青春を開拓する銀河打者   作:現代の弁慶

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【イッテ青穹 外伝:開拓者・穹 ― 存護の炎を抱いて】

Mr.ミミ作「この旅は思わぬトラブルから始まった……
愉悦の星神アッハによって列車からキヴォトスへ途中下車し、
ユニークな彼女たちと青春を駆け巡る毎日を送る……」

Mr.ミミ作「その日常を護るためなら――
彼は自らの身をも燃やして見せよう!!」
(画面中央に炎の槍を構える穹。瞳が宿す“存護”の光が揺らぐ)
Mr.ミミ作「そう!今回の主役はこの物語の主人公!
星穹列車のナナシビトにして、連邦捜査部S.C.H.A.L.E所属の――
開拓者・穹だぁ!!」
(テロップ:
《開拓者:穹》
《ナナシビト/存護の槍の継承者》)
Mr.ミミ作「そして今回のゲストは〜」
(画面トーンが一段落ちて、黒いスーツの男が歩み出る)
黒服「どうも、みなさんご無沙汰しております。黒服と申します。」
(低く、静かな笑み)
黒服「それにしても……彼の持つ存護の槍は、かつて彼自身を焼き尽くすほどの負荷を与えていた。
だというのに、今や彼はさらにその炎を強めている……」
Mr.ミミ作「ほぉ……!」
黒服「これは彼の内に眠る“存護の意志”そのものが進化した証左。
おそらく記憶を取り戻したことによる影響……」
(妙な間)
Mr.ミミ作「おや?何かご存知なのだろうか……」
黒服「ククク……いや、より深く彼のことを知ろうと、こうして足を運んだだけですよ。」
Mr.ミミ作「ハハハ!そうか〜!
それならその選択は大正解だ!当シリーズへようこそ!
なんせカイザーグループの“大株主”である黒服さんだ、話は早い!」
黒服「こちらこそよろしくお願いします。
私もあなたと意見交換できることを楽しみにしていますよ。」
Mr.ミミ作「うん、それでは早速――
開拓者の“真の力”について見ていこう!!」
(画面:赤白の“白焔”が揺らめく中、穹が槍を構えて静かに歩み出る)
Mr.ミミ作「開拓者は存護の運命を歩む撃種は貫通、装備は軽装備のストライカーだ。
追加情報だが、穹くんは“炎属性”キャラクターでもあるらしい!」
黒服「星神の加護を受けた者は概して属性の表出が強まりますからね……」
Mr.ミミ作「彼の持つ槍は、元々ベロブルグの“大守護者さま”の槍だったそうだが……
今では存護の星神クリフォトによって叩き直され“開拓の槍”として生まれ変わっている!」
(白焔が槍の刃先に灯り、周囲の空気を揺らす映像)
Mr.ミミ作「その身に纏う白焔の炎は――
彼の仲間に立ちはだかる障害を、燃やし尽くすだろう!!」
(画面:炎の余波で周囲の影が大きくうねる)

Mr.ミミ作「ところで黒服さんにお聞きしたいのだが?
なぜ“星神”は彼に謁見を受けさせたんだろうか……?」
「彼にはもともと仲間を護る意思があった。それは誰にだってあるはずだ……
なのに“今”じゃないといけない理由でもあるのだろうか?」
(カメラが黒服へ寄る)
黒服「…………」
(数秒の無音。観客はいないのに、空気が冷える)
黒服「其の思惑を……凡人である我々が図ることなど不可能です。
しかし――“世界の命運を握る者”である以上、
星神が何かしら思うところがあったのでしょうね。」
「……とにかく、番組を続けましょうか。」
■スキル解説コーナー(番組テロップが華やかに点滅)
Mr.ミミ作「通常攻撃!
《夢亡き枷を焼き斬る躍光》では敵単体へ“防御力参照の炎属性ダメージ”を与える!」

