青春を開拓する銀河打者   作:現代の弁慶

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宇宙ステーションヘルタ
ヘルタは、宇宙ステーションのメインモニターに映し出されたデータを見つめながら、興味深げに口元を歪めていた。
「……」
その様子に、隣に控えていたスクリューガムが静かに問いかけた。
「ヘルタさん、開拓者さんの行方について何か掴めましたか?」
ヘルタは画面から目を離さず、楽しそうな声で答える。
「へぇーあのお子ちゃま毎度毎度退屈させないね」
「ねぇ、スクリューガム。これを見て」
画面には、宇宙の特定の座標を示すと共に、異常なエネルギーのグラフが表示されていた。スクリューガムは、それを分析し、その意味を即座に理解する。
「これは…虚数エネルギーの集合体ですね。それも過去に類を見ないほど強大な……」
「うん、多分其が集まってるんだろうね。この中に行くことはおろか近づくだけで炭になりかねない」
「間違いありませんね……」
ヘルタは探求心に満ちた目でスクリューガムを見つめ、問いを投げかける。
「ねぇスクリューガム、どうして其がこんなに集まってると思う?」
スクリューガムは、蓄積された知識と現在の波形を照合し、一つの可能性を提示する。
「推測――星神が複数、同一座標に集束しているとすれば……それは**“意思の共鳴”**が起きているから、かもしれません」
「意思の共鳴、なるほどね、どうしてそう思ったの?」
「通常、其は互いに存在の概念そのものが干渉を許さないはずです。ですが……この波形、まるで**“何かを覗き込もうとしている”**みたいに揃っている」
「星神が“何かを覗く”それはいつものことじゃないの?」
「はい。ですが同時に異常性もあるのです。宇宙の蝗害〈スウォーム〉以外で、これほどまでに星神の痕跡が集中する例は記録にありません」
「つまり、何かが――**“星神たちを呼び寄せてる”**ってあなたは考えたってわけ?」
「その可能性が高いです。この中心領域……虚数エネルギーが歪曲し、まるで**“観測拒絶空間”**のような性質を持っています。中で何が起きているのか、理論的には観測不可能かと……」
「うんうん、さすがスクリューガム。私と同じ結論に至ってくれたみたいだね。」
「ですが、これは開拓者さんの行方との関係性が見れません。」
「実はもう一つ、計測できたものがあるの。」
ヘルタがデータを切り替えると、星神が集まる遥か以前に発生していた別の虚数エネルギーの痕跡が表示された。
データには其が集まる前にもすでに生まれた虚数エネルギーがあった……
スクリューガムの機械的な思考回路は、直前の巨大な虚数エネルギーの集合体と、この「生まれたエネルギー」の波形を照合し、過去の記録にない特異点を検出した。論理を超越した事態への冷徹な驚愕と、科学者としての興奮が彼の内部で交錯する。このエネルギーこそが、星神を呼び寄せた異常現象の根源ではないかという、恐るべき仮説が頭の中で形成されつつあった。彼は、その結論を確かめるように、戸惑いと畏敬を帯びた声で問いかけた。
「この生まれたエネルギーは、新たな其の誕生ですか?」

ピシッミシミシ

あたりが氷に閉ざされた外のことなど知る由もない……


Ver1.6 過去を背負って先への道(レール)を進め

 

「ふは、ふハハははは見ろ!!これが神の力だ!!!」

カイザーの甲高い笑い声が、戦場に響き渡った。異形と化したその姿は、まるで自己愛を煮詰めたような醜悪さだ。彼は手を広げ、先ほど俺たちが殲滅したはずの**「壊滅の造物」を、まるで潮の満ち引きのように大量に召喚した。その光景は、戦意を削ぐための見せつけ、彼の「構築」**した傲慢な幻想だ。

「軟弱で愚かな悪童どもめ、どうやら身の程を知らないらしい」

「私が教えて込んだやろう**「壊滅」**という結末を!!」

彼の独りよがりな演説に、耐えかねた者がいた。

「ああもう頭きた!行くわよシロコ先輩!!」

セリカが怒りで青いオーラを全身から噴出させ、勢いよくリロードする。隣ではシロコが短く「ん!」と応え、ドローンを伴って大地を蹴った。その姿は、怒りという純粋なエネルギーに駆動される、二つの流星のようだ。

彼女たちの進路を切り開いたのは、ノノミと、そしてヒナだった。

ノノミの広範囲を薙ぎ払う弾幕、そしてヒナの持つ大きなマシンガンから放たれる圧倒的な制圧射撃が、雑兵たちを木っ端微塵に吹き飛ばし、彼女たちに通路を確保する。その後を、セリカとシロコは残った造物を巧妙に避け、蹴り上げながら、一目散にカイザーに向けて発砲!

