これからも出来たら追加していこうと思います。
変でなければいいな。
目の前にそびえ立つは、ゲヘナ学園。俺たちを攻撃してきた「ヨコチチ」が所属する、騒々しい学園だ。本来なら、この場でヨコチチを呼び出して例のワンワンプレイと洒落込む予定だったが、今は残念ながらそんな「楽しい」時間は無さそうだ。世界はあちこちで闘争の火花が散り、平和とは程遠い。一つ一つバットで解決していくのも俺らしいが、そんな悠長な暇はない。目的は、あの**翼の生えたモップ(ヒナ)**だ。
そのモップを探そうと一歩足を踏み出した、その時だった。
「なんでお前がここにいるんだ?」
聞き覚えのある、少し刺々しい声。視線を向けると、予想通りの人物——イオリが、警戒心に満ちた目で俺を射抜いていた。
「あっ、あの時俺たちを攻撃してきた無差別テロの実行犯だ」
つい、思ったことをそのまま口にしてしまった。別に悪気はない。これは事実の確認だ。しかし、彼女は顔を顰める。
「その件についての話は終わったじゃないか!人聞きの悪いことをさらっと言わないでくれない!?」
……どうやら、俺の率直すぎる表現は彼女の琴線に触れたらしい。だが、俺はポーカーフェイスを崩さない。
「で、なんのようだ?」
「あの翼の生えたモッ……ヒナを探しにきたんだ。」
「はぁ〜!?無理だ!」
出会い頭に断られる。これは予想外だった。俺の計画では、彼女たちの「ボス」に会って交渉する、という段取りだったからだ。こういう時に必要なのは、きっと賄賂だろう。人の心を動かす潤滑油、いわゆる「誠意の物質化」だ。
「まぁまぁ、そう言わずにこれをあげるからさ……」
俺は静かに、コレクションケースから取り出した**「素晴らしいゴミ」を手渡した。俺の、かけがえのない宝の数々**を。
イオリはそれを受け取り、一瞥するなり「フン!」と鼻を鳴らした。そして——
彼女は、俺の宝物を投げ捨てた。
「ああ!!!!!!!」
感情が爆発した。俺の表情が、一瞬にして崩壊する。
「何をするんだ!俺の大事な相棒たちに!!」
投げ捨てられたのは、ただのガラクタではない。それは俺の探索と連系の歴史、そして救済の哲学が詰まった、唯一無二のコレクションだ。それを無造作に、まるで虫でも払うかのように投げ捨てる。この横暴な行為に、俺の好奇心と行動力は瞬時に憤りに変わった。
「おまえ、それが賄賂になるとでも思っていたのか?それが仮に私の望むものだったとしても風紀委員は賄賂なんかじゃ絶対に動かないぞ」
——へぇ。
俺の中で一つの**「観察」が生まれる。ヨコチチを出したりして風紀を乱す奴が行政官とかしている学園だから、てっきり「風紀」なんて名ばかりの飾りだと思っていた。だが、彼女は違うらしい。これは興味深い。このイオリという存在は、この学園の「構築」**された常識とは一線を画しているようだ。
「頑固だな……」
俺は、投げ捨てられた相棒たちを横目に、静かにそう呟いた。
「分かったか?ヒナ委員長は忙しいんだ?そんなに会いたいのなら誠意を見せてもらわらないと」
彼女の瞳の奥に、何か悪戯めいた、あるいは試すような色が浮かんでいるように見えた。
「たとえば私の足を舐めるとか……」
え?足を舐めるのか?それが誠意とはやっぱり風紀とは名ばかりなのかもしれない…… でもなぜだろう。これは舐めないといけない気がする。開拓には五つの言葉がある、人の足を舐めるのも探索、理解、構築、連系、そしてーー!救済今や、それの全てが足を舐めることにかかっているんだ! 俺はすぐにイオリの足を舐めた。
人としての尊厳?そんなもの、ゴミ箱を漁る時に一緒に捨ててきた。目的のため、好奇心のため、そして何より開拓のためだ。
「ひゃん!?」
イオリから、情けないような、それでいて驚愕に満ちた声が漏れる。
「ちょっと待て!まだ話は——って人としての尊厳とかそんなものはないのか!?」
俺は立ち上がり、ポーカーフェイスに戻った。表情には一切の動揺がない。
「そんなものはゴミ箱を漁る時に一緒に捨ててきた!」
俺の返答を聞いた彼女は、一瞬言葉を失い、そして震える声で叫んだ。
「**ヘンタイ!狂人!**やっぱり帰れ!お前だけは絶対に合わせられない!」
結局、足を舐めたのに目的は達成できなかった。
イオリが顔を真っ赤にしたまま固まっていると、背後から涼やかな声が降ってきた。
「――なんだか楽しそうね。」
シロモップ……じゃない、ゲヘナ風紀委員長・ヒナが、いつの間にか俺たちの近くに立っていた。
「ひ、ヒナ委員長!」
イオリは跳ねるように姿勢を正す。
おお、来たなゲヘナ白モップ。
俺の脳内でファンファーレが鳴った。
ヒナは俺とイオリの距離をちらりと見て、ふっと息を漏らす。
「今まで、自分のために頭を下げる人はいたけれど……他人のために、ここまで必死になる人は初めてね。」
その声は穏やかだったが、何かを見極めるように鋭さも帯びていた。
「仲間を見捨てないって言葉――あれが本物だったって、今ならはっきり分かる。」
その言葉に、胸の奥で何かが軽くなる。
俺は素直に頭を上げた。
「深刻な状況なんでしょう? ――開拓者、顔を上げなさい。」
イオリが焦った顔で割り込む。
「い、いやヒナ委員長! 彼は別に頭を下げてたわけじゃな――」
だがヒナは俺とイオリの恥ずかしいほど近い距離を見て、
そして――
「………………//////」
顔を赤くして静止した。
……え?
