ストーム1視点。学都ロンデルへ
プロフェッサーがメインに?
博物学に造詣が深い老師ミモザや、レレイの義姉で弟子のアルペジオと出会いたい
37.学都ロンデル
学都ロンデル。
3千年前からある古い街。
学問の神エルランと、ラーの二柱がまだ亜神だった頃に作った私塾が礎になっている。
それより今に到るまで、数々の賢者と魔導師が集まる学問の街であり続けている。
多種多様な種族が様々な研究をし、学会にて発表。 認められて昇格、学士、博士と経て最高位の導士となり名誉名声を得る者がいれば、否定され笑われて、インクを投げられて追い出され、長年行き詰まっている者だっている。
実験による爆発騒ぎが日常的であり、そうした研究区画は安全の為に高い壁などで隔離されていたりと、街の様相も学びの苦楽の為にある雰囲気となっていた。
アルヌスと帝国との間からズレた立地であり、戦時下でありながら活気に溢れ、影響を受けている様子は無い。
因みに老師カトーの弟子であるレレイはリンドン派と呼ばれる学派だが、リンドンは「ロンデル発祥の」という意味である。
ストーム1とプロフェッサー、亜神ジゼルを乗せたグレイプは街の宿、老舗の書海亭に向かう。
馬房に走行車両が駐車する様はシュールだったが、学徒でごった返す大通りや治安が怪しい路地裏に路駐したり、町外れに放置してパクられるよりマシだ。
その足で宿帳にサインすれば、過去に宿泊した著名人に連なり地球の英雄の名が刻まれるという、なんか凄い手帳と相なった。
が、地球人類の英雄を知らない主人のハーマルからすれば、亜神ジゼルの名前のみが光栄だろう。
まさか彼女を下した男とは誰も思うまい。
「ジゼル猊下にお泊まり頂けるとは望外の幸せ。 老舗を誇る当宿の自慢がまた1つ増えました」
「まぁ、成り行きだがな」
「ではお部屋にご案内させて頂きます。 当宿最高の部屋を用意致しました」
「俺達は別の部屋か?」
「ああ下男さん、あんたの部屋は皆さんの向かいの部屋だ。 物置だが近い方が御用の時は便利だろ」
悲報。
英雄ストーム1、下男と思われる!
ジゼルの奴隷や召使い扱い。 然もありなん。
倉庫にブチ込まれるのを楽しみにしておいて下さい状態。 他の面々が知ったら苦虫を噛み潰したような顔をしそうだ。
ジゼルはニヤニヤしているが。 ザマァ見ろとかオレを連れ回してるバチが当たったんだくらいの感覚か。 後で殺す。
「フェ、案内してやんな!」
主人が先程とは一転、乱雑に言うや、フェと呼ばれた小さな羽虫……いや翼の生えた美少女フィギュア、否。 妖精が現れた。
全裸がデフォルトの生物らしく、手の平サイズとはいえ目のやりどころに困るが、ここで従わない理由も無い。
礼を言い、ついて行く英雄野郎2人組の背中は、どこか小さく見えた。
プロフェッサーは眼鏡を曇らせ愚痴る。
「あの鬼のような種族の大男、プッカ族といったか。 相棒を勘違いしてぞんざいに扱う奴とはな。 ベース251の挨拶を思い出す」
「世界が違えば仕方ない。 言うことでもないからな。 まさか亜神と戦ったとは言えないだろう。 不信感を向けられるだけだ。 その意味では、泊まらせてくれただけマシさ」
更に冥府の王がいるベルナーゴ神殿に殴り込みに行く途中ですなんて言えば、いよいよアウトだろう。
「そうだな。 勘違いが晴れる時が来るかは分からないが、その時の反応が楽しみだ」
ストーム1の功績は地球に留まらない。
少なくとも炎龍を倒す偉業を成した。
公にされていないが、広まれば忽ち英雄だろう。
逆に広まっていないからこそ、人が多い街でも動き易いといえる。
「それでプロフェッサー。 この街でどうする気だ。 ゲート封鎖の方法があるのか?」
「伝手を頼る。 ロンデルにはカトー老師の義兄妹関係、ミモザ老師がいる。 カトーは物理専攻でミモザは博物学専門。 つまり生物や植物、鉱物の分野だ」
「自然とゲートは関係があるのか?」
「魔法の触媒に鉱物が利用される都合、ゲートという魔法の門に関する知見が得られるかも知れない。 そうでなくても、そこからの広がりも期待できる」
