悪魔が見つめるその先に   作:偶像崇拝

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休みの日とか執筆できるときにするので不定期になるのはご了承ください。


第十六話

 結局、僕は内へと入れた者に対して甘いのかな。

敵と判断すれば、殺してしまうのが正しい選択かもしれない。だってそうするだけで自分へと迫る危険を排除できる安全な方法だから。

 でも、その選択がすべてではないと僕は思うんだ。

世界には世界のルールが存在するはずだし、だからこそ悪魔が当たり前に認知されていることも当然のルールなんだと。

 

「別についてこなくても良かったんですよ?」

 

「ううん、私が一緒に居たいだけだから」

 

 結局、レゼが選択したのはここに居るという選択だった。

任務に失敗した自分は国へと帰る事はできず、帰っても処分される未来しかないと。それに自分を救ってくれた僕の傍に居たいんだって。

 救ったと言っても結局のところは自分自身が覚悟を決めたんだと思う。

彼女に初めてあった時にマスターから聞かされたと言っていた"覚悟があれば未来が変わる"という言葉がずっと胸に残っていたみたい。

 

「ねぇ、この店でご飯食べない?」

 

「中華料理屋さんですか。今日の昼食はここで食べましょうか」

 

「やった! こういうお店初めてなの」

 

 彼女が指を差した場所はビルの一室にある中華料理屋の看板があるお店。

階段を上がってそのお店まで行き、扉を開けるとカウンター席とテーブル席に分かれているシンプルな作りのお店だった。

 既に一人のお客さんが食べているけど、他には従業員以外誰も居ない。

何名だと聞かれたので二人だと答えるとテーブル席へと案内される。一瞬だけもみあげが特徴的なお客さんと目があったけど、裏側の人間だとすぐにわかった。

裏側に居たレゼも当然のように気付いて一瞬だけ僕にアイコンタクトを取ってきた。

 

「ご注文は?」

 

「私、ラーメンがいいな」

 

「ラーメン2つでお願いします」

 

「はいよ! ラーメン2つ頂きました!」

 

 入り口が見える向かいのテーブル席に座って注文した料理の完成を待つ。

待っていると入口から4人の団体のお客さんが入って来るが……って公安のデンジ君達だった。ここって公安の人達が来る場所なの?

 

「兄ちゃんじゃねえか!」

 

「こんにちは、デンジ君」

 

「そっちの人は……(可愛い)」

 

「私、レゼって言うの。よろしくね、デンジ君?」

 

「はっ……よ、よろしくな」

 

 デンジ君と僕が直接会うのは随分と久しぶりな気がする。

まだ彼がチェンソーの悪魔の心臓を宿す前だから結構な日数が経っていると思う。他のメンバーはアキ君と姫野さん、そしてパワーの四名か。

 デンジ君以外の三人は警戒するように僕とレゼを見ている。

特にパワーに関して言えば、レゼの胸元の氷のブローチに視線が釘付けだ。本能がフロストの力が宿ったものに対する恐怖が覚えているのかな。

 

「何でここに居るんだ?」

 

「僕達も食事ですよ。この子がここでご飯を食べたいと言ったので昼食は中華料理です」

 

「そうか。俺達も腹ごしらえに来ただけだ。あんた等をどうこうしようとは思ってないから安心していい」

 

「そうですか。こんなご時世ですから互いに気を付けないといけませんね」

 

「そうだな」

 

 ふむ、ここに来たのは本当に偶然みたいだ。

警戒はしているけど、僕達に何かをするつもりもないみたい。二人に関して言えば、僕の姿を確認した瞬間にフロストが居ないかの店内を見渡していた。

 彼女も気まぐれだから居る時と居ない時がある。

でも、レゼに持たせているブローチがあれば彼女もまた状況を把握することは難しくないだろうと思うな。溶けず壊れないと言われている氷の造形。

 

「ご注文どうぞ!」

 

「ラーメン4つと餃子」

 

「はいよ! ラーメン4つ、餃子頂きました!」

 

 入れ替わる様に注文を聞きに来た店員の人が彼らの注文を聞いて厨房へと声高らかに告げた。

そしてお待たせしましたと僕らが注文したラーメンが二つこちらへと置かれてゆっくりとお召し上がりくださいと柔らかい接客をしてくれた。

僕とレゼは温かいうちにラーメンへと箸を伸ばして口へと運んだ。

 

「国によって同じに見えて全然違うんだね」

 

「作り手によっても味はだいぶ変わってきますよ」

 

 ……う~ん、想像していた味とは少し違うかも。

僕が以前フロストに言われて作った満漢全席のものとは少し違うな。勝手に僕が期待してしまっただけだから言うつもりもないけど、お手軽な金額で食べられることを考えたら値段相応なのかな。

 あっちにも注文が届いたみたいだけど、普通に食べてるからそうなんだろう。

それとデンジ君、さっきからレゼの方をすっごいチラチラ見てる。女性から優しく対応されたのが初めてだったりするのかな?