えっ、これはどういう反応だ?
まさか“そういう誤解”をされたのか?
いや違う、落ち着け俺。モップは深く考えるタイプじゃない。
多分これは……多分だけど……え? いや、やっぱり分からん。
どのみち、話はすぐ本題に戻された。
しばらくして、
俺の“さっきの行動”については――ヒナの前でこれ以上やらないこと、という条件付きで話を聞いてもらえた。
言い出しっぺはイオリなのに、なぜか俺が怒られた。納得はいかない。
ヒナは腕を組み、真剣な表情で俺を見る。
「状況は理解したわ。……いいでしょう、私も協力する。」
「ヒナ委員長!?」
イオリが目を見開く。
「カイザーの活動が日に日に激しくなっているのは事実よ。他自治区への過度な干渉は避けるべきだって意見もあるけれど……後々ゲヘナにも問題を引き起こしうる相手なら、ここで芽を摘むのは問題ないと思う。」
さらりと言うが、重い言葉だ。
「それに私たちはアビドスに勝手に攻め込んだ責任がある。ここで償うのも悪くないわ。」
彼女の**「理解」は、実に驚くべきものだ。あのゲヘナ学園の喧騒の中で、「責任」という重りを自ら背負おうとする。これは、単なる謝罪や反省ではない。彼女自身の「構築」した倫理観に基づいた、ひとつの「探索」**の結果だろう。俺は、ポーカーフェイスの裏で、その清々しいまでに真っ直ぐな意志に、静かな好奇心を刺激されていた。
そして、彼女はさらに予想外の言葉を口にした。
「安心して、今回は私一人で行くから……」
その瞬間、俺の目の前のイオリが「え!?」と短い悲鳴を上げた。その驚愕は、彼女の言葉が常識的な**「連系」を断ち切るものであることを示していた。誰もが多人数での行動を予測する中で、彼女は孤立**を選んだ。
「みんなで行くなんてそんな決断があの狸から降りるわけがない……だから私が行く。」
彼女の言う「狸」とは、この世界のどこかの権力者か、あるいは事務的な組織のトップだろう。彼女は、上層部の非合理的な**「構築」をすでに「理解」し、それを乗り越えるための最短ルートを「探索」している。その「探索」の結果が、この「単独行動」**だ。
イオリが何か反論しようと口を開いた瞬間、ヒナはそれを遮った。
「反論は反省文を書き終えてから聞くから……」
「ぐ、………」
イオリは言葉を飲み込み、その表情は悔しさと、そしてわずかな諦念に染まっていた。ヒナのこの言葉は、単なる命令ではない。彼女たちの上下関係を超えた、絶対的な「正しさ」を纏っている。彼女の冷徹なまでの事務処理能力、そしてそれを支える揺るぎない信念が、イオリの反論の意思を文字通り封殺したのだ。
そして、彼女は最後に、俺に向けられたとしか思えない言葉を、静かに、しかし熱を帯びて囁いた。
「それに見てみたいのよ、彼の開拓の意志をこの目で」
「開拓の意志」——その言葉が、俺の胸に響いた。それは、俺の行動原理の核心だ。彼女は、俺のその狂人的な天然の行動の裏側にある哲学を、一瞬で**「理解」**したのだろうか?
