ゲート、地球防衛軍、暫く戦えり   作:ハヤモ

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前書き
迷走により、ご迷惑をお掛けしております
長引かせず終わりに向けていきたいと思います


33.ローズウォール作戦・中段

EDFは帝都の施設、翡翠宮とバスーン監獄にいる講和派の救出作戦を開始。

日本支部だけでなく欧州支部など世界中から派遣されてきた部隊も動員。 ここファルマート大陸の覇権国家、帝国への大反抗作戦のような様相を堂々晒し始めた。

 

遂に侵攻が始まったとゾルザルは恐怖した。

真っ先に皇城を目指してくると思ったゾルザルは、今まで散々イキり散らしてきた事への恥も偏見もなく、兵士を城に集めさせて守りを固めるよう狂乱気味に命令。

翡翠宮を攻略中の部隊とバスーン監獄の守備隊の一部が引き抜かれて、それぞれの施設の戦力が低下。 更に命令系統が混乱した事で講和派の救出に都合の良い状況に。

だが、そんな事を知らないゾルザルは怯えすくみ、玉座で震えあがるだけ。

 

俺は皇太子様だぞ。 何よりも俺の命が、権力者が優先されるのは当然。

兵士や民、国なんてのはな俺様の言う通り盾になりゃいいんだ、そうして死ねる事を誇りに思えや!

そんな今まで通りの傲慢な考えに至る余裕は無く、1人逃げ出したい気持ちに駆られていた小心者であった。

 

そんな状況を間近で見ていたテューレは戦略情報部のAIマリスのようにザマァ見ろと思いながら、古田と情報を共有。

報告を受けたEDFは兵士が城に集中したのを好機と捉え、空軍と悪所のエアレイダーに連絡。 固まったところを重爆フォボスで吹き飛ばし、一気に戦力を削った。

 

空を飛ぶ大きなエイの群れ。 城からの爆音。

市井は悲鳴、パニックに。

 

この騒ぎを受け、いよいよ大変だと集結中の兵士が急足。 周囲への警戒や足元への注意が疎かになった。

その進行ルート上に工兵隊が指向性爆弾インパルスを仕掛けたなら、放出されたボールベアリングが兵士達の甲冑を蜂の巣に。

ウィングダイバーも電磁シャフトと呼ばれるワイヤートラップのようなものを張った事で足や胴体を自らの勢いで焦げ散らして、更に被害が拡大。

 

何とか城に到着した兵隊も、現地で待ち伏せしていたエアレイダーによる追加攻撃を受けて始末された。

砲兵隊の迫撃砲集中運用術により、市街地を放物線を描いて超えてきた榴弾の雨が広域に降り注ぎ、一帯は壊滅。

誘導ビーコンにより、フェンサーの背中から大型ミサイルのリバイアサンが放たれたなら、残党が1撃の爆炎の中に纏めて沈み逝く。

 

更に見せしめとして、元老院の議会場に軍事衛星サテライト(特地版)のバルジレーザーを照射。 帝国中から見える光の柱が建物を貫通。 粉々にしてしまう。

更に最高機密衛星砲、スプライトフォールを照射。 今度は狂気ピンク色の光の槍が何度も城の一部に突き刺さり城壁を軽く吹き飛ばす。

嫌がらせに開発者とされる狂った女科学者……その笑い声を帝国中に響かせたまである!

 

 

『神をも滅する光の槍ィ!!』

 

『もう1度、撃っても良いぃ?』

 

 

EDF隊員、ドン引き……!

が、民草には王族が神の怒りに触れたのだと恐怖した。 特別法で散々民を苦しめたのもある。

ならば当然の報いだと、ゾルザルは民からもいよいよ見放されていった。

 

なんだったら、悪所の娼婦達がEDFと協力して食糧などを帝都にコッソリ仕入れて民に売っていた分、人心は其方へ傾いた。

戦争も皇太子が馬鹿を続けるから終わらないのだ、そのぶん苦しむのは我々市民だと考えるようになれば、レジスタンスが組織され帝国軍への妨害が行われる。

そうなると、より民間人からの協力を得易くなり、地理情報や内政事情、軍の規模なども把握し易くなっていく。

 

