ゲート、地球防衛軍、暫く戦えり   作:ハヤモ

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前書き
帝国側の描写も入れねば。


8.ピニャ・コ・ラコーダ

ピニャ・コ・ラコーダ。

艶やかな真紅の長髪が美しい女傑。 日本に軍隊を差し向けた皇帝モルトの5番目の子である。

 

側室の子だが皇位継承権十位を持つ姫である。

だが、快活な彼女は騎士の道を歩いていた。

 

騎士になる切掛は、彼女が12歳の時に始めた「騎士団ごっこ」が関係していた。

最初は同世代の貴族の女子らを集めたお遊戯だったが、やがて訓練は本格化。 遂には正規軍教官を招き、本物の軍事教練が行われる様にまでなる。

その中で自立、規律心、敬愛、愛護、連帯感が育まれ、義理の兄弟姉妹関係を結ぶ儀式もあって、独自の気風さえ確立された。

 

16歳、薔薇の咲く頃。

男性団員が卒業し、そのまま正規軍へと入隊する中、彼女は女性団員を主とする薔薇騎士団を設立。

周囲からは儀仗兵の様な存在と思われていたが、ピニャはあくまで実戦を希求した。

 

そして出陣の時が間近に迫るのであった。

 

 

 

銀座に攻め入った6万の正規軍が死亡、或いは捕虜となり、帝国が半数以上の戦力を失った後。

 

この失態に付け込み、諸外国が反旗を翻すのを警戒した帝国は、敵となり得るそれら属国に対し連合諸王国軍として呼集。

表向きはこのファルマート大陸を守る為、陣取られたアルヌスの丘を奪還する為、EDFを攻撃させる。

そして更に6万が死亡。 帝国の目論見通り騎士団を"壊滅させた"。

これで同じ世界の、他国からの侵攻という憂いを無くしEDFとの戦い、或いは外交に専念しようというモルト皇帝の企みは遂行されていく。

 

だが実戦経験も未だ無く、政(まつりごと)の経験も浅いピニャは父である皇帝の意図を読めず楯突いた。

敵に丘を陣取られたままで良いのか、と。

そんな娘のピニャに、皇帝は肯定するフリをし、次の様に述べた。

 

敵の情報を得る為には偵察がいる。

それは其方の薔薇騎士団に任せよう。

最も、ごっこ遊びでないのならば。

 

わざとピニャの琴線に触れる言動をし、娘に現実を見て来いと促した。

そしてムッとしたピニャ、言われるがまま偵察任務を承り、己が率いる薔薇騎士団と共にアルヌスの丘へ旅立つのであった……。

 

 

 

とはいえ、考えなしに突撃する脳筋でもない。

方々への連絡、馬に糧秣にと下準備。 いきなり丘に直進して犬死にする愚行を回避。

先ずは奇跡的に生き延びた療養中の諸外国の将、エルベ藩王デュラン陛下を尋ねて情報を得ようと考えていた。

 

その前に仲間と立ち寄った街の酒場にて。

たわいない日常会話から下品な話と様々な情報が飛び交う席で、EDFと一時的に行動を共にしたという難民や女給が貴重な話をしだした。

 

 

「コダ村の連中は炎龍に襲われたのに、4分の1の犠牲で済んだって!?」

 

「本当だ、アルヌスの兵士のお陰さ!」

 

 

皆の話題は自然と難民の話に集まり、嘘だ本当だの会話になり、驚愕と興味の議論が巻き起こる。

ピニャは酒を嗜みながら静かに傾聴した。

 

 

「それどころか倒しただって!?」

 

「魔導師やエルフだって無理だ!」

 

「本当に古代龍、それも炎龍だったのか?」

 

「飛竜や新生龍の間違いじゃ?」

 

 

騒めく酒盛りの男達。

古代龍、ドラゴンは自然災害同然の生物だ。

この世界の絶対王者で上位存在、生態系の頂点に君臨する怪物だ。

矢も魔法も碌に通じない頑強な鱗に覆われ、空を飛び、口から火炎を吐く。

到底、弓矢や剣が通じる相手では無いのだ。

 

それが……倒された?

