そして穹くんの記憶ですが、全くないと言うより人物や、出来事を細かく思い出せないだけで旅に出ていたことと心情に関してはなんとなく覚えていると言う認識でお願いします。
あれから数日。
俺はシャーレの部室で、まるで世の楽園にでも住んでいるかのような優雅な日々を送っていた。
窓の外には異様に澄んだ青空。机の上には読んでない資料の山。床には俺が寝転がった跡がそのまま残っている。最高に自由、最高に悠々自適。まさに銀河打者の休日そのものだ。
――そんなある日。
「先生!」
甲高くも澄んだ声が耳に刺さる。アロナだ。彼女の姿を映すシッテムの箱が、きらりと光を放っていた。
『あ、先生! モモトークのチャットが届きました!』
「……モモトーク?」
聞き慣れない単語に、俺は首をかしげる。もしかして新しい野球技術の名前か? モモトーク打法とか。
『はい!』
アロナが小さな体で元気よく頷き、無垢な笑顔を浮かべる。
『モモトークというのは、キヴォトスで普及しているチャット機能……つまり、メッセージをやりとりするためのものだと思ってください』
なるほど……メッセージ。つまり俺のことを称賛するファンレターがついに届いたわけだな!?
俺の銀河打者としての活躍がキヴォトス中に轟き渡り、憧れを抱いた誰かが勇気を振り絞って送ってきたに違いない。
「で! 一体誰から連絡が来たんだ?」
『あ、そうでした! メッセージは先日、先生と共にシャーレの奪還を手伝った――ミレニアムサイエンススクールの、早瀬ユウカさんからです!』
「あー、あの太ももからか」
すっかり呼び名が定着している。頭の中の辞書が勝手にそう書き換えてしまったのだから仕方がない。偉い人だとは聞いたけど、やっぱり俺を認めてメッセージを送ってきたんだな……これは大事件だぞ!
「よし! 読んでくれ!」
『はい、わかりました!』
アロナがモモトークを開く。画面に浮かぶ文字列。その一文字一文字が、やたら神聖な予言書のように目に飛び込んでくる。
【こちら先生の連絡先でよろしいでしょうか?】
【前一緒にシャーレを奪還した早瀬ユウカです。覚えていますか?】
……おお、やっぱり俺に直接ご指名じゃないか! これが英雄の証明ってやつだ。
【覚えてるとも!】
と即返信。だが、次に現れたメッセージに俺は凍りついた。
【もちろん太もも以外で!ですよね?】
…………え?
なぜバレた? 俺の心の声が文字に変換されて漏れてるのか? 恐るべしモモトーク。
【………暇人】
【だーかーらー私はセミナーの仕事があって忙しいんです!!決して暇人なんかじゃありませんから!】
ふむ……つまり暇人ではないけど俺のメッセージには即返信する余裕がある、と。
俺は鋭い洞察を働かせ、勝ち誇るように返す。
【でも俺のメッセージを返すだけの時間がある。】
その瞬間、アロナが小さく肩を竦めた。
『先生、そこまでにした方が……ユウカさん、ちょっと怒ってますよ』
……なんだよ。女心ってやつはまるで量子物理学だな。観測した瞬間に結果が変わる。
【分かりました………本来ならメッセージだけにしようと思っていましたが、気が変わりました。】
嫌な予感がする。俺の背中に冷たい汗がつーっと流れ落ちた。
【今からそっちに向かうので、】
「えっ!? え、ちょ、待って!」
思わず声に出してしまった。これは不味い。穏やかなシャーレライフが……壊される!?
