悪魔が見つめるその先に   作:偶像崇拝

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プロローグ

 悪魔が当たり前に存在していると認知されてる世界って変わってるよね。

それを倒すために公安警察の対魔特異課とか民間のデビルハンターが対処してるって話だけど、概念が多すぎて対処しきれてないみたい。

 

「うわ、踏んじゃったよ」

 

 パキっと凍り付いた悪魔の亡骸を誤って踏み抜いてしまった。

周囲を見渡すと倉庫内がすべて凍結され、凍り付いており軽く触れるだけでも今のように砕けてしまう。これをやったのは僕の隣で気にした様子もないように本を読んでいる彼女なんだけど……。

 

「フロスト、僕寒いんだけど」

 

「知らない。こちらに襲い掛かってきたこいつが悪い」

 

 たぶん、初見で彼女がどういった存在かを見分けるのは難しいと思う。

この状況を作り出したのが彼女だって説明したと思うけど、このフロストと呼んだ女性は悪魔なんだ。人間の死体を乗っ取った魔人とかじゃなくて地獄からきた純粋な悪魔。

名前でわかる通り、氷の悪魔とか凍結の悪魔と呼ばれる存在でなぜか僕の傍にいる。僕と契約を交わすわけでもなく、本当に傍に居るだけ。

 

「どうするの? 公安とか民間デビルハンターに連絡するか」

 

「知らない。こうすればいい」

 

 この現状をどうすべきかと考えていると彼女は本を閉じる。

凍り付いた床を軽く足で踏み抜くとすべての凍結された存在が砕け散った。残ったのは外壁しかない倉庫だけだし、確かにこれなら問題ない。

微かに残る氷の破片は気になるけど、彼女が問題ないというなら問題ないのだろう。

 

「まぁ、これで問題なしなのかな?」

 

「お腹空いた、ご飯」

 

「じゃあ、帰りましょうか。怖い悪魔のお姉さんが来る前に」

 

 公安にいる悪魔には少し面倒なお姉さんが居るんだよね。

物事を上手く動かすためにそういった仕草をするのか、それとも力を使って操るのかは知らないけど、されてる方は自覚無いんだろうな。

僕の事を探っている節もあるし、あまり進んで関わりたいとは思わない。それにその悪魔の話をするとフロストも僅かに反応を示す。

 

絶対に相手の事を知ってるよ。

 

「オムライスがいい」

 

「わかりましたよ」

 

 家に材料はあったからそのまま直行でいいか。

今日は何事もなく終わってよかった。悪魔が襲ってきたから何事もなくと言ってもいいかわからないけどさ。

 

 

 二人が郊外にある倉庫から去って数十分後

一台の車が倉庫に到着した。車から姿を現したのは黒服が二人と公安の制服を纏った女性が一人。そのまま倉庫内へと足を踏み入れた。

 

「誤報でしょうか?」

 

「何もありませんね。ここに悪魔がいるという連絡が入って一時間も経過していません。それとも既に何処かに逃げて……」

 

「……違うよ」

 

 黒服の二人が倉庫内を見渡しても何も見つからず、悪魔の姿もないことから誤報もしくは既に何処かへ逃げ去ったのでは告げたが、それを女性は否定する。

 

「違うとは?」

 

「間違いなくここに悪魔は居た。でも殺されてるね」

 

「では何者かが我々よりも先にここに現れ、悪魔を討伐したと」

 

「そういうことになるね。でもこの感じはデビルハンターじゃなくて悪魔が殺してる。彼女が居たんじゃないかな?」

 

 微かに床に残った氷の欠片を手に取った女性がそう告げる。

悪魔特有の残滓を感じ取り、殺したであろう悪魔に心当たりがあると断言していた。そう告げるのは公安対魔特異4課を率いているマキマと呼ばれる女性。

 

「あの神出鬼没と呼ばれる氷の悪魔ですか!?」

 

「そう。この氷の欠片から彼女の力の残滓を感じる。人間に危害を進んで加えるタイプじゃないし、彼女の事は放置で問題ないかな。悪魔も討伐されているし、無駄足になっちゃったのが残念だけどね」

 

「ではそのように報告しておきます」

 

 フロストと呼ばれる彼女の名は公安では知られた存在だ。

こちらから刺激を与えなければ何もせず、危害を加えて来る事もない極めて珍しい存在と言われている。ただ敵対すれば相応の痛手が返ってくると。

 黒服の二人が先に車に戻り、マキマは倉庫内を見渡すように歩く。

そしてある場所で立ち止まり、何かを考えるようにジッとその場所を見つめている。

 

「ふ~ん、一匹狼の彼女が誰かと行動を共にしているなんて珍しいね。私の目を欺いているのは彼女じゃないのかな?」

 

 過去が見えているのか、それとも別の何かが見えているのか。

索敵の目を欺いているのは誰かという問いに明確な答えは見つからない。現状では判断材料が少なく、答えを導き出すことが出来ないと。

 

「一度会って話をしてみたいものだね、名も知らぬ君と」

 

 彼女は満足したのか、踵を返して倉庫を後にする。

黒服が乗っている車に乗り込むと自分達の活動拠点である公安へと帰っていった。

 

 

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