メトロイドトータス〜鳥人族の後継者〜   作:ウエストモール

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魔装ミノタウロスのサイズはクレイドやオメガパイレーツと同等にしてます


大火山の守護者

 あれから五十階層は降りただろうか。現在、ハジメ達は多数の足場がマグマの海に浮いているエリアにおり、道中に配置された火炎放射器や魔物の攻撃を掻い潜りながら進んでいる。

 

 そして、その道中でハジメは新しいアビリティを入手していた。

 

『シーカーミサイルを獲得しました』

 

『シーカーミサイルは、最大五発の高威力小型ミサイルを斉射し、複数のターゲットに命中させる能力です。入手時、ミサイルの最大保有数が十発増加します』

 

 それはシーカーミサイルだ。複数の標的に対して同時に高い火力を叩き付けることが可能なアビリティとなっており、ハジメに高い殲滅力を与えてくれるだろう。

 

 

 

『グラップリングビーム、オンライン』

 

 左腕を高く掲げ、ロープ状のビームを上方の天井に打ち込むと普通では届かない場所にある足場へとターザンのように飛び移る。

 

 着地際を狙い、空中のマグマから顔を出したタツノオトシゴモドキが管状の口からマグマ弾を放ってくるが、体を少し傾けて回避するとアイスビームで返り討ちにする。標的は瞬時に凍結し、足場に落下して砕け散った。

 

 そこにユエが続く。助走を付けて空中に飛び出すと、それではハジメのいる足場に届かずに高度が下がっていくが、彼女には魔法があった。

 

「“来翔”」

 

 ユエは風属性魔法を発動し、自身の周囲に上昇気流を発生させる。ユエが軽いこともあり、上昇気流は彼女の体を容易に持ち上げる。上昇気流を使った擬似的な二段ジャンプにより、ユエは無事に対岸に渡った。

 

 その後も色々とあった。周囲をマグマに囲まれた一本道を、マグマに潜む巨大な竜の襲撃を掻い潜りながら進む羽目になったりと、この世界の冒険者なら生き残れないような場面が多かった。

 

 そして、今は前方に五百メートル四方はありそうな広大な空間が広がっている。マグマといった障害物や敵の類いはなく、向こう側の壁面には開かれた門が確認できた。

 

「ん……何もない?このまま突っ切れそうだけど……」

「いや、眼に見えるものだけを信じるな」

 

『Xレイバイザー、オンライン』

 

 何もないだだっ広い空間に、底しれぬ不安を覚えたハジメは、不可視の物体を視認可能にするバイザーに切り替える。

 

「やはりか……不可視の結界で迷路が構築されている。しかも、あちこちに魔法陣が隠蔽されているようだ」

 

 エーテルバイザーも使用してみると、その魔法陣は転移魔法陣になっていることも分かる。何も考えず進めば、攻略は不可能となるだろう。

 

「ユエ、そのヘルメットにも透視機能は搭載してある。使ってみるといい」

 

 実は、ユエの装備にもハジメのバイザーシステムと遜色ない機能が備わっている。早速使用してみると、ハジメと同じ景色を見ることができた。

 

「どうやって突破する?」

「地道にマッピングしよう」

 

 二手に別れて不可視の迷路を探索する。パワードスーツの機能で自動的にマッピングしており、ユエともリンクしているので全貌は徐々に分かりつつある。

 

 しかし、そう簡単にマッピングさせてくれるほど大迷宮は甘くない。何もない場所から湧き出てきた魔物による襲撃を受けたのだ。

 

 空間が歪み、そこからマグマを纏ったコウモリ型の魔物が五体、飛び出してくる。

 

『魔力反応増大、自爆と思われます』

 

 エーテルバイザーの視界に切り替えてみると、五体が体内の魔石に魔力を集中させ、自爆を試みていることが判明する。

 

『シーカーミサイル、オンライン』

 

 アームキャノンの先端が変形し、砲口が広がる。そして、砲口の中に装填された五発の小型ミサイルが円形に並んでいる。ハジメは五つのターゲットをロックオンすると、シーカーミサイルを斉射した。

 