咄嗟に俺は必死の言い訳を打ち込む。
【違う!これは全部この端末のAIが勝手にメッセージを入れたんだ!俺のメッセージじゃない!!】
『ちょっとォ!? 罪擦り付けるのやめてくれませんか!?』
アロナがぷんすかと頬を膨らませる。ああ、バレたか。
【へぇ〜そうですか………】
【しかし私には先生が打っているように思えてならないんですよね〜】
【とにかく先生に拒否権はありません。いいですね?】
画面に浮かぶその冷徹な宣告。背筋を冷たい鎖で縛られるような感覚に襲われる。
【はい………】
俺の指は、なぜか勝手にそう打ち込んでいた。
――その瞬間、部室の静けさは終焉を迎えたのだ。
ーーーーーーーーーーーーー
早瀬ユウカは、キヴォトスでも特異な存在である組織、シャーレ。その出入り口に、今まさに到着したところである。
本日、ユウカがここを訪れた理由は一つ。
銀河打者――そう名乗る人物の正体を、少しでも知るためだ。
連邦生徒会長が「先生」として任命した人物であることは理解している。だが、ユウカ自身が彼と直接接したのはわずかであり、その人物像はいまだ靄の中にあった。
知っているのは、顔立ちは端正なのに口を開けば支離滅裂なことを言い出すこと。しかも趣味は「ゴミ箱」などとふざけているらしい。――常識的に考えれば、狂人。
にもかかわらず、その身に秘めた力は恐ろしく、否応なく目を奪う。
――銃弾の嵐を、ただバット一本で駆け抜け、不良たちを薙ぎ払った。
――さらには、その同じバットで戦車までも粉砕してみせた。
その光景を思い返すだけで、ユウカは背筋に戦慄を覚える。
「はぁ、とうとう来てしまったわね……」
「とりあえず、執務室は〜えっと……」
ユウカが執務室への入り口を探っていると………ふと入り口の端っこに紙束が入った状態で置かれている袋に目が留まる。
「ん〜?あっアレは!」
ユウカは慌てて抱えていた袋を持ち直す。分厚い書類の束がぎっしりと詰め込まれており、その重量で両腕が僅かに震えていた。
ユウカはそれを持ったと同時に執務室へと駆け出した。
やがてはエレベーターに乗り込み、上階へと上昇していく。箱の中には機械仕掛けの振動と、書類の擦れる音だけが満ちていた。
到着の音が澄んだ鐘のように響く。扉が左右に開くと、そこには静まり返った廊下が伸びていた。
目的の階。
迷うことなくその先へと歩みを進める。
――そして、シャーレの部室の前に辿り着いた。
ーーーーーーーーーー
――ノックの音が響いた。
俺は反射的に息を潜めた。
……ダメだ、今だけは入って来られちゃ困る。いや、絶対にまずい。
「先生、早瀬ユウカです」
ドアの向こうから聞こえる声。
背筋に冷たい汗がつっと流れ落ちる。……かなり早い到着だな、
『…………』
沈黙を選んだ俺だったが、甘かった。
「いることは分かっていますからね。失礼します」
ガチャリ、と扉が開き、ユウカが踏み込んでくる。
「って何よこれ!!」
「もう部屋中がゴミだらけなんだけど!!」
その場に立ち尽くすユウカの目が、見開かれた。
いや、そんなことはどうでもいい。問題は――
俺の自慢のゴミコレクションが、天敵、ユウカの目に晒されてしまったことだ。
床から天井近くまで、びっしりと積み上げられた宝物。紙屑、空き缶、壊れた電子部品……どれも拾った瞬間に「これは!」と心を打たれた逸品ばかりだ。俺はそれらに囲まれてこそ安らげる。そう、これはただのゴミじゃない。魂の結晶、俺の誇りだ。
ふっ……だが甘く見ないでほしい。並の者がこのゴミの海に耐えられるわけがない。鼻を突く匂いも、散乱した紙片のざわめきも、選ばれし者にしかわからない崇高さがあるんだ。これで彼女も退散――
「まぁ……全部片付けてしまえばいいだけよね? 」
……え?
今、片付けるって言った?
俺は恐る恐る、ゴミ山の隙間から顔を覗かせた。
次の瞬間、目に飛び込んできたのは――すさまじい勢いでゴミを処理していく太ももの姿。紙は束ねられ、缶は袋に詰められ、ガラクタは容赦なく回収箱へ放り込まれていく。
マズイ!! 俺がキヴォトスで苦心してかき集めた自慢のコレクションが……全て……全てパーになる!!
鬼!!
鬼畜!!
この世に生きる片付けの権化!!
