TS愛され悪役トリックスターになって背後から胸を貫いてみんなを驚かせるやつやりつつ鬱原作をハピエンにしたい!   作:覚絵テネ

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冒頭のメイドちゃんはアスターちゃんじゃないです


2話 パワハラ会議

 時は魔人会議の始まる少し前。

 魔王城の地下。戦略的にはもっとも安全な場所で、とある魔人が好んで居着いている。

 

「申し訳ございません!」

 

 メイド姿の少女が、頭を地面に擦り付けて震えていた。

 魔人四天王が一人・ガンゴーグに持っていくお茶を、本人の目の前でこぼしてしまった。よりによってその残虐性で知られるガンゴーグに。

 彼はプラチナのように輝く___オリハルコンの肌を持ち、剥き出しの歯と、禿げ上がった頭が威圧感を放つ。残虐性で知られる魔人四天王の一人だ。

 

「も、申し訳ございません。」

「いや、いいんじゃ。」

 

 メイドは再び許しを乞うが、思いの外ガンゴーグの声は穏やかだった。もしかすると許されるかもしれない、と淡い期待を持つ。

 

「じゃが、原因を教えてくれ。」

「は、はい。手が震えて」

「いや。それは根本的な原因じゃない。」

 

 しかし、その期待は直後に裏切られた。ガンゴーグの巨大な腕が少女を締め上げる。

 

「貴様、わしを舐めとるじゃろ?」

 

 メイドの頭が一瞬真っ白になる。

 舐める?冗談でしょ、こんな怖い人を舐められるわけがない。

 

「そ、そんなことは...。」

「いいや舐めとる。そうじゃなければ、茶をこぼすなんて事あるわけがない。」

 

 巨大な手が少女の細い体を掴んだ。

 ギリギリ、と少女の体が悲鳴をあげる。

 

「お、お許しを...」

「ワシへの不忠は魔王様への不忠じゃ」

 

 ガンゴーグが力を入れると、骨と内臓が潰れる音が連続した。

 これでは生命力に優れる魔人であっても助かる道理はない。

 

「ククク、若者を虐め殺すのはたまらんなあ。もう一匹潰すのが楽しみじゃのう。」

 

 笑いながら席を立ち、魔人会議が行われる円卓の間へ歩いて行った。

 

 

 

 

 

 冷たく湿った空気が、魔王城の奥深くにある円卓の間に漂っていた。赤いテーブルクロスの掛けられた巨大な円卓の周囲には、十数人の魔人が腰掛けている。

 

 円卓を見下ろす玉座に肘をかけるのは魔王クルルクルル。

 白い髪、白い肌、白い瞳、白いドレス。全てが例えようもないほど白い。

 彼女の幼い顔は無表情で、常人なら狂うほどの威圧感を放つ。

 

 円卓に集う十数名の魔人は息を潜め、彼女の発言を待つ。

 

「魔人であるスナイダーが死んだ。やったのは二人の魔法少女だという。名は確か...」

「チェリーブロッサムにスカーレット、でございますじゃ。」

「ああそうだ。聞かぬ名前だな。」

「新入りの魔法少女ですゆえ。」

「新入りか。つまり大した強さはないということ。」

 

 不機嫌なクルルの声に、場が凍りつく。

 

「なあ___貴様らは我が血を与えた魔人でありながら、なぜソレほどまでに弱いのだ?」

 

 円卓に集う十数名の魔人は黙って頭を下げる他ない。

 無論、スナイダーがやられたのは他の魔人の責任ではない。しかし、「俺たちにそんなことを言われても...」なんて言うバカはいなかった。

 理不尽な理由で、仲間のはずである魔人すら粛清されるのは珍しいことではない。

 

 今日もそうだった。

 魔人たちの中で一層震えている少女がいた。

 栗色の癖毛に、つぎはぎだらけのボロ着を纏った少女。1ヶ月前に魔人にされた少女、ルーネ。倒されたスナイダーの部下だった少女だ。

 彼女に非はないが、魔王軍にそんな理屈は通じない。

 

「魔王様が気に食わないのは、役立たずが一匹消えたことではない。戦力の心配など一向にしていない。」

 

 四天王である『悪辣なる絶対防御』ガンゴーグが魔王の怒りを誘導する。

 

「.....貴様らのような雑魚が魔人を名乗っていることで、魔王様の面目が潰れることだ。魔王様は今こう思っている......役立たずは消してもいいのではないかと。」

「そうか?そこまでか?」

 

 クルルクルルは首を傾げた。

 