Mr.ミミ作「戦闘スキル《万世不刊の希望》!!
味方全体に“防御力250%+1600”の全体バリアを張る!
このバリアは反撃効果つきで、攻撃されるたび敵全体に防御力60%の炎ダメージを与える!」
(カメラ:白い盾のような炎が仲間に広がり、被弾と同時に爆炎で反撃)
Mr.ミミ作「さらに!このバリアが剥がれるか次のターンを迎えると……
“受けたダメージ分”を通常攻撃に上乗せした強化攻撃に変換!!
跳弾するバウンド攻撃で敵の数に関係なく打ち込める、攻守両立のパーフェクト性能だ!」
黒服「ククク……まさに気炎万丈。
攻めて良し、守って良し……南山不落の戦士、というわけですか。」
黒服「ですがミミ作さん?
――これで終わりとは言いませんよね?」
Mr.ミミ作「もちろんだとも!!」
■必殺技紹介
Mr.ミミ作「必殺技《一燈照偶の星火》!!」
(映像:穹が天へと飛翔し、周囲に炎が螺旋のように巻き起こる)
Mr.ミミ作「空高く舞い上がり……
槍を地へと突き立て爆炎で全てを焼き尽くす!!
これも防御力参照の炎ダメージで、敵全体に“炎属性の弱点”を強制埋め込みだ!」
黒服「さらに特性《燃え盛る白焔の意志》では
全ての敵の防御力を10%下げる効果もあります。」
Mr.ミミ作「なんか……こうして見ると……
性能が強すぎじゃないか……?
謁見ってこんなにすごいものだったなんて!!」
黒服「いえ。これは彼自身が旅で積み重ねてきた“意志”と“覚悟”。
謁見だけの力として扱うには、あまりに浅い……
これは、彼そのものの到達点です。」
Mr.ミミ作「な、なるほど……それは失礼した。
ハハハ……!!」
(汗をかきながら笑う鳥)
■実演編へ!
Mr.ミミ作「それでは――
実際にその力の真髄を、見ていこう!!」



ver1.7 それでも手放さなかったもの

砂煙の向こうから、小さな足音が幾つも近づいてくる。

 振り返ると、セリカたちが俺めがけて全力で駆け寄ってきていた。

 遠目でも分かるほど心配した顔——けれど俺を見るなり、全員の目が一斉にまん丸になる。

「銀河打者……!」

 一番に声を上げたのはシロコだった。

 白いオーラを浴びている俺を、驚きと安堵の混ざった目で見上げてくる。

「アンタ……姿変わってない?」

 セリカは目を細める。俺を頭からつま先まで観察している。

「芦毛ちゃんじゃなくなってる〜!!?」

 ムツキはなぜかテンション高く叫んだ。

 その隣で——

(こ、これって……)

(覚醒ってやつじゃないの!?キャー!!)

 アルが頬を赤くして両手を握りしめ、キラキラした瞳でこっちを見ていた。

 どこぞの特撮ファンみたいなリアクションは気になるけど、突っ込んでいる時間はない。

 アヤネが恐る恐る問いかけてくる。

「銀河打者さん、大丈夫なんですよね?先ほど押しつぶされたように見えましたが……」

 心配してくれているのが伝わってきて、少し胸が熱くなった。

 だが、ここで弱気を見せるわけにもいかない。

「天下の銀河打者が倒れるわけないだろ。」

 口角を上げ、白焔の槍を肩に担ぐ。

「むしろ闘志が燃え上がってるくらいだ!」

 本音だ。

 身体はむしろ軽い。

 痛みさえも、今はただの熱として全身を駆け巡っている。

 だが、安堵の空気は一瞬で破られた。

 ゴオオオォォォォ……!!!

 砂の大地が震え、地平線が揺らぐ。

 さっき吹き飛ばしたビナーが、砂嵐を巻き上げながら起き上がっていた。

 複眼の奥で赤光が怒りに脈打つ。

 巨体はまだ傷一つとして“致命”に届いていない。

 そして——

 それがこちらへ向け、まるで弾丸みたいな速度で迫ってきた。

 砂の海を割りながら。

 どうやら……相当お怒りらしい。

 だが——それはこちらも同じだ。

 あの突進で仲間たちを危険に晒したことも、

 自分が倒れたまま終わったと思われたことも、

 そして何より俺の仲間の領域を好き勝手に踏みにじったことも。

 怒りは、むしろ俺の方が激しいかもしれない。

 白いオーラが一段と燃え上がる。

 手の中の槍が、戦いの開始を告げるように脈打った。

(さぁ——)

 俺はゆっくりと前へ踏み出す。

 背後では、仲間たちが息を呑む音。

(リベンジマッチだ!!)