俺はゴミの山にしがみつきながら、ただ呆然と叫んでいた。
「ようやく片付け終わったわね」
ユウカが額の汗をハンカチでぬぐいながら、凛とした声でそう言い放つ。
俺は、瓦礫と化したゴミの山を背に、ただ呆然と立ち尽くしていた。……いや、瓦礫じゃない。俺にとっては宝だったんだ。けれど彼女には、それはただの「ゴミ」にしか見えなかった。
「そして――」
ユウカの瞳が鋭く俺を射抜く。
ぞわり、と背筋が寒くなる。
「ようやく見つけたわよ!! 先生!!」
あぁ……とうとう見つかってしまった。
俺の銀河打者伝説がここから始まる……そんな淡い夢は、一瞬で吹き飛んだ。どうやら、もっと現実的で、もっと重たい何かに捕まったらしい。
「先生、私がどうしてここに来たのか分かりますか?」
……。
声を出そうとしたが、口が動かない。分かるはずがない。俺はゴミの中でぬくぬくと暮らしていただけだ。
「まぁいいです。先生が変わっているのは知っていましたから……」
ふっと吐息を混ぜるように言う彼女の口調は、冷ややかで、それでいてどこか諦めが滲んでいた。
「それよりも――」
ユウカは肩から提げていた袋を、ドンッと机の上に叩きつける。分厚い書類束が雪崩のように広がった。
「どうして連邦生徒会からの書類を放棄していたんですか!?」
「え? え!? 仕事しなくていいんじゃなかったのか!!?」
思わず情けない声が出た。
そうだろ!? だって、あのケチリンが言ってたじゃないか!「何をなさるのも自由」って! 自由なら仕事をしないのも俺の自由! 俺はその自由を謳歌していただけだ!
「……先生」
ユウカが目を細める。
その目は怒りでも呆れでもなく――「管理者としての責任」を突きつける目だった。
「確かにシャーレは自由な組織です。でも、それは“好き勝手していい”という意味じゃありません。少なくとも、先生が責任者として名前を連ねている以上、行政からの最低限の報告書類ぐらいは処理していただかないと困ります」
彼女はきっぱりと言い切った。
背筋がピンと伸びる。……俺は戦場では無双できる。でも、この書類の山は……敵だ。間違いなく最大の強敵だ。
「えっと……」
必死に言葉を探す俺を、ユウカの視線がじっと貫く。
「先生。逃げないでください」
俺はごくりと唾を飲み込んだ。
ゴミの山より、戦車の砲撃より、今のユウカの方が何倍も怖い……。
――こうして俺は、連邦生徒会から送られてきた初めての書類業務と、真正面から対峙することになったのだった。
「さぁ、先生。これが本日の分です」
ユウカは、まるで処刑人のように冷ややかな声で告げると、机の上に分厚い紙の束を置いた。
ドサッ。ドサッ。ドサッ。
その音が、まるで俺の心臓を直撃するように響く。視線を上げれば、書類の山は天へ伸び、雪崩のごとく積み上がっていく。
「ちょっと待て……これは……冗談だろ?」
乾いた笑いが漏れた。
三メートルはあるんじゃないか? いや、間違いない。これはもう壁だ。書類の壁だ。立ち塞がる鉄壁だ。
「冗談ではありません。これが現実です」
ユウカの淡々とした返しに、俺は思わず椅子の背もたれに沈み込み、天井を仰ぐ。
「現実って……厳しいんだなぁ……」
だが、俺は戦場を駆け抜けた男。銃弾を弾き、戦車を粉砕した銀河打者・穹だ。
相手が紙だからといって、怯むわけにはいかない。
「よし!こういう時は――」
机の横に立てかけてあった愛用のバットを手に取る。
金属光沢が光を弾き、まるで「いけ」と俺を鼓舞するように見えた。心臓がドクンと跳ねる。勝利のリズムだ。
「先生? それで……まさか……」
ユウカの声が後ろで響く。けどもう遅い。俺の中の血潮が叫んでいる。
「うおおおおッ!! ルールは破るためにあるッ!!!」
振り抜く。全力のスイング。
バッコォォォォォンッ!!!
