TS愛され悪役トリックスターになって背後から胸を貫いてみんなを驚かせるやつやりつつ鬱原作をハピエンにしたい!   作:覚絵テネ

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魔法少女モノの味方組織がマトモな筈無い回とも言います


裏で糸を引いているタイプの味方組織は好きですか?編
6話 温かい朝食が食べたい回


 ガンゴーグ56してから1週間後くらい。相変わらずのホテル生活である。

 

 俺達の朝はアスターの朝食から始まる。

 面倒くさくなったらホテルのスタッフに一任していいよ何なら吸血鬼だから食べなくても何とかなるよ〜と言っているのだけれど、アスターは作りたがる。何より神的においしいので結局甘えてしまっている。

 

 9時起きでパジャマから着替えたらツインテメイドちゃんとご機嫌な朝食が待っている生活、神すぎるな。

 

「今日の朝食はサワードウブレッドに潰したアボカド、チリフレーク、レモンを搾ったトーストです。この前美味しいと言ってらっしゃったので、梨のチャツネを添えたクロケットも作りました。スズキを使ったので脂っこくはないかと。ジュースだけ、今朝届いたリンゴの搾りたてをシェフから分けていただきました。」

 

 ナイフでトーストを切り、鮮やかな緑と赤に彩られた一切れを口に運ぶ。

 うめ〜。白身魚(スズキ)クロケット(あげもの)の淡白さとアボガドの脂分のコラボ。チリフレーク(とうがらしみたいなの)とレモン果汁がスパイスになってて飽きがこない。サワードウブレッド(黒っぽい膨らんだパン)も外が香ばしく、中モチモチ。美味しくて温かい料理って素晴らしいなあ。噛み締める生きる気力が湧いてくる。

 

「眠気から解き放たれていくのを感じるよ。一人でも多くと分かち合いたいものだ。」

「光栄至極です。デザートのヨーグルトがございますので、興味がございましたら取ってまいります。」

 

 アスターと一緒に食べたい気持ちがあるのだが、残念ながらその気はないようだ。作ってばっかりで食べようとしない人っているよね。痩せ型だし心配になる。

 

「はふ、はふはふ!おいしいですぅ、おかわり2回目いいですか!?」

 

 ルーネちゃんは少し肉付きが良くなったかな……。

 初登場ガリガリだった女の子が餌付けされて、登場するたびふっくらしていく展開好きなんだよね。

 

「もちろんいいわよ。でも今度はちょっと食べ方を工夫しましょうか。」

「あ、……あっ、あ!ち、散らかしちゃいましたね、これじゃお嫁さん失格です……。」

 

 お嫁さん?なんの話?

 

 

 

 さて、魔人四天王にも仕事はある。

 渉外、査定、人間の殺戮、などなどが魔王秘書課の方から降ってくる。

 

 フェイカーはどれもデタラメにこなしていたようだけど、俺は流石にそういうのはできない。......いや、人間はできるだけ殺さないようにするけど。

 潔いくらい適当に作られた書類に俺の名前、つまり責任が乗っかっていると震えが止まらなくなる。

 胸ドスを阻むようなトラブルを引き起こさないためだ。後始末と新規業務、両方堅実に果たすのだ。

 

「アスター、今日の仕事は?」

「はい、まず襲撃の企画書が送られてきております。かなりの力作が多いですね。」

 

 そういいながら差し出されたのは書類の山。

 1枚目は...どれどれ?

 

「アニメ歌手のライブ襲撃、さらに■■の■を■■する様子をネットで配信して魔人の恐怖を世に知らしめるということです。護衛を担当する魔法少女までしっかり調べ上げてあります。」

 

 やらせないよそれは!?仮に死ななかったとしても魂の殺人でしょ。

 

「面白さを履き違えてる。却下で。」

「承知しました。」

「残りに取り掛かろうか..ん?」

 

 アスターが百面ダイスを差し出してきた。

 

「……何故百面賽を?」

「フェイカー様はよっぽど面白いもの以外は1d100で判断されているではありませんか。」

「……なるほど。今後は賽はいらないかな?」

 

 ……血を吐きそうになったが堪えた。企画書をよく見ると、フォントや視線誘導など色々凝っていて、『何で採用されないんですか?』という怨念が......真面目に仕事に取り組もうとするたび、過去のフェイカーが積み上げた負債が明らかになってくるな。

 これがあれか、ネットでたまに見る『前任者がやらかしてた』案件か。転生してからまた社会の地獄に詳しくなったな。

 

 でも流石にもう慣れた。

 

「アスター、内容チェック。ルーネ、返送の手続きを頼もうか。」

 

 人魔双方に被害が少なそうな企画書を選び、テキパキ処理する。時間は無限じゃない。

 ……フェイカーの何がタチ悪いって、その気になればマトモな仕事が出来たであろうことなんだよな。前世の俺に戦略の良し悪しなんかわからんし。

 これだけスペックが高いと仕事もちょっと楽しいな。

 5秒毎に企画書を一件処理し、アスターがミスを的確に指摘、修正。書類を重ねるだけのルーネが一番慌ててねーかな?