 砂漠の空気が、熱と怒りで震えた。

 

ビナーがまっすぐ突進してくる。砂嵐の奥から轟音が迫り、空気の圧が肌を押し返してくる。

 俺は深く息を吸い込み——

 燃え上がる白焔の槍を握り直した。

「行くぞ……!」

 槍から溢れた熱が風を焼き、砂を白く光らせる。温度が急激に跳ね上がり、大地そのものが熱を帯びて震えた。

 そして——

 ゴウッ!!!

 周囲の温度が爆発的に上昇した瞬間、ビナーの装甲が“ぐにゃり”と歪んだ。

 灼熱に晒された外殻が溶け、ひび割れ、赤熱化していく。

「装甲……溶けてる!?」

 セリカが目を見開いた。

 

「銀河打者さん……いつの間にこんな……」

 ノノミが目を丸くする。

 だが、俺はその間にも地面へ槍を突き立てていた。

ガンッ!!

 白焔が地へ吸い込まれ、次の瞬間——

 俺の周囲に光の壁が広がる。透明な膜のようだが、触れれば皮膚が焼けるほどの熱量を秘めている。

「全体にバリア……!?」

「うそ、これ全員守ってるの……?」

 仲間たちが息を呑む。

 ビナーの突進がそのバリアにぶつかった瞬間、熱波が全方位へ炸裂した。

ボウウッ!!

 まるで空気そのものが炎になったかのように、熱風がビナーを押し返していく。

「おまけに……熱波まで……」

 ヒナが震える声で言う。

 ……ふっ。まあ、そういう仕様らしい。

「あれれー雑魚蛇くん!その程度で俺に勝てたってイキってたわけ〜!?」

 挑発すると、仲間の視線が一斉に刺さった。

 

「ああ〜そうかぁ〜!お前はバカで何の取り柄もないから戦うことでしか自尊心を満たすことが出来ないんだな!かわいそ〜」

 

俺のセリフに

 特にセリカは呆れ、アヤネは苦笑し、アルは肩を震わせる。

 

 みんなの顔に浮かぶその表情。

 “強くはなっているが、中身は何も変わってない”

 そんな理解が一瞬で共有された。

 

 そして——

 怒りに燃えたビナーが力任せにバリアを砕きにかかった。

パリィィン!!

 透明な膜が砕け散る。

 だがこのバリアは、壊された時こそ本番だ。

(……受けたダメージ、全部返す)

 全身に集まる痛みと熱。

 俺は槍を引き抜き、地を蹴った。

「——返すぞッ!!」

 白焔の槍が地面を切り裂き、そこから噴火のような熱の奔流が天へ向かう。

 切り上げと同時に、蓄積された灼熱がすべて爆ぜる。

ドオオオオオォォォン!!!

 大地が揺れ、白い炎が竜巻となってビナーを飲み込み、空へ向けて吹き飛ばした。

「……大爆発……!?」

「……砂漠真っ二つになってない……?」

 仲間たちが呆然とその光景を見つめる。

 

爆炎の余韻がまだ頬を撫でていた。

 ビナーが吹き飛んだ地点から、火の粉が舞い、砂煙が上がる。

 セリカが息を呑みながら言った。

「やったの?」

 ……その瞬間、胸が嫌な予感でひりついた。

「いや……」

 砂煙が割れ、火の粉が散り、そこに姿を現したのは——倒れたまま終わる気なんて微塵もない、満身創痍のビナーだった。

 ボロボロなのに、まだ目の奥に燃える敵意。

 あの蛇ロボ、絶対性格悪い。

「ああ〜あ、セリカのセリフのせいで生き残った!」

「私のせいなの!?」

 セリカの叫びに、俺は肩をすくめるしかなかった。

 “死亡確認”を言うと生き残る。戦闘物語の世界線あるあるだ……と、俺の勘がさっきからずっと言ってる。

 しかしビナーの口が大きく裂かれ、内部が青と黄の光で満たされた瞬間、そんな冗談みたいな思考も吹き飛んだ。

 量子と虚数が混ざり合い、チャンバー内で渦巻く。

 赤熱するプラズマが生まれ、空気そのものが悲鳴をあげるほど熱されていく。

(まさか……星核を取り込んだせいで、とんでもない生命力を手に入れたんじゃないか?)