衝撃が空気を裂き、書類の山が爆ぜるように散った。
宙に舞う白い紙片。ひらひらと落ちてくる光景は、まるで桜吹雪。息を呑むほどに美しい――。
「先生、何してるんですかッッ!!!」
その美しさをぶち壊すように、ユウカの絶叫が響き渡った。机を叩きつけ、額には青筋。雷鳴のような怒気を帯びた視線が俺を射抜く。
「ふっ……一瞬で片付いたな」
仁王立ちし、英雄のように胸を張る俺。だが――
「片付いてません!!! むしろ余計に散らかったじゃないですか!!!」
冷徹なツッコミが飛んできた。
俺は一歩後ずさる。銃弾の雨よりも、今のユウカの怒りの方がよほど怖い。
「ユウカ、これは開拓だ。俺は“仕事をしないといけない”というルールを開拓したんだ」
「はぁ……先生、一応お伝えしますが、これが滞ったら連邦生徒会からシャーレが廃止されかねないんですよ」
「えっ!?」
声が裏返る。
廃止!? ここが!? 俺のゴミたちが!?
「それは困る!! ベッドも飯もコンビニも、ゴミも集められるこの楽園を失うなんて……!」
俺は膝から崩れ落ちる。脳裏をよぎる、ゴミコレクションの数々……。あの宝を失うわけにはいかない。
「……わかりましたか?」
ユウカは深く息を吐き、眼鏡を押し上げながら冷静に言い放った。
「つまり、先生が書類を処理しなければ、シャーレの未来はないんです」
ぐぬぬ……。
俺はついに悟った。
――これは、バットでは倒せない敵だ。
銀河打者・穹の新たな戦い。
その名は「書類業務」という最強の敵。
「……やるしかないのか」
「そうです、やってください」
「よし……ユウカ、手伝ってくれ」
「最初からそのつもりです。……仕方ない人ですね」
彼女の言葉に、ほんの少し安堵が滲んだ。
かくして俺とユウカは、紙吹雪と化した書類を一枚一枚拾い集め、机に並べる。悪戦苦闘の「事務作業」という戦場に、肩を並べて挑むことになったのだった。
あの後――俺とユウカは書類の山をどうにか片付けた。
いや、正確に言うと「ほとんどユウカが」だ。俺は横で数字やら判子やらに脳を焼かれ、ただ生き延びるのに必死だった。
「計算通り完璧〜に終わりましたね、先生」
机にぴたりと揃えられた書類の束を見て、彼女は得意げに微笑む。まるで戦場の勝利を確信した将の顔。
「ああ、そ、そう、だな……」
乾いた声しか出ない。頭を使いすぎて、もはや勝利の実感すら湧かない。
そして今の俺は――
ダンボールの中で丸くなっている。
「あの……先生、どうしてソファーではなくてダンボールの中に……」
不思議そうに眉をひそめるユウカ。
ダンボールの口から顔だけ覗かせ、俺は堂々と答えた。
「ここが俺の本当のマイホームだからだ」
「そ、そうですか……。先生は本当に変わっていますね。自由奔放で我が道を行くって感じがして、全く推測できそうにありません」
褒めているのか呆れているのか、微妙な口調。けど、その眼差しは真剣で、どこか俺を観察するようでもあった。
……ん?
