メトロイドトータス〜鳥人族の後継者〜   作:ウエストモール

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大樹ウーア・アルト

 あの惨劇から十日が経過した。

 

 その間、ハジメ達とハウリア族による残党狩りや被害地域の復興支援が行われており、パイレーツを撃退したこともあって、住民は彼らに対して総じて良い印象を持っていたし、フェアベルゲンを救った英雄として扱う動きがあった。

 

 特にシアは、扱いが魔力持ちの忌み子から救国の英雄に変わっており、その変化は手のひら返しといってもいいだろう。そして、ハウリア族は英雄の一族として扱われている。

 

 無論、当初は同胞ではないハジメやユエに対して、熊人族を中心に懐疑心を抱く者が少なくなかった。

 

 長老会議によって掟の内容が公表され、ハジメが“鳥人族の後継者”として、ユエがその娘として紹介されたとはいえ、他種族に対して排他的な彼らが簡単に信用できるはずがない。

 

 だが、そんな二人の行動が彼らの態度を変える。それは、犠牲者の葬儀が行われた時のことだ。二人も参列していたのだが、他の参列者からは他種族ということで良く見られていなかった。

 

「すまない、君達を救うことができなかった」

 

 だが、二人が犠牲者の墓標の前で膝をつき、謝罪すると共に目を瞑って冥福を祈ったことで、亜人族の態度が変わる。

 

 亜人族にとって、人間族は自分達のことを全く人として見ていないという認識が当たり前であり、一部の亜人族はハジメ達もそうであると考えていた。

 

 彼らはハジメとユエの行動を見て、二人が亜人族の死を悲しみ、冥福を祈ることができる者であることを知った。まだ、全ての亜人族から支持されている訳ではないが、当初よりは関係が改善したといえる。

 

 十日の間に色々なことがあったのだが、最も大きい出来事はオルクスの隠れ家とフェアベルゲン地下の神殿を結ぶ直通の転移門が設置されたことだろう。

 

 生成魔法により空間魔法を付与して誕生したど◯でもドア的なアーティファクトであり、入口と出口を限定しておくことで難易度の高いはずの転移を簡単に行えるような仕組みだ。

 

 転移門の存在により、エルダーバードがフェアベルゲンに来訪することが可能となった。なお、エルダーは亜人族にとって伝説的な存在であるため、最初に来訪した際は良くも悪くも大騒ぎになっている。

 

 エルダーはハジメ達のことを信頼するようにフェアベルゲンの亜人族へ呼びかけるとともに、何体ものメカノイドや随行支援ユニットを駆使してフェアベルゲンの復興にも携わっていた。

 

 フェアベルゲンが保有するチョウゾギアの修理も開発者であるエルダーが請け負ってくれた。エネルギーシールドの強化や武装への飛び道具の追加が行われ、何十体かの新造も開始している。

 

 今後、フェアベルゲンはハジメの活動を支援する拠点としても活用され、フェアベルゲン地下の神殿にはスターシップの格納庫が設置された。わざわざ宝物庫から取り出す必要がなくなり、隠し玉として遠隔で呼び出すことが可能になったのだ。

 

 十日目の今日、ハジメ達がフェアベルゲンを出発する時が来た。その見送りには英雄達を一目見ようと大勢の亜人族が詰めかけている。

 

「カム、本当に後は任せていいのか?」

「これ以降の復興作業及び樹海の防衛は我々ハウリア族が引き受けますので、ご安心を」

 

 フェアベルゲンの軍隊に大きな被害が出たことで、臆病者から立派な戦士となったハウリア族は戦力として重宝され、巷では“亜人族の守護者”と呼ばれている。

 

「そうか、後は任せる」

「こちらこそ、我が娘のことをよろしくお願いいたします」

「あぁ、任せろ。シアのことは立派な戦士に育て上げてみせる」

 

 ハジメはシアを旅の仲間として迎えていた。ハウリア族が戦士となり、フェアベルゲン内での居場所を確保した以上、シアがフェアベルゲンに残る理由はない。シア自身、ハジメと肩を並べて戦いたいと思っていた。

 

「ハジメ殿、ハイパーモードの制御デバイスが完成しております。此度の戦闘で十分なデータが集まりましたので」

「そうか、ついに……」

 

 この場にはエルダーもいる。ハジメは彼から小型のディスプレイのようなデバイスを受け取ると、パワードスーツの胸部中央に近づける。すると、スーツとデバイスが幾本ものプラズマ状のエネルギーで繋がり、独りでに合体した。

 

『エーテル強化装置(EED)を入手しました』

 

『エーテルタンク一個分の魔力を消費してハイパーモードを発動し、スーツの防御力と武装、装着者のステータスを大幅に強化します』

 

『ただし、装着者への負担を軽減するために三十秒の制限時間が設けられており、三十秒が経過したタイミングで強制解除されます』

 

 ハジメが入手したのは、エーテル強化装置というハイパーモードの制御デバイスだった。これにより、ハジメは任意のタイミングでハイパーモードを発動可能となったのだ。

 

 そんな中、詰めかけていた人々の集団が割れ、その間を通って三人の森人族が現れる。長老のアルフレリック、娘のアリア、最後の一人は金髪碧眼の美少女アルテナだった。

 

「ハジメ殿。大樹への案内には私と娘、孫娘も同行させていただく」

「我が娘を助けて頂いたこと、感謝している」

「この前はありがとうございました。お兄様、あなたのことをお慕い申しております」

 

 森人族のお姫様、アルテナ・ハイピストはハジメに対してスカートの裾を持ち上げながら一礼する。ハジメのことをお兄様と呼び、相手が人間族にも拘らず慕ってくれているようだ。

 

「当然のことをしたまでだ」

 

(やはり、ハジメお兄様は素敵な殿方ですわ。強く、優しく、熊人族の族長のように驕り高ぶるようなことはしない……私程度では釣り合いませんわ!)