 背筋に冷たい汗が流れた。

 いや、たぶん熱さで汗が蒸発してるだけだ。

「うそでしょ〜まだ立ってるの……」

「おまけに大技まで放とうとしてるし、流石の執念と言ったところね……

 多分外側からの銃火器程度の攻撃だと倒すには限界があるんだと思う」

 ヒナの分析は正しい。

 外側から撃って壊せるなら、とっくに瓦礫になってるはずだ。

「では大きな戦車とかを呼べばいいんじゃないですか?」

「いや、それは現実的じゃない……アビドスも私たちもそれだけの信頼はないし、彼女(ヒナ)がゲヘナに助けを呼ぶにもシャーレが助けを呼んだところで遅すぎる。」

 うん。俺も同意だ。

 何より、戦車来る前にアビドスの砂丘ごと吹っ飛ぶ。

「銀河打者……やれる?」

 シロコの声に、俺は正直に答えるべきか一瞬迷う。

 “やれる”……やれるとは思う。

 ただし——もう少し装甲が剥がれてくれればの話。

(口の周りだけでも……広く開いた状態で……誰かもう一撃——)

 そんな願いを胸の中で呟いた瞬間だった。

ドドドォォォォォォン‼‼‼

 天地を揺らす轟音。

 大地が跳ね、ビナーの動きが止まる。

 砂煙の向こうから、砲撃の残光がきらりと光った。

「砲撃……一体、どこから」

 まさか——と思ったら。

『―みなさん ご無事ですか!?』

 間違いなくあの声。

 そして——

『ヒフミさん!?ど、どうしてここに!?』

『今の私は、覆面水着団のファウストです!!

 トリニティ生徒の阿慈谷ヒフミとは関係ありません!』

「いや、それもろにいっちゃってるわよね?」とセリカが呆れ混じりに言う。

 俺はというと、ただただこころの中で叫んでいた。

(助かったああああーーー!!!)

 ビナーの大技が中断され、巨体がふらつき始める。

 外殻の破損は広がり、熱の影響で装甲がだらりと垂れ下がった。

「でも、おかげでアイツの動きが止まった銀河打者。」

 ここからは——

(よし……監督の出番だな)

 俺は胸を張り、

 仲間が呆れるほどに当然の顔で、ゴミ箱を頭に被った。

(やっぱこれだよな……落ち着く、それにヒフミがファウストって名乗ってるんだし別にいいよな)

 白焔を纏う槍を、両手でしっかり握る。

 地面が熱に焼け、足元から白い煙が立ち上っていく。

「槍先に情熱をーー!

 熱きをもって闇を貫け!!」

 俺は飛んだ。

 地を蹴った瞬間、視界が白く伸びる。

 重力を置き去りにし、砂漠の空を突き破るように跳ぶ。

 ほぼ鉄塊と化した口を開けたまま動かないビナー。

 そこに真っ直ぐ——真っ直ぐ!

(これで終わりだぁぁぁ!!)

 白焔の槍が空気を裂き、

 その熱は災厄を断ち、

 そして——

 巨体を貫いた。

 衝撃が腕を走る。

 白焔が暴れ狂い、内部から災厄を焼き払っていく。

こうして、アビドスにおける壊滅と存護の戦いは幕を下ろした。

ーーーーーーーーーーーー

 

……どれだけ経ったのだろう。

 無響室という場所は、時間の感覚を奪う。

 壁も床も天井も、こちらの声を跳ね返さない。

 ただ沈み込んで、溶けて、世界から音が消えてしまう。

 そんな場所で、私はぽつりと呟いた。

「皆……」

 返事はない。

 自分の声ですら、半分だけしか聞こえない。

 やっぱり……ここは独りぼっちの箱だ。

 ……なのに。

『ねぇ、ホシノちゃん。

私ね、ホシノちゃんと初めて会った時、これは夢なんじゃないかなって思って……』

 聞こえるはずのない“あの人”の声がした。

(……どうして、今?)

