TS愛され悪役トリックスターになって背後から胸を貫いてみんなを驚かせるやつやりつつ鬱原作をハピエンにしたい!   作:覚絵テネ

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たくさん反応していただけているのでここまで書けてます
未熟な上リアルが激動なのですが、今後も生温かい目で見守っていただけると


5話 悪役エミュ回

「また、魔人四天王......確か、フェイカー......?」

 

 チェリーが困惑に満ちた瞳でこちらを見つめてくる。おお、原作一巻にしか出てこない天使モードだ。

 白と桜色の入り交じったミディアムヘアで、顔がところどころ赤ちゃんみたいな赤みを帯びている。誰もが抱きしめたくなるような愛らしさだ。

 これが闇堕ちして発見即殺系イケメンになるんだよなぁ。ギャップとお労しさを考えると原作の女たらしっぷりも頷ける。

 

 フェイカーの表情筋が『謎めいた微笑』と『愉悦』しかなくて助かった。

 さもなくばめちゃくちゃデレデレしてたと思う。

 

 さーてここで何言うか。何言ってもめちゃくちゃ美味しいぞ。

 今後もチェリーとはよろしくやらなければいけないから『ボクはキミの味方だよ……』にするか?『次はキミを壊そうかな……♡』みたいなこと言いたい気持ちもあるな。

 ……いや違う。この場での最適解は。

 

「キミはボクを知ってる?ボクはキミを知らない。」

 

 何も意味のあることは言わない!

 ミステリアスであれ。

 トリックスターというのは謎を纏っている瞬間が一番輝くのだ。真意を明かしてしまったら俺というゲボカスの中身で勝負しなければいけなくなる。

 色々勘違いさせろ。とにかくはぐらかせ。

 

「なぜだ?味方を手にかけるなんて感心しないな。」

 

 『?』って感じのチェリーをよそに、スカーレットが気丈に睨みつけてくる。鋭い目、服飾は赤と黒のカラーリング。チェリーちゃんと違ってこっちは悪人へ一切容赦しない。

 

 まあ今は腕が千切れてて痛々しいからさっさと病院に行ってほしいな。まあでも、腕の断面は血の代わりに綿で覆われ、出血しないから大事にはならないか。

 俺は肩をすくめる。

 

「味方?キミの言う味方って何だい?自然は?人間は?この国は?横の彼女は?野生には存在しない、キミの作り出したエゴじゃないか。何処で線を引くかだよ。」

 

 あ、いいことが言えた気がする。

 

「ふざけるな。命をなんだと思っている?」

 

 ガチトーンで説教された。

 片腕のない少女がきつくこちらを睨んでそういうのだ。飛び出してるのが綿なのも逆に怖い。俺はビビって頭に浮かんだ単語を喋るしか無かった。

 

「Il n'y a Léonard de Vinci.Mamma Mia.」

「……っ、なんだ、何を言ってる?」

  

 うん、何を言ってるんだろうね俺は?後で翻訳機にかけたりしないでね、恥ずかしいから。

 大丈夫、重要なのは謎のままでいることだ。中にあるのが拳銃であろうが水鉄砲であろうが、闇は闇なのだ。うん、俺はまだカッコイイトリックスター。

 このまま押し切ろう。

 

「勉強は大事だよ、魔法少女スカーレットに、チェリーブロッサム。さもなければ悪い大人たちに騙されてしまう。」

「黙れ!目の前に居る悪鬼を見逃す理由にはならない!」 

 

 やばい、この子レスバ強いタイプだ。なので物理で黙らせます。

 

「片腕が取れてるのに元気だね。」

「...っ!?」

 

 かといってぶん殴るわけにもいかない。

 俺はその背後に移動した。

 破れた服の隙間から黒いブラホックが見えたので、それには当たらないよう、指先で肩甲骨を撫でる。

 

「はーい死んだ☆」

「なっ……!」

 

 スカーレットからはいきなり後ろに現れたように感じただろう。実際は忍び足でひょこひょこ移動しただけなんだけど。素のステータスの違いだ。

 

