TS愛され悪役トリックスターになって背後から胸を貫いてみんなを驚かせるやつやりつつ鬱原作をハピエンにしたい!   作:覚絵テネ

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思ったより長くなったので分割します


4話 ボスがHP1で根性全体即死してくるタイプの負けイベ

 これはいわば『正史』の話。ガンゴーグが二人の魔法少女を襲った未来。

 

 「なんで……なんで目を覚ましてくれないの!!!」

 

 霊安室。

 魔法少女・チェリーブロッサムが抱えているのは人間サイズの白い毛玉。ガンゴーグに甚振られた魔法少女・スカーレットの亡骸だ。魔法少女は契約したあと、血液が空気に触れると綿に変わる。この特性によって失血死はなくなる。見方を変えれば、苦しみを長引かせることにもなる。

 

「スーちゃん、私のこと絶対守るって。二人なら魔王も倒せるって、約束してくれたから……私も魔法少女になったのに……。」

 

 いくら泣いても、スカーレットの亡骸は答えない。

 

「わかったよ、スーちゃん。私、私がやればいいんだね。立ち塞がるやつ、全員、私が殺し尽くせばいいんだ。」

 

 かくして少女は穢れ、魔道を進む。

 

 

 

side:フェイカー 

 

 やあやあ、突然だけど魔法少女ってリアルだとめちゃくちゃ残酷な話じゃね。

悪との戦いを強制され、命を賭ける。あまつさえ、甚振り汚そうとするとびっきりの悪が無数にいる。

 俺は正義の味方じゃない。にしても、そういう奴らの胸は貫きがいがありそうだ。

 

 ルーネを眷属にしてから三日後の夜。

 ガンゴーグが現れる街のビルの屋上へ俺、アスター、ルーネは降り立った。眼下の街は商業施設の暖色の光で満ちている。

 

「雲で月が見えないのに、街は明るいね。」

 

 俺はこの世界に来てからちょっとは考えた。『胸ドス』に必要なものは何か。

 一番はやはり、場を完璧にコントロールすることだ。

 他の乱入者が来て狼狽えるトリックスターとかダサいでしょ。 綱渡りに見える状況でも、完璧に周囲を御しきっていてこそのトリックスターだ。......が、根回しや計略とかは無理。俺の中身はただの一般アラサーだ。

 

 そのために、物理的に外部をシャットアウトする方法、結界がある。しかし、結界というやつは大抵派手なエフェクトが伴う。張った時点で「何だ何だ」ってなるだろう。...ルーネを除いては。

 

 俺は指をパチンと鳴らす。練習通り音がよく鳴った。

 

「ええ、お任せを。」

 

 ルーネが並べ終わった十数枚のスケッチブック。それには合わせて一つの街......今回の作戦範囲が描かれている。

 

「世界、絵の具、溶けて、混ざりあってぇ…!」

 

 すると周囲の景色が一瞬、ほんの一瞬だけ揺らいだ。

 

「.......ええと、これでうまく行ったと思います、ハイ。」

 

 俺は空中に手を伸ばすが、何か硬いものに遮られる。実際に触れてみるまでは全く存在を感じ取れなかった。

 爪を立てても、全く破れる気配がない。

 

「固くて、それでいて気づきにくい。最高の結界だよルーネ。」

「えへ、えへへへへっ.....。」

 

 そんなに嬉しそうにされるとちょっと申し訳ない。

 ごめんね、ソシャゲ版『トーデス』における君の必殺技が一瞬画面が僅かに暗くなる手抜きなのをきっかけに「使える...!」って思ったりして。

 

 でも効果は強力だ。

 これがルーネの固有能力『世界を侵す絵画』。

 絵画に描いた範囲を侵食し、世界からの拒絶反応で切り離す。数分で元に戻るが、境界を超えるあらゆる通信・移動は概念的に拒絶される。今回は結界の維持に専念してもらうが、絵の方に加筆すると世界まで塗り替えられる。

 一の力で十を生む、とびきり異端な能力。ソシャゲのフレテキじゃ「発展すれば魔王すら塗り潰す異端」とまで書かれている。

 