 最後に先輩を見たのは、この砂漠だった。

 暑くて、眩しくて、でも風が気持ちよかったあの日。

 声は続く。

『ホシノちゃんみたいな、可愛くて強くて、頼れる後輩がそばに居てくれるなんて……夢みたいで……』

 思い出が胸に触れた瞬間、ふっと息が詰まった。

 なんで……こんな時に。

 閉じ込められ、孤独に沈んでいる時に限って、

 人はこうやって“過去”に救いを求めるのだろうか。

 私はどう返したんだっけ。

『昨日も今日も明日も一緒なのに……そんな大袈裟に……』

 呆れたような、でも照れ隠し混じりの声。

 あの時の私は、可愛げがないなぁ……。

 そして最後に言った言葉を思い出す。

「『夢なんてあるわけないじゃないですか……』って……言ったんだっけ」

 夢なんて、都合のいいものなんて。

 そう笑って、跳ね除けた。

 でも……彼女は笑って否定した。

『いつかホシノちゃんにも後輩が出来たらね——』

 そう言った瞬間だった。

『見つけました!ホシノ先輩の拘束されている部屋です!』

「え?」

 頭が混乱する。

(……幻聴?

いや、でも……アヤネちゃんの声だった……気がする)

「あ〜ぁ……私も、もうダメかな……起きながら夢でも見てるのかな……」

『夢ではありませんよ、ホシノさん。』

 黒服の声が重なった。

 枷が、ガチャン、と外れる。

「なんで……体が……?」

『全く、契約書の中身も読まずに抱え込むから大変でしたよ。まぁ虚無に飲まれていないようで何より。』

「……え?」

 彼は続けた。

『あとはナナシビトの彼が上手くやるでしょう。では私はこれで。ゲマトリアはずっと見ていますよ。』

 一方的に告げて、声が消える。

「何がしたかったんだ?アイツは……」

 でも、自由になった。

 立ち上がると、どこかで声が聞こえる。

『ん、壊れない。もう一度!』

『皆で力を合わせればこんな扉!!』

『1、2の——』

 ……本物だ。

 幻覚でも、幻聴でもない。

 私は、扉へ手を伸ばした。

「私は……皆にもう一度会いたい……!」

 指を隙間に差し込み、力を込める。

『3!!!』

(ガタンッ)

 扉が外へ押し開かれ、刺すように明るい朝日が差し込んだ。

 夜はもう終わっていたんだ。

 世界は続いていてくれたんだ。

 その光よりも先に——

「「ホシノ先輩!!!」」

 叫ぶ声が飛び込んでくる。

 私は一瞬、泣きそうになるのを誤魔化すみたいに笑った。

「みんな……うへ〜おじさん夢を見てるのかな……」

「眠気が覚めてないなら覚ますぞ。バットで!」

(……あ、全然夢じゃないや)

「ちょっと!まだホシノ先輩状況飲み込めてないんだからやめなさい!」

「うるさいぞ、ケチリカ。そもそもお前のせいであの蛇みたいな怪物が復活したんだ。戦犯は黙って見てるべきだ」

「な、何ですって〜!!」

 ……あぁ、帰ってきたんだな、って思った。

 この人がいると、夢みたいだったことが全部現実味を帯びる。

 やかましいのに、不思議と安心する。

 みんなも、生き生きしてる。

 ほんと、変わらない。

「ホシノ先輩、おかえりなさい」

「おい!なんで俺より先に言うんだ!ずるいぞ!」

「ん、早い者勝ち。負け犬の遠吠えには応じない」

「仕方ないここはバットでシロコを倒して俺が一番にーー」

「私たちも言っちゃいましょう」

「え、ちょっと待っ——!」

 そのタイミングで、みんなが声を合わせる。

「「「おかえりなさい!!先輩!!(ホシノ!!)」」」

 胸が、いっぱいになった。

「……みんな……えへへ……ただいま」

 本当に戻ってこられたんだ。

 夢なんてない、ってあの時は言ったけど……

 でも——

(こんなの、どう考えても夢みたいだよ……)