一方ゾルザルは、そうした民草の無に等しい信頼など考える余裕もなく爆音で揺れる城に悲鳴を上げ、玉座から転げ落ちた。

集まった側から兵士は死ぬわ、神の槍まで降り注ぐわで、もう駄目だと死を目前に感じずにはいられない。

情けなく涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら、散々自分が苦しめてきた愛玩奴隷のテューレに縋りつき助けを求める姿を見た家臣達は「あ〜さっさと見限るべきだったわ」「帝国オワタ」「逃げ隠れせず今日中に、さっさと死んでくれ」「世間の迷惑考えて今すぐ死ね」と内心毒吐く。

 

子供のように地団駄踏んだり死にたくないと転げ回り、無意味な命令や怒声をあげて混乱を増長させるだけのゾルザル坊ちゃん。

帝国の将来を憂いた家臣は、体調不良、療養を理由に半ば軟禁状態にされていた皇帝陛下をEDF側に逃す準備を密かに進めた。

敵国の方が筋が通る分マシだからだ。

帝都からの脱出に成功したらピニャ皇女と共に正統政府を主張して貰い、ゾルザル達主戦派を逆賊として始末して貰う事にしたのであった……。

 

実際、この大混乱に乗じて城内に潜入した特殊作戦コマンドは皇帝とその家臣を連れ出した。

後の情報収集は偵察隊スカウトで十分と 判断、古田とテューレもついでに回収。

更にゾルザルの奴隷達……銀座事件の時に拉致された日本人の望月紀子達を救い出す大手柄を見せる。

後の始末は本隊に任せて帝都を脱出した。

正史では伊丹が皇帝とピニャを連れ出す活躍をするが、ピニャは未だ日本。 その代わりに古田とテューレ、望月の形だ。

特にテューレは、この時に助けの手を差し伸べて貰えたならついて行ったような雰囲気がある悲壮感があるだけに、ここで救われた形となった。

 

 

 

 

 

一方、翡翠宮。

救援到着まで僅かなEDF隊員と、薔薇騎士団が必死に帝国軍の侵攻を食い止めている。

その怒声と悲鳴が血肉に混ざる戦場の後方では、警備員が近未来的なデザインの小銃T4ストークで武装、防衛線が突破された際に最後の抵抗者としての役目を担うべく緊張を高めていた。

そして屋敷内で救助を待つ者達……外交官と講和派の貴族や議員は助かる事を祈り続けている。

 

その一部である若き外交官の菅原と講和派貴族、12歳のお嬢様シェリーは、自分達の為に命を賭けている者達がいる現実から目を逸らさず、どのような結果になろうと見届ける決意を固めていた。

 

 

「あまり外を見ちゃ駄目だ」

 

「いいえ、私は見ます。 わたくし達の為に戦い、死んでいく者達を……」

 

 

菅原の優しさに、大人びた対応をするシェリー。

その瞳は僅かに濁り、けれど真っ直ぐに現実を見ている。 本当に12歳の子供なのか……菅原は恐ろしくも思った。

 

シェリーはその歳に似合わず賢く、大人びた考えで何処か達観していた。

元々その片鱗はあったが、戦争の残酷が人の心を閉ざし、変形させ、合理的で温かみの無い瞳へさせてしまったのだ。

それでも彼女の心は強い。 大人以上に。

普通なら、血肉飛び散り心身不衛生で命が危ぶまれる戦乱が側で繰り広げられているだけで発狂して泣き崩れ、PTSDを発症、ゾルザルのように暴れ散らしたり暴走してもおかしくないというのに、この幼女は耐え難きを耐え、前を見て生きている。

 

 

「シェリー、菅原様の言う通りだ」

 

「それに窓の近くは危ないわ」

 

「お父様、お母様……はい。 今は離れます」

 

 

両親の言葉でやっと窓から離れたが、目を離せば再び戦場を見るだろう。

正史と異なり両親は助かったが、こうして戦争は起きてしまった。 こうしている間にも命は消えているのだ。

 

 

「菅原様、わたくしを軽蔑なさってください。 こうなる事を承知で貴方様の慈悲に縋り、翡翠宮へ駆け込んだのです」

 

「受け入れを決めたのは我々です。 君1人が背負い込み、気に病む事はないんだよ」

 

「やはりお優しい方なのですね……わたくし、婚約者として鼻が高いですわ」

 

「えっ!?」

 

 

笑顔で爆弾発言を投下する幼女!

全ての人が菅原に注目!