とにかく、これで協力者を得た、準備万端後はアビドスへ向かうだけだ。
ーーーーーーーーー
砂漠に吹き付ける風が、焼けつく砂粒を舞い上げる。
アビドスの校門前――そこはもはや「戦場」と呼ぶ以外にない光景だった。
便利屋対策委員会の少女たちは、四方から迫り来る**“何か”**に包囲されていた。
それはかつてのオートマタの形をかろうじて留めながらも、もはや別物――黒紫の生体金属にねじ曲げられ、反物質の瘴気を撒き散らす“壊滅の造物”へと変貌している。
目の前で跳ね回る異形を見て、セリカが苛立ちを隠さず吠えた。
「何よコイツら!見たことないんだけど!!」
その声に重なるように、カヨコが冷静な顔で銃身を握りしめる。しかし、その表情には珍しく焦りが混じっていた。
「私の銃を使った威圧も効かない……」
ムツキが小さく口笛を吹くように笑い、肩を竦める。
「なんかさ〜命知らずって感じだよね〜形もかなり歪んじゃってるし……結構ヤバイ感じ?」
アヤネは分析端末を操作し続けていたが、画面に映る数値は常識を逸脱していた。
「分析の結果彼らに無機生命としての反応はありません。」
ノノミが一歩後ろへ下がり、青ざめた顔で呟く。
「つまり、私たちは幽霊さんと戦ってるってことですか?」
しかしアヤネはかぶりを振った。
「不可解な点が多くて、なんとも……」
──そう、彼女たちの前にいるのは、壊滅の造物と化したオートマタ。開拓者が旅路で幾度も遭遇してきた異常存在。破壊の意思のみを宿す純粋な災厄だった。
そして、その惨劇を見下ろすように立つ影がひとつ。
カイザー理事である。
「ははは、実に滑稽な姿だな………開拓者も、副生徒会長もいなければこんなものだったとは」
老獪な笑みを浮かべ、愉悦を隠そうともしない。
「少々やり過ぎてしまったかもしれないな」
言葉とは裏腹に、その瞳には後悔の色は一片もなかった。
「だが、こうやってまた一つの学校が滅び我が手の中に入る光景を見るのは何度見てもたまらないな……」
狂気すら漂わせながら、彼は一歩前へ踏み出す。
「さて、お前たちはあとどれくらい耐えてくれるのかな?」
セリカは息を荒げながらも前へ出た。背筋は折れそうでも、その意地だけは折れていない。
「耐えるわよ、いつまでもーー」
その言葉を遮るように、静かな声が戦場へ響いた。
シロコだった。
「あなたは銀河打者が逃げたと思ってるの?それは間違い」
砂嵐の中でも、彼女の瞳は揺るがなかった。
「彼は今もアビドスを救えるって信じてる」
アヤネも続く。
「彼は言いましたアビドスの未来は「壊滅」じゃなくて「存護」だって」
ノノミは拳を握りしめ、震える声で叫ぶ。
「私たちの意志は決してあなたのような汚い大人には負けません」
そしてアルが一歩前に出て、敵を射抜くように言い放つ。
「便利屋も、逃げるつもりなんて一切ないわよ。」
「ゲスに負ける悪なんてカッコ悪いもの」
その瞬間、カイザー理事の口から押し殺した笑いが漏れ始め、やがてそれは狂ったような哄笑へと変わっていく。
「ふ、フハハハハハハ!!!」
「状況の判断まで出来なくなっているとはなお前たちは本当に馬鹿らしい」
彼の声が戦場を支配しようとした、そのとき。
「良いだろう、その彼がくる前に全滅させ思い知らせねばな、「壊滅」こそがアビドスの命運であるとーー」
爆ぜるような声が割って入り、空気が揺れた。
「それは答えは間違ってるぞカイザー!!」
戦場の横手から、紫の光が閃く。瞬く間に無数の弾幕が飛び、反物質レギオンの群れを一掃した。
砂煙が舞い立ち、暴風のような衝撃が渦を巻く。
セリカがその気配を察して顔を上げる。
「ようやく来たわね……遅いわよ!!」
シロコが、長い睫を揺らして呟いた。
「ん、遅刻」
カヨコは僅かに身構えながら呟く
「この弾幕ってもしかしてー」
ムツキが砂煙の向こうを見つめ、愉快そうににやりと笑う。
「クフフ〜芦毛ちゃんやる〜」
砂煙がようやく晴れ、そこに立っていたのは──開拓者・穹。そして、その隣に立つのはゲヘナ風紀委員会の頂点、空崎ヒナであった。
アルが目を剥き、声にならない悲鳴を上げる。
「ひ、ヒナ委員長!?」
(ちょっと待って!!今私、アビドスの助っ人ムーブしてるんだけど!?ここで逮捕はマズい、非常にマズいわ!!!)
