ゲート、地球防衛軍、暫く戦えり   作:ハヤモ

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前書き
EDFらしさ、ゲーム的表現はなくとも、物語を進める為に書いて行こうと思います
誤りがあるかも。ご了承ください


38.パラレルワールド/球体大地説

 

 

「初めまして。 アルペジオと申します。 門の向こうの研究者とお会いできて光栄です」

 

 

その内に家に帰ってきたミモザの弟子、アルペジオことアルフェと挨拶をする面々。

義妹のレレイと違い、ボンキュッボンな体型は、彼女が研究者である事を一瞬忘れさせる魅力があった。

 

容姿だけでなく学位、レベルも高い。

この世界では下から順番に学士、修士、博士、導師があり、アルフェは上から2番目の博士号を持っている。

下級の学士になるのも苦労があるようで、貰うには先ず学士以上の者から基礎教育を受け、推奨をもらって導士に師事し、口頭試問に受かれば学士となり、晴れて賢者の仲間入りを果たす。

他の学派の導師を加えた口頭試問に受かれば修士号が貰え、そうすれば他の学派の教えも学ぶ事ができる。

博士号は審査会で老師全員に論文を認められないといけないが、受かればロンデルで制約なく学ぶ事ができ、多くの国では閣下と呼ばれるくらいには偉い立場となる。

導師は自ら書庫を構え、多くの学徒を教える事になる。 その権威は国の大臣より上をいくほど。

こうした学位を与えられるロンデルの学会は権威のあるものであるが、故に導師号の審査は大変厳しく、気に入らない発表者には意地悪な質問やインク壺が投げつけられ、南国鳥のようにカラフルな体となってしまう事が珍しく無い。

こうした事から、学会の導師号の審査は公開処刑吊し上げだという感想もある。

因みに地球で大卒となると、こちらの世界では学士、賢者に相当するらしい。

 

が、奥さん>地球人類のプロフェッサーは学位や容姿に惑わされる事なく握手を交わす。

 

 

「プロフェッサーだ。 こちらこそ会えて嬉しい。 もし言い難ければ、私の事は主任か教授でも構わない……アルペジオさんは鉱物と魔法の研究をされているとか」

 

「はい、魔法を行使する上で鉱物を触媒とするのですが、種類によって発動するものが違うんです。 私はその法則性を見つけようと研究していて……教授はどのような事を?」

 

「武器作りが主だが、生物構造や時空間の相違間についても研究している。 今優先しているのは時空間についてだな」

 

「時間と空間、ですか?」

 

 

世界が違えば次元が違う研究内容に、少し困惑するアルフェ。

時間、空間。 "世界の理"そのものについてなんて、当然のように享受してきたから気にした事もなかった。

故に"当然"に近いものほど疑問をぶつける者は少ないし、ましてや『目に見えるけど見えない』ものをどうやって調べるのか。

プロフェッサーからすれば魔法の存在こそ困惑するが、そちらは目に見えるモノなのだから受け入れるしか無い。

そして双方、視線を向け合う。 知識は武器だ。 気が付けば、アルフェとミモザ以外の学徒も何処からか聞きつけて、外で聞き耳を立てている。

 

 

「目に見えるものだとアルヌスの門だ。 同じ宇宙にある似た環境の天体同士ではなく、文字通り別世界同士が繋がるという事ならば、本来交わらない空間と時間が交差したという話になる。 であれば、どのような理屈だろうか。 プライマーの技術のようなタイムマシンやテレポーションに通じるものだろうか。 十分考え得る。 コレも憶測に過ぎないが、世界線の違いにより発生した"可能性同士"の接触ではないかと思う」

 

「可能性同士?」

 

「パラレルワールドだ」

 

 

聞き覚えがある、SFに出てくるワード。

アルフェはウチュウだのプライマーだのタイムマシンだのと知らない用語に首を傾げつつも、傾聴の姿勢を崩さない。

ストーム1はすかさず挙手。 置物化を回避する。

 

 

「俺達がした、歴史改変のような奴だな?」

 

「似ているが同じ時間軸の話では無いな。 ここでいうパラレルワールドは、良く似た並行世界等の事だ。 あの時あの場所、1人1人の選択の数だけ無数の世界が分岐、存在する。 それらが横並びにあるが接続されていない為に観測は不可能な世界。 それらの概念は遡れば天体の誕生どころか宇宙の創造という世界の始まり、ビックバンまで戻るだろう。 そこからの分岐の中にファンタジーの世界もあり得るかも知れない」

 

「そのファンタジーが、この世界か」

 

「そうだ。 生物相互の類似関係を描いた系統樹の世界版だ。 そうした1つ1つの世界が枝となっているんだ。 そして枝は交差する事はあっても、違う枝と融合する事は基本的に無い」

 

「だが、それが起きた。 門という形でな」

 

「そう云う事だ。 枝同士が近い場所、或いは交差するなどして接触している点に何かしらの力が加わった。 そして繋がった。 交わると、栄養や毒、知識に文化、良い物も悪い物も相互に混じっていく。 丁度今のようにな」

 

 