 ソシャゲでも碌にストーリーのない彼女の設定が活かされた機会はあるのかって?それは今から作るのだ。

 

 眼下から逃げ惑う叫び声。ガンゴーグたちが行動を開始したらしい。

 

 じゃあ俺たちも動くか。

 

「では、ご武運を.....。」

「往こうか、アスター。」

「はい!」

 

 一瞬だけ穴を開けてもらった結界の中に飛び降りる。重力に従って加速し、視界が流線型に溶けていく。

 地面が見えた瞬間、片膝と片手をついて着地した。この着地方法は負担が大きい?一回やりたかったのだ。アスファルトが割れ、もうもうと煙が舞う。

 

 着地点ではちょうど、十数名のガンゴーグの部下たちがいて、女の子の服を脱がしていた。やりたい放題だなあ。

 

「何をやってる?」

「何って……なぁ。」

「レイプしてるんやん。」

 

 うーん、聞いて損した。56そう。

 俺は乱雑に爪で空を切る。すると延長線上にいたガンゴーグの部下どもの体がバラバラの肉片になる。

 

 ......が、例外がいた。

 ガンゴーグによく似たゴーレムタイプの魔人。

 俺は続けてゴーレムたちの頭を鷲掴みにして、地面に叩きつける。......無傷。常人ならスイカみたいに頭が砕けるはずだが。

 

「お、何だなんだ?」

「お前も犯されてえかぁ?」

 

 余裕たっぷりだなこいつら。

 長い足で5メートルほど蹴り上げて、すぐに飛び上がってから回し蹴りで再び地面に叩きつける。……が、やっぱり無傷。

 

 ガンゴーグに魔人化されたゴーレムは基本物理攻撃が効かない。ルーネの結界同様、単なる硬度でなく、概念防御的な性格も持っているので幾ら力を込めた所で無意味だ。

 だから、同じくらいのチートで対抗しなければ。

 

「お、なんだ何だ、おでたちに物理攻撃は効かねえどぉ〜?」

「知ってるさ、一応検証しただけ。あと......お前らはもう死んでいる。」

 

 世代じゃないけど言ってみたかったんだこれ。

 彼らの胸に紅いナイフが突き立ち、どす黒い血が噴き出す。

 アスターの能力、『人狼殺しの紅鋼』で作る防御無視の武器たちだ。

 

「あでぇ……?」

 

 ゴーレムたちは倒れ、動かなくなった。

 

「大丈夫? これ着て。」 アスターが渡したエプロンを、女の子が震えながら着る。

 

「あ、ありがとうございます……魔法少女の方々……」

 

 ん?ああそう見えるのか。俺たちは見かけ10代前半の女の子だからか。

 まあなんでもいっか、魔人は一般人からするとうまく認識できず覚えられないはずだし。適当に流すか。

 

「お名前は……?」

今日は月が見えないなあ(お気になさらず)君と見る日を楽しみにしているよ(気をつけて帰ってくださいね)。」

 

 俺は笑顔でひらひらと手を振り、踵を返す。

 

 ガンゴーグをぶっ刺しにいく前に、兵隊を先に殲滅するのだ。クルルクルルに告げ口されちゃたまんないからね。

 

 まあでも作業だな。

 次々にゴーレムを殲滅していく。

 俺の爪にアスターの『人狼殺しの紅鋼』をネイルとして装着。ゴーレムの岩肌を豆腐のように裂き、肉塊に変える。

 こうすれば俺の物理攻撃がゴーレム、ひいてはガンゴーグに通ることを確かめられた。

 

「私の武器はいかがですか?」

「いい感じ。何より可愛いね。」

 

 今頃ガンゴーグが街を警備中のチェリー及びスカーレットを襲撃しているはずだ。

 

 魔法省(魔法少女を管轄する省庁)内の裏切り者のせいで、2人は孤立。

 チェリーとスカーレットは現在レートB。対してガンゴーグはSSレート。レベル5のチコリータとコマタナがレベル100のレジギガスに挑むみたいな絶対的戦力差。加えて、ガンゴーグが敵前に姿を現すのは、部下に相手をボコさせてからだ。