しかし——

カイザーは鼻で笑うように「フン、」と一言。その一撃は、まるで薄い空気の膜に触れたかのように、何事もなく弾かれた。

セリカの「ウソ!」という驚愕と、シロコの「効いてない……」という冷静な事実の確認。

「その程度か?今度は私から行かせてもらおうか、」

カイザーは、右手に力を込める。その拳から、ただの打撃ではない、炎の正拳突きが放たれた。それは、地を這う炎の津波。凄まじい勢いで放射された業火は、セリカとシロコを容赦なく呑み込み、遠くへ吹き飛ばした。

カイザーは勝利を確信したかのように調子に乗る。全身に燃え盛る炎をさらに増し、空中に業火の玉を複数作り出し、俺たち全員に向けて投げつけた。その姿は、まるで傲慢な神が下す、理不尽な天罰のようだ。

だが、忘れてもらっては困る。銀河打者である俺が、ここにいるということを。

これは、絶好のバッティングセンターだ!

俺の好奇心と行動力は、その瞬間、最高の興奮状態に達した。

俺はバットに、全存在の力を込めた。

炎の玉が到達する直前、俺は渾身の力でフルスイング!

**カン!**という甲高い音と共に、全ての炎の玉は弾道を変え、投げ返された。カイザーの頭上に降り注ぐ、自分自身の業火。爆風と砂煙が巻き起こり、カイザーの巨体を覆い隠した。

「は!は!は!どうだ!!手も足も出てないじゃないか!?」

砂煙の向こうから、状況を**「理解」**できていないカイザーの哄笑が聞こえる。愚かだ。

「誰のーー」

俺が口を開きかけた時、隣から静かな声が割り込んだ。

「手と足が出てないのかしら?」

それは、ヒナだった。

「なに!?」

砂煙という**「構築」された視界の壁に隠れながら、俺とヒナは猛然とカイザーに接近していた。カイザーの目には、俺たちの姿は映っていない。俺はバットを構え、ヒナはあの大きなマシンガンを獲物のように**構え直した。

俺がカイザーの脇腹に向けてバットを振り抜くと同時に、ヒナは信じられない芸当を見せた。あの華奢な体からは想像もつかないほどの腕力で、巨大なマシンガンをフルスイングし、カイザーの反対側の脇腹に叩き込んだのだ。

**ドゴン!**という重く鈍い音。

カイザーは一瞬にして、砂煙の空気を切り裂き、完璧な放物線を描いて吹き飛んだ。それは、次の攻撃のために**「連系」**されるべき、最高の位置だった。

後は、残された狂宴の開拓者たちによる、連携と作戦のみ

カヨコが銃を使い、吹き飛んだカイザーへの威圧射撃で彼の意識を釘付けにする。続いて、その注意が逸れた一瞬を逃さず、ムツキが仕掛けていた爆弾が炸裂する。

そして、今まで気配を完全に消していたバーサーカーハルカが、狂気の形相で突撃する。

「死ね死ね死ね死ね死ね!!」

その捨て身の攻撃は、まさに狂気そのもの。ただの注意引きのための、純粋な憤怒の爆発だ。

その一連の狂騒の中の

その一瞬。

 たったそのわずかな隙を――

「じゃあね、カイザー……神様の紛い物」

 アルが撃ち抜いた。

 銃声が砂漠に響き、弾丸が、真っ直ぐに、迷いなく、

 カイザーの胸に埋め込まれた星核を貫いた。

 金色の輝きが、弾けた。

(……決まった)