 

まさか、そんなことないよね?…………あるのかな。

 

「お前ら、よくここのラーメン食えるな」

 

「あ?」

 

 その時、ずっと黙って奥のテーブル席で食べていた客の一人が口を開いた。

黙って聞いていると舌が馬鹿だと幸福度が下がるとか幼い頃から同じものばかり食べていると味の良し悪しがわからなくなるなど言葉を並べている。

 話を聞いているとどうもデンジ君の事を知っているみたいだけど、あっちからしたら誰だって感じになってる。

でも懐から取り出された一枚の写真を見てデンジ君の表情が変わった。

 

「てめぇ、どういうつもりだ?」

 

「知り合いか?」

 

「あぁ、写真の爺さんの方はな」

 

「銃の悪魔はてめえの心臓が欲しいんだとよ」

 

 銃の悪魔という言葉が出た瞬間にアキ君と姫野さんがピクリと反応する。

でも、それよりも早く懐から拳銃を抜いて男が狙いを定めて引き金と引いていた。デンジ君の頭部を撃ち抜き、アキ君の肩、姫野さん胸部へと命中させる。

 パワーも撃たれるが瞬時にしゃがみ込んだことで弾は外れていた。

そして次に僕らの方へも銃口が向けられている。

 

「デンジの知り合いは全員殺す。悪く思うな、居合わせた不幸を呪いな」

 

「巻き込まれ事故というものですか」

 

 引き金が引かれようとした瞬間、僕がするよりも早くレゼが動いていた。

ナイフを投擲し、銃を持つ手の甲を貫いている。痛みによって銃を落としかけるが、それをチャンスと見たパワーが間合いに踏み込んで下から殴り飛ばした。

 

「ちょんまげ!」

 

「コン!」

 

 手の形を狐にしてそう叫んだ瞬間に銃を持っていた客が大きな狐の悪魔に頭部が出現して飲み込まれた。

屋根まで破壊して、もう少し被害を抑えるとか考えないのかな。もうラーメンも食べられたものじゃないし、軽く息を吐いて立ち上がる。

 

首元のピンに手を掛けようとしているレゼを制した。

 

「いいの?」

 

「僕らが手を出す必要もないでしょう」

 

「でも、お兄さんの命を狙ったんだよ。報復しても誰も文句は言わないよ?」

 

「構いません。今の状態なら問題ないから。それよりもデンジ君を蘇らせておきましょう」

 

「彼がそうなんだ、わかった」

 

 状況を整理すると致命傷が一名、軽傷一名か。

デンジ君は不死身だからどちらにもカウントはしない。レゼにそう告げるとすぐに彼がチェンソーの悪魔の心臓を持っている人物だと把握していた。

さて、僕は姫野さんの元へと足を運ぼうか。

 

「ち、近寄るな。何をするつもりじゃ!」

 

「何を怯えているのかな、パワー。僕は君に何もしないよ? 少なくとも僕に何もしない限りは」

 

「し、信じてよいのじゃな? 今から嘘だと言っても無理じゃぞ!」

 

「もちろん。それよりも仲間が血を流しているのに何もしないの?」

 

「い、言われなくとも治療するわ! わ、わしは優秀じゃからな」

 

 怯えを見せたパワーに僕は何もするつもりはないと告げる。

本当かと疑う様子を見せているけど、嘘はつかないと言ってこちらの言葉を信じさせた。すぐに胸部から血を流す姫野さんの血を操って止血している。

 見た感じ銃弾は貫通しているみたいだけど、位置的に心臓を撃ち抜かれてる。

いや、もしかすると少しだけ逸れているかもしれない。僕は傍にしゃがみ込んで問いかけた。

 

「死ぬのは怖い?」

 

「怖いに決まってるじゃん。でも、デビルハンターになった時から覚悟はしてた」

 