「弱いねぇ。悲しいほどに。」

 

 ついでに血に塗れた手で、ねっとりとチェリーの頬を撫でる。マシュマロみたいにモチモチ。

 

「貴っ様ァ!」

 

 スカーレットが片腕で切りつけてくる。が、スペックが違いすぎる。できるだけギリギリで避け、そのまま屋上へ飛び上がる。

 フェンスに腰掛けて、顎を手に乗せながら笑う。 

 

「あはー☆魔人の立場からしたら、ここで殺してもいいんだけど。ま、ボクの気まぐれに感謝してよね。」

 

 煽ってないでさっさと逃げろ?

 いやこれには言い訳があるのです。

 スカーレットはまあ生きて幸せになってくれそれでばいいんだけど、チェリーの力はこの先必要になる。なので悔しさを持ってもらったほうがいい方向に向かいそうな気がしたんだよね。

 

「何なんだ...?お前は、敵じゃないのか!?」

「キミは己のモノサシでしかセカイを視られないのかい?」

 

 あ、空が波打っている。多分もうそろそろルーネの結界が溶けちゃうな。無関係の魔人に目撃されたらシャレにならん。もうちょっとスカーレットを煽りたい気持ちはあるが……

 よし、あと1セリフ決めて去ろう。

 

「キミたちはまだまだ強くなれる。その時また相手してあげるよ。」

 

 その時、暗雲から雷が光り、俺をスポットライトのように照らした。

 おお。かなりキマったんじゃないだろうか。

 

 退場するなら今だな。

 踵を返し、別のビルへ飛び移っていく……フリをしながらその場に留まり、二人の会話に耳を澄ます。

 

「ま、待ってスーちゃん。私たち、あの人には絶対に勝てないよ。」

「.....しかし......。」

「それに、助けられたのは事実だし。今は追いかけるよりも、早くその腕を治してもらお?」

「.......そう、だね。」

 

 聞こえる聞こえる。

 そう、なんか仲間でもないけど敵じゃないみたいないい距離感で認識してくれ。あとみっちり修行もしといて。

 

 彼女らは今日を乗り越えて、さらに強くなるだろう。あとガンゴーグ殺しの英雄の栄誉も得る。でもそれは、この過酷な世界に抗う上で当然の報酬だと思う。

 俺は今度こそビルを飛び移り、途中でアスター、ルーネと合流する。

 

「エヘヘ、首尾は上々のようで……。」

「うん、ガンゴーグの命きっちり獲ってきたよん☆」

 

 うーん、順調に終わったな。結界を維持したルーネ。防御無視の武器を生成したアスター。なんかゴチャゴチャやってた俺。皆頑張った。『TS愛され悪役トリックスターになって背後から胸を貫いてみんなを驚かせるやつやりつつ鬱原作をハピエンにしたい!』無事達成である。

 なのになんでアスターは青い顔をしてるんだろう。

 

「さっさと帰ろうか。アスター、車は?中見えなくしてナンバー外したやつ手配してくれてるんだよね?」

 

 魔人たちにガンゴーグの死が伝われば、この辺一帯を調べ上げようというお話になるだろう。その前に監視カメラに映らないルートで逃げなければならない。

 

「……それが……ええとですね、結界のすぐ外に予約しておいた、つもりだったんですが……」

「ですが。」

「結界の範囲を読み違えていて、戦闘で壊されました。」

 

 あーそっかあ。

 それだと落ち着いてこの場を離れるのは無理そうだ。

 あーじゃあちょっと用意してたお酒とかは明日かな。

 

「全力で走ろー!」

 

 俺達は全速力でその場を走って離れた。

 所有するホテルまでノンストップで走り、着いた頃にはAM2時。

 吸血鬼の癖に昼型の俺達は飯を食う気力もなく、そのまま眠りについた。

 

 うーん、締まらねぇなあ。




「あ、アスターちゃんごめん……調子乗って結界広めに張っちゃったから……」
「気にしないでいいのよ。それより、今度食べたいパフェがあるの。」
「アハ、そんなことで良ければ……。」

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