 俺は息を呑みながら、飛び散る光をただ見つめていた。

「なぜ、なぜ私が……こんな奴らにーー!」カイザーの情けない叫びが砂漠に虚しく響く。

「原作らしく噛ませ犬になっとけば余計に恥かかなくてよかったのに……」俺はそう呟いた。

セリカは呆れたように「アンタも余計なこと言わなければいいキャラしてるのにね……」と横槍を入れる。

カイザーから落ちた星核が、鈍い光を放ちながら砂の上に転がっている。アビドスの砂漠化は、きっとこの星核がもたらした災厄に違いない。早急に封印しなければ。俺は手を伸ばした。

しかし、カイザーは俺よりも早く星核を掴み取った。

「渡さん!渡さんぞ!!」

ヒナが冷たく言い放つ。「往生際が悪いわね……」

「ここまでの三流悪党初めて見たわ」アルの言葉に、カヨコが「それ社長が言う?」と呆れ顔で突っ込む。

「雑魚カイザーァァァ!?またボッコボッコにされたいのか!?」俺は煽るように続ける。

「まさか……叩かれすぎて癖になっちゃったとかァァァ!?」

ムツキが楽しげに笑う。「クフフ〜それなら良いもの沢山あるよ〜試しちゃう?」

完全に戦いが終わった後の雰囲気だった。勝利の余韻に浸る俺たちの耳に、電子音が届く。ピッピッピ。

メッセージ?誰からだ?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーメッセージ内

「誰だ?」

「お忙しい中申し訳ございません……」

「ですがお伝えしないといけないことがありまして」

「なんだ?ロリコン的な話はいらないぞ」

「冗談を言っている場合ではないんですよ」

「今すぐにアンカーを使ってその場を離れるか星核を封印してください。"ヤツ"が来ます」

「ヤツ?」

「遥か昔、キヴォトスには神を再現することを思考していた研究機関が存在していました、その研究に対して援助活動を行っていた組織が今我々が名乗っている「ゲマトリア」我々はその名前を借りているのにすぎません。彼らと目的は真逆ですがね。」

「そしてその研究の施設のあった都市は破壊され、研究所は水に沈み、研究の実在すら忘れられるほどの年月が流れた時、誰もいない廃墟でそのAIは宣言した。「Q.E.D」と。証明、分析、再現の過程を経て新たなる神は到来した。己の神命を預言する10人の預言者とパス(Path)を拓き、新たな「天路歴程」を開始。彼の者の神性を証明する過程は間違いなく、セフィラ(SEPHIRA)と呼んで遜色ない。自らを「音にならない聖なる十の言葉」と呼称する者。それこそがDECAGRAMMATON(神名十文字)です。」

「ヤツはその中の1人ーー」

「パスは「理解を通じた結合」異名は「違いを痛感する静観の理解者」ーーー」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

その瞬間、大地が不気味に揺れ始めた。砂漠全体が咆哮しているかのような砂嵐が吹き荒れる。

シロコが不安げに呟く。「何、これ」

ハルカがアル様にしがみつく。「アル様!」

「伏せてなさい!」アル様の鋭い声が響く。

カイザーは顔色を変えて叫んだ。「この揺れはまさか!!」

「ビナーです」

黒服のメッセージを理解するよりも早く、大地が裂け、巨大な蛇のようなロボットが顔を出した。俺が夢で見た、あの化け物そのものだ。その全身は鈍い金属光沢を放ち、禍々しい巨体が天を衝く。

そしてヤツは、咆哮と共にカイザーへと襲いかかった。

「待て!待つんだビナーァァァ!!!」

カイザーの悲鳴が砂嵐に掻き消される。「ぐわァァァァァ!!!」

ビナーはカイザーごと星核を飲み込み、その姿はさらに悍ましく変貌した。まるで機械仕掛けの龍だ。

 

【挿絵表示】

 

