メトロイドトータス〜鳥人族の後継者〜   作:ウエストモール

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鳥人族の足跡

 奈落の底にて、南雲ハジメは立ち上がった。その身には既にパワードスーツを身に付けており、そのお陰で落下死を避けることができている。

 

「ひどい目に遭った……だが、これでオルクス大迷宮の探索を始められる」

 

 ポジティブな発言をするハジメだったが、内心では置いてきてしまった香織のことを心配していた。

 

(必ず白崎さんの所へ戻らなければ……大迷宮の探索及び地上への帰還……それが俺のミッションか)

 

 ハジメはとにかく歩みを進める。緑光石の発光があるとはいえ、奈落の底は薄暗い空間だ。まあ、“夜目”を発動させているのでハジメには関係ないのだが……

 

 ハジメのパワードスーツの姿を見ていこう。まず、このスーツはノーマルスーツと呼ばれており、最低限の防御機能や生命維持装置が備わっている。様々な惑星や水中、宇宙での活動が可能だ。

 

 ノーマルスーツはマオキン戦士のパワードスーツと同じく、全体のカラーリングが銀色となっている。そして、尖った肩部のアーマーや赤色でY字のバイザー、まるで猛禽類のような鉤爪が存在する両足と左腕が特徴的だ。

 

 さらに、スーツの胸部には赤いL字の発光部位があり、顔面にあるY字のバイザーと共に薄暗い奈落で一際目立っていた。

 

 右腕にはアームキャノンが装備されている。このスーツのトレードマークであり、ハジメが最も信頼している武器だ。各種のビームやミサイルを撃ち分けることができ、その頑丈さから敵を殴るのにも使われる。

 

 現在、ハジメのパワードスーツにはモジュール機能によって様々なアビリティが搭載されており、通常のビームやミサイルの他に、ビームの威力を高めるチャージビーム、モーフボールという球状に変形する能力、小型の時限爆弾を出現させるボムを保有している。

 

 ハジメは周囲を警戒しながら進む。パワードスーツのスペックであれば、この世界の魔物は全く脅威にならないことは分かっているが、ここは未知の場所。パワードスーツでも苦戦するような魔物が出てきてもおかしくないのだ。

 

 複雑にうねり、岩などの障害物があちこちから飛び出ている通路を進むこと数十分。ハジメはこの世界に似つかわしくない人工物を発見した。

 

 それはブルーゲート。銀河社会において標準規格の青い六角形のゲートであり、誤作動防止のために表面には弱いエネルギーシールドが張られている。通過のためにはビームを当ててシールドを解除する必要がある。

 

 ハジメはパワービームを一発撃ち込んでブルーゲートを解放する。ハジメは構えたアームキャノンに左手を添えながら、その向こう側に突入した。

 

「これは……」

 

 ゲートの向こう側は今まで通ってきたような通路とは異なり、殆どが銀色の金属で構成された空間だった。その空間を見て、ハジメはゼーベスのツーリアンを連想した。

 

 カン…カン…と金属音を立てながら、ハジメは奥の方へと進んでいく。その先には鳥人族のオブジェが配置されており、穴の空いた金属製のプレートを保持していた。

 

(キャノンを差し込めそうだ……)

 

 アームキャノンを差し込むための穴であると即座に理解したハジメは、オブジェが持っているプレートの穴にアームキャノンを突っ込む。すると、オブジェが音声を発した。

 

『チョウゾ製パワードスーツを認識。迷宮制御用マザーコンピュータ、セントラルユニットへパワードスーツデータを送信中……』

 

(セントラルユニット……?)

 

『セントラルユニットより返答……鳥人族の後継者を確認、碑文及びアイテムを解放し、迷宮を後継者仕様に変更します』

 

 音声が止まった後、オブジェの背後の壁が左右に開き、岩壁で覆われた小部屋が出現する。小部屋の壁には、古代チョウゾ文字の碑文が彫られてあった。

 

(古代チョウゾ文字か……“言語理解”の技能には対応してないようだが、スキャンバイザーがある)

 

 本物の鳥人族から習っているため、ハジメもある程度なら古代チョウゾ文字を読める。完全ではないので、ハジメはスキャンバイザーを頼った。

 

 碑文の内容はこうだ。

 

 

後継者の予言

 