 

 なお、ハジメの強火ファンでもある。後に、彼女はエルダーや長老衆をも巻き込んでフェアベルゲンにハジメ像を建立することになる。

 

「お父様、揃ったみたいだから行こう?」

「あぁ、そうだなユエ」

 

 すでに大樹に向かうメンバーは集結済みだ。ハジメとユエ、シア、アルフレリック、アリア、アルテナ、何名かのハウリアである。

 

「シア、大樹に行くまでの先導は頼む」

「了解です、師匠!」

 

 出発の時が迫る。シアはしばらく会えなくなるカムに対して別れの挨拶をする。 

 

「父様、行ってきます!」

「シア、気を付けて行ってくるんだ。父さん達は、お前の帰る場所を守り続ける。だから、必ず生きて帰ってこい」

「大丈夫、私は絶対に帰ってきます」

 

 シアは父親に対してサムズアップした。

 

「ハジメ殿、ユエ殿、どうかお気をつけて」

「あぁ。エルダー、EEDは活用させてもらう」

「ん、お祖父様もお元気で……」

 

 別れの挨拶を済ました一行。巨大な木造の門が開き、一行はそこを通り抜けるべく歩みを進める。詰めかけていた人々の歓声を背に受け、フェアベルゲンを後にした。

 

 

 

 

 

 シアに先導された一行は、およそ十五分で大樹ウーア・アルトの下へ辿り着いた。

 

「……枯れている」

 

 ハジメの第一声。その通り、大樹は見事に枯れていた。想像と違ったのか、ユエの方は微妙な表情をしている。

 

 大樹と呼ばれるくらいなのでその大きさは途轍もなく、その幹の直径はおよそ五十メートルはあると思われる。周囲の木々とは桁違いの大きさであるのだが、その大樹だけ葉が無かった。

 

「ハジメ殿、大樹は建国前から枯れていると伝わっている」

 

 アルフレリックが解説する。彼によると、今に至るまで朽ちることなく枯れたままの状態で残っており、神聖視される所以となっているらしい。なお、多くの亜人族は観光名所扱いしているとのことだ。

 

「ハジメ様、こちらへ」

 

 アルテナに案内されてハジメ達が大樹の根元に近づくと、そこに石板が建てられていた。

 

「指輪と同じだ……」

「ん……同じ文様」

 

 その石板には七角形とその頂点の位置に七つの文様が刻まれており、その文様の1つがオルクスの指輪の十字に円が重なった文様と同じだった。

 

「ここに迷宮の入口があるようだな」

 

 ハジメは石板の回りを調べていく。石板の裏側に回り込んだ時、あるものをハジメは発見した。それは、表側の7つの文様に対応する様に開けられている小さな窪みだった。

 

「これは……」

 

ハジメはオルクスの指輪を窪みに嵌めてみる。すると、石版が淡く輝きだした。しばらく輝く石板を見ていると、次第に光が収まる代わりに文字が浮かび上がる。そこにはこう書かれていた。

 

“四つの証”

 

“再生の力”

 

“紡がれた絆の道標”

 

“全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう”

 

「どうやら、迷宮への入口を開くには条件があるらしい。“四つの証”というのは、間違いなく迷宮を攻略した証のことだろうな」

「ん……“再生の力”と“紡がれた絆の道標”は?」

「ユエさん、紡がれた絆の道標は亜人の案内人を得られるかどうかじゃないですか? 師匠は多くの亜人族から信頼されてますし」

「ん……なるほど。“再生の力”は、もしかして神代魔法? 多分、私の“自動再生”とは関係無いと思う」

 

 ユエが試しに薄く指を切って“自動再生”を発動しながら石板や大樹に触れるが、変化はない。再生の力というのは、間違いなく神代魔法なのだろう。

 

「まとめると、七大迷宮の過半数を攻略した上で再生に関する神代魔法を入手し、亜人族の案内で大樹まで来いということだろうな」

 

 ハジメは再生に関する神代魔法……言うならば再生魔法で目の前の枯れている大樹を再生させる必要があると推測していた。

 

「ん……ということは今すぐの攻略は不可能ということ?」

「そうらしいな」

 

 ハジメはアルフレリック達の方を見る。

 

「長老、俺はここ以外の迷宮から攻略することにする。しばらくの間、世話になったな」

「いや、フェアベルゲンと孫娘を救ってもらったのだ。お互い様というものだろう」

「ハジメ・ナグモ。次に会う時は手合わせしたいものだ」

「お兄様、再びフェアベルゲンに来るときまで、首を長くしてお待ちしておりますわ」

 

 ハジメは胸に手を当てて一礼すると、同行していたハウリアの戦士を集めて言う。

 

「俺が戻るまで、大樹とフェアベルゲンを守護するようにカムに伝えてくれ。それと、三人を無事にフェアベルゲンまで送り届けてくれ。」

「「「了解しました!」」」

 

 ハジメ達はシアの案内で樹海から出ると、ジャガーノートに乗って出発した。これからは、シアを加えた三人で旅をすることになる。




エーテル強化装置のイメージはメトロイドプライム3のあれです。あれのように暴走したりはしません
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