それは、シアがハジメとの訓練を始めたばかりのこと。ある日の夜、二人は焚き火を挟んで休憩していた。
「あの、師匠」
「どうした?」
「前に師匠は、パイレーツとメトロイドについて話してくれましたよね。平和を脅かす危険な存在で、師匠は銀河の守り手としての使命で戦っていたと……」
「あぁ、そうだが……」
ライセン大峡谷から脱出する際、ハジメはパイレーツとメトロイドの危険性をハウリア族に対して説いていた。その中で、ハジメは銀河の守り手としての使命を背負い、戦っているとも語っていたのだ。
「師匠はパイレーツのことを因縁とも言ってましたよね。師匠と奴らの間に、何があったんですか?」
「気になるか?」
「はい。因縁と言うくらいですから、守り手の使命以外にも、パイレーツと戦う理由があるんじゃないかと……それを聞けば、戦士となるための参考になると思いまして」
「鋭いな……俺が奴らと戦う理由は、シアの言う通り使命だけではない。いいだろう、ここに全てを語らせてもらう」
ハジメはシアに語る。ハジメとパイレーツ、メトロイドとの長きに渡る因縁を……
「パイレーツとの因縁は、俺が六歳の時に始まった。俺は偶然にも奴らに誘拐され、遥か彼方へと連れ去られた」
ハジメはパイレーツにより、肉親から強制的に引き離され、二度と会うことすら出来ないような場所に連れていかれた。これが、因縁の始まりだ。
「最悪な話だ。幼い俺には為す術はない。自分はこれからどうなってしまうのか、何も分からないという恐怖に押しつぶされ、薄暗い場所で蹲ることしか出来なかった」
「師匠は、パイレーツのせいで酷い目に……それと比べたら、家族と一緒にいられた私なんて……」
シアには魔力持ちとして産まれてしまうという不幸があり、それを隠さなければならない辛さもあったが、彼女の周囲には家族がいた。ハジメの境遇を知り、シアは自身の不幸を卑下した。
「シア、不幸には上も下もない。君には君なりの辛いことがあったはずだ。だから、気にするな」
「はい……」
そして、話は鳥人族との出会いに移り変わる。
「俺はチョウゾの戦士にして、マオキン族の族長であるレイヴンビークに救われた。そこで、俺は彼らに頼んだ。パイレーツを打ち倒し、復讐する力が欲しいのだと……」
元より、マオキン族はハジメを自身の後継者にすることを考えていたようだが、それを後押ししたのがハジメの願いであり、それを気に入ったレイヴンビークだった。
ちなみに、鳥人族は地球のことを認知しているので、彼らの翻訳機には地球における主要な国家の言語が網羅されており、会話に問題はなかった。
「復讐……それがパイレーツと戦う理由だったんですね」
「その頃は銀河の守り手の使命というものも無かった。俺を突き動かしていたのは、パイレーツへの復讐のみだった」
「では、どうして銀河の守り手に?」
今でこそ銀河の守り手としての意識を持っているハジメだが、かつてはパイレーツに対する復讐心を原動力にしていた。
「俺はある時、惑星ゼーベスに住まうソウハ族という部族の元に預けられたのだが、それが俺を変えてくれた。今思えば、レイヴンの配慮だったのかもしれないが……」
惑星ゼーベスにて、ハジメはターニングポイントとなる二人の人物と出会う。ソウハ族のグレイヴォイスと、パイレーツにより家族を失ったサムスという人間種の年上の少女だ。
「サムス姉さんは俺と同じくパイレーツの被害者で、家族を殺されるという目に遭ってきた。だが、姉さんは復讐心ではなく二度と大切なものを失わないために戦うと決意していた……」
武闘派のマオキン族の元では、決して知ることはなかったであろう、復讐心以外の戦う理由。それは、ハジメに大きな刺激を与えた。
「グレイヴォイスは、銀河の守り手の使命について説いてくれた。連綿と続く、銀河の平和を守るために活動してきた鳥人族の精神を……」
二人の元で学び、共に修行を重ねていく中で、ハジメには銀河の平和を守るためにパイレーツと戦うという意識が芽生えてきた。当然、復讐心も残ってはいるが、それを抑制してこそ戦士である。
「その出会いが師匠の銀河の守り手としての原点……」
「そうだ。ゼーベスの陥落でグレイや多くの鳥人族が死んでしまったが、彼らの精神は俺とサムス姉さんがしっかりと受け継いだ」
グレイや大勢のソウハ族が死に絶えたが、彼らの理想は消えない。何故なら、ハジメとサムスという彼らの意志を受け継ぐ後継者がいるのだから。
「メトロイドとの因縁が生まれたのもこの頃だった。一時的にZDRへ戻っていたことがあったが、惑星SR388で発生した事件の鎮圧に駆り出されてな」
それは、惑星SR388にて想定外の進化を遂げたメトロイドが、主であるはずのソウハ族を襲ったという事件だ。ハジメはレイヴンビークや戦士達と共に出陣し、地下に封じ込めるための戦いを繰り広げた。
「メトロイドの進化体は恐るべき戦闘力を持っていた。アルファやガンマならまだしも、ゼータやオメガに至っては戦闘に特化していて苦戦させられた記憶がある」
「メトロイドの進化は私も見ましたけど、あれ以上の進化があるんですか?」
「そうだ。こちらのメトロイドもSR388産である以上、あり得ない話ではない」
メトロイドは進化する。周囲の環境に応じて自然にも、人為的にも姿形を変えて襲い来るのだ。いつか、弱点であるはずの冷気への耐性を得ることだってあるだろう。
鳥人族がメトロイドを生み出したのは仕方のないことだ。寄生生命体Xに対抗する術はそれしかなかったのだから。だが、それが制御を外れたり軍事目的で悪用されるのであれば、話は別だ。
「悪用されたメトロイドを全て殲滅すること。それが、メトロイドを生み出した鳥人族の意志を受け継ぐ俺の義務だ」
「それが、メトロイドと戦う理由なんですね」
「あぁ。俺はトータスのスペースパイレーツとメトロイドを全て殲滅する。シア、力を貸してくれるか?」
この任務に報酬などはない。パイレーツやメトロイドを無視して本来の目的を果たすことだってできる。それでも、ハジメは戦うのだ。
「私も一緒に戦います。こんな世界でも私の故郷ですし、黙っているなんてできませんから」
「ありがとう、シア。では、修行を再開しようか」
「はい、師匠!」
EMERGENCY ORDER
緊急指令
ELIMINATE THE SPACES PIRATES ON ANOTHER WORLD TORTOISE…
異世界トータスのスペースパイレーツを排除せよ。そして……
AND DESTROY THE FLOATING LIFEFORMS, METROID.
浮遊生命体「メトロイド」を殲滅せよ。
最後のはメトロイドゼロミッションをリスペクトしたものになります。ゼロミッションのオープニングが好きなんですよね