TS愛され悪役トリックスターになって背後から胸を貫いてみんなを驚かせるやつやりつつ鬱原作をハピエンにしたい! 作:覚絵テネ
大体ラノベだと0.5冊くらいでしょうか
書き始めた頃は3000字書くことすら難しかったのでこんなに読んでいただけてかんしゃーです
あと6割くらいですかね?これからもやりたい放題やります
勢いだけで何万字もかくのやっぱりキツくて結局プロット書いてますがよろしくお願いします
とある映画館。エンドロールが流れている。
観客の大半は映画が面白くなかったのか、首を傾げたり眠そうにしていた。
長身の男__九頭竜が中央の座席に腰掛け、静かに涙を流していた。
2mはあろうかという長身に、虎のような体躯は普通の席では窮屈そうだ。
横の座席には白と黒、二人の従者を侍らせている。
オールバックにした強面の男が涙を堪え、震えている姿は奇妙だった。
その顔を白い光が照らす。
ぱっ、とスマートフォンの光が館内を照らした。
「あははー、何だったのこの映画。」
「泣かせようとする感じがダメだったね。」
カップルであろう若い男女が立ちあがろうとしていた。その笑い声は潜めていても映画館によく響き渡る。
九頭竜は眉を顰め、口の形を変えた。
『亡』、と。
騒いだ男女の首から上が無音で弾け飛ぶ。首から上がなくなった二人は再び腰を下ろすことになった。
しかし、いかに無音とはいえ首無し死体というのは目立つようで、気づいた観客が連鎖的に悲鳴を上げていく。
九頭竜はそのたびに無音で唱える。
『亡』、『亡』、『亡』、『亡』、『亡』、『亡』、『亡』、『亡』、『亡』、『亡』。
しばらくして、館内が明るくなると3人の魔人と、首なし死体と……何も死らないまま両親の頸を切られた哀れな子供。
がたがたと震える哀れな子供に白い従者が近づく。
「ひっ……」
従者は細い腕で柔く抱き、耳元で呪文を囁いた。すると子供は安らかな表情ですやすやと寝息を立て始める。
白い従者___ハクリンは子供を席に座らせると、主に向けて蠱惑的に笑った。
透け透けの白いワンピースに、腰まで白い髪を伸ばした子供のような姿をしている。一見すれば可愛らしい少女だが、詳しいものが見ればわかるだろう...少年の骨格だと。
「九頭竜様、容赦ない感半端ないですねえ。最近は非礼を働いた成体も生かして帰していたのに。」
「阿呆、3アウトだ。暗闇を照らし、静寂を破り、
男は舌打ちしながら体を起こした。
「全く、全く、全く。神《オレ》でさえ芸術家には敬意を払うというのに。やはり映画館は貸切に限るわ。」
「申し訳ありません。でも1時間前に言われてもさりげ厳しいって言いますかー。」
「む...そうか、済まなかったな。しかし、我が妻ならば可能だったであろうな。アレは人間界に顔が利く。」
「我が妻......あ、アイツですか。フェイカー。どこがいいんですかねえ、あの破亡趣味のバカ女!」
ハクリンは嫌味ったらしい笑みが歪むのを、口に手を当てて隠した。
ちなみにフェイカーが我が妻、というのは九頭竜が一方的に宣言しているものだ。
「もう、やめましょーよ、あの女!どっちかっていうと、ボクたちだけでじゅーぶんって感じしません?趣味悪いって言いますかー!」
「ハクリン。貴様も3アウトだ。神に謝らせ、そして神の趣味を愚弄し、
次の瞬間、破裂音と共に首から上が消し飛んだ。首から上を失った体が崩れ落ちる。
九頭竜の額には血管が浮かんでいた。
「神の妻だ。侮辱して良いのは神だけだ。」
苛立たしげに九頭竜は歩き出し、もう一人の黒いパーカーに、マスクをした従者__コクリンに声をかける。
