悪魔が見つめるその先に   作:偶像崇拝

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いつも助かってます!

今回は少し短めです


第十一話

 楽しい時間というのは本当に早く過ぎ去っていく。

初めて水族館を訪れ、色々な生物を見て癒された。レゼもまた初めてという言葉は本当だったみたいで、楽しそうにしていた。

彼女と別れて岐路に就いて自宅へと帰る。

 

「おかえり」

 

「ただいま」

 

 家に帰るとそこにはソファーに座って読書に勤しんでいるフロストの姿があった。

完全に自分の家のように過ごしている彼女にはもう慣れたもので特に何も言うつもりもない。テーブルを挟んだ向かいのソファーに座って軽く息を吐く。

するとフロストが不意に視線を上げてこちらを見た。

 

「この街は今、闘争の渦になりつつある」

 

「闘争の渦?」

 

「そう。チェンソーの悪魔の存在が悪魔や各国に広がりつつある」

 

 闘争の渦か、元々悪魔がどこにでも現れるから戦い自体は起こってる。

でも闘争の渦という言葉は戦闘が更に激しさを増す可能性が高いことを物語っている。更に戦いが激しくなるって言うのは冗談抜きでやめてほしいなぁ。

 

「チェンソーの悪魔は特別ってことか」

 

「その心臓を欲する悪魔も多い。心臓を手に入れることを契約条件にする悪魔も居る。それに加えてこの街にはあなたも居るから」

 

「僕ですか?」

 

「私が誰かと一緒に行動することは今までなかった」

 

 チェンソーの悪魔の心臓に加えて僕の存在か。

氷の悪魔たるフロストの力を手中に収めようとする者達は多いと言うのは知っている。これまで有効的な手段がないとされていたけど、僕と行動している事が知られた。

 だから僕を手に入れることで彼女を引っ張り込もうとしている。

日本に監視やスパイの眼が増えたことは感じていたから今更という感じはある。まぁ、だからと言って何かを変えるつもりもないだろうけど……。

 

「仮に僕を手中に収められたとして、本当に君を制御できると思っているのかな」

 

「知らない。でも私があなたの居る場所へと足を運ぶ確率は高いのも事実」

 

「これは喜んでいいのかな?」

 

「あなた次第」

 

 つまり、国の方針は間違っていないってことか。

僕が行けば、フロストも一緒に向かう可能性は非常に高い。問題は各国がどんな手段を取って来るかだけど……。

 

篭絡?

実力行使?

悪魔の力を使って洗脳?

 

いずれもそれ相応の対処をさせてもらうけどね。

 

「それとこの街にチェンソーの心臓を持つ人間と同じ存在を複数確認した」

 

「デンジ君と同じ存在?」

 

「そう」

 

 悪魔の心臓を持つ人間がデンジ君以外にこの街に複数人。

本当にこの街が闘争の中心になろうとしているのかもしれない。あまり大きな騒ぎを起こしたくないんだけど、前回のフロストの本体が顕現した時の事もあるし。

 

「戦うような事態にはなりたくないものですね」

 

「安心するといい。必ず戦闘になる」

 

「安心できる要素がまるでないんですけど?」

 

「問題ない」

 

「問題しかないの間違いでは?」

 

 問題しかないよ、ほんとに。

必ず戦闘になると断言しているってことは確実に僕を狙ってきてる存在ってことだろうし、いったい誰の事を示しているのか。

 トリガーを起動される前に無力化するのが理想だけど、必ず無力化できるわけじゃない。

変身後となると戦闘が一際面倒になるのは確定だ。それが特に戦闘に特化しているような能力を持っている場合なら余計に。

 

「はぁ、頭が痛いとはこのことですよ」

 

「戦いは嫌い?」

 

「好き好んで戦うように見えますか?」

 

「状況次第」

 

「それは状況次第で戦わなければならないことはある。その時に戦闘しなければならないなら否定するつもりはありません。でも、戦わないに越したことは無いでしょ」

 