 

 

「あらあら。 色を知る頃合いかしら?」

 

「菅原様、万が一は我が娘を頼みます」

 

 

この土壇場で外堀を埋める!

シェリー、恐ろしい子!

 

 

「菅原君、君という男は……」

 

「まだ12の少女だろう!?」

 

「犯罪だぞ!」「ロリコンだったのか?」

 

「待ってください! 違いますからね!?」

 

「わたくしシェリーは本気でございます。 それとも菅原様はわたくしとは遊びなのですか? 聞けば殿方は一線を踏み越えれば、後はそっけなくなると……」

 

「言い方ァ!?」

 

 

キャリアが危うくなる発言をされ慌てる菅原。

だが必要ならそれすらも受け入れるだろう。

命掛けならば国より愛を取る熱い男でもある。

 

プロフェッサーもかつて、そうであった。

戦時中は地球より妻を、家族を救おうとし、時にラボから脱走もした。

それでも駄目な時が多かった。 その無念や苦痛は蓄積され、やがては復讐を果たし、1つの文明を滅ぼすに至る。

 

復讐は何も生まない、虚しいという。

実際にそう感じる者もいよう。 同時に復讐されたくない者が言い訳に使えた。

だが復讐とは自分の運命に決着をつける為にある。 プライマーが滅びたのはプロフェッサーだけでなく人類全体が未来へ進む為に必要な事だったと思う。

少なくとも、そうされるだけの事を相手はし続けていた。 タイムリープの中で何十億、何百億と死が繰り返され、総人口を超える命が散ったのだ。

その悲劇を体験していないストーム1の専属オペレーターの女性は復讐劇に反対。 非戦闘員、種族諸共文明を消すなんて事、人類にその権利があるのかと訴えた。

 

プロフェッサーは答えた。「あるとも!」と。

そして「妻の仇だ!」と続けた……。

 

ループの中で何度も何度も何度も何度も妻を殺された事の悲惨な記憶、憎しみ。

今生きているだけで、躊躇すれば妻はまた殺される。 人類全体が再び殺戮される。 それを回避する為にも未来へ進む為にも復讐は必要だ……そうしてプライマーは滅びた。

 

今回はどうか。

既に正史とは異なる点が多い。

 

この戦乱の行く末は果たして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翡翠宮防衛線。

グラビスが機関砲を唸らせ鉄のシャワーを肉薄してくる騎士共に喰らわせ、黄金の滝が絶え間なく足元を流れ出る。

ガードマンの盾が味方の老兵や姫騎士のお嬢様方を庇い、その間に高機動フェンサーが背面のランドセルノズルから青白い炎を蒸しまくり縦横無尽に飛び回る!

 

 

「騎士が空を飛んでるぞ!?」

 

「翼もなしにどうやって!」

 

「しかも片手で大剣を振り回してくる!?」

 

「振った時の衝撃波で一帯が血の海に!」

 

「あの鎧、剣も弓矢も通らねぇ!?」

 

「駄目だぁお終いだぁ、逃げるんだぁ……」

 

 

怯む帝国軍。

騎士の格好に見えるフェンサーだからこそ、超常的な現象より現実味があり、故に絶望感もひとしお。

帝権擁護委員に顎で使われて、更に同じ帝国騎士が相手故に士気は低かったが、ここに来て遂に逃げる兵士が現れ始める。

戦列は乱れ、防御の薄い所が生まれ、そこを翡翠宮を守る老兵や姫騎士が隙ありと吶喊、槍を突き刺せば瓦解していく陣形。

 

 

「空は飛ぶわ、射かけた矢や石がそっくり帰ってくるわ、オマケに重装亜人のデカい魔法の杖2本から大量に放たれる光弾ときた!」

 

「剣も槍も刺さらぬ鎧! 関節部すら効かない!」

 

「刺した部分から折れ曲がり刃が欠ける!」

 

「やってられるか! 俺は帰るぞ!」

 

「そもそも仮にも同じ帝国軍、争えるかよ!」

 

 

だが逃げる奴を委員は許さない。

督戦隊として、逃げる奴はボウガンで射抜かれ、無理矢理にでも戦わせる。

 

 

「逃げるな戦え! 弓兵、逃げる奴を狙え!」

 

「うわっ!? 味方から矢が!」

 

「ふざけんなよ掃除夫共が!?」

 