奴は俺たちに牙を剥く。

夢で見た絶望が、とうとう現実へと至ったのだ。

「な、何なんですかアレは!!?」

アヤネの声が裏返る。無理もない。俺だって心臓が嫌な汗をかいていた。

 ビナー。

 その名前が耳にこびりつくたび、皮膚の奥がざわめいた。

「あれが……全ての元凶。アビドスを砂の墓場に変えたヤツだ。」

 自分で言いながら、喉が乾いていく。

 夢だと思っていた悪夢が、現実に牙を剥いて立っている。

 目に映る巨大な蛇型の装甲は、砂漠の太陽を反射してどこまでも冷たい光を放っていた。

「なっ!」

セリカは愕然と目を見開き、

アルはもう取り乱すどころじゃない。

「なななな、なっ、何ですってーーーーーーー!!!???」

 声の高さが砂嵐を突き抜けるほどだ。けれど、その叫びが妙に現実感をくれた。

 ——誰でもいい、騒いでくれ。こっちの頭もおかしくなりそうだったから。

「なるほどね」

ヒナが静かに分析を紡ぐ声は、逆にこの状況の異常さを強調していた。

「アビドス自体が砂だらけになったのは星核が原因で、そのエネルギーを求めていたのがあの蛇……。カイザーがそれを持っていたから、わざわざここまで来たってわけね」

 言われてみれば理屈は通る。

 ただしそれは——理解したところで心が楽になるタイプの真実じゃない。

 ビナーの装甲を見つめる。

 硬い……いや、硬いなんてもんじゃない。あれは城壁だ。

 俺のバットじゃ歯が立たないだろう。

 だから。

 俺は武器を握り直した。

 握った瞬間、手に宿る熱が腕に走り、炎の槍へと形を変える。

 バットの延長で戦ってきた俺には相性が良い。

 でも、この槍の熱が……嫌でも緊張を煽ってくる。

「俺が前に出る。護りながらアイツの装甲を貫く。お前たちは——装甲の隙間を狙ってくれ」

 声が震えないように、腹から絞り出す。

「わかりました」ノノミはすでに銃を構えていた。

「了解したわ」ヒナは息を整えてから頷く。

「任せなさい。行くわよ」アルも……震えてるけど、それでも引かない。

 それだけで胸が少し軽くなる。

「——それじゃあ行くぞ!!」

「「「「「おォォォ!!」」」」」

 力強い返事が返ってきた。

 いや、一人だけ微妙な奴はいたけど。

「お、ぉぉ?」とヒナが困惑し、

その後ろでカヨコがため息をつく。

「はぁ…………」

 この緊張感の中で、変な空気が混ざる。

 だけどそれでも——仲間がいるって、心強いもんだ。

 俺は槍を構え、乾いた砂の地面を蹴った。

 炎が迸り、砂漠の空気が一瞬赤く染まる。

 正面のビナーは、ただ静かにこちらを見据え——

 まるで、“試すように”不気味な沈黙を保っていた。

 

 ビナーの眼窩に灯る赤い光が——生き物の脈のように、一度だけ脈打った。

 それだけで、背筋に氷柱を突っ込まれたような感覚が走る。

 次の瞬間、周囲の空気が焼けつくように震えた。

「来るッ!!」

 叫ぶより早く、視界に灼熱の直線が走った。

 光が地面を削り、砂を蒸発させながら、一直線に俺たちを貫こうと迫ってくる。

 避けようなんて考えが、そもそも浮かばなかった。

 “無理だ”と身体が勝手に理解していた。

「全員俺の後ろに!!」

 咄嗟に炎槍を前に突き立てる。

 刃を走る熱量が、腕から肩まで痺れるほどに跳ね返ってきた。

 仲間たちが背中に押し寄せる気配と同時に、光が俺たちを呑み込んだ。

「っ……く!!」

 視界が白く弾け、皮膚が焦げる臭いがした。

 骨の髄まで焼かれるような衝撃に、思わず歯を食いしばる。

(バットのままじゃ……みんな死んでた)

 炎槍に持ち替えていたからかろうじて耐えられた。

 そう理解した瞬間、背筋が冷たくなった。

 光が収束する頃には、ビナーはすでに次の動作に移っていた。

「ビームの次はミサイル展開……!?」

「嘘でしょ!」

 カヨコとセリカの悲鳴が風にかき消される。

 蛇の胴体の側面が開き、そこから黒い穴がいくつも覗いた。

 次の瞬間、空が黒い雨みたいに染まった。

「全員散開!!」

 砂丘が爆ぜ、大量の砂が吹き上がる。

 耳の奥にまで砂が入り込みそうな轟音。

 走るたび熱風が肌を切り裂く。

 そしてさらに——

 ザァァァァァァァァッ!!!