「直ぐにも訪ねよう。 神殿に行く用事もあるのだからな」
「分かっている……神殿でも何か情報が得られるかも知れないな」
そうこうしている内にもミモザ老師が住まう家に到着。 戸を叩けば、杖を持つ老齢の女性が快く出迎えてくれる。
「失礼します。 カトー老師の紹介で来ました、先進技術研究所主任のプロフェッサーと申します」
「それとストーム1だ。 色々話を聞きたい」
「まぁまぁ、遠路遥々ロンデルへようこそ。 カトーから手紙で聞いているわ、さあさ、上がって頂戴」
家に入るや、大量の本と書類の山。
テーブルや床の下地は全く見えず、辛うじて動線が確保されているのみ。
散らかっているが、これはミモザがズボラなのでは無い。 学芸員……研究、科学者のように未知への探究者からすれば見慣れた光景といえる。
特にプロフェッサーも職業柄、経験があるものだ。 大学教授の部屋のような……この星でも学者はいるという証左の空間に、思わず微笑みが漏れる。
「どうしたプロフェッサー?」
「いや、懐かしい気持ちになってね。 最新の論文や資料、そうした書類の山はこの世界にも築かれている。 探究者がいるという事だ。 我々の世界ではデジタル化が進み、その多くは端末に集約されたが、それでも昔ながらの光景は地球にもある所にはある」
「おほほ……ごめんなさいね、弟子のアルペジオと一緒だから、何かと積み重なっちゃって」
「お構いなく。 私の部屋もそうでした。 妻には頻繁に説教されたものです……アルペジオさんは鉱物の研究を?」
「ええ、よく分かったわね。 博士号を取っていて、ここでは鉄のアルペジオ、アルフェなんて愛称で呼ばれる事もあるわ。 導士号への挑戦で詰まっているけれど、まだ24だし元気いっぱいで羨ましいわぁ」
「カトー老師から話には聞いていました。 後はこの場の資料ですね。 魔法の触媒に使用する鉱物資源の種類、その法則性を見つけようと躍起になっている……というところでしょうか」
「まぁまぁ……! 是非、アルフェと会ってお話ししてあげて。 きっと良い息抜きになるし、良い刺激になると思うわ」
ストーム1、どんどん置いてけぼり……!
研究室の話は難しくて分からない!
戦時中も専門的な解説をされた事があるが、あれは部外者にも分かりやすく話してくれたから良かった。
だがここは、プロフェッサーにとって似た匂いがする畑の敷地。 やや遠慮が無い!
ジゼルと一緒に宿にいるか、そのまま神殿に殴り込みに行くべきだったか若干後悔中。
「では、それまでミモザ老師に色々と聞きたい事が。 ゲートについてです」
「アルヌスに開いた、異世界と通じている門ね」
「はい。 今、我々の住まう世界……地球と常時接続されている状態です。 しかし、これは双方の世界に歪みを生じさせているものと推定しております。 何とか閉じる方法はありませんか?」
「そこに注目するなんて、やはり貴方は素晴らしいお人ね……でも、御免なさい。 ゲートの開閉については、確実だと言える方法を知らないの」
「何か知っているというお知り合いは?」
「人……ではなく神様なら、何か知っているかも知れないわね。 冥府の王、ハーディのいるベルナーゴ。 ここロンデルより古い街だから、もしかしたら……」
「そこにも行く予定でした。 しかし確実とは言えない為、ロンデルを散策する事にしております」
「分かったわ。 この街にいる長命種の導士の方々なら、何か知っているかも」
「聞いて回ってみます。 それと、貴女のお弟子さんにも一応」
「アルフェに? ふふ、きっと喜ぶわ」
ストーム1も、何とか話について行こうと足掻く。 近くの書類に目を通す。
しかし分からない! 難しい用語や式ばかり!
(何か対抗策は無いのか!?)
今のところ、なにも。
幻聴が、少佐の無慈悲な返答が聞こえるよう。
もはや戦闘でしか自分を表現出来ないのか。
平和なのは良い事の筈だが、こうした時間の時は妙な虚しさを感じてしまうストーム1なのであった……。
後書き
クナップヌイにも行きたい
そこで次元の話をして貰いたかったり