我々、解放者は邪神の卑劣な所業によって追い詰められてしまった。世界の全てを敵に回し、反逆者となった我々に、もはや成す術はない。だが、彼は予見した。チョウゾの鎧を身に纏い、最強の戦士(メトロイド)へと至りて邪神を討つ後継者の存在を。我々はその者を支援するため、チョウゾの武器と神代魔法を大迷宮に位置付ける。

 

 

 碑文にある“解放者”とは反逆者のこと、“邪神”とはエヒトのことだと思われる。この碑文の内容を信じるのならば、反逆者もとい解放者はエヒトによって世界の敵に仕立て上げられたということになるのだろう。

 

 問題は、後半の内容だった。チョウゾの鎧=チョウゾ製パワードスーツであることは間違いなく、ハジメが現れることを予言していたことになる。

 

 “彼”と呼ばれている人物が解放者の一員かは不明であるが、鳥人族の存在を認識している者なのは間違いない。碑文にはメトロイドという鳥人族の言葉もあるので、鳥人族がトータスに来ていた可能性があった。

 

(最強なる戦士……メトロイドか。久しぶりにこの言葉を聞いた……)

 

  メトロイド。鳥人族の言語で〈最強なる戦士〉を意味する言葉だ。そして、メトロイドにはもう一つの意味がある。それは、鳥人族が創造した生物兵器の名称だ。

 

 メトロイドは、かつてソウハ族が開拓していた惑星SR388で発見された寄生生命体Xを駆逐するために生み出されたクラゲのような生命体である。メトロイドは順調にXを駆逐していたようだが、ある時から想定外の進化を遂げ、やがて制御を外れて鳥人族を襲った

 

 なお、ソウハ族から救援要請を受けたマオキン族の戦士団が駆けつけ、ソウハ族と協力してメトロイドを地下へと封じ込め、特殊溶解液によって隔離する作戦が実行された。当時、封じ込め作戦にはハジメも参加しており、記憶に残っていた。

 

「懐かしいな……」

 

 ハジメは、義父のレイヴンビークや戦士達と肩を並べてメトロイドと戦った思い出に浸っていた。しかし、悠長なことをしている時間はない。碑文の続きを確認しよう。

 

 “邪神を討つ”との文言があるが、この通りだとハジメは「最強なる戦士」へと至り、神と激突することになる。そして、それを支援するために大迷宮へと鳥人族のアイテムと“神代魔法”なるものを配置しているようだ。

 

(鳥人族のアイテムはなんとなく分かるが、神代魔法とは……?)

 

 そもそも、この碑文の真偽も分かっていないのだ。鳥人族関連と言えども、鵜呑みにすることはできない。真偽を知るためにも、先に進む必要がある。

 

 ハジメはパワードスーツに碑文の内容を記録すると、探索しながらブルーゲートの外へと戻った。

 

 

 

 

 

 最初の通路に戻り、隅々まで探索を続けていると、先程まで何も無かったはずの場所に、下へと向かう昇降装置を発見した。上に行く道は存在しないことは分かっているため、迷いはない。その上に乗ると、スキャンバイザーを使って昇降装置を起動する。

 

 昇降装置は降下していき、数百メートルは下がった所で止まる。目の前に広がるのは、全く未知の階層だ。何が待ち受けているのかは分からない。だが、先に行くしか道はないのだ。ハジメは、未知の場所への第一歩を踏み出した。

 

 魔物と遭遇するまで、そう時間はかからなかった。目の前に現れたのは、二本の尾がある狼のような五匹の魔物の群れだ。二尾狼と名付けられたそれらは、尻尾から電撃を放つ固有魔法を保有している。

 

「「グルゥア!!」」

 

 そのうちの二匹が、咆哮と共に逆立てた二本の尻尾の先から電撃を放ってくる。ハジメは重そうなパワードスーツには見合わない鳥の如き身軽さで側宙して電撃を回避。回転する視界の中でビームを連射する。

 

 ハジメが一回転し、再び地面に足を着いた瞬間、五匹の二尾狼が一斉に崩れ落ちる。その全てが頭を吹き飛ばされており、ハジメの射撃技術の高さが窺える。

 

 ハジメが二尾狼の死体に近づくと、そこから紫色の小さな光球が出現し、パワードスーツに吸収されていく。これは、エネルギーボールと呼ばれるものであり、パワードスーツのとある機能によって抽出されたものだ。

 