「っ……砂嵐!?」

 砂が濁流のように巻き上がり、景色どころか自分の手すら見えない。

 息を吸うたび、喉が紙やすりみたいに削れていく。

「全体に攻撃までしてくるとか……かなり面倒ね」

 ヒナの弾幕すら砂に呑まれる。

 その砂の海を裂くように——

 ビナーは突っ込んできた。

 巨体とは思えない速度で、大地を震わせながら。

「来るぞッッ!!」

 反射的に槍を構えた。

 突進の衝撃が届く前から、地面が波打つ。

 音というより、地面そのものが悲鳴をあげている。

「ッッ!!」

 ぶつかった瞬間、腕が折れたと思った。

 炎槍に全力で力を込め、ただただ押し返す。

 だが——重い。

 押せない。

 止まらない。

 背後で仲間たちの攻撃が炸裂する。

「ノノミ、やるよ」

「了解です!」

 ノノミの弾幕が確かに外装を抉っている。

 それでもビナーは歩みを止めない。

「まだ足りない……食い込めない……!」

 ノノミの焦燥が痛いほど伝わる。

 アヤネの声は震えていた。

「いつも通り……効いていない……?」

 ヒナですら、淡々としているようでその瞳は焦りを隠しきれていない。

「……通らないのね。装甲との相性がまるで悪いわ……」

 仲間が必死で戦ってるのに、ダメージがほとんど通っていない。

 この場で通用してるのはノノミとヒナ——俺の槍だけ。

(だけど……俺の腕も、もう……)

 突進を押し返すたび、骨が軋む音が聞こえた気がした。

 シールドの負荷も限界を越えつつある。

(ここまできたら……やるしかない!)

 護りの力を解除し、槍を両手で握り直す。

「開拓者!?なにして……ッ」

「銀河打者?」

 仲間の声が耳に届く。

 だが、いまは一秒の揺らぎも許されない。

 炎を、槍先に集中させる。

 胸の奥が燃えるみたいに、体内を赤熱が駆け巡る。

「槍先に火を——」

 炎が槍を包み、刃がさらに長く、強く伸びた。

「炎の槍よ、断ち切れ!!!」

 俺はビナーの突進へ正面から踏み込んだ。

 衝撃が炸裂し、視界が砂と光と赤黒い閃光で塗りつぶされる。

 炎槍が悲鳴を上げ、腕が裂けそうな痛みをあげ、足が地面にめり込む。

 

 押し潰される

 でも——退かない。

(まだ……だ……!もう少し、もう少しで!!)

 歯を噛み締めたその瞬間、

 ——嫌な音がした。

 槍に伝わる手応えが、一瞬で軽くなる。

(……折れたのか)

 気づいたときには、

 視界が砂と炎に乱れ、意識が遠のいていく。

 最後に聞こえたのは——

「開拓者ーーーッ!!!」

 その叫びだけだった。

 砂の感触が途切れ、世界が完全に暗転した。

ーーーーーーーーーーーーー

…誰かが、俺を呼んでいた。

『……起きて……目覚めの時だ。』

 遠く、水の底みたいに歪んだ声。

 ぼんやりしていた意識が、その声に引っ張られる。

『まだここは君の終着点では無いんだ』

 その言葉と同時に――俺の意識は、闇の底から浮かび上がった。

 目を開けると、そこは宇宙のような場所だった。

 果てのない虚空に光が散りばめられ、星々が静かに脈動している。

 重力も地面の感触もない。ただ広がり続ける空間の上に、俺は“立っていた”。

「ここはどこだ?」

 呟いた声が、空間に吸い込まれていった。

『ここは運命の狭間……其が君たちのような人々と謁見する場合に用いる意識空間だよ』

 振り返った瞬間、息を呑んだ。

 男が立っていた。頭には神々しいヘイローが漂い、その輪郭は銀河のように揺らめいている。

 衣服もまた、星雲を纏ったみたいに光を反射していた。

 

【挿絵表示】

 

 星神……?