アルの心は一瞬で修羅場と化したが、その恐怖はすぐに打ち消される。
ヒナは淡々と、だが優しい声音で告げた。
「安心して便利屋、今の私はゲヘナ風紀委員会としてじゃなくて空崎ヒナとして来てるの、」
アルが呆気に取られて「え?」と漏らすと、ヒナは微笑んだ。
ヒナの声音は落ち着いていた。だがその裏に、ゲヘナの頂点たる威圧と柔らかい余裕を同時に孕んでいる。
「だから逮捕しないわ。協力しましょ」
その一言に、アルは胸を撫で下ろしながらも、どこか誇らしげに顎を上げた。
「も、もちろんよ!」
そして、アルは戦場の熱風をまといながら、鼻息荒く言い放つ。
「目に焼き付けなさい便利屋のアウトローがいかほどなものかをね」
ヒナはその勢いを面白がるように微笑んだ。
「そうね、活躍次第では要注意人物に登録してあげる」
「え、いやそれはちょっと……」
アルの顔が一瞬で青ざめる。その反応に、ヒナの目元がわずかに楽しそうに揺れた。
安堵と恐怖が混ざり合う中、アルは胸を押さえた。先ほどまでの危機とは別種の意味で、また心臓が止まりそうだった。
しかし戦場は一瞬たりとも待ってはくれない。冷たい砂風が荒れ狂い、壊滅の造物がうねる中──穹が、風を切るように歩み出る。
不快げな鼻息を鳴らしながら、カイザー理事が穹たちに向き直った。
「フン、来たか。ナナシビト」
その声には侮蔑と興味が入り混じっていた。
「聞いた通りの奴だ。まさかこの崩れかけの学校のために自ら窮地に立つとは……」
穹は一歩前へ進み、砂を裂くようにバットを構える。その動きには怯えも揺らぎもない。ただ、静かなる怒りだけが宿っていた。
カイザーの口角が、いやらしく歪む。
「ナナシビトよ、なぜ貴様に黒服といった天外の存在に喧嘩を売ったのか分かるか?」
穹は迷いなく言い放った。
「"星核"だろ?」
カイザーの目が愉悦に細まる。
「ほぉ〜よくわかったな……」
その瞬間、彼の掌が淡い光を帯び、やがて金色に輝く球状のエネルギー体が現れる。それは周囲の空気でさえ歪めるほどの禍々しい輝きを放っていた。
セリカが思わず叫ぶ。
「何よアレ!」
穹は短く息を吸い込み、その光を睨みつける。
「アレは『万界の癌』と呼ばれる星を蝕むやつだ。一度でも影響を受けた場所は元には戻らない……危険な物質だ。」
「俺たちは星々を開拓すると同時にアレを封印してたんだ。」
ヒナの表情が初めて揺れた。理解を超えたスケールに、眉がわずかに震える。
「星核………」
アヤネも驚愕を隠せず声を上げた。
「どうしてそんなものをあのカイザーが持ってるんですか!?」
カイザーはその反応すべてを楽しむように、高らかに笑った。
「コイツはな、ここアビドス砂漠の宝物を探していた時に偶然手にしたものでな」
「なぜかコイツを持つと"ヤツ"の方からやってきたんだ。」
その言葉に、皆の背筋がぞくりと震える。
だがカイザーはそんな恐怖を甘露のように味わい、さらに言葉を重ねた。
「他にも部下を変質させ我々の戦力を増大させることもできた。」
「これがある限り我々は無敵だ!!」
彼の目は狂気の金色に染まっていく。
「貴様のその力も埋め込まれた星核のおかげなんだろう」
穹は……沈黙した。
その沈黙に皆が息を呑む。
やがて穹は、静かに、低く呟いた。
「確かに俺の体には星核が埋め込まれてる……けど、お前たちとは違う!」
声が砂漠を震わせる。
「俺はこの力を利用しようと思ったことはないし、今までの力は全て開拓の旅で得たものだ。」
その背を、アビドス全員の視線が撃ち抜く。
穹は一歩踏み出し、未来へと吠えた。
「だから証明してやる、アビドスの未来はーー」
「お前たちのものなんかじゃないってことを!!」
カイザーの口角がゆっくりと吊り上がっていく。
「ふははは!!そうか、なら答え合わせといこう」
そして彼は──
手に持っていた星核を、自らの胸へと押し込んだ。
金色の光が爆発し、周囲の砂が跳ね上がる。
「ぐわァァァァァ!!!!」
悲鳴とも歓喜ともつかない叫びが響き、カイザーの身体が狂ったように蠢きはじめた。
やがて──
変貌を遂げたその姿が、異様の光を帯びた邪悪な笑みを浮かべる。
「ふは、ふハハははは!!これが神の力だ!!!」
砂漠全体が震えた。
次の瞬間には、アビドスの命運を左右する決戦が始まる。
続く
今回の開拓の旅はひとまずここまで、次回をお楽しみに
Mr.ミミ作のコーナーの今後
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新キャラの方がいい
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ストーリーに関係するキャラがいい