 私はそっと、眩しい光の中へ歩み出した。

ーーーーーーーーーーーーーー

アヤネがタブレットを操作する指先は、いつになく軽やかに見えた。

 ホシノはベッドにもたれたまま、周囲を囲む後輩たちの顔をぼんやりと眺める。ようやく肩の力が抜けてきたのか、胸の奥に溜まっていた緊張が少しずつ緩んでいくのを感じた。

「――という訳で、対策委員会はシャーレの公的な認証によって、アビドス高等学校の正式な委員会として承認されました。非公認だったせいで酷い目にあったという部分も大きいので、これで一安心です」

 アヤネのはっきりした声が、病室の空気を少し明るく揺らす。

 ホシノは「へぇ~……」と生返事を返しながら、ノノミの膝に頭を預けている自分の姿がどこか他人事のように感じていた。

 ――やっと、アビドスが認められた。

 言葉にしなくても、その事実だけで胸の奥がじんわりと熱くなる。

 長かった。重かった。けれど、ようやく報われた。

「お陰様で対策委員会は、正式にアビドス生徒会としての役割も担う事になりました」

「そっか……良かった」

 自然と漏れた声は、いつもより少し柔らかかった。

 これで、皆は前よりちゃんと守られる。無茶をして倒れた自分が言うのも何だけど、それでも、この子たちが少しでも安心して笑えるなら、それだけで十分だった。

「それとアビドスの代表、生徒会長についてなのですが……実はまだ決まっていなくて。個人的にはホシノ先輩に生徒会長になって頂きたかったのですが……」

「断固として断~る!」

 ホシノは両手を大きくクロスしてバツ印を掲げた。

 ノノミの膝に沈み込むように上体を倒しながら、文字通り全身で拒否の意思を示す。周りの皆が一斉に苦笑するのが、横になった視界の端に見えた。

「うへ、私に生徒会長なんてムリムリ~。柄じゃないよ」

 ――肩書なんて重すぎる。

 ただでさえ背負いきれないほどの責任を押しつけられて、皆に心配をかけて……。

 それなのに、生徒会長なんて看板まで乗せられたら、本当に潰れてしまう。

 だから、ホシノは笑いながら逃げる。

 逃げるという事を、彼女は誰よりも自覚していた。

「……という感じで、拒否されてしまいまして、新しい生徒会長は当分不在になりそうです」

 アヤネが肩を竦める。

 でも、その表情は怒っていない。理解してくれている。

 だからホシノも、申し訳なさよりも安心の方が勝った。

「そう云えば、あの後、柴関ラーメンは?銀河打者もいないし……」

「あ、はい。なんか、便利屋の皆さんから一億円が支払われたそうでして、屋台の形で再開しました」

 ホシノは半眼になって、天井を見つめた。

「へぇー、あの子たちそんなお金あったんだー」

 現実味のない金額に、思わず呟いたその声。

 それに続いて、胸を張ったセリカの声が響いた。

「お客さんも結構来てくれるし、私もまたバイトを再開したから!多分アイツもラーメン作ってると思うわよ!」

 ホシノは視線をセリカに向ける。

 その笑顔は、どこか誇らしげで、そしてほんの少し照れているように見えた。

 ――みんな、ちゃんと前を向いてるんだなぁ。

 ホシノはそっと息を吐く。

 胸の奥で、あの日の砂嵐の熱と、閉じ込められた闇の冷たさが薄れていく。

 みんながいる。

 笑っている。

 自分のすぐそばに、手を伸ばせば届く場所に。

 その“当たり前”が、どれだけ尊いものだったのか。

 ようやく実感できる気がした。

ーーーーーーーーーーーーーー

 