 絶対に二人に勝ち目はない。

 

 オフィスと街灯に照らされた街を跳び回り、人を襲っている魔人たちを瞬殺して回る。

 急がないといけないのに数が多い。

 うーん、厄介だ。本当に厄介だなあ。トリックスターってのは下準備が大変だ。マジシャンと同じだね。

 

「よかったです。」

 

 最後の兵隊を斬りながら、アスターはむしろ嬉しそうに笑った。

 

「うん?」

「......初めて、本当に楽しそうなフェイカー様を見ました。」

 

 そうかも。

 

「ここからはもっと楽しくなるよ。ほら、ガンゴーグが姿を現した。」

 

 俺たちの視線の先ではチェリーとスカーレットを巻き込んでガンゴーグの部下が自爆。弱った二人の背後にようやく本人が現れた。

 奴は無造作に拳を振り抜き、スカーレットの片腕を飛ばす。

 

「がはは、念の為部下を特攻させてみたが......その必要もなかったようだな。」

「ち、近づかないでっ!」

 

 チェリーが叫びと共に矢を放つが、まあ効かない。

 さっさとやるべきか?いやでも、窮地によって深まる仲とかあるだろうし。欠損もすぐに治るしちょっとだけ様子見。

 

「チェリー。逃げるんだ!あいつ、魔人四天王のガンゴーグだ!先輩が何人も殺されてる!すまないが、この腕じゃ君を守れない。早く逃げて!」

 

 スカーレットが叫び、片腕で持ち武器の刀を握り直す。

 

「で.....でも!」

「逃げても無駄じゃ。二人とも殺す。」

「チェリー...!やっぱり、こいつ今の私たちで勝てる相手じゃない!」 

「で、でもスーちゃんを置いていくなんて...!」

「チェリー......。」

 

 スカーレットがチェリーの手を取り、口付けをした。あら〜。

 

「!?スーちゃん!?」

「大丈夫、私は生きて帰るから。先に逃げて。」

 

 うん、彼女はよく気を引いてくれている

 

 ガンゴーグを殺すまでには三つの障壁がある。

 

 慎重さ。まず戦う機会がない。

 逃げ足。いざ戦いの際は精鋭たちに周囲を固めさせ、危なくなったら恥も外聞もなく逃げる。

 そして戦闘力。種族特性による異様な硬さとSSレートの徒手空拳で、そもそも互角に戦える相手が世界に十人もいない。

 

 『ガンゴーグ』が200年以上憎まれつつも生き延びている理由だ。

 

 原作11巻、アニメ2期までの『トーデス』はこいつを殺すためだけの物語と言っても過言ではない。

 頼むから死んでくれ、お前のようなものは生まれてさえこないでくれ......と憎みながらも、リアル時間で4年間殺せなかった。

 

 そのガンゴーグが今、俺に無防備な背中を晒している。

 行ってくる、とアスターに囁く。

 

「無駄じゃ無駄じゃ。いかにも、ワシは魔人四天王のガンゴーグ。このオリハルコンの肌は何者じゃろうと貫通できん。」

 

 足音一つ立てず、慢心したアイツの背中に近寄っていく。

 

 二人がさらに絶望に顔を歪めている、俺をガンゴーグの加勢だと思ったんだろう。

 ガンゴーグは何を勘違いしたのか、哄笑をもらす。

 

「安心せい、二人ともたっぷりワシが汚してから地獄に...っ?」

 

 ガンゴーグの心臓に向け、俺は無造作に爪を突き立てた。

 ゾブゾブ、と異音を立てながら『人狼殺しの紅鋼』で防御無視になった爪はオリハルコンの肌を裂いた。

 

「うっ、ぐ、ぐううううあああああ!?!?!?」

 

 肉を裂いて手が背中に潜り込んでいく。一瞬にも満たない時間が永遠のように思えた。

 背中と骨を引き裂いたのに、まだ何か硬い手応えがある。心臓だ。

 