 五つのミサイルはそれぞれのターゲットに向かって突き進み、同時に着弾。全てのターゲットが一瞬で爆砕される結果となった。

 

 一方、ユエも攻撃を受けていた。襲ってきたのは浮遊するカニのような魔物であり、固有魔法によって体内で生成された高温エネルギーを放射して飛行し、ハサミを振りかざしてくるのだ。

 

「“瞬凍”」

 

 迫りくるカニモドキ軍団を魔法で迎撃するユエ。魔法名を呟いたのと同時に発射されたのは、超低温の冷気を圧縮した冷却弾だ。アイスビームからインスパイアを受けてユエが開発した氷属性魔法である。

 

 ユエの冷却弾によって瞬時に凍結させられたカニモドキは、地面に落下したのと同時に爆発した。体の表面が凍結したことで高熱エネルギーを逃がす場所がなくなり、甲殻が内側からの圧力に耐えられずに砕け散ったのだ。

 

 カニモドキは次々と凍結して自爆していくのだが、数に物を言わせて突破してくる個体もいる。突撃の勢いを乗せたハサミによる一撃が迫るが……

 

「ん、あまい」

 

 カニモドキに対して素早く突き出されたのは、金色の光を纏う右手。掌は開かれており、掌底を打ち込むと金色の光が衝撃波となって対象を弾き飛ばした。

 

「これで終わり」

 

 そして、弾き飛ばしたカニモドキにも冷却弾を浴びせて仲間の後を追わせた。

 

 

 

 

 

 その後、ハジメとユエは不可視の迷路を突破することができた。開かれていた出口を潜り、下層へと続く螺旋階段を降りていくと、重厚な金属製の扉がある空間に出た。

 

「ユエ、この向こう側にただならぬ存在がいるようだ」

「ん、私も感じた。おそらく、ヒュドラと同等の魔物……」

 

 扉の向こう側からはかなりのプレッシャーを感じ取ることができる。その気配は、オルクス大迷宮の最深部にいたヒュドラにも劣らないほどだ。

 

「気を引き締めていこう」

「ん……」

 

 二人は意を決して扉を押す。重い音を空間に響かせながら開け放たれた扉の向こう側にあったのは、マグマで囲まれた円形闘技場のような場所であり、その中央にはミノタウロスのような巨人が鎮座していた。

 

 身長十メートル、二本角が特徴的な牛のような頭部。赤熱化した筋骨隆々な体に漆黒のフルアーマーを纏い、その口からは吐息に混じってマグマの飛沫が飛んでいるのが確認できる。

 

 装備しているフルアーマーや武装は全て、アザンチウム製と思われるアーティファクトだ。奴こそ、このグリューエン大火山最強のガーディアンである。

 

 ヒュドラに匹敵する威圧感を放つ魔装ミノタウロス。間違いなくヒュドラと同格であり、かなりの強敵なのだろう。

 

 しかし、二人の辞書に撤退の二文字はない。解放者の意思を継いだ以上、逃げるわけにはいかないのだ。

 

「行くぞ、ユエ」

「ん!」

 

 並び立つ二人。魔装ミノタウロスは二人の存在に気づくと、唸り声を上げて睨みつけ、手にした戦斧を構える。大迷宮のガーディアンとの戦いが始まった瞬間だった。

 

 

 

 

 

「ブモオッ!!」

 

 ミノタウロスは一瞬でハジメの目前に現れた。地面を蹴った様子もなく、高速移動したというよりは瞬間移動した感じだ。

 

 もはや、ミノタウロスの攻撃を避けることが不可能な距離まで詰められている。戦斧がすぐに振り下ろされるが、対抗手段はあった。

 

「はっ!」

 

ガキィンッ!!