あまりにぶっ飛んだ理論。 いや妄想か。

どう判断するかは聞き手次第でも、それを偉い人が言っていると印象は違うものだ。

アルフェからすれば専門外の話だし、あくまで口頭による簡易的な説明だから理屈云々の追及はできず聞き手に回るのみ。

だがミモザは違った。 素直に感動し頷いた。

 

 

「流石教授ね。 そこまで考えられるなんて」

 

「ミモザ老師?」

 

「私も近しい考えに辿り着いた事があるの。 エムロイの使徒ロウリィに宿題を出されてね」

 

 

突然のロウリィの名の登場に顔をあげるアルフェとストーム1。

 

 

「えっ!? そうなんですか!?」

 

「ロウリィ? あのゴスロリ神官の亜神か?」

 

「ごすろりというのは分からないけど、ええ、亜神のロウリィマーキュリーよ。 五十年くらい前かしら、一緒に冒険した事もあったわ。 懐かしいわね」

 

「そんな事が……」

 

「俺が生まれる前から、ロウリィは少女の姿か。 改めて不思議な気持ちだ」

 

「色々あったけど……宿題を出されてね。 どうしてこの世界には多くの種族がいるのか、という問いを出されたわ。 私は各地を旅し、遺跡や石碑、古文を調べ、1万年前からいるとされるエルフや、長命種の長老の話を聞いて回り、1つの答えに辿り着いたの。 その答えがアルヌスの門よ。 今のように他の世界と繋がり、多種多様な種族がこの地に根を下ろした。 ヒトはその中でも新参。 ゲートを通じてやってきた。 故に帝国はアルヌスを聖地と呼ぶのよ。 自分達が来た場所だから」

 

 

なんだか壮大な話になってきたが、プロフェッサーは思案顔だ。

 

 

「であれば、門はヒトや他の知的生命体によって作られる訳では無い? 今のように常時解放されていた訳でもなさそうだ。 それこそ神と呼ばれる存在が関与しているのか。 前線捕虜の話を何処まで信用して良いか分からないが、帝国も門が開いたのを見計らい、銀座に来たようだし、いよいよベルナーゴへ行く必要が出てきたな」

 

「そうね。 今のように開き続けていた訳ではないはずよ。 いつか自然に消滅するのか、それとも何か特別な事情があるのかは分からないけれど。 長く開いているのは良い事ではなさそうね」

 

 

仮に開閉する方法が分かったとして、果たして閉じる事に皆が賛成するだろうか。

資源を得たい地球側の意見はEDFが抑圧できるとしても、アルヌスの街の人達は地球側から輸入されてくる物資の数々や、それを目当てにやって来る人達を相手に生計を立てている。

撤退するとなった際、暴動が起きないと良いが。

いや、その前に世界が崩壊するような天変地異が発生する前に解決出来るだろうか。

世界が繋がり、文化経済が入り混じり、時間が経つほど複雑に絡み合い繋がり溶け合っていく。

歪な形となり、寿命を擦り減らしている事に気付かずに。 やがてはどうにもなくなってしまうだろう。

2つの形が1つに近付くほど、離れるのは難しい。 決断が下される頃には、高難易度な世界版バイパス手術が必要になってしまう可能性もある。

 

心に巣食う不安を霧散させるように、ストーム1は明るい話題に変えてしまう。

 

 

「今は有力の説という、そういう話だな。 地球側に伝わる神話や怪物の話も、プライマーが連れて来たのを御先祖様が見たとかじゃなく、そうしたゲートが開いてやって来たのを見た可能性もある訳だ。 そうして御伽話として今に伝わっているんじゃないか?」

 

「そうだな……ヒトを含め、地球を生きる多くの生物の中には、そうしてやって来た種類もいるかも知れない。 戦時中、怪物の遺伝子を調査した結果、未来の地球の生物だと判明したように、ここの世界の人や他種族の遺伝子を調べれば地球と部分的に類似する可能性は捨て切れない。 ひたすら辿る事が出来れば、こことは違う世界に行き着くかも知れない」

 

 

悠長に調べる時間や方法なんて、今の人類には無いだろうが。

好奇心のままに、あれもこれも手を出すのが必ずしも悪いとは言わないが、今の地球人類にはプライマーの遺物調査という特上の調査対象が残っている。

先ずはその辺からだろう。 そこから"可能性"が派生していき、思わずして別世界の存在に行き着く事があるかも知れない。

夢は広がリング。

 

 

「そうだ、有力の説で思い出したぞ」

 

「どうした」

 

「この世界では天体観測の分野はどうなっている? 人工衛星を打ち上げる際に調査はしたが、民間にどこまで浸透しているのか気になってな。 暦があり1年が定義されているが、ここでも地球とは異なる。 中世的な文明レベルからして地動説や天動説辺りの議論がどうなっているか知りたい」

 

 

特地と地球、周期は異なっている。

1年は389.3日で地球の365日より長い。

その代わり、1日は少し短い。

地球側の考えで良いのなら、公転周期は地球より大回り、或いはゆっくりだが、自転は少し早いという事か。

それを特地の人は何処まで把握しているのか。

地球では今でこそ宇宙を浮かぶ球体の1つであり、太陽の周囲を回っている『地動説』が知られているが、昔は地球を中心に星々が回っている『天動説』が主流であり、地動説を唱えると異端者として始末されてしまう恐ろしい時代もあった。