肩甲骨まで黒髪を伸ばし、切れ長の瞳。一見すると少女だが___やはり、骨格が男だった。
「さっさと治せ、雑事も済ませろ。俺は池袋に寄ってから妻に会いにゆく。何か企み事をしている様子だったので狗を差し向けた。慌てる顔が愉しみだ。」
コクリンは頷き、九頭竜の背中が見えなくなってから、首を失ったハクリンを小突く。
すると、時間を巻き戻すようにハクリンの頭が再生した。
「うー、痛かった..!いくら生き返れるとはいえ、どっちかって言うと頭がなくなるのはきつい。」
「本当に阿呆だね、ハクリンは。アレほどフェイカーに触れるなって。あの九頭竜様がフェイカー以外の女を近づけなくなった、あと1000年は執着されるよ。」
「うー、わたしフェイカーだーいきらーい。」
「
コクリンが手をかざすと、床に散乱していた死体が弾け飛び、血液は蒸発する。
「はーい。この後は信者の相手かな?私は【祝福を】。」
ハクリンが手をかざすと血で湿っていた床や座席が綺麗になり、その上に無傷の観客たちが現れた。皆何事もなかったかのように席を立ち上がり、シアターから退出する。
「あれあれ、こうた寝ちゃった?」
「ちょっと難しい映画だったからね、しょうがないよ。」
両親は自分たちが生と死を行き来したことに気づいてすらいない。
ほんとうに、何事もなかったかのように去っていく。
「あれ、蘇生させて良いの?クズリュー様が殺した奴らだよ?」
「クズリュー様が明確に死を命じたならそのままにするよ。」
「ああ、確かに。」
後始末を終えた二人は映画館を裏口から出て、ふわふわと飛び上がる。
重力に縛られないのは当然だ。彼らは神なのだから。
御簾で隠された畳の上に座り、九頭竜の代理として訪れる信者たちを捌いていく。
最後の来客は孤独な男だった。
「うむ、お前に良き婚姻相手が見つからぬのは徳が足りぬのが原因であろう。」
ハクリンが御簾の向こうでスマホゲームをやりながら、いかめしく言った。
「徳が足りない..!」
「うむうむ。信仰ランクを2階級上げ、五キロほど痩せればまた拝謁を許す。見苦しいんよな。」
「見苦しい……!」
男はコクコクと頷き、ハクリンたちの言う事を無心で受け入れていく。
フェイカーのような特殊な魅力などではなく、環境や仕組みで思考能力を奪われていた。
「な、なるほど...!帰ってすぐ用立て、毎日三キロランニングをします!」
「うむ。ああ、今月は他の信者も熱心に寄進をしている。相当努力せねば上がらぬかもな。」
「親類や友人を積極的に誘おうね、それが結構効率良いよ。」
コクリンが補足すると、男は大袈裟に首を振り、去っていく。
その様子を見て、コクリンはため息をついた。
「信者たちの相手、めんどいなあ。」
「なんで?こいつらさ、騙されてんのめちゃくちゃ面白っていうかー!」
「いや、騙してんのが気が重い。その気になればツガイくらい【祝福】でいくらでもあてがえるでしょ。」
コクリンの良心的な言葉にハクリンは手を叩いて笑った。
「相変わらずコクリンてば真面目すぎかもー!犬に餌の前にお手をさせる理由は?当たり前と思わせないためだよ。あいつらにも相当の苦行を積ませないと!」
「確かにね。まー、あの男は『お手』レベルじゃ済まなさそうだけど。」
「只要《さいあく》、命のストックになってくれれば問題ない感じだし!」
コクリンは男がすでに複数の金融機関から借金をしていることを知っている。
友人のほとんどから縁を切られていることも。
「じゃ、仕事終わり。配祀神としてクズリュー様を追いかけよう。」
「だね。なんか話の流れでフェイカー殺したい感半端ないかも!」