「皇太子ゾルザルの命に逆らう奴は死罪だ!」

 

「ゾルザルの小僧め! 映えある第1軍団をこのような目に遭わすとは! もう黙ってられるか! テメェらが死ね!」

 

「ガハッ!?」

 

 

とうとう後ろ弾ならぬ後ろ槍。

指揮官を気取っていたコボルト部隊……委員連中を見限った兵士が次々とその体を刺しまくり針山にしていった。

指揮系統はぐちゃぐちゃ。 これで全員が潰走すれば良かったが、そうは問屋が卸さない。

 

 

「掃除夫より同胞に殺される方がマシだ!」

 

「続けぇ! 我らは戦いの神エムロイと共に!」

 

「「うおおおお!!」」

 

 

誇りを胸に、第1軍団は吶喊。

ガードマンがヴィブロハンマーをチャージ。 一斉に横並びで振り下ろし、前方を薙ぎ払う。

それでも止まらない。 屍を乗り越えて突き進む。

 

 

「くっ、コイツら死ぬのが怖くないのか!?」

 

「イタリカを襲った死兵のようだな!」

 

「耐えろ! 後ろには無防備な民間人がいる、その事を忘れるな!」

 

 

肉薄され、無数の槍と剣がフェンサーの鎧を襲う。 大半は火花を散らして弾くも、首元や関節部の僅かな隙間が切られたり、刃による物理的な攻撃が効かぬと見るや、熱湯や巨人なトロールによる質量攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「アクチュエータ、機能低下!」

 

「パワードスケルトンを再起動しろ!」

 

「再起動、ヨシ!!」

 

「血が噴き出る……! 視界が歪む……!」

 

「投薬!!」

 

「戦場で目覚めるのは久し振りだ……!」

 

「倒れても何度でも起き上がってやる……使用者がどんな状態でも死なせてくれない。 パワードスケルトンの呪いだ……!」

 

 

膝をついては起き上がり、倒れては起き上がり。

そのプロ根性は敵味方問わず不気味に映る。

まるでそう、ストーム1らが対峙したゾンビのようだ。

 

 

「なんという気迫! いや精神だ!」

 

「敵ながら天晴れ!」

 

「この戦場こそ、我らの最期に相応しい!」

 

「その意気に応えねば無作法というもの!」

 

「「うおおおお!!」」

 

 

だが最早後戻りの効かぬ位置。

兵士は互いを鼓舞し、死に逝く事に誇りを抱く。

 

 

「へっ、第1軍団の連中、掃除夫が消えて益々溌剌としてやがる!」

 

「老兵の意地を見せる時! 守り抜けぃ!」

 

「退役間近にこれだけの戦場。 光栄ぞ!」

 

「背後にゃ未来の嫁さんじゃ、守らんか!」

 

「応! EDFと共に!」

 

「「EDF!」」「「EDF!!」」

 

 

薔薇騎士団の姫騎士も老兵も負けていない。

互いに兵士として戦いに誇りを持ち、殺し合う。

講和派を守る者。 滅さんとする者。

そうした政治的な事情があれど、秩序を失った後は誇りを見せつけ合う場と化す。

 

だが底が知れた。

数は圧倒的に攻撃側が多い。 対する守備隊は少なく確実に追い込まれていく。 ジワジワと屋敷に近付きつつあり、例えフェンサーとグラビスが倒れなくても、屋敷が制圧されたらお終いだ。

 

だが勝負は最後まで分からぬモノ。

ある1本の希望の無線が鼓膜を震わした。

 

 

「こちらストーム3」

 

 

懐かしくも重苦しい声に目が覚める思い。

筋骨隆々であろう歴戦の男を彷彿とさせるには十分な声は大変勇ましい。 知る者からすれば間違いなく頼れるタフガイだ。

 

 

「救援に向かう。 持ち堪えて見せろ」

 

 

その声の主は黒きフェンサー部隊。

旧死神部隊、グリムリーパーと呼ばれし猛者。

 

現ストーム3。

今や守護神と呼ばれる精鋭中の精鋭部隊だった!




後書き
グリムリーパーを戦後も名乗るのか迷い……。

色々手を出して中途半端に。
作品を書く上で、一貫性を持たねばと反省
気付くのが遅すぎましたね……当作はそれでも完結なるのか否か。例え酷い出来でも、ここから形はできるのか
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