「ユウカは自分の意思で動いてないのか?」
「え?」
「だって今の言い方だと、自分より周りを優先してるように聞こえた」
「それは……そうですよ。この世の中、自分のことより周りのことを優先して動かないと回っていきませんし、人の目だってありますから」
彼女は当たり前のことのように言った。
眼鏡の奥の瞳は、理性的で、秩序を重んじる色をしている。まるで一直線に引かれた定規の線のように、真っすぐで曲がらない。
けど――俺には、その線が妙に細く、窮屈に見えた。
だから、口をついて出た。
「ふーん……なんか――窮屈そうだな」
「へ?」
驚いたように瞬きをするユウカ。
その表情は、普段の計算高さとは違って、ほんの一瞬だけ無防備に見えた。
「俺さ……正直に言うと、ここに来る前の記憶って、ほとんど残ってないんだ。」
「でも――旅をしてきたことだけは覚えてる。いろんな星を回って、いろんな奴らと出会って、その度に「どっちを選ぶ?」って場面に山ほどぶつかった。」
「正解なんて分からない。どっちに転んでも誰かが傷つくことだってあった。」
「それでも……俺は結局、やりたい方を選んできたんだと思う。
自分が楽しいって思えた方。誰かを救える“気がした”方。あるいは――ただの気分で。
けど、それでも俺は、選んだ道を後悔した覚えがない。」
「 だから思うんだ。人の目とか正しさとかよりも――自分で「こっちがいい」って思った一歩の方が、きっと遠くまで行けるんだって。」
「人生は一度っきりだろ。だったら、自分の思う人生を……自分で開拓すべきだと、俺は思う」
言い終えた後、ユウカはしばらく黙って俺を見つめていた。
やがて小さく笑って、こう呟く。
「……なんか今の、すごく先生らしかったですね」
「え? そう!? かっこよかった?」
「それがなければ、かっこよかったですね」
「えぇ〜〜」
俺の抗議をよそに、ユウカはクスクスと笑った。
胸の奥で、なぜだかほんの少し、くすぐったいような誇らしいような気持ちが広がっていた。
「では先生、今日のところはこれで……また必要な時はいつでも呼んでくださいね」
ユウカが書類を抱え、部室の扉に手をかけた。
その仕草を見た瞬間、背筋に冷たい汗が伝った。マズイ。ユウカが帰ったら、この先誰が俺の仕事を片付けてくれるって言うんだ。書類の山と一人で戦えだなんて……それこそ死刑宣告だろ!?
俺は思わず声を張り上げていた。
「待ってくれよ〜ユウカ〜!」
「え!? ちょ、先生何を――」
俺は机に突っ伏すようにして、わざと声を震わせた。
「ユウカが帰ったら〜俺はどうすればいいんだ〜うぇぇん!!」
鼻をすすり、涙を拭う真似までしてみせる。完璧な嘘泣き。演技力には定評があるんだ俺は。
その時だった。
腕を組んでいたユウカが、勢いよく振り返った。
瞳はぐるぐると渦を巻き、頬は赤く、唇は小さく震えている。指先までそわそわと落ち着かず、まるで故障した機械みたいだ。
(……え、な、なに? なんでそんな挙動不審に?)
俺が首を傾げる間に、ユウカの視線が俺に突き刺さる。
その目は何かを決意した人間のものだった。……いや、怖い。マジで怖い。
そして彼女は心の中で、嵐のように妄想を繰り広げていた。
(――私なしでは生きて行けない……それってつまり、ぷ、プロポーズって事!? 嘘、そんな……! でも先生はキヴォトス外の人だし、なら規則上では問題ない……? 違う違うそうじゃなくて、私はセミナー所属で先生はシャーレの顧問……それなら関係を強固に――あぁもう何考えてるのよ私!!)
彼女の顔が、赤を通り越して真っ赤に染まっていく。
俺は必死に追撃を続けた。
「帰られないでくれよ〜ユウカ〜この先誰が俺の仕事をしてくれるって言うだ〜」
「……へ? 仕事?」
ユウカの瞳が一瞬にして冷え切った。
空気が一気に氷点下まで下がるのを肌で感じる。え、な、なんだこの空気。
「そうですよね。先生がそんなこと言うはずないですもんね」
声が低い。妙に低い。
「へ?」
「変な期待をした私が馬鹿だったみたいです!」
ユウカは勢いよく机を叩き、書類の山を小さく揺らした。
「も、もう知りません!! あとは勝手にやってください!!」
肩を震わせ、頬を赤くしたまま、ユウカは踵を返す。
その背中は怒りに燃えているのか、羞恥に耐えているのか、俺には分からなかった。ただ一つ確かなのは――
「……え、なんで怒ってるんだ?」
俺には彼女の機嫌がまるで理解できなかった。
次回……ついにアビドスへ
続く
今回の開拓の旅はひとまずここまで、次回をお楽しみに
Mr.ミミ作のコーナーの今後
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新キャラの方がいい
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ストーリーに関係するキャラがいい