 常人の数百倍のスピードと正確性だ。

 

 

 

「……それでも、なんて仕事の量だい。」

 

 気がつけば8時間たっていた。ようやく企画書の処理が終わったところだった。ノンストップでも脳以外の疲労がゼロなのが逆に怖い。アスターは涼しい顔、ルーネは単純作業のしすぎで目が死んでる。

 

「フェイカー様、次は査定です。」

 

 アスターがニコニコ笑顔で同じ量の書類の山を差し出してくる。

 なんで笑顔なんだろう。あ、適当やってた主がいきなり本気出したから?でも俺は疲れたよパトラッシュ……

 

 でも、査定って言ってもなあ。

 書類をペラペラとめくるが、知らない子たちだ。原作で見た記憶はもちろん、フェイカーの脳にも記憶がない。

 うーん、これ、俺がやるべき仕事じゃない気がしてきた。

 

 ……つまり、今日はもう仕事終わりにしていい気がしてきた。

 

「………査定って、関係ない魔人の査定をしろって言われてもちょっと困るかな。同じ四天王ならガ……は死んだってか殺したね。九頭竜あたりが適任じゃないかい?」

「無関係ではありませんよ?」

「えっ?」

「みんな、フェイカー様が気に入って拾ったけど、すぐに飽きて捨てた子たちですね。頑張っているようです。」

「……えっ?」

 

 捨てた?捨てたって何?

 このクソブラック職場で上司に見捨てられた部下がどんな苦労をすることやら。

 

「毎回無視されていましたので、今回もそうしてもいいと思いますが……」

「……はわわ」

「あれ、大丈夫ですか?バイブレーションみたいに震えてらっしゃいますが。」 

「……はわわわわ」

 

 はわわ。仕事に関する拒否反応で体がカタカタ震えだした。

 精神的にキツくなると汚言で発散する癖があるんだけど、フェイカー翻訳で「はわわ」になるらしい。

 

 ……うん、今日は限界だ。部下たちの前で醜態を晒すわけにもいかない。

 と、ペンを置こうとした手が掴まれる。

 

「……フェイカー様、飽きたら捨てるんですか?」

 

 ルーネちゃんの目がすごいことになっている。

 怖っ。なんか闇色のオーラが溢れてる。それ、12巻辺りで生えてその後見た記憶がない絶望した魔法少女/魔人は真の力に目覚める設定じゃない?

 確か恐化とか言うんだっけ?

 

「わたし、いらないって言われた子を見ると、胸が締め付けられる感じがするんです。」

「はわわわわわわわわわ」

「はわわじゃなくて。」

 

 ルーネちゃん、さん、そんなに顔近づけられたら怖いっす。

 アスターもニコニコしてないで助けてほしい。

 

「二人が仲良くしていて嬉しいです。」

 

 それはネタか?……ガチなんだろうな、けっこう天然だから。

 ……うん、覚悟を決めよう。

 

「………やる!誰も見捨てない!全部今日中に処理しようか!だからルーネちゃんも手伝ってね!」

 

 そう言うとルーネの顔がぱあっと明るくなった。

 

 ……はぁ、まあいいか。

 トリックスターには下積みが必要なのだ。

 

 それに今は待つべき時だ。

 ガンゴーグをさっさと56したせいで、原作主人公……チェリーちゃんがあまり成長できていない。そうなると色々都合が悪い。

 

 うーん、目の前の仕事にこれからの胸ドスに、考えることが多い。

 俺はふと立ち上がり、窓から身を踊らせた。

 街には無数の光。この美しくもねじ曲がりきった街の何処かにあの子はいるのだろう。

 

「喜劇を以て悲劇を救う。幕を引くのはキミだよ?」

「フェイカーさまぁ……?」

 

 あっごめんなさい真面目に仕事します……

 

 

 

side:魔法省地下

 

 魔法省。魔法少女関連を一任された省庁で、白く輝く外壁は国の防衛を象徴する。

 上空も無数の結界で守られ、核兵器やウイルス攻撃など幅広く対応する。 

 何より強力なのは隠蔽の結界。固有能力で厳重に隠され、案内なしでは誰も辿り着けない。隠蔽に力を注ぐのは賢明な判断だ。この世界では中ボス(アスター)くらいの相手でも防御無視とか概念攻撃使ってくるから、そもそも相手しないのが正しい。

 

 魔法省にいるのは国に認定された魔法少女と、人格、能力、身辺、全てが抜きん出たエリート官僚だけ。

 

「ううう……。」

 

 カフェテラスでは無料でドリンクが提供されている。

 チェリーは限定のフラペチーノを飲みながらも、しきりに周囲を見渡していた。

 そんな様子を向かいに座るスカーレットが微笑ましそうに見つめる。

 

「どうしたんだい、チェリー。やっぱりラージサイズを2人で飲んだほうがよかったかな。」

「……そ、それも悩ましいんだけど!」

 

 チェリーは口を手で覆い、小声で。

 

「......ガンゴーグを倒したの、私たちの功績になってるよね。その、憧れの目線みたいなのが......罪悪感みたいなのが。」

「はは、かわいいね。」

「かわいいね、じゃなくて!......それに。」

「それに?」

「......嫌な気配がするんだ。ここ(魔法省)。」

 

 チェリーの言葉に、スカーレットが唇を引き締めた。

 

「……あ、ごめん。スーちゃんはご両親も魔法省に務めてるんだよね?」

「気にしなくていい。……そうか、そうか。」

  

 スカーレットがチェリーの口についたクリームを拭う。

 しばらく考え込んだ様子だった。

 

「ここから出たら、いいかな?キミの家に行っても。聞いて欲しいことがある。」 

「え、いきなり!?ま、まって、歯を磨くとか欲しいから...」

「チェリー。君の感覚はおそらく正しい。」

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