 ハジメのパワードスーツにはエネルギー吸収機能が存在している。倒した生物の生体エネルギーや破壊した機械のエネルギーを抽出し、エネルギーボールに変換してスーツに取り込むことができ、そのエネルギーを栄養素や水に変換することで飲み食い無しでの長期間の任務を可能とする。また、他者にエネルギーを分け与えることもできる。

 

 エネルギーの吸収を終え、さらに進んでいくと、ハジメは奇妙なフォルムの魔物に遭遇した。一対の複眼と牙のある蜻蛉のような頭部を、異常に大きな二本足で支えており、バッタのように跳躍する虫型の魔獣だ。それが三体現れた。

 

 ハジメはそれに似た生物を知っていた。それは、ゼーベスに生息するサイドホッパーというクリーチャーであり、高い跳躍力が特徴的である。

 

 もしかすると、この魔物は解放者がサイドホッパーを再現した存在なのかもしれない。そう思いつつ、ハジメはホッパーモドキとの戦闘を開始した。

 

 ホッパーモドキは高く跳躍すると、ハジメを押し潰そうと急降下してくる。パワードスーツを着ているとはいえ、大きな質量のものが上から降ってくれば、ダメージを受けることは避けられない。ハジメはバックステップで押し潰しを回避しつつ、ノーマルミサイルを選択する。

 

 ノーマルミサイルは生体エネルギーを素材とする標準装備のミサイル。弾数は最大で三十発であり、ゼロになったとしても任意で生成することが可能だ。

 

『ノーマルミサイル、オンライン』

 

 ホッパーモドキの着地際を狙い、赤い弾頭のミサイルを放つ。ミサイルは後部から炎を吹き出しながら直進し、ホッパーモドキの頭部に直撃する。頭部は一撃で粉砕され、二本の大きな足がその場に残った。

 

 二体目のホッパーモドキに対しては、ハジメの方から接近していき、大きな足による蹴りを跳躍で回避すると、ホッパーモドキの頭部に着地する。アームキャノンの内部では既にエネルギーが増幅されており、その先端を頭部に押し付けると至近距離から最大威力のチャージビームを放った。

 

 これはオーバーブラスト。敵の上に飛び乗り、至近距離から最大威力のチャージビームを叩き込むという戦闘技術だ。飛び乗った敵から抵抗を受けることもあるため、振り落とされる前に素早くやらなければならない。

 

 二体目を撃破し、三体目に向かおうとした所で、突然ハジメは足を止めた。何故なら、ホッパーモドキの背後より現れた存在があるからだ。

 

「……グルルル」 

 

(装甲を背負った……熊?)

 

 それは、体長が二〜三メートルはある熊のような魔物だった。背中には装甲を背負っており、通常の武装では背後からダメージを与えることは難しいと思われた。

 

「グルゥア!!」

 

 鎧熊はホッパーモドキに向けて腕を振り下ろす。その太い腕には刃渡り三十センチほどの鋭いナイフのような爪が三本生えており、風の刃を纏っているのが確認できる。哀れにも、狙われた獲物は容易く三枚下ろしにされてしまった。

 

(何という切れ味……パワードスーツでも危険だ。やられる前にやるしかない!)

 

 ハジメは先手必勝とばかりに三発のミサイルを放つ。狙いは装甲に守られていない腹部なのだが、奴も自分の弱点は理解しているのか、アルマジロのように丸まって球体になることで攻撃を無効化してしまう。

 

「球体になるのか……マルカラみたいだ」

 

 ハジメが思い浮かべたのは、惑星SR388の原生生物であるマルカラだった。モーフボールのように球状へ変形する能力があり、高速で回転して体当たりを仕掛けてくるのだ。

 

 そして、マルカラと同じ能力を持つ鎧熊の次の行動はその場での高速縦回転だ。それを見た瞬間にハジメは踵を返して奴とは逆方向に走り出した。

 

 その直後、球体はハジメを追いかけて突進してくる。そのサイズはパワードスーツを纏ったハジメよりも大きく、その凄まじい威力も相まって大ダメージは確実である。

 

(あの装甲にミサイルは効かない。一瞬でもいい……一瞬だけでも隙を作れれば……)

 

 倒す作戦を考えながら、ハジメは全力で走る。その視線の先には袋小路があり、つまるところ行き止まりだった。追い詰められたようなシチュエーションに見えるが、ここに来ること自体が作戦の第一段階である。