この世界はどうか。 文明からして、天動説が支持されているのだろうか。 それとも、そもそもその考えまで至っていないのか。

それが由来のものかは分からないが、この世界ではかつて宗教戦争が発生し、誰でも使えたらしいロンデルの図書館が燃やされ、多くの知識が失われたというが……。

 

 

「それなら、私が」

 

 

アルフェが名乗り出る。

ここまで聞き手だったが、教える番がきた。

 

 

「地動説、天動説というのは多分、地球の言い方ですよね。 私の知るものは球体大地説の話になります。 といっても私は専門ではないので詳しくは……知り合いの研究賢者、フラットという男性エルフの方が詳しいかと思いますが」

 

 

途中から自信なさげにし、人を紹介する流れを作るが、プロフェッサーは話を促した。

 

 

「構わない。 聞かせて欲しい」

 

「ありがとうございます……大昔の人達は星の動きと季節とに関係があると気付くと、賢者達は星々の運行を観測し、正確な暦を作ろうとしました」

 

「天文学の成立か」

 

「はい……ですが二千五百年前、重大な事実が明らかになりました。 パッソルの球体大地説です。 その説が発表されたとき、人々は恐怖したといいます。 それまで円盤状だと信じていた大地が球体だなんて。 それでは大地の端からあらゆるものが、いや、大地さえ滑り落ちてしまうではないか、と。 ロンデルの会堂は怒る民衆に取り囲まれ大変な騒動に発展したそうです」

 

 

地球平面説のような話が、この世界にもあり、同時に批難もあったようだ。

アルフェは続ける。

 

 

「民衆は球体説が誤りだと認めさせようとした。 彼の学説が世界を滅ぼすと思い込んでしまったんです。 そこで賢者達は民衆を収めようと嘘をついた。 いえ、それは事実でもある言い方、要は詭弁を唱えたんです。 大地は球体だが何処にも落ちない。 落ちるべき下こそ、この大地なのだからと」

 

「なるほど。 民衆を安堵させる為の嘘が、多くの自尊心を満足させる嘘が必要だった訳だな」

 

「はい。 この話は、学問は民心に影響を与えるものである、という戒めとなっています」

 

 

受け入れ難い真実もある。

通説以外、理解が及ばぬなら、より一層と。

何故、何、どうして。 疑問に思い研究するのはヒトの利点かも知れないが、同時に全員がそうする訳ではないし、研究やその道の勉強をした訳では無い者や、愚昧な群衆に理屈を説明しても、彼等の疑問に徹底的に答えられたとしても、今まで信じて生きてきたモノを手放し否定するのはとても辛く、難しい事なのだ。 宗教上の理由が関わる場合もあるだろう。

 

現代となってもそうだ。 技術の発展と倫理観の天秤のように。

命を奪う兵器開発にも「人道的見地」から中止になるものがある。 強過ぎるものや、バイナリー弾のような毒ガスなど。 武装ドローンの使用も条約等で禁止らしい。 プライマーが投入してきた、生体部品を使用したアンドロイドはもってのほかだろう。

だが時と場合による。 いずれは理解されて普及するものもある。 命を奪うものに人道の有無を問う事に疑問もあるだろうが、追い詰められ戦局が悪化した人類が、戦時下に限るという条件付きで使用したりと、ガバい一線を引いて何だかんだ使用した。

 

球体説もこうして話がされているのは、なんだかんだ受け入れられたという事で良いのかも知れない。

地動、天動説は有耶無耶だが、学ぶ姿勢と発展を感じられる世界だと、プロフェッサーは一定の満足を得て莞爾として頷いた。

 

 

(しかし、この世界で新参とされるヒト種でも、長い時間をこのファルマート大陸で過ごしているのだな。 その間に技術水準は何処まで進歩した? 地球の文明開花、産業革命のような何か劇的な変化は無い? いや、そうした"イレギュラー"は排除されているとみるべきか。 安寧を望む神や使徒が存在し、ある程度管理された世界ならば……)

 

 

何かに気付きそうになり、思考を止めた。

それも憶測に過ぎない。 口にするのも危険な事かも知れないから。

だがこの語らいの時間は非常に有意義であったと思いたい。 肝心のゲートの話はあまり聞けなかったが、まだ時間はある。 その筈だ。

 

 

「あ、そうそう! 因みになんだけど」

 

 

ミモザ老師はニコニコと明るく恋花を投下。

 

 

「話に出てきたエルフ男性のフラットはね、アルフェに告白したのよ!」

 

「ちょ、老師!? 今、その話関係あります!? それに、その話は断りました!」

 

「あら〜、でもなんだかんだ仲良いじゃない」

 

 

この世界でも惚れた腫れたはある。

そうした共通点にも、何処か微笑ましさを感じるストーム1とプロフェッサーなのであった……。




後書き
帝都攻略の際はストーム1を合流させて、物語全体を纏めたいですね
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