 

 それはメレーカウンターだ。これまで、この動作は何度もやってきた。ZDRで戦士として育成されていた当初から繰り返してきたレイヴンビーク直伝の戦技であり、今では息をするように放てる。

 

『ノーマルミサイル、オンライン』

 

 至近距離からミサイルを何発か放つ。上級魔法に匹敵する威力であり、ミノタウロスのアーマーに対してもある程度の効果があると思われる。しかし、着弾の直前に変化が起きた。

 

「ブモッ!」

 

 ミノタウロスの全身に、突如として緑色の電撃のようなエネルギーが纏われる。そこにミサイルが直撃するが、表面のエネルギーが揺蕩うだけで肝心のダメージを与えるには至らない。

 

 ミノタウロスは平然としており、戦斧による薙ぎ払いを繰り出してきたので後方宙返りで回避し、ハジメと入れ替わるように放たれた氷槍が何発か向かうが、同じく効果はなかった。

 

「ん……全く効いてない」

「あの電撃のようなエネルギーはこちらの攻撃を無力化するようだ……」

 

『エーテルバイザー、オンライン』

 

『魔力を変化させた電撃のフォースフィールドで攻撃を無力化しているようです。しかし、ダメージの蓄積が見られるため、継続した攻撃により剥がすことは可能だと思われます』

 

「ユエ、あの電撃さえ剥がせれば勝機は見えてくるはずだ。アザンチウムの装甲ならばミサイルとチャージビームの連打で事足りるからな」

 

 この世界の素材に対してハジメの武装がどこまで通用するかは実験済みだ。結論を言うと、ミサイルとチャージビームはアザンチウムの装甲に通用する。ただし、何発も叩き込む必要はあるが。

 

『スペイザー、オンライン』

 

 ハジメは前進する。振るわれた戦斧の薙ぎ払いをスライディングで潜り抜け、奴の懐へと飛び込む。

 

 至近距離からスペイザービームを連射し、電撃のフォースフィールドに対して徐々にダメージを蓄積させていく。

 

 ミノタウロスもフィールドを剥がされまいと反撃し、踏みつけを繰り出してくるが、股の下を潜り抜けて回避。背後に回り込み、ミサイルも織り交ぜて攻撃を続行する。

 

 鋭い爪が風切り音を鳴らし、振り向きざまにハジメを切り裂こうとするので、咄嗟にモーフボールになって躱す。そして、ミノタウロスがハジメに注目した瞬間、その背後から螺旋状に渦巻く火炎が迫る。

 

「“螺炎”!」

 

 炎の渦がミノタウロスを覆うフォースフィールドに直撃し、継続的にダメージを与える。本来、ここの魔物に対して火属性は効果的ではないが、標的はあくまでもフィールドなので関係ない。

 

 この魔法が選ばれたのは、一定の時間で与えられるダメージ量が大きいからだ。点の攻撃にしかならない氷槍や風刃と異なり、面で攻撃できる上に長続きさせられるのでフィールドを削るのに都合が良かった。

 

 前後から挟み撃ちを受け、ミノタウロスを守るフォースフィールドは緑色から赤色に変色しつつある。エーテルバイザーによると、ダメージがかなり蓄積しているらしい。

 

「このままいけば……」

「ん……」

 

 しかし、ミノタウロスは瞬間移動で挟み撃ちから逃れる。ハジメ達から大きく距離を取ると大きく雄叫びを上げた。

 

「ブモオォォォォォォ!!!」

 

 長めの咆哮と共に全身のフォースフィールドが活性化して完全に赤くなる。そして、その全てがミノタウロスの右腕に集束し、高く掲げられる。

 

「なんだ?」

 

 ミノタウロスの行動を疑問に思った次の瞬間、高く掲げた右腕からフィールドの色と同じ赤い霧らしきものが発生し、部屋全体を余すことなく埋め尽くしていく。

 

「ブモォォッ!!」

 

 そして、フィールドが集束した右腕が振り下ろされ、そこから強烈な衝撃波が放たれる。衝撃波は霧のようなものを媒介に部屋全体に拡散し、ミノタウロス以外を排除しようとする。

 

ガガガガガァッ!!

 

「お父様!」

「あぁ!」

 

 轟音を響かせ猛烈な速度で迫る衝撃波。二人の判断は早かった。瞬時に同じ場所へと集まり、ユエが発動してくれた“聖絶”に身を隠す。直後、衝撃が二人に襲いかかった。

 

「ぐ、ぐうっ……!」

「んんっ……!」

 

 直撃こそ避けたが、結界に衝撃波が激突したことで、二人は揺さぶられて苦悶の声を漏らす。まるで、地上から発射されたロケットに乗っている宇宙飛行士のようだ。

 

(奴はフォースフィールドに蓄積したダメージを増幅し、衝撃波に変換して放ったのか?)