「ええ、無能を甘やかしては統制が取れなくなりましょう。」

「そういうものか。じゃあ見せしめにしてしまうか。」

 

 ガンゴーグが魔王を説き伏せる。

 魔王にこうして意見を言えるのは、即位前から関わっていた魔人四天王の4人だけだ。残りの二人はガンゴーグを止める気がなく、あと一人はこの場にいない。

 

 ルーネの震えが増すます強くなる。魔王の足元に頭を擦り付けた。

 

「お、お待ちを!私は、あなたのために戦うために力をつけました!それがこんな仕打ちは....あんまりです!せめて、魔法少女のところへ特攻させてください!一人でも多く道連れにして参ります!」

「あ、じゃあそうするか。爆弾とか欲しいか?」

「あ、は、はい...「待てい!」」

 

 ルーネの声が途切れる。ガンゴーグがその拳を足元に叩きつけた。

 

「魔王様。此奴の言うことを耳に入れてはなりません。騙くらかし、逃げるつもりでありましょう。」

「そうなのか。」

「ひっ」

 

 ルーネの顔は蒼白で、ガンゴーグを見上げる。その濁った瞳には、同族すら好んで痛ぶる残虐さが見え隠れしている。

 

「役立たずに死場所を選べると思うな。さ、魔王様、粛清の御命令を.....。」

 

 ルーネの処遇が決まろうとしていた、その時。

 円卓の間の扉が開き、突然紅の矢が降り注いた。

 

「なっ!?」

 

 ガンゴーグは間一髪で矢の雨を避ける。

 肉体強度を無視して、魂を直接傷つける矢だ。

 

「やっほー!ガンゴーグさんってば、相変わらずこわーいお顔☆そんなんだからあなた一部から邪悪な男梅とか言われるんですよ?」

「なんのつもりだ貴様らっ!」

 

 弓を構えたアスター。その背中で主人であるフェイカーがケラケラ笑っていた。

 

 

 

 

side:フェイカー

 

 あっぶねー。なんとか間に合った。

 会議室が近づくにつれ、ストレスで胃とお腹が痛くなったけど我慢して正解だった。

 

 魔人会議って、原作1巻のパワハラ会議かよ。

 これは魔人が如何に悪辣で冷酷で救いようのない連中なのか、そして魔王様が四天王の傀儡であることを仄めかすための話だ。

 

 ここで俺がやることは二つ。

 まず、新人ルーネちゃんの救済だ。原作では登場から4コマでガンゴーグに頭を握りつぶされる端役なのだが、アニメ化の際なぜか8分も出番を与えられた。有名声優によりその死に様を熱演されたことで、一部ファンからカルト的な人気を獲得した。

 俺は普通に可哀想だし助けてあげたいと思っていた。

 

 そして、もう一つ......魔王軍の老害ガンゴーグ。こいつにさ、ちょっとやりたいことがあるのだ。

 

「もう一度問おう!何なんだ貴様!?いきなり矢をいかけよって...!返答によっては殺す!」

 

 ガンゴーグが怒り狂っている。うんうんごもっともだ。この件だけはね。

 こいつは登場人物に暗い過去が明かされるたびにその元凶にされ、「もうこいつが全ての元凶なのでは?」と訝しがられているドグサレ野郎だ。

 生きている限り魔法少女にも魔人にも無数の禍根を撒き散らし続ける。まあ、原作開始時点ですでに数多の悲劇を起こしてるけどね。

 

 生かしちゃおけねえ。

 この場は流すしかないが。

 

「あれあれ、そんなに怒らないでくださいよお。ただの悪戯じゃあないですか。それとも、ガンゴーグさんにはアレが本気に見えました?」

「くだらん言い逃れをするか、貴様...!」

「まー、水掛け論ですねえ?」

 

 俺はそう言って首を傾げて嘲笑い、精神的有利の生成に努める。雰囲気的に「怒ってるおじさんだっさ〜❤️」みたいな感じにするのだ。

 自分で言っといて何だが、水掛け論ではない。人を矢で射るのは普通にダメだと思う。

 

 だが、この体は作者の寵愛を一身に受けた身だ。明らかに害悪で悪質で許されざる行動をしても、多少は許されるだろう。

 

 俺はクルルクルルの方へ駆け寄り、玉座の手すりに顎を乗せる。

 原作フェイカーのぶりっ子ムーブを羞恥心で死にそうになりながら再現した。

 

「ね、クルル!ただのお遊びだよね、こんなの!」

 

 俺が話しかけると、無表情だったクルルクルルはわずかに微笑んだ。

 