屋台になった柴関の暖簾をくぐると、ふわりと香ばしい湯気が顔に当たった。

 鼻の奥までスープの熱が染み込んで、さっきまでの喧騒や重たい気持ちなんか全部吹き飛んでいく。

 ああ、この匂いだ。

 戦いの後の、肩の力がゆるむ瞬間に必要なのは。

 ラーメン。

 そして、騒がしい仲間たち。

「おっ、便利屋の生徒さんか、らっしゃい!」

 大将の声が飛んできて、アルが「お邪魔するわ!」と元気よく返す。

 あいつは本当にどこに行っても気後れしない。むしろ店の空気を乗っ取る勢いだ。

「ようやく食い逃げ分の解消が出来たな!」

 俺が胸を張ってそう言うと、すかさずカヨコが眉を寄せた。

「いや、それはあなたの悪ふざけじゃなかった?」

 カヨコは細かいな〜

 食い逃げと言っても、ほとんどお金を持ってなかったお前たちが悪い。

 いや違うか。お代で競りをしないってケチリカに叱られたっけ。まあ忘れた。

「最近、柴関ばっかり食べてるね~」

「私は美味しいから別に良いけれど……」

 ムツキとカヨコがいつもの席に腰掛け、自然と全員の配置が決まっていく。

 この光景がなんか好きだ。戦場より整然としてる。

「ま、毎回お礼で9割引なんて云われたら、通っちゃいますよね……!」

 ハルカが照れくさそうに言う。

 こいつは本当に律儀だな。毎回感謝で体が破裂しそうになってる。

 湯気で曇るカウンターの向こう、大将と俺は湯切りしていた。

 こうやって湯を切る音が響くと、妙に胸が落ち着く。

 世界が戦火から日常に戻ってきたみたいだ。

「ほんとお前らには助かったよ。あの蛇を倒した後の始末、俺たちがホシノ助けに行かせるためにやってくれてさ」

 これは本音だった。

 危険な後処理を任せっぱなしにして、散々面倒を押し付けたのに、誰も文句一つ言わず動いてくれた。

 一人で戦ってる気になってたけど、結局は皆に支えられてたんだよな。

「後でヒナのとこにも挨拶行かなきゃだけど……」

 

「便利屋の生徒さんには開店資金で世話になったからな、これ位はさせてくれ。都合上無料タダって訳にはいかねぇが、全品いつでも九割引きだ。」

 大将の言葉に、俺は思わず口角が上がる。

 不器用なくせに、こういう時だけ妙に格好つけるからズルい。

 全品九割引……実質ほぼタダじゃないか。破産する気か。

「何を頼むんだ?」

 俺が聞くと、全員が妙にニヤニヤしていた。

 あ、なんか嫌な予感。

「そんなの決まってるじゃない」

「だよね〜」

「み、みんなで一斉に言いませんか?」

「たまにはいいんじゃない。」

 相談するまでもないという顔だ。

 完全に俺を置いてけぼりにして楽しんでやがる。

「せーの」

「「「「開拓ラーメン4人前!!」」」」

 店中に響く声。

 くそっ……負けた。テンションで負けた。

「はいよ!」

 大将の声が弾む。

「あっそれ俺のセリフ!」

 思わず口に出すと、大将が呆れたように言った。

「いや、一応この店の大将俺だから………」

 うん、まあ確かにそうだ。

 でもなんとなく、一番に「はいよ!」って言いたかったんだよ。

 ここに来ると、なんかそういう気分になるんだ。

 湯気の向こうでみんなが笑っている。

 

ーーーーーーーーーー

ゲヘナ風紀委員会の執務室に戻ると、張り詰めた空気がぴりつくように肌へまとわりついた。

 机の上では今日処理した書類がまだ小さく震えて見える。私自身の肩から抜けない緊張が、そのまま部屋に染みこんでいるせいだろう。

「……………」

 椅子に腰を下ろした途端、アコの小言が頭上から降ってきた。

「もう、ヒナ委員長! 風紀委員を動かさないとわかっていながらご自身で渦中に飛び込むなんて無茶に程がーー!」

 聞き飽きた、と言いたくなる。

 けれど、口には出さない。

 出した瞬間、ぜったいにアコがもっと面倒くさいことになるから。

(今回のアビドスでの一件……)

 アコの声を静かに聞き流しながら、私は頭の中で静かにその出来事を振り返っていた。

 あの砂嵐。

 あの衝撃。

 あの、どうしようもなく得体の知れない“災厄の気配”。

(……かなり大きかったわね。)

 心の奥の方がひどく冷たい。

 普段ならすぐ湯気が立つような怒りが出るところなのに、むしろ逆で、胸の奥底が凍りついたまま熱を持たない。

(星をも滅ぼす“星核”。)