 

 ハジメは袋小路に向かって跳躍し、奥の壁を蹴って斜め上後方に跳ぶ。美しいフォームで後方宙返りをするハジメの下を球体が通り抜けていき、壁に勢いよく激突する。鎧熊は元の姿に戻ると、ハジメを探して後ろを向くのだが……

 

「俺はここだ」

 

 そこには既に右腕を構えたハジメの姿があり、アームキャノンの先端は四つに割れ、ミサイルの赤い弾頭が露出している。直後にミサイルが連射され、球体へ変形される前に腹部へと複数のミサイルが着弾した。

 

「グルゥアアア!?」

 

 初めてダメージを受けて悲鳴を上げ、大きく怯んで尻餅をつく鎧熊。ハジメはそんな鎧熊に止めを刺すべく、地面を蹴って接近する。

 

「グルゥア!!」

 

 鎧熊が両腕を振り下ろして風の刃を飛ばしてくるが、ハジメは背部からジェット噴射しながらの素早い側宙で回避すると、反撃のチャージビームを腹部に直撃させる。

 

 これはセンスムーブといい、敵の攻撃を受けるギリギリでジェット噴射を行いながら全身に回転をかけて離脱し、反撃に繋げる特殊な回避行動である。

 

「こいつで終わりだ」

 

 そのまま、鎧熊の腹部に着地するハジメ。風の刃を纏った鋭い爪が振るわれるも、奴の頭を起点として後頭部へと回り込んで避けると、首筋にアームキャノンを突き立てて至近距離からのチャージビームで頭部を吹き飛ばした。

 

 絶命した鎧熊の手足が力を失い、地面に叩きつけられる。ハジメは死体の上から降り、エネルギーボールを全て吸収するのだが、その直後に肉体が崩壊し、光り輝く謎の球体が残された。

 

「これは、アビリティか?」

 

 ハジメがそれに手を伸ばすと、謎のアイテムはパワードスーツに吸収されるのだが、初めて見るアビリティが覚醒する。

 

『エーテルアビリティ:ウインドクロウ(風爪)を入手しました』

 

『エーテルタンク一つ分の魔力を消費して非常に鋭い風の刃を発生させ、手足に纏うことで近接攻撃の威力と範囲を強化します。なお、制限時間は約三十秒となります』

 

「エーテルアビリティ……魔力を使用したアビリティのようだな」

 

 最初に入手したアビリティは、これまで見たこともないエーテルアビリティなるものに分類されていた。

 

「風の爪……左手や両足に纏えばいざという時の選択肢が増えるな……」

 

 ハジメは鉤爪のようになっている自分の左手を見る。この時点でもかなりの鋭さがあるが、風爪を纏えばさらなる攻撃性能の強化に繋がるだろう。ハジメは未知のアビリティすらも戦闘に組み込むべく、試行錯誤するのであった。

 

 

 

 

「鳥人像……やはりあったか」

 

 鎧熊を倒した後、ハジメは鳥人像という造形物を発見した。鳥人像は鳥人族が自らを模して造った彫像であり、高度なバイオテクノロジーが使われている生物兵器だ。基本的に体育座りの状態で配置され、前に出された両手の上にアビリティの入ったスフィアを持っていることがある。目の前の鳥人像は、それを持っていた。

 

 早速、スフィアを撃って破壊して中のアイテムをパワードスーツに吸収する。スーツ全体を白い光が走った後、バイザーに表示が出た。

 

『スピードブースターを入手しました』

 

『走行中に背面ブースターを噴射して高速ダッシュを行うことが可能です。その際に発生したエネルギーを纏うことで、接触した敵や障害物を破壊します』

 

 ハジメのパワードスーツは、アイテムを取得してアビリティを入手することで、その戦闘能力を高めることができる。スピードブースターであれば、直線における高速移動能力が使用可能となり、危機的な状況を脱するのにも役立つだろう。

 

 鳥人族とアイテムの存在は、碑文の内容が間違っていないことの証明だった。これから先にもアイテムが置いてあるのであれば、なおさら進む必要があるだろう。ハジメは迷宮の奥深くへと潜っていった。




ハジメのパワードスーツはマオキン族の戦士をモチーフにしてあります。鳥人族の要素として鉤爪も存在していて、サムスのパワードスーツを鳥人族寄りにした感じをイメージしました
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