時間は恐ろしいくらいに早くすぎますね(意味深)
それでは、どーぞ(^_^)
side mayu
「お待ちしておりました」
金髪のショートボブの女性が私におじきをする。その女性はどうやら、ここ、フライヤのオペレーターであるらしい。
「あちらの施設に行ってください。そこで、適合試験を行います」
そして、彼女の指示通りに私はその場所へ行った。
私は今日、ゴッドイーターの適合試験を受けにきた。適性があると言われて私は心の内側では喜んでいた。なぜなら、私は歩羽お姉ちゃんの手がかりを得られるかもしれない唯一の可能性であるからだ。
私が適合試験が行われる訓練場に移動している時に、周りの人々が私を見ながら、こそこそと話していた。
「…おい、今日、適合試験にくる奴って…」
「…ああ…《血まみれの魔女(ブラッディ・ウィッチ)》の妹だろ…」
「…えっ…《血まみれの魔女(ブラッディ・ウィッチ)》って…接触禁忌種の中でも世界で一体しかいないのアラガミだろ!?…そんなのに妹がいるはずがないだろ?」
「…いや…《血まみれの魔女(ブラッディ・ウィッチ)》は元は人間がアラガミ化した姿らしい…」
「だが…そんな奴の妹に適合試験やらせていいのか…もしかしたら、そいつもアラガミ化するんじゃねーの?」
元々、私の耳がいいので、彼らの話している内容は筒抜けだった。
《血まみれの魔女(ブラッディ・ウィッチ)》
これは歩羽お姉ちゃんのアラガミとしての識別名である。歩羽お姉ちゃんは接触禁忌種に指定されている。歩羽お姉ちゃんはそのため、フェンリル本部からは討伐命令は一度も出されたことがない。
私のことはどうでもよかった…しかし、歩羽お姉ちゃんのことを悪く言っていることに関して許すことが出来なかった。私は握り拳を作り、彼らを殴ろうとした時…車椅子に座っている美しい女性に腕を掴まれた。
「…ふふっ…駄目ですよ…そのようなことをしては…ね…」
「…はい…」
私がおぼろげに返事をすると、その女性は不適に笑う。彼らは彼女の姿に気づくと急に畏まって敬礼した。
「「お疲れさまです!!」」
「そんなに畏まらないでください…それでは…真結さん…行きましょう…」
「…はい…」
…ラケル博士…
この人はフェンリル極致化技術開発局、フライアの副開発室長。特殊部隊「ブラッド」の創設者にして、児童養護施設「マグノリア=コンパス」の設立者であり、フェンリルにおいて最高レベルの頭脳を持つとされているらしい。私が知っているのはこの程度だ。何故車椅子か…とか、年齢…とかは知らない。というか、触れてはいけないと思う。そんなことを考えながら、私は試験が行われる訓練場へ向かった。
「気を楽になさい…貴方はすでに選ばれて…ここにいるのです…今から貴方は、対アラガミ討伐部隊ゴッドイーターの適合試験を頂きます」
ベッドが左に向かってスライドすると同時に、床から赤い箱のようなものがせり上がってくる。箱は開いて、中から対アラガミ用の武器…神機と、それを制御するための腕輪が半分に割れて入っていた。
「試験と言っても、不安に思う必要はありませんよ貴方はそう…荒ぶる神に選ばれし者ですから…」
私の手首にゴッドイーターの…いや、正確には…ここ…フライヤの直属部隊用の黒い腕輪が付けられた。
「あなたに祝福があらんことを…」
その次にきたのは回転しているドリルだった。それは腕輪に引き寄せられるように突っ込んできた。ドリルが腕輪に当たると私を酷い激痛に襲われた。
(痛い!!痛い!!…けど…私は…)
(「真結」)
その瞬間、姉の声が聞こえた。それは優しさがこもった明るい愛しい姉の声。
(そうだ…私は…お姉ちゃんに会うために…)
(ゴッドイーターになるんだ!!)
ドリルが回転し終わったと同時に神機をつかみながら、冷たい床に転がり落ちる。
「適合失敗か?」
ラケルの横に立っていた金髪の青年が呟く。
「いいえ…よくご覧なさい」
ラケルが一点を指差す。その先にあったのは、言うまでもなく真結の姿があった。
「はぁぁぁぁぁ!!」
ここの施設全体に行き渡るほどの大きな金属音を立て、神機を床に突き立てた。
「…はぁ…はぁ…」
真結はまるで自身の神機を杖代わりにするかのようによろめきながら立ち上がる。
「まるで昔のあなたに洗礼を施したときと同じみたい…」
ラケルは傍観者の立ち位置から微笑みながら、自身の感想を述べる。
(というか、かなり体力をもっていかれた…)
真結は疲れてラケル達の会話を聞く余裕がなかった。
「それでは、試験を終了します。体力の回復に努めてくださいね…それでは…」
…ラケルからの通信が切れた後…
「…会えるといいなぁ…歩羽お姉ちゃん…」
そう呟きながら、私は笑っていた。
side out…
side fuu
…雨…
…赤い…まるで…血を浴びているみたいだ…
黒いコートとジーンズに赤い雨が流れ落ちる。防水性であるからコートは雨をはじき、雨粒はまるで血しぶきを浴びた後みたいになっていた。対照的に私の長い髪はそれをスポンジのように染み込む。べったりと頭に髪が張り付き、少し鬱陶しく感じる。
「…真結…」
私が呟くと後ろで獣の咆哮が聞こえてきた。
…おそらく…ヴァジュラだろう…
私はヴァジュラを見て、ため息をつく。ヴァジュラの咆哮は威嚇の類だった。だが、それは本能的に私に負けを認めていることと同じである。
ヴァジュラは飛びかかる…私の体を引き裂かんばかりに、腕を振り下ろす。ゴッドイーターならば、盾で防ぐか、避けるか…だろう。
…ゴッドイーターならば…
…結果、ヴァジュラの振り下ろした腕は私に届いた…
…だが、威力はない…
…それもそうだろう…私はヴァジュラの腕以外を跡形もなく消し飛ばしたのだ…
…これは、身に余るほどの私の力…
…ヴァジュラの腕をつかみ、そして、私は呟いた…
「ごめんね…真結…私…もう…“化け物”なんだ」
妹である真結はもちろんこの場にいない。なのに私は懺悔する。
「…だけど…真結に…会いたいな…」
そして私は残ったヴァジュラの腕を貪る。甘い血の味…溶けるように口元に広がる肉の食感と温度。
「…おいしい…」
私の妹に会えない寂しさを食欲で埋める。
「真結は…私のこと…どう思っているかな…それとも…もう…」
私は俯きながら…
「…私のことなんか…忘れてるのかな…」
その後、私は新たな食事を求めてその場を去った。
side out…
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それでは、次回お会いしましょう。