(その星核を求めて現れた、謎の怪物……あの蛇。)

(そして、その騒ぎにつけ込むように動き出したカイザー。)

 どれも一つで十分に大事件だ。

 それが一気に重なり、アビドスの砂漠に叩きつけられた。

 普通の学校なら、とっくに壊滅している。

 ほんと、あの子たちは強いわ。

 そして――

(開拓者の成長。)

 思い出す。

 あの白焔をまとった穹の姿。

 人の枠からはみ出した、あの熱。

 正直、ぞっとした。

 敵だったらと思うと恐ろしくなるほどの力――あれがゲヘナの外から来た“天外の存在”の本領だというのなら、私たちは世界の常識そのものを見直す時期に来てるのかもしれない。

 けれど、胸の奥に広がる不安の種はそれだけじゃなかった。

(極めつけは……トリニティの増援。)

 砂の海を切り裂いた砲撃。

 規律に忠実で、面倒くさいほど“正義”に敏感な集団。

 あのタイミングで現れたということは――偶然ではない。

「……何か企んでないといいのだけど。」

 独りごとのように呟くと、アコが「えっ?」と私を覗き込んだが、私は手で制した。

 アビドスの件は、風紀委員会が扱うには規模が大きすぎる。

 あれは、少なくともゲヘナとトリニティだけの問題じゃない。

 天外から来た開拓者が関わり、星核があり、世界そのものを左右する災厄が潜んでいる。

 アコはまだ何か言っていたが、私は目を閉じた。

   

何か、嫌な予感がする

ーーーーーーーーーーーー

 

ティーパーティーの執務室は、昼なお薄暗い聖堂のような静謐に包まれていた。

紅茶の香りが甘く漂い、磨き上げられた大机の上ではカップの縁が鈍く光を反射する。

その中央で、一人の少女が静かに語る。

「そうですか、アビドスは増やされた借金は元に戻り利子は大幅に削減」

淡々とした声は、朗報を宣言するというより、事実を確認する冷たい刃のようだった。

「対策委員会は正式な部活と認められ、カイザー理事は瀕死の重傷を負い失脚と」

少女はまるで帳簿を読むかのように続ける。

表情は柔和だが、微笑すら浮かべていない。

精密に計算された“予定通り”の結果に頷いているだけ。

「なるほどヒフミさんよく頑張りましたね」

柔らかな褒め言葉。それなのに、どこか逃げ場のない圧があった。

正面で控えていたヒフミは、肩を強張らせ、ただ頭を下げるしかなかった。

アビドスでの戦い、開拓者や穹の奔走――

彼女自身がどれほどその渦に巻き込まれていたか、誰よりも理解している。

だがティーパーティーの前では、すべては「成果」という一言に収束する。

『あ、ありがとうございます。』

ヒフミの声は、震えてはいない。

だが胸の奥に残る不安と、安堵と、罪悪感の澱が入り混じっていた。

少女は穏やかに目を細める。

その仕草は、礼拝堂のステンドグラス越しに差す光を受けた天使のようにも見えた。

しかし、その実態を知る者なら、そこに宿るのが天恵ではなく計算だと理解している。

「では、お約束通りお願いしますねヒフミさん?」

それは“命令”ではなかった。

だが“拒否”という選択肢を丁寧に消し去った、完璧な提案だった。

ヒフミは答えなかった。

喉が硬直し、言葉が出ない。

ただ――

彼女の手の指先が、制服の裾をわずかに強く握りしめた。

その仕草だけが、彼女の胸のうちに渦巻く感情のすべてを物語っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーー

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ダウンロード完了 紡がれた物語




みなさんこれにてアビドス編は終了となります。

なんか最後めちゃくちゃぐだぐだだった気がしますが……そこは置いといて

アンケート通りに次のお話はエデン条約編に行こうと思います。

次回は次章の紹介公式生放送風にアレンジしたお話にしようと思ってます。ゲストもたくさん来ますし我らがもう1人のゴミ箱愛好家が来るかもしれません。どうかこれからもよろしくお願いします

Mr.ミミ作のコーナーの今後

  • 新キャラの方がいい
  • ストーリーに関係するキャラがいい
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