メトロイドトータス〜鳥人族の後継者〜   作:ウエストモール

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本当はクラスメイトsideの一部にするつもりでしたが、思ったよりも字数が増えたので幕間として独立させました


幕間:雪原の戦い

 シュネー雪原。それは【ライセン大峡谷】によって真っ二つに分けられる大陸南側、その東にある一大雪原だ。雪と氷に閉ざされた氷雪地帯であり、常に曇天に覆われている。

 

 東の【ハルツィナ樹海】と南大陸中央に位置するガーランド王国の間に挟まれており、どういうわけかそこに壁でもあるかのように雲や氷雪が途切れている不思議な場所だ。

 

 その奥地には峡谷が存在し、その先に大迷宮の一つである【氷雪洞窟】がある。なお、たどり着くまでに吹雪が襲いかかる極寒の地を通り抜ける必要があり、魔物も普通にいるので帰ってきた者は殆どいないらしい。

 

 そんな純白の大地を進む誰かがいた。

 

「少し寒いな……ノクサスの兄貴、よくこんな場所を突破したな……」

 

 それは赤いコートを羽織った白髪の青年。真っ白な中にポツンと浮かぶ赤い姿はかなり目立っている。

 

 その赤い背中には両手剣を背負っており、竜の顎門をそのまま切り出したかのようなシルエットだ。そして、刀身の両側には牙の如く刃が立ち並んでいた。

 

 彼、清水幸利は竜の血を受け入れてから一ヶ月の間、ティオ・クラルスとノクサス・ダストールの二人を師として修行に励んできた。

 

 その修行の最後として課せられたのは、師の一人であるノクサスが神代魔法を得たという大迷宮の一つ、氷雪洞窟の攻略だった。

 

「あちらこちらに潜んでいるな……おい、隠れてないで出てきたらどうだ?」

 

 端から見れば、周囲には雪原しか広がっていない。しかし、半竜人と化した幸利の強化された感覚は魔物の存在を捉えていた。

 

 やがて、四方八方の地面が盛り上がる。そこから現れたのは、純白の体毛に覆われたゴリラのような魔物たち。オルクス大迷宮にいたロックマウントの近縁種、スノウマウントである。

 

「ブラ◯ゴじゃねえか」

 

 幸利がその姿を見て思い浮かべたのは、某モンスターをハントするゲームに登場する小型モンスターだった。

 

「「グガァァァ!!」」

 

 すると、二体のスノウマウントが幸利を挟み撃ちするように両側から飛びかかってくる。幸利は背中の剣に手を掛けることなく、コートの内側に手を突っ込むと、二つの武器を取り出して左右に向け……

 

ドパンッ!

 

 雪原に木霊したのは、この世界で聞くはずのない破裂音。彼の両手には二挺の拳銃が握られており、銃口より飛び出した赤黒く光る弾丸がターゲットの脳天を撃ち抜いていた。

 

 デリンジャーをそのまま大型化したような武器の名は魔弾銃。竜人族が開発したもので、使用者の魔力を圧縮して固形化し、魔力を爆発させて発射する武器だ。

 

 幸利は二挺の魔弾銃にリバース&リベンジという名前を付けている。半竜人として新生した自分と、魔人族のフリードへの復讐。その二つが由来である。ちなみに、右がリバースで左がリベンジだ。

 

 銃のカラーリングは深い青であり、リバース&リベンジの頭文字であるRが赤い文字で大きく描かれているのが目立っていた。

 

「さあ、遊ぼうぜ」

 

 幸利はリバース&リベンジを武術の型のように構える。俗に言うガン=カタであり、とある映画で主人公がやっていたのを思い出し、人外の身体能力で再現したのだ。

 

「はあっ!」

 

ドパパパッ!ドパパパッ!

 

 幸利は二挺の愛銃による目にも止まらぬ速さの射撃で四方八方より迫るスノウマウントを次々と撃ち抜いていく。さながら、全自動の小型砲台である。

 

 振り返りもせずにリベンジを肩越しに後方へ向け、リバースは左側に向けて発砲。二体のターゲットが崩れ落ち、滑らかに次の動きへと移行して攻撃を続行し、一匹たりとも寄せ付けない。

 

「終わりにしようぜ」

 

 後方に宙返りしつつ、二挺を両側に向けて発砲して撃ち抜く。幸利が着地するのと同時に最後の二体が崩れ落ちた。

 

 そして、奴らの親玉と対面する。

 

ゴゴゴゴゴゴ……!!