「フロストと対峙した時と同じですね」

 

「自分が死ぬのは仕方ないよ。でも、アキ君を残して死ぬのは嫌だな。だから彼に死を近づけさせたくないの、お願いします。アキ君に、あの刀を使わさないでください」

 

 視線の先では狐の悪魔の口から姿を現した刀の武器人間?が瓦礫へと降り立った。

チラリとこちらを確認し、背中に携えた特殊な形状の刀を抜き使おうとしている姿がある。寿命を減らす武器を使っているのも大変だ。

 何かの悪魔との契約で与えられたものなんだろうけど、寿命を減らしてまで果たしたい目的があるのか。

いや、彼は銃の悪魔に対して憎悪と言ってもいいくらいの感情を持っていたんだった。でも、そこにたどり着くまでに死んだら本末転倒じゃないのかな。

 

口から血を吐いてまで彼を守りたいのか。

 

その刹那、チェンソーの心臓(エンジン)の音が響き渡った。

 

「早パイ! その刀を使ったらやべぇんだろ? だったら使うんじゃねえよ!」

 

「デンジ! お前……」

 

「こいつは俺に因縁があるみてぇだし、俺が相手する!」

 

「やられるんじゃねえぞ」

 

 どうやらレゼは無事にデンジ君の胸元のスターターを引くことが出来たみたいだ。

煙幕の向こう側から彼女が手を振っている姿を見えた。あの感じだとデンジ君に何かを吹き込んだのかな?

 

チェンソーと刀がぶつかり合って火花が散っている。

二人が戦っている間にアキ君がこちらへと駆け寄ってきて真っ先に姫野さんの心配をしていた。

 

「姫野先輩!」

 

「安静にしていれば、彼女が血を止めてくれているから大丈夫。ギリギリ心臓を外しているみたいだけど、急いで医者に見せた方が賢明だと思うよ」

 

「だったら急いで」

 

「状況がそれを許してくれたらだけどね」

 

 いくら止血されているとはいえ、危険な状態であることには変わりない。

だから時間との勝負になって来るけど、今の戦闘状態で安全に病院まで運ぶことが出来るとは思えないかな。目の前には武器人間、相手には増援の気配もあるし。

 

「レゼ、この人を彼女と一緒に病院まで運んであげてください」

 

「私は良いけど、いいの?」

 

「構いませんよね、アキ君?」

 

「あぁ、俺からもお願いしたいくらいだ。パワー、彼女と一緒にここへ姫野先輩を連れて行ってくれ」

 

「任せておくのじゃ!」

 

 そうしてパワーとレゼによって姫野さんはこの場を離脱して近くの病院へと向かうことに。

公安の人と一緒に居ると必ず何かに巻き込まれているのはきっと気のせいじゃないんだろうなぁ。そんな事を考えながら僕はデンジ君の戦いを観察していた。

 

初めてあの姿になった彼を見た感想を言うと戦闘経験が乏しいかな。

チェンソーをぶん回しているだけじゃ、相手によっては勝てないと思う。

 

「俺も援護に……」

 

「二人の戦いに首を突っ込まない方がいいと思いますよ。それよりもこっちにやって来る増援を無力化した方が賢明だと」

 

「増援だと? なんでそんな事がわかるんだ」

 

「ほら」

 

 階段を駆け上がって来る気配が複数。

すぐにそこから拳銃を持った男達が姿を現して刀の武器人間の方へと駆け寄っていく。遅れてやって来る赤い服を着た女性が指示を飛ばしている。

 

「二人はあいつを援護しろ。残りは私とあいつらを始末するぞ。私達の目的を忘れるな、狙いはチェンソーの悪魔の心臓だ。優先事項を間違うな」

 

「ほんとに来やがった。悪いがあんたにも協力を頼みたい」

 

「ほんとにみんな好き勝手言うんだからなぁ。その背中の刀を使わないというなら今回に限っては手伝ってもいいです」

 

「……わかった」

 

 今、リーダー格っぽい女の人がこっちを見て"あいつら"って言った気がする。

僕も含まれてるの? 今回だって完全に巻き込まれている側の人間なんだけど……。まぁ、離脱した姫野さんからあんな状態で頼み込まれたってこともあるし、見捨てるのも気が引けるか。

 

アキ君が僕の言葉に頷いた事でこちらも手伝うことを了承した。

 

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