 

あり得ない。 普通なら。

でも多くの難民達は口を揃えている。 信憑性が僅かに漂っては断じる事は出来ない。

 

私は従者に選んだハミルトンに尋ねる。

 

 

「どう思う?」

 

「これだけの避難民が言うのです、嘘には思えません。 私は信じても良いような気になっています」

 

「むぅ」

 

 

やはり、EDFとかいう軍隊はそれ程の力を?

その答えを後押しするように女給が語りかける。

 

 

「本当だよ騎士さんたち。 炎龍だったよアイツは、この目で見たんだ間違いないよ」

 

「詳しく教えて欲しい」

 

 

女給にチップを渡せば、彼女は得意気な顔になって、任せなと口を開き始めた。

 

 

「ありがとうよ若い騎士さん。 じゃ、とっときのを披露するよ!」

 

 

皆が鎮まり、彼女の話に注目。

どんな英雄譚が聴ける事か。

 

 

「コダ村から逃げる私らを助けてくれた兵隊さんは12人やそこら。 女が2人いたよ。 ひとりは背が高くて綺麗な黒髪の異国風美女。 もうひとりは栗色の髪で小柄な可愛い娘。 牛みたいな胸でさ、だけど腰はちゃんとくびれてんだよ」

 

「「おお〜!」」

 

「チッ! 男ってのは皆それだね……まぁいいや、それで炎龍が現れた時も物凄い速さの荷車で助けに来てくれたんだ。 兵隊さんは魔法の杖で攻撃を始めたんだけど、炎龍には効きやしない。 もう駄目かと絶望しかけた時、英雄が鉄の逸物を持って現れたんだよ!」

 

「英雄?」「て、鉄のイチモツ!?」

 

 

なにやら聞き馴染みがある、できた物語でもあるし、雲行きが怪しい単語も聞こえたが、取り敢えず続けて聴く。

 

 

「英雄が逸物を構えた次の瞬間、とんでもない音と一緒に炎龍の頭が吹っ飛んだんだ!」

 

「……そ、そうか。 魔法の杖に興味があるが、その鉄の逸物も同じ物か?」

 

「フフッ、あんたみたいのをカマトトっていうのさ。 逸物はイチモツ。 ありゃ男のナニそっくりだったよ、黒くて特大のね」

 

「フム……」

 

 

どうしてか、急に男共が気不味そうにソッポを向き始め、それぞれが黙食し始める。

先程まで下品なまでに騒いでいたのに。 そんなにイチモツとやらの話題が気に入らんのか。 それとも。

 

 

「ハミルトン、お前確か婚約者がいたな?」

 

「わっ、私は乙女です! あんなモノの話口にできるわけないじゃないですか!」

 

「ほう、"あんなモノ"か」

 

「あっ///」

 

 

今度は彼女にチップを握らす。

間抜けは見つかったようだな。

 

 

 

 

 

そうして情報収集をしながらも、アルヌスの丘から生還した将、エルベ藩王デュラン陛下の療養地へ1人赴く。

 

その姿は大変痛々しく、直視に耐えぬものだ。

眼帯は前からでも、更に片腕片足が無くなっており、断面を血濡れた包帯で締められてベッドに寝かされている。

 

 

「ピニャ殿下か……なんじゃ、敗軍の将を笑いにきたのか?」

 

「滅相もございません! しかし何故、エルベ藩王たる貴方がおひとりで……」

 

「何も聞いておらぬのか、アルヌスの丘での出来事を……」

 

 

声を震わせ、デュランは語り始めた。

 

敵は1万。 対する此方は何倍もの数。

当初こそ仲間内で楽観視すらしておった。

 

