悪魔が見つめるその先に   作:偶像崇拝

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第五話

 薄暗い牢獄の中で人型の樹木のような姿をした頭部に三対の目と腹部のうろの中に巨大な目を持った悪魔が佇んでいる。

両手を広げて声高らかに叫んでいた。

 

「未来最高! 未来最高! 未来最高!」

 

 妙にテンションが高く、未来最高と叫び続けている。

この悪魔の正体は未来の悪魔と呼ばれ、未来を見るという力があると公安に伝えられていた。

 

「! 珍しい客が来たもんだ。あなたの話はここまで聞こえてきているぜ」

 

「無駄話は嫌い」

 

「はっ! 相変わらずで安心したぜ、氷の悪魔」

 

 未来の悪魔の前に姿を現したのは氷の悪魔であるフロストだった。

厳重に施錠された部屋に彼女がどうやって入ったのかはわからないが、そこに居るのは間違いなかった。彼女がここに来た目的はなんだろうか?

 

「俺に何の用だ? あなたが必要なものはここにはないぞ」

 

「人間の未来を見るのは楽しい?」

 

「はぁ? おかしなことを言うな。それ以外に俺がここで人間に手を貸す理由がないだろう? 未来は最高だ!」

 

「そう。聞きたいことが一つある」

 

 未来の悪魔がこうして公安に協力する理由は人間の未来を見て楽しむことが大きな理由だった。

それが不幸ならば、更に愉悦を楽しんでいる事だろう。不幸な結末を迎える未来を見れば、協力する際の代償も少なくなるというのは当然でもあった。

そんな彼にフロストが聞きたいことは?

 

「私と彼を狙うのは誰?」

 

「誰だと? そんなのは全員だろうさ。手中に収めるということで人間どもは国の優位性を保てるんだろ」

 

「それは知ってる」

 

「おいおい、ここは地獄じゃない、あっちとこっちじゃ勝手が違うんだ。そもそもあなたを狙うにしても知ってる奴からしたら自殺行為だぞ?」

 

「……」

 

「納得するわけないか。銃の悪魔の肉片、持ってるんだろ? そいつを使えば見れるはずだぜ」

 

 フロストの目的は狙ってくる相手の正体を教えてほしいというものだった。

未来の悪魔は今の状態では満足な未来を見ることはできないと言うが彼女は納得する様子を見せない。それは地獄で未来の悪魔が未来を見ることが出来ていたからだ。地獄とは環境が違うのだが……。

 

観念した未来の悪魔はフロストが所持している銃の悪魔の肉片を寄越せと告げた。

すると迷うことなく肉片を未来の悪魔へと差し出した。

 

「いいか、ここは地獄じゃないんだ。正確な未来は期待するなよ? 見たい未来の選択は出来ない」

 

「わかった」

 

 未来の悪魔が肉片を飲み込んだことで一時的に個体としての強さが上昇する。

三対の目が開かれ、うろの中の巨大な目も何度か瞬きをして未来を見ようとした。

 

「見えるぞ、これはなんだ?」

 

 彼の脳裏に浮かぶのはどこかの高い丘の光景。

周囲が爆炎で燃え盛り、下の方で人々が逃げ惑う場面。これだけでは場所の特定もどの時期かも判断することはできないが、徐々に鮮明に見え始めてきた。

爆炎の中から姿を現したのは刀を鞘から抜き放って一閃するレックスの姿だ。誰かと戦っているようだが、爆炎の向こう側に居るらしく姿を確認することが出来ない。

 何かが爆発する音が連続して聞こえており、彼に向って近づいてきている。

レックスの視線は爆炎の中に向けられているがふと視線が外された。

 

その刹那、目が合ったのだ。そう、レックスが視線を周囲に巡らせた後、間違いなく未来の悪魔と視線が合わされている。

 

 

あり得ない。どの時間軸にせよ、そこに自身は存在せず感知できるはずがないと。

 

"覗きかな? あいにくだけどそういうのは好きじゃない"

 

レックスが再び刀を一閃する。

 

「ぐあぁぁ!!」

 

 未来の悪魔は左の三つの目を抑えてその場に膝をついた。

左手には目を抑えた時に付着した自分の血がついている。思考の理解が追い付かず、混乱する頭を落ち着かせようとするが冷静ではいられなかった。

 

「何を見た?」

 

「氷の悪魔、お前は誰と居る?! 未来から現在に居る俺に干渉してきたとでもいうのか!」

 

 未来と現在という別の時間軸に居る者同士、物理的な干渉は不可能だ。

未来を観測するということは出来る。それは観測であり、物理的な干渉ではない。だが事実として未来の悪魔は物理的な干渉を受けて斬られた。

 