「うん、そうだな。我にあたったところで傷ひとつないだろうしな。慎めガンゴーグ。」

「...くっ、くそ..。」

「クルルちゃんありがとー☆」

「大丈夫だ。ガンゴーグが怒ったらまた頼ってくれていいぞ。」

 

 魔王クルルクルルの精神は見た目通りの幼い少女で、ガンゴーグたちをはじめとした老害の操り人形である。奴らの言うこと以外は聞かないよう教育されているが、例外はいる。俺だ。

 クルルクルルは友達の一人も許されず、悪辣なる魔王として教育されてきた。だからこそ、『誰にも与しない孤高の策士(キリッ』であるフェイカーに惹かれ、他の四天王の言うことを無視してでも特権的な立場を与えているんですね。

 

 さて、この流れでさっさと会議を終わらせよう。

 原作ではルーネを粛清したところで終わりだったはずだし。

 

「クルルー。ボクこんな会議退屈だよ。さっさと終わらせよ〜?」

「そうか。じゃあルーネとかいうのはどうしようか。」

「どうでも良くな〜い?あ、でも行き場がないならボク預かりにさせて欲しいな。かわいいじゃん☆」

 

 さりげなくルーネを俺の部下にしておこう。ガンゴーグたちから保護しなければならないし、あと俺のやりたいことを実現するには彼女の力が必要だ。

 

「わかった。あと、仲間を殺した魔法少女に報復をしなければ。」

 

 げ、しっかりしてんなあ。

 原作ではルーネ粛清の後、ガンゴーグにチェリーブロッサムとスカーレットへ報復の任が与えられる。

 ガンゴーグの人間性は最底辺だが、先代魔王の代から支えているだけあって実力は最高峰。その上慎重で、部下を特攻させて瀕死にさせてから自分で潰すという戦略を取る。まだ新入りである二人が勝てる道理がなく、スカーレットはチェリーを逃して死に、チェリーは暗黒面へ傾く。

 

 このエピソードで俺は『トーデス』の方向性をよーく悟ったし、キレすぎて単行本をビリビリに破いてもう一回買い直す羽目になった。絶対にあんな悲劇を起こしてはならない。

 

 いや、だが.....止めない方が好都合か?ガンゴーグはできるだけ早期に始末した方がいいだろう

 これを逃すと、8巻までガンゴーグは厳重に警備された魔王城から出てくることはない。

 

「ガンゴーグ。暴れてこい。」

「......御意に。」

「うん、こんなところか。では解散とする。」

 

 クルルクルルを今の姿に教育したのはガンゴーグをはじめとした他の四天王たちだが、彼らも表向きにはただの部下。

 正面切っては魔王の言葉に逆らえず、「御意に」と頷くしかない。

 

 あー、たまんね!権力たまんね〜......な訳ない。

 こっちに「マジでふざけんなよ」みたいな目を向けながら退席していく魔人たちの目線が刺さり。胃が痛いマジで。

 リアルに見るガンゴーグアホ怖い。人間時代からパワハラしてそうだなこいつ。

 怖いが、精一杯不敵に微笑んでやつを見送る。

 

「また遊びましょう?」

「今に見ておれ.....。」

 

 そういうこと言うのやめなー?泣くぞ?俺が。

 

 不機嫌に遠ざかる扉を見つめていると、クルルクルルに袖を引っ張られる。

 

「そういえば、この前教えてくれたラーメンというやつを食べてみたい。」

「ラーメン?」

「.....なんだ、忘れたのか?」

 

 あ、そういえば単行本のあまりページの4コマででクルルクルルとフェイカーがラーメン食べているやつがあったな。あれ正史だったのか。

 

「いや、覚えてる覚えてる!行こうか。」

 

 そんなキラキラした目で言われては無視できない。 

 

 クルルクルルもこれで不憫な少女だ。 

 魔王として教育されているが、その実態は先代魔王の魂を呼び戻すための器。つまり生贄である。目の前にいる少女は、邪悪として生き、より邪悪なもののために死ぬことを宿命づけられている。

 そんなこと許せねえよなあ?

 

 クルルクルルに限らず、「トーデス」で死ぬ女の子は大体かわいそうな過去がある。

 

 うん、大体やりたいこと決まってきたかもしれない。

 

 このミステリアスご都合主義最強最悪ボディを使って、最もハッピーに近いバッドエンドへ行くのだ。

 あ、誰もが笑って迎えられるハッピーエンドは世界の成り立ち上無理だ。

もしTSしたら(めちゃくちゃ美少女美少年、特殊能力とかはついてこない)

  • 戻りたい
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