だが疑うべきだった。

先陣を切った精強の帝国軍が全滅した事を。

丘に着いた頃、呼びかけをした筈の当人ら……帝国軍は1人とていなかった事を。

 

やがて不信感は現実となって現れた。

 

敵も見えぬのに爆発が連続して起き、光の槍と雨が我らを襲い、多くの兵士が肉塊と化した。

 

何とか中腹まで進めども、今度は鉄の荊に行く手を阻まれ、立ち往生の間にも殆どが死に絶えた。

 

気が付けば、兵の死体が土砂に混ざっておった。

丘は赤く染まり、大地は血の海であったのだ。

 

両国の王もまた……。

 

圧倒的。 ひたすら圧倒的な暴力。

あんなものは戦ではない。 あってたまるか。

 

 

「連合諸王国軍は壊滅した……生き残りは皆逃げた……」

 

 

痛ましい。 壮絶な体験談だ。

それでも生き延びた以上、整った治療を受けて、その苦痛を和らげて欲しい。

 

 

「陛下、帝都へ。 医者の手配を致します。 我らの下でお体を」

 

 

だが陛下は拒絶した。

それだけの理由があるのだと語る。

 

 

「姫には悪いが帝国の世話にはならぬ。 もう儂も長くはもつまい……姫、帝国軍は我らより先に敗れておったのだろう? それを"承知"で皇帝は連合諸王国軍を招集したのだ」

 

 

そう。

いつ帝国に牙を向けるかも知れない我らの始末を敵に押し付けたのだ───。

 

 

「連合諸王国軍は大陸を守る為、死力を尽くして戦った。 だが敵は背後にいた。 帝国こそ我らの敵だったのだ」

 

「そんな……殿下、父上……」

 

 

嗚呼、何と言う事か。

ここに来て漸く父の謀略を、真実を知るとは。

 

だがEDFが敵なのは変わらない。

帝国まで諸王国のような末路を辿らせない為にも、情報を聞き出さねばならない。

 

 

「殿下! せめてお教えください! 敵はどのような者達であったのかを!」

 

 

だが返事は冷たいものだった。

 

 

「教えてやらぬ。 知りたくば姫自ら丘へ行くが良い」

 

 

きっと、口にするのも恐ろしい相手故に。

或いは帝国の人間である私への、せめての抵抗だったのだろう。

 

 

「……帝国は、負けません」

 

「だが良いか姫。 アルヌスの敵は神の如き脅威の軍隊! 帝国より更に強いぞ! 帝国自ら呼び込んだ敵に帝国は敗れるであろう! その時になって後悔するが良いわ!!」

 

 

殿下の罵声を背に浴びるのを甘んじながら、私は任務に戻った。

 

例えそうであっても。

この目で見ないとならない。 それ程の力を持つならば、きっと近隣の村や町に侵攻してくる。

 

 

「アルヌスの手前にイタリカの街がある。 噂では武装集団に襲われているとか。 もしやEDFとやら軍隊の仕業やも」

 

 

そうして私達はイタリカに向かったのだ。

そして半分は目論見通りだった。

 

EDFは、いた。 たった1人で。

その者、イタリカを攻める正規軍崩れの盗賊を相手に大立ち回りをしている。 凄まじいまでの強さ。 一騎当千級。 その者を中心として秀逸に爆炎の竜巻が起きているかの如く。

 

 

「たった1人で、これなのか!?」

 

 

バケモノ。 死神。 正に神の如き脅威の存在。

帝国は本当に神の怒りに触れてしまったか。

 

正直逃げ出したかった。 だけどイタリカの民兵達は怯えていない。 寧ろ"かの者"を応援し、士気が上がっているようだった。

 

真相を見極めねば。 今度こそ。

 

───そして彼が、ストーム1が特殊な男だというのを知ったのは、小隊の伊丹殿が来てからとなったのだった……。

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