 いや、俺はこんな存在に呼ばれた覚えはない。模擬宇宙でも見たことがない。

『それはそうだろう。私は誕生して間もないからね……』

 まるで俺の思考を覗き込んだかのような答え。

 背筋がすっと冷える。

「お前は何の運命の神なんだ?」

『私は「青春」の運命に縛られた囚人だよ。君たちの言葉を借りると星神という存在らしいけどね』

 青春の……星神?

 そんな運命があったのか。俺の知らない銀河の顔がまだあったらしい。

「どうして俺をよんだんだ? それに謁見なら俺はかなりの虚数エネルギーに晒されていて体に負担がかかるはずなのにそれがない……」

 俺の疑問に、男――星神は淡々と答えた。

『一つ一つを紐解いていくとしてまずはそれは君が謁見に耐えられるほどの器であるということ、なぜ君をよんだのかって質問はーー』

 銀河が揺れるように微笑み、言葉を続けた。

『君にはこの世界を救うと同時に銀河の本来迎えていたであろう結末を塗り替えてほしい、そのためには今君に死んでもらっては困る。だからここによんだんだ。』

 世界と銀河、両方救えときたか。

 黒服の言葉も思い出す。どうやら俺は本格的に、厄介ごとの渦中に放り込まれているらしい。

 だが、流れ的には……あれだ。

「新しい力を俺にくれるシーン!?」

 星神は吹き出すように笑った。

『ハハハハ君は本当に面白いね。まるで昔の彼らを見ているようだよ。』

 昔の“彼ら”?

 気になったが、星神は首を振って誤魔化した。

『いや、何もない。じゃあ今回君には一ついいものをあげよう』

「王のゴミ箱等身大モデル!?」

『残念だけどそれじゃないかな』

 少し残念だ。

 ……いや少しなのか俺。

 星神は俺の手に、光るカードをそっと置いた。

 ずっしりとした重さ。見た目は――

「これクレジットカーー」

『大人のカードだ』

「いやこれクレジッーー」

『大人のカードだから!』

 押し切られた。

 ……大人のカードって何だよ。

 ただ、その声には奇妙な重みがあった。

『もし君がピンチになった時にそのカードを使うといいよ。きっと助けになってくれるはず』

 星神は続けるように言った。

『でも、使う時は選ばないといけない。君はまだ完全には青春の運命を歩んでいるわけじゃない……そんな君がこれを使うということは代償がいる。』

『つまり君の選択次第だということだよ』

 ……選択。

 あの戦いでも、俺は常に選択を迫られていた。

 仲間を守るか、自分の身を投げるか。

 力を求めるか、危険を避けるか。

 そして今もまた、俺は選択を迫られている。

「俺の……選択」

 星神は穏やかに頷いた。

『さぁ、早速選択の時だ。』

『実はもう1人君のことを見ていたのがいてね。その道がまた過酷でさ』

 星神が指を鳴らすと、空間に二つの道が現れた。

 一つは暖かな光に満ちた道。

 一歩踏み出せば、心が軽くなりそうな明るい道。

 もう一つは、灼熱の炎が吹き荒れ、歩けば確実に焼けるような地獄道。

『明るい道を歩けばそのまま現実に戻れる。

反対の炎の道を歩んでいけば業火な炎に焼かれながらも新たな力を得られるかもしれないしそのまま焼死するかもしれない……』

 片方は安全。

 片方は修羅の道。

 星神は静かに言った。

『ここから先は君に任せるよ』

 

 

「ちょっと待ってーー!」

俺の叫びは、まるで意味をなさない、無力な響きとなって、目の前の虚空に吸い込まれていった。暖かな光に満ちた道と、灼熱の炎が吹き荒れる地獄道。俺の運命は、この二択に委ねられている。

確かに、このまま明るい道を選んで現実に戻り、手に入れたカードの力を試すのも一つの手だろう。安全で、確実な選択だ。しかし、俺の勘が、直感的にそうではないと告げている。まだ、この力を、この**「カード」**を切り札として使う時ではない。