 

 ハジメの予想は正解だ。ミノタウロスはフォースフィールドに蓄積されたダメージを増幅した上で衝撃波に変換し、外部に放出することができる。

 

 やがて、嵐は過ぎ去る。その場には無傷のハジメとユエ、フォースフィールドを失ったミノタウロスだけが残っていた。しかも、奴は技の反動でグロッキー状態に陥っている。

 

 衝撃波攻撃は確かに脅威だが、使用すればフォースフィールドを全て失うことになり、グロッキー状態にもなる諸刃の剣である。たった今、ダメージを与えるチャンスだ。

 

『シーカーミサイル、オンライン』

 

 シーカーミサイルを斉射し、それを追いかけてハジメもスタートダッシュを切る。

 

『スピードブースター、オンライン』

 

「“豪腕”」

 

 ブースターを吹かして高速で走行し、右腕に身体強化を掛け、チャージビームを最大まで増幅している状態である。

 

 踏み込んだ足で地面を粉砕しながら前方に跳躍すると、目の前ではシーカーミサイルがミノタウロスの胸部アーマーに直撃する光景が見えた。爆風すら突き抜けて懐に飛び込み、右腕のアームキャノンで殴りつけた。

 

ガキンッ!!ドオォォッ!!!

 

 アームキャノンの先端が胸部アーマーに接触した瞬間、金属同士が激突するような音と共に爆発音が響き渡る。

 

 ハジメは殴りつけると同時にゼロ距離から最大チャージビームを放つことで攻撃の威力を上げていた。実際、それを受けた胸部アーマーは大きく凹み、ヒビすら入っている。

 

 フィールドを再生成させるつもりはない。胸部アーマーへのミサイルの連射を行い、苦し紛れに放たれる近接攻撃を掻い潜って攻撃を継続する。

 

 やがて、残りの弾数の殆どを消費した頃には胸部アーマーが激しく損壊して大きな亀裂が入り、そこから大きな赤い宝石のようなものが見え隠れしていた。

 

『グラップリングビーム、オンライン』

 

 ハジメは腕の一撃をメレーカウンターで弾くと、すかさずグラップリングビームを亀裂の隙間に撃ち込み、力を込めて引っ張ることでアーマーを引っ剥がす。

 

「“豪脚”」

 

 そして、魔法で強化された空中後ろ回し蹴りをミノタウロスの胸部に放ち、大きく吹っ飛ばす。仰向けに転倒した奴の上に飛び乗ると……

 

「終わりだ」

 

 無防備な胸部の宝石に最大チャージビームをぶちかます。赤い宝石は一瞬で砕け散り、ミノタウロスは四肢の力を失って力尽きた。

 

 そして、奴の体内から光を放つ球体が飛び出てくる。それはハジメのパワードスーツに吸収され、新たなアビリティをもたしてくれた。

 

『エーテルアビリティ:ライトニングアーマーを入手しました』

 

『エーテルタンク一個分の魔力を消費して電撃のフォースフィールドを展開し、大抵の攻撃を無力化します。制限時間は三十秒ですが、追加で魔力を消費することで持続時間を延ばすことが可能』

 

『また、ダメージが蓄積して赤く変色したフィールドを左腕に集束し、ダメージを変換・増幅した衝撃波を放つことも可能。入手時にはエーテルタンクが一つ追加されます』

 

 それは、二個目のエーテルアビリティだった。説明を見る限り、魔装ミノタウロスと同じ能力が使えるようになるのだろう。

 

「ユエ、これで終わりだと思うか?」

「んん、まだだと思う。ヒュドラ並みの魔物にしては現れるのが早すぎる。もう一つ、何かありそう……」

 

 この先、何かあるのではないか。そう思いながら、ハジメ達はミノタウロスのボス部屋を後にした。

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