「そう。彼は未来すらも――」

 

「俺の質問は無視かぁ!? 答えろ、氷の!」

 

「私が興味を持った人間」

 

「そんな答えで納得するわけっ!」

 

「黙って」

 

 フロストは今の未来の悪魔の反応で状況を察したのだ。

一人で納得する彼女に未来の悪魔が納得できるはずもなく叫びながら問い詰める。簡潔な答えが返ってきたが、ふざけるなと言おうとした瞬間、未来が脳裏に描かれる。

それは自身が彼女に無慈悲に殺されてしまうという未来だった。だから一度感情を抑えて、言われたとおりに静かにする。

 

「……」

 

「常識では理解できない。だから傍に居ることで観察する。どんな未来を見たのかは知らない。それでも今の反応を見ればわかる」

 

「未来視はほぼ確定で起こり得る未来を見せるものだ。つまり、現時点で既にあなたが興味を持つ人間は時間軸に干渉できる力を持っていることになるぞ。普通の人間が時間軸を超えて物理干渉を行ってきたなんて信じられねぇぜ」

 

「私達、悪魔も様々な能力を持っている。なら人間にもそういった能力を宿す者達が存在してもおかしくない」

 

「わかったぜ、今はそれで納得しておくぞ」

 

 フロストは未知に興味を持っている。

人間でありながら理解できないというレックスに興味を抱き、ただ傍で佇んでいる。理解できないからこそ興味を引き、観察をしているのだ。

 未来の悪魔からしても先ほど起こった事実は理解しがたいものだ。

だから彼女の言っている意味も理解することは出来る。悪魔が常識では考えられない力を宿すものが居るなら人間にもいてもおかしくないという可能性。

 

「未来とはすなわち可能性だ。やっぱり未来最高!」

 

「私は帰る」

 

「久しぶりに会えてよかったぜぇ!」

 

 やっぱり未来は最高だと未来の悪魔が両手を広げて叫ぶ。

フロストはもう用件は済んだと言わんばかりに踵を返すと身体に亀裂が入り、音を立てて砕け散り未来の悪魔だけが残される。

 

「本体じゃねぇのか。相変わらず、物騒な悪魔だぜ。何考えてんのか、理解できねぇ」

 

 未来の悪魔は砕け散ったそれを見て本体ではないと気付いていたようだ。

自分ではフロストの考えは理解することが出来ないと首を横に振っていた。地獄で何やら接点があったようだが、少なくとも敵対するつもりはないようだ。

 

 

 最近、色々と起こり過ぎてないかな。

少し前に知り合ったデンジ君が人間じゃ無くなってるし、公安のマキマさんから興味を持たれてることになってしまった。

 

「どこかで間違った選択をしてしまったのか?」

 

 悪魔との遭遇回数も心なしか増えたような気もする。

バッタ、カマキリ、トンボとか昆虫系の悪魔が多い。それは偶然としても原因は銃の悪魔の肉片だよね、絶対。捨てることは簡単だけど、それが原因で問題になるのも駄目だ。

見事に面倒ごとに巻き込まれてるなぁ、肉片要らないよ。力を欲する悪魔が寄って来るから嫌でも遭遇回数が増えるってことか。

 この考えでいくと肉片がある場所に悪魔が寄っていく事になる。

でも同じ場所に悪魔が何度も襲撃したって情報はこちらには入ってこないから違うのかな。それとも何か特殊なケースに入れて遮断することでわからなくしている?

 

「答えはわからないか」

 

 …集まってきたら来たで討伐したらいいのか。

どうして休息できるはずの場所で戦うが起こってしまうのだろう。公安はこの肉片を集めているって話も聞くし、素直に渡した方が楽?

でも、そうなった場合はフロストが回収に向かうかもしれないし。

 

「……本当にどうしよう」

 

「捨てなければいい」

 

 銃の悪魔の肉片の処理をどうしようかと頭を悩ませていると僕の前にフロストが座った。

いつもと同じ無表情で本を開いて読み始めると僕の悩みに答えるように所持していればいいと告げる。持っていたくないから悩んでいたんだけどな。

 

「どこに出かけていたんですか?」

 

「知らなくていい。お腹空いた」

 

「答える気なしですか。それで今回は何を食べたい?」

 

「洋食がいい」

 

「洋食ですね」

 

 相変わらず、自分の情報はあまり漏らさない。

でも、出かける前と今で少しだけ何かが変わったような気もする。それが何かはわからないけど、僕に対する敵意は無いから気にしなくてもいいだろうね。

さて、洋食のリクエストを受けたけど、何を作ろうかな。彼女が好きそうなメニューは何がいいだろう? 僕はそんなことを考えながらキッチンへと向かった。

 

 

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