ならば、俺がすべきことはただ一つ。力をつけることだ。彼女たちを守るために、この俺自身が、絶対的な強さを身につける必要がある。

灼熱への飛翔

俺は迷いを断ち切り業火な炎の道へと、自らの身を投じた。

業火に身を晒したその瞬間、身を焦がす、焼けるような激痛が、津波のように全身を襲った。「ぐっ!」という呻きが漏れる。それは、皮膚を焼く熱であると同時に、内側から細胞一つ一つを焼き尽くすかのような、耐え難い痛みだった。

だが、その痛みに耐える一瞬、俺の意識に、熱い奔流が流れ込んできた。それは、アビドス高校の過去の生徒会が、あの砂漠の中で学校を守り抜こうとした、決して諦めないという強い意志。そして、以前思い出された、ベロブルグの歴代の大守護者たち、そして住民たちの、故郷を存護しようとした熱い思い。

「まさか、この炎は彼らの熱い思いが形となって現れた場所なのか……」

俺の胸に去来したのは、熱さだけではない。彼らの熱量、その不屈の精神が、この炎という形で俺の魂に刻み込まれているのだとしたら――この痛みは、試練だ。彼らの熱い思いを糧に、俺は一歩、また一歩と前へ進んだ。

どれほど時間が経っただろうか。痛みに耐えながら進む俺は、ある視線に気がついた。

その視線は重い。一言も話さない。本来は、ただ壁を作るだけの存在――存護の星神、『琥珀の王』クリフォト。

彼は相変わらず無言だ。だが、その巨大な眼差しは、まるで俺の**「護りたい」という意志の純度**を、試し、測りにかけるかのような感覚を俺に襲い掛からせた。

その直後、クリフォトは唐突に動いた。

ドォン、と空間が軋むような音と共に、巨大なハンマーが、ゆっくりと、だが確実に、俺めがけて振り下ろされてきた。

考える暇もなかった。

咄嗟に、俺の手の中にあった、炎に灼かれて折れかけていたはずの槍を構え、受け止めた。

『ぐ、うう!』

受け止めた瞬間、全身の骨が悲鳴を上げた。重い。重すぎる……!あんなにも緩慢な動きで振り下ろされているのだから、これが彼の本気ではないことは理解できる。それでも、この一つ一つの打ちつけが、とんでもなく重い、絶望的なまでの質量を伴っている。

膝が、肘が、意思に反して折れ曲がろうとする。

だが――

まだ、倒れてはいけない。

どんなに絶望的な状況に立たされ、どんなに苦しい最中でも、アビドスの彼らは、ベロブルグの先人たちは、決して倒れることなく、耐えきったのだ。

「こんなところで倒れられない……っ!」

俺の喉の奥から、魂の叫びが湧き上がる。

「俺はーーどんな苦境に立とうとも、」

「開拓」の名のもとにみんなを『存護』する!!」

「ウォォォォ!!!!」

俺は目を見開いた。湧き上がる熱い意志と共に、全身のありったけの力を込めて、クリフォトの振り下ろすハンマーを押し返した!

次の瞬間、俺は現実に戻っていた。

目の前には、俺がハンマーを押し出した時と同じように、吹き飛ぶビナーの姿。

「っ……!」

全身が熱い。それは灼熱の炎の痛みではなく、満ち溢れる力の熱だ。確認すると、俺の全身は白いオーラを纏っている。そして、折れかけていたはずの槍は、元の姿に戻るだけでなく、深紅の炎から白く燃え盛る炎――**白焔(はくえん)**へと姿を変えていた。

この力……。

 

俺は、**「業火の道」**を通ることで、彼らの意志と、存護の力を、この身に刻み込んだのだ。

その白焔は、純粋な熱量であり、護るという強い意志の象徴。俺の覚悟が、新たな形を得た。

俺は、存護の意志をその身に宿し、強く、静かに、敵を見据えた。

 

【挿絵表示】

 




みなさん、今回の話でかなり驚きがあったと思います。え、連れてきたのはアッハじゃなかったっけ?とそうです。そこに連れてきたのはアッハです。その辺もちゃんと考えていますのでご心配なく。

Mr.ミミ作のコーナーの今後

  • 新キャラの方がいい
  • ストーリーに関係するキャラがいい
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