 戦いを否定するつもりはない。

戦いによって新たな時代が切り開けたり、それによって文化が発展する事もある。しかし、自ら危険に飛び込む必要はないと思う。

 デンジ君達のように不死身の存在となったなら話は別だけど、そういう人は希少だ。

フロストから見ても稀な存在という事はほとんど存在しないという事。悪魔の心臓を持つ条件とはいったいなんだろうと考えても答えはでないだろう。

 

「弱肉強食の考えでは弱者は蹂躙されるだけ。助けを求めても敵と一緒に蹂躙される」

 

「地獄のヒーローのチェンソーマンですか」

 

「強者たる存在が弱者に何を行おうとも文句は言われない。地獄はそういうところ」

 

「まさに弱肉強食の世界ですね。形は違っても、こっちと地獄も大して変わらないと」

 

 地獄も弱肉強食だったか。

それもそうか、こっちよりもその傾向は顕著で弱者に希望はないと。そこで殺されても輪廻転生でこちら側の世界に記憶を失った状態で現れるから救いなのか?

とにかく、どこの世界でも弱者は蹂躙されてしまうんだ。

 

 

 弱体化したチェンソーマンは人間に心臓を与えた。

永遠の悪魔との戦いで見た力は全盛期とは程遠い。地獄では多くの悪魔から恐れを抱かれ、故に元の力も相まって強者たる存在の一人。

食べた悪魔の存在を消し去る力を持っているからより恐れを生む。

 

「黙示録の四騎士も一人を除いて息を潜めている」

 

 支配、戦争、飢餓、死の四人からなる存在。

正確には暗躍しているという方が正しい悪魔も一人。支配はレックスに執着し、手に入れようと今なお計画を練っている。

 戦争、飢餓は沈黙を保ったまま。

死は暗躍し、世界に己の死が広がることを妨げんとする。

 

「いつも闘争の中心にはチェンソーマンがいる」

 

 殺しても何度でも復活するが故に相手からすれば、強いうえに無尽蔵とも言えるスタミナを持った怪物。

私を巻き込んで戦闘になった時、永遠に時間ごと凍結させておけばよかった。そうすれば、うるさいチェンソーの音を聞かずにも済んだ。

 今の状態では相手する必要すらない。

支配が彼の心臓を求め、手に入れるために別の計画を練っているのも知っている。

 

「剣、槍、鞭、火炎放射器が支配の手中」

 

 こちらが確認した悪魔の心臓を持つ者達の内4人は支配の手の中。

変身後、武器の特徴を身体に宿す。武器人間と仮称する。すべてはチェンソーマンの心臓を己が手に入れるための戦力。

 でも、支配が欲するのは今のチェンソーの悪魔ではない。

真の姿に戻ったチェンソーマンであり、不完全な状態の今じゃない。完全な状態へと戻す必要がある。すべては己の理想の世界を作るために重要な核であり、最重要事項。

 

「私には関係ないこと。私の興味は彼だけ」

 

 あの女が何をしようと関係ない。

私の興味はレックスにある。悪魔でも魔人でも武器人間でもなく正真正銘の人間。それでも一般人という枠組みには収まらない未知なる存在。

 悪魔と戦う時も魔人と戦った時も私の"本体"と対面した時も怯えを見せない。

口では戦いを好まないと告げる、けれど戦う事を否定しない。未来の悪魔を別の時間軸から切り裂ける人間が普通であるはずがない。

 

 チェンソーマンに並び現在、闘争の渦の中心にいる彼。

今も各国から刺客は送り込まれ、すぐそこまで忍び寄っている。おそらくレックスは気付き、それでなお相手の思惑に付き合っているはず。

 

「街に入り込んだのは刀と爆弾」

 

 刀はチェンソーの心臓、爆弾はレックスを狙う。

また彼は巻き込まれる可能性が高い。爆弾の能力は応用が利くから彼との戦闘には興味があった。もしかすると私が見たい光景が見れるかもしれない。

 私の想定が正しいならば、レックスと爆弾は必ず戦いになる。

それは未来の悪魔が見た未来視からも間違いない事実。実際に時間軸を超えた一閃を見れば、その力の起源を見ることも叶うかもしれない。

 

 

レックス、私にとって興味が尽きない未知の存在。

だからこれからも私はあなたの傍で佇んでいる。

 

 

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