 

 地響きとともに雪原が大きく盛り上がり、そこから巨大なスノウマウントが出現する。鋭く長い牙を生やしており、群れの主なのだろう。

 

「今度はドドブラ◯ゴかよ。まるでモ◯ハンをやってるみたいだ、テンション上がるな〜」

 

 幸利はここで初めて背中の剣に手を掛け、重厚な見た目の両手剣だというのに片手で軽々と持ち上げ、刀身で自らの肩を叩く。

 

 この両手剣の名はリベリオンファング。世界を支配する神と戦うための反逆の牙である。竜人族のテクノロジーによる特殊な仕掛けが内蔵されており、人間に作れる代物ではない。

 

「グゥガガガァァァァアアアア!!」

 

 奴はロックマウントの使っていた“威圧の咆哮”の強化版を使ってくるが、その程度で硬直するような幸利ではない。そもそも、存在としての格が違うのだ。

 

「いくぞ」

 

 直後、空気を切り裂くような豪腕の一撃が飛んできたので、幸利はリベリオンファングで受け止めつつ斬りつける。ノコギリのような刃によって肉をズタズタに切り裂き、雪原を赤く染めた。

 

 二撃目も来るが、バックステップで回避するとトリガーを引いて仕掛けを作動させ、伸び切った豪腕に向けて振るう。

 

 すると、刀身が等間隔に分裂し、それぞれがワイヤーで繋がれた鞭のような形態に変化する。音速に達するような遠心力で強化された斬撃が襲いかかり、豪腕を斬り落としてしまった。

 

「グゥギャァァァ!?」

 

 腕を切断され、巨大スノウマウントはあまりの激痛に悲鳴を上げた。

 

 リベリオンファングには蛇腹剣に変形する機構が組み込まれている。現実では機構を再現しても実戦に使えないものだが、ここは魔法の世界である。魔力の直接操作で体の一部として扱えるため、問題はなかった。

 

「すぐに楽にしてやる」

 

 幸利は通常形態に戻したリベリオンファングをスノウマウントの上方へと放り投げる。それに追従するように跳躍すると、空中で回転する剣を掴み取り、自らも縦回転しながら降下した。

 

「天!空!」

 

 全てを乗せたリベリオンファングの一撃で巨大スノウマウントは真っ二つになり、魔石も粉砕される。雪原には赤い染みが広がっていった。

 

 幸利は魔物を蹴散らし、吹雪を突破して雪原を駆け抜け、雪で覆われた峡谷の入り口へとたどり着く。

 

「この先に氷雪洞窟が………っ!?」

 

 が、幸利は何かを感じ取って側宙の要領でその場を離脱する。先程まで彼がいた場所に突き刺さったのは、銀色に輝く砲撃だった。

 

「神の使徒……か」

 

 銀色の砲撃を放った犯人は上空にいた。正体など分かりきっている。エヒトに仕える“真の神の使徒”であり、主に仇なす者を排除する美しき冷酷な殺し屋だ。

 

「ドライトと申します。我が主の命により、イレギュラー……あなたを排除します」

「へえ、いいセンスだ。銀髪の美女天使を侍らせるなんて、エヒトの野郎はけしからんな」

「何を言っても無駄です。結局、あなたはこの場で死ぬことになるのですから」

 

 幸利が軽口を叩くが、ドライトのペースが乱されることはない。所詮は神の操り人形であり、感情を持つことはないのだから。

 

「補足しとくが、銀髪美女は俺の好みじゃない。俺を倒したければ、黒髪ロングの美女でも連れてこい」

「お喋りはここまでです。死になさい」

 

 ドライトは銀翼を羽ばたかせ、出現させた双大剣を構えて突っ込んできた。

 

「相手になってやるよ、神の木偶人形が」

 

 幸利は“部分竜化”で竜翼を展開し、リベリオンファングを振るって使徒を迎え撃つ。両者は空中で激突し、火花を散らす鍔迫り合いになった。

 

「分解が意味を為さないとは、厄介ですね」

 

 リベリオンファングは神の使徒との戦いを想定しており、使徒の持つ固有魔法の“分解”に対する抵抗力を持っている。そのため、双大剣との鍔迫り合いが成立していた。

 

ドパッ!

