うと、威力が2倍になるのである。3ターン目には、ハニーの”威嚇”で下げた攻撃力など意味をなさず、ただ潰されるのみだった。クロガネ炭鉱で仲間にした私のイシツブテであればタイプ相性的に少しは攻撃を耐えられるかと考えたが、「丸くなる」使用後の「転がる」の威力は想像以上に強力だった。ドクミエルの”毒の棘”でじわじわ削る戦法の毒システムなど、岩の暴走には簡単には通じない。加えて、転がるの威力を下げるため”威嚇”持ちのハニーと交代すればステルスロックのダメージが痛い。ドクミエルの”毒の棘”が一発で発動したが、あと7回攻撃を受けないと相手のイシツブテは倒れてくれない。その間に「転がる」を連打されると全滅の危機である。勝てない。

 傷薬を惜しみなく使い、”がんじょう”(HP満タン時1撃で瀕死になるダメージを受けても、HPを1残して持ち堪える)持ちのイシツブテで耐える間に、控えのハニーとドクミエルを回復し続ける。なんとか1匹目のイシツブテを撃破。ヒョウタは続いてイワークを繰り出した。次に現れたイワークは「締め付ける」(相手をバインド状態にし4−5回の攻撃の間、連続でダメージを与え続ける。相手は交代できない)で私のイシツブテがバインド状態になった。ドクミエルに交代できなければ、毒システムも使えない。4回の攻撃を耐え、バインド状態が解除されたタイミングで、ドクミエルに交代する。またしても、ドクミエルは一度のイワークの攻撃を受けただけで、”毒の棘”を発動していた。通常確率のはずなのだが、これまで確定で相手を毒状態にしてくれている。嬉しい誤算だ。

 

 ハニーがまた尻尾を震わせた。わずかに、しかし確かに。あのスボミーがいなければ、私が主役だったのに――そんな声が聞こえた気がした。

 

 ジム戦は、すでに中盤を迎えていた。ヒョウタの2体目、イワークのバインドが解けた瞬間、私はドクミエルを繰り出した。朗らかな笑顔を浮かべながら、ふわりと現れるスボミー。その笑顔の奥に、毒を秘めた静かな狂気が潜んでいる。

 イワークの体当たりがドクミエルに直撃する。その瞬間、”毒の棘”が発動。イワークの動きが鈍る。毒が回った。これで、あと8回の行動を耐えれば、イワークの瀕死は確定する。だが、傷薬の残りはわずか。ここでドクミエルを温存するため、私は2体のイシツブテを交代で繰り出す。節約。節約。節約。勝利のための、静かな算段。

 

 そして、最後の刺客――ズガイドス。イワークの体当たりがドクミエルに直撃する。その瞬間、毒の棘が発動。イワークの動きが鈍る。毒が回った。これで、あと8回の行動を耐えれば、勝利は確定する。だが、傷薬の残りはわずか。ここでドクミエルを温存するため、私は2体のイシツブテを交代で繰り出す。節約。節約。節約。勝利のための、静かな算段。

 攻撃が6段階下がったところで、私は再びドクミエルを繰り出す。毒を狙う。だが、ズガイドスは睨むばかり。毒にならない。ならない。ならない。

そして、ついにズガイドスが頭突きを繰り出した。

 

「あっ……回復、忘れてた」

 

 その一撃は、きゅうしょに入った。ドクミエルの体がふわりと宙を舞い、地面に崩れ落ちる。気絶。朗らかな笑顔のまま、彼女は沈黙した。そこからは、地獄絵図だった。

 

 ハニー、気絶。イシツブテ1、気絶。最後のイシツブテが繰り出される。ズガイドスは、睨み続ける。睨む。睨む。睨む。煽りにしか感じない。いや、まさか――頭突きのPPが切れたのか?

ズガイドスは、睨みつけるしかしない。攻撃は下がりきっている。防御も下がりきっている。ここから反撃できるかもしれない。そう思った、その瞬間。

ズガイドスの頭突き。

イシツブテ、気絶。

 

ーー目の前が、真っ暗になった。ーー尾が揺れていた。私はレポートに書いた。

 

 




ここまで読んでくださりありがとうございます。

ついに書き溜めが無くなりました。
もう、逃げ出したい気持ち一杯ですが、テキトーに書いていければと思います。
逃げても批判するほどの読者の方がいないことを自覚しておりますので、気は楽です。
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