「な.....何のマネじゃ...」

 

 あ、何か言おう。こんな機会滅多にないんだから。えーとかっこいいやつかっこいいやつ。

 

「あはっ、邪魔なんだよね。君。」

 

 まあこれでいいか。

 強固な心臓を引きずり出して……そのまま一思いに握りつぶした。

 

 

 

 その直後だった、俺の指がぴくりとも動かなくなる。

 いや俺だけじゃない。薄氷に覆われたように世界が薄青くなり、粉塵の一粒まで、全ての動きが静止する。

 

 来たな。

 ガンゴーグを殺すための三つの障壁を超えた先にある、最後最悪の罠。

 

『ククク、儂を殺すとは.....驚くほどの愚か者め。』

 

 貫いたガンゴーグの体から半透明の霊体が飛び出てくる。肉体とは似ても似つかない、あどけない少女の裸身。これが本体だ。少なくとも12世紀からこの世を漂う怪物だ。

 

「ああ、キミの能力か。実際食らってみるとこんな感じなんだな。何で口だけ動くんだこれ。」

『随分と落ち着いているな。貴様。フェイカーか。良い、その体なら不足はない...』

 

 霊体が俺の頭に近づいてくる。

 『ガンゴーグ』と名乗っている魔人の固有能力『脳移り』。

 心臓を破壊されると発動。死にゆく体から魂が抜け出し、心臓を破壊した相手の脳を乗っ取ると言うもの。

 

 魔人四天王の座。硬い部下。どんな攻撃も跳ね返す無敵の肌。三つの障壁はコイツが『本来のガンゴーグ』から奪い取ったものにすぎない。

 

 原作では当時のトップ魔法少女を乗っ取り、チェリーたちを絶望させた。

 

「でもさ、相手が悪い。」

『あ...?』

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 俺、もといフェイカーの固有能力。それは奇しくもコイツと同じタイプの能力だ。

 『吸魂』。死者の魂を吸い取り、溜め込み、それを時すら超える万能の破壊力へ変換する。

 

 この世界に来た時から、腹の中で渦を巻いていたもの。それは腹痛だけじゃないんすよ。

 解き放つ。

 俺は吠える。腹と喉にあらん限りの力を込めて。

 

「あああああああああっ!!!」

 

 咆哮に従って、周囲に青い炎が溢れ出す。魂の蒼炎だ。

 『ガンゴーグ』が伸ばしていた両手は炎に弾かれる。

 

『な、なんじゃあこれは………熱い、魂であるはずのこの体が、熱いぞっ!?』

「特別だよん☆トリックスターがガチになるなんてカッコ悪い。あああああ……らAAAAAAAAAAッ!!!』

 

 俺の咆哮に呼応して、蒼炎も出力に相応しいカタチを整える。

 それは、29巻で漸く見れる、フェイカーの奥の手。世界すら割る咆哮。

 

『……ドラゴン!?形だけではない、この魔力!怖気!何、何だ、何なんだ、何なのだ貴様はッ!?』

「行くぞガンゴーグ(11巻の敵)。キミの魂でドラゴン(29巻の敵)を打ち破れるか?」

『何なのだ......く、くそおおおおおおおおおっ!!!』

 

 飛び込んでくるガンゴーグに、ドラゴンは焔を浴びせた。

 ま、十分キルスコア稼いだだろうし同情はいらん。こいつは念入りに焼いておこう。

 

『ぐうううぁぁぁ......嫌じゃ、消えるなぞ.....。もっと、悲鳴を、悲劇を......あの方のため...』

「あの方も復活させないから。地獄で仲良くしててね。」

『何じゃ...どこまで知って......ああ、消える......。』

 

 ガンゴーグの魂が燃え尽きると同時に、世界が元の姿を取り戻した。通常通りに時は流れ出す。

 

 俺はガンゴーグの胸から手を引き抜く。

 風穴の空いた体は無力に倒れ、紫色のチリになって消えた。




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