 

 その最中、幸利は素早く片手でリベンジを引き抜いて使徒の頭部に向けて発砲する。だが、使徒は驚異的な反射神経で反応し、大剣の片割れをそっと射線に割り込ませ、銃弾を防いでしまった。

 

「この距離で防ぐのか……」

 

 咄嗟にヤクザキックを使徒の腹部に放って吹き飛ばし、リベンジを発砲するが、奴は双大剣で弾丸を切り裂きながら迫ってくる。

 

「クソが、ス◯ーウォーズの真似事かよ!」

 

 幸利は悪態をつきながらも使徒と斬り結び、隙を見て銃弾を撃ち込む。互いに裏を掻くように動き、優位な位置を取ろうとするその姿は、戦闘機同士の戦いを想起させた。

 

 さながら、人間大のドッグファイトである。目にも止まらぬ速度で銀と赤が複雑な軌跡を描き、雪原の上空を支配する。

 

 使徒の放つ分解砲撃とホーミング性能のある銀羽が乱れ撃ちされ、手数の面で幸利が不利な状況だ。それでも何とか粘っているので互角なのだが、戦況を変える必要があった。

 

(このままではジリ貧か……だったら)

 

 ドッグファイトの最中、幸利はドライトから急速に離れていく。奴を銃撃しつつ、向かった先は氷雪洞窟へと続く峡谷だ。

 

「何処に行っても無駄なことです」

 

 銃撃を受けたドライトは、幸利が狙った通りに追従してきた。空中戦の舞台は雪原上空から峡谷へと移り変わる。トレンチランの始まりだ。

 

「落ちなさい、イレギュラー」

 

 背後より放たれる分解砲撃。壁に擦りながらもバレルロールで回避した直後、首を狙って双大剣が振りかざされるが、反転して対処する。

 

 狭い空間にて繰り広げられるのは、超至近距離における決死のインファイト。少しでも気を抜けば、一瞬で命を落とすことになる。

 

 互いに一歩も引かず、己の持てる全てを投入する総力戦だ。攻撃の一つ一つに魂が込められ、攻め立てていく。いつしか、その飛行速度はかなり加速していた。

 

(これ以上、迷宮に近づかれるのは不味いな)

 

「ここらで幕引きとしようか」

「……抵抗を諦めましたか?」

「いや、終わるのはお前の方だ」

 

 その瞬間、幸利はリベリオンファングを峡谷の岸壁に突き刺し、ブレーキをかけて速度を急激に低下させる。

 

「何っ!?」

 

 急ブレーキに反応できなかったドライトは、止まることができずに幸利の位置を通り過ぎ、視線を向けながらも猛スピードで先行する形となる。

 

ドパパパッ!ドパパパッ!

 

 リバース&リベンジを構え、幸利はドライトに向けて撃つのではなく、その手前の岸壁に向けて撃ち込んでいく。

 

「何処に撃って……っ!?」

 

 岸壁に直撃した銃弾は跳弾し、左右からドライトに襲いかかる。咄嗟に双大剣を左右に掲げて防御するのだが、その一瞬が命取りだった。

 

「Jack Pot‼︎」

 

 次の瞬間、風切り音を鳴らして飛来した魔弾がドライトの額に吸い込まれる。最大限の魔力を込めた一撃によって急所を貫かれ、使徒は地に堕ちた。

 

 

 

 

 

「これ、どうすっかな……」

 

 幸利の目の前には使徒の亡骸が倒れている。いくつかの掠り傷や額に穿たれた傷を除けば、かなり綺麗な状態だった。

 

「何かに使えるかもしれない……とりあえず、保管しておくか」

 

 幸利は指に嵌めていた指輪を亡骸に近づけ、その中に収納してしまう。これは、ハジメの宝物庫と同じものであり、竜人族の保有する収納用アーティファクトだ。

 

 本当ならば亡骸を焼却して存在を抹消すべきなのだろう。だが、幸利にはゲーム内のアイテムを大量に集める癖があったため、現実にも適用されて亡骸を持っていくことにした。

 

「さてと……いざ、氷雪洞窟へ」

 

 そして、峡谷の奥へと足を進めた。




気づいたらゲームや映画のネタばかりになってた
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