「随分と様変わりしたな……」
ハジメが足を踏み入れたのは、これまでの石材のみで構成された空間とは一変して、惑星ゼーベスのツーリアンのように金属のみで構成されたエリアだった。
ハジメの視覚には配管や機械、徘徊するメカノイドの数々が捉えられ、聴覚はこの一帯から発されている複数の機械音を受信している。
その行く道は平坦ではない。段差や障害物が多い故に視界が悪く、レーダーである程度の位置は分かるものの、防御力が下がっているため急な敵との遭遇を警戒しなければならない。
その時、ハジメを狙って四方八方からリング状のビームであるリンカが複数方向から飛来する。その弾速はそこまで速くないのだが、対象を包囲するように発射されるので油断はできない。
(防衛システムまでも……)
立ち止まっていては被弾するため、ハジメは駆け出す。左右から迫るリンカを素早く撃ち抜き、進路を防ぐものはアームキャノンによる近接攻撃で打ち払いながら進む。
そのまま段差を飛び降りると、数体のメカノイドが闊歩しており、ハジメの存在に気づくと複数の方向から包囲してきた。
それは、人間の骨のような金属の骨格に最低限の装甲を取り付けたメカノイドだった。武装はビームライフルのみで、その全てがハジメに向けられている状況だ。名付けるなら、メカソルジャーだろうか?
「面白くなってきた」
メカソルジャーより一斉に放たれたビーム。ハジメは瞬時に姿勢を低くして回避し、間髪入れずにアームキャノンを横薙ぎに動かしながら連射する。
奴らは関節部を狙えば、未チャージの単発ビームであっても撃破することは容易だ。メカソルジャー達は一斉に崩れ落ち、鉄屑に変わった。
上半身だけでビームを撃ってくるしぶとい奴もいるが、跳躍してビームを飛び越え、着地しながら頭部を踏みつけて破壊してやった。
「多すぎるな……」
メカソルジャーの戦闘力は大したことないが、その物量はパイレーツをも凌駕している程。いつ被弾してしまってもおかしくないだろう。それでも、ハジメは怯まず立ち向かう。
一斉射撃を跳躍して避け、壁を蹴ってさらに方向転換して追撃から逃れると、頭上よりビームの雨を降り注がせる。
鉄屑の中に着地するとすぐに攻撃が飛んでくるが、センスムーブによる側宙で緊急回避して難を逃れ、反撃に繋げる。
『シーカーミサイル、オンライン』
強力な小型ミサイルの斉射。敵集団の真っ只中に着弾した彼らは、それぞれが爆発を起こして敵を木っ端微塵に粉砕してしまった。
先に進むと、出現する敵の種類が変わった。スナイパーレーザーライフルを備えた小型自走砲台や戦闘ドローン、大型四足歩行兵器といった人型ではないメカノイドばかりだ。
彼らの防御力は高く、単発のビームを全く受け付けない。チャージビームやノーマルミサイル以上の火力を何度か叩きつけて撃破となる。ハジメはミサイルを多用しており、消費量が恐ろしいことになっていた。
(ミサイルの消費量が多い……定期的に補給しなければ……)
そんなハジメの目の前には、空中を浮遊する楕円形に近いシルエットの小型戦闘ドローンがいる。その赤いモノアイでハジメを視認すると戦闘モードに移行し、折り畳まれていたアームやスラスターを展開して襲いかかってきた。
アームに仕込まれた二挺の機関銃で射撃してくる戦闘ドローン。被弾するわけにはいかないハジメは咄嗟に横へ飛んで回避しながら牽制で何発かビームを撃ち返すも、やはり効果はない。小型であっても侮れない相手だ。
『ノーマルミサイル、オンライン』
ハジメは即座に発射可能なミサイルを選択する。ドローンがモノアイから発射してきた赤色レーザーを避けると、数発のミサイルを放って撃破した。
さらに、そこへ何処からか高威力レーザーが襲いかかる。一歩下がることで事なきを得たハジメが攻撃の方向を見ると、天井に張り付いている自走砲台の姿があった。
しばらくして二射目が来るが、ハジメはビームをチャージしながら回避し、そのまま最大威力のビームを叩き込んでスクラップに変えた。
「補給するか……」
敵を撃破したハジメはその場で立ち止まり、精神統一しながらアームキャノンに生体エネルギーを集めてミサイルの生成を開始する。少しずつミサイルの残量が回復していくが、満タンになる前に大きな影がハジメの頭上に現れた。
「なっ!?」
その場から咄嗟に飛び退くと、先ほどまでいた場所に巨大な金属の塊が落下してくる。それは折りたたまれていた四本の脚部を展開し、跳びはねるようにして迫ってきた。
(危ない……踏み潰されるところだった)
それは、何度か遭遇した大型四足歩行兵器だった。特に頑丈な装甲を装備しており、中央ユニットの弱点にしか攻撃が通らない。鈍重そうな見た目と裏腹に機動力も高いオマケ付きだ。
奴の中央ユニットの上部から発射口を展開し、そこから爆弾を何発か射出する。地面への着弾と同時に巨大な火柱が何本も立ち昇り、奴の周囲を不規則に動き回った。
ハジメは火柱の間をギリギリで抜けるが、そこに歩行兵器が大質量による体当たりを仕掛けてくる。強靭な四肢を絶えず動かし、見た目以上のスピードで迫るのだ。
『グラップリングビーム、オンライン』
天井にロープ状のビームを発射し、ハジメは急速に上昇して体当たりから逃れる。そのまま、ぶら下がりながらミサイルを中央ユニットの弱点に向けて撃ち込んだ。
弱点に攻撃を受け、歩行兵器の動きが一時的に停止する。グラップリングビームを解除して中央ユニットに飛び乗ると、ハジメのターンだ。
至近距離からミサイルを連射し、ダメージを確実に与えていく。再起動した歩行兵器が何度か激しく跳びはねるが、振り落とされないように左手に力を込めてしがみつき、ビームのチャージを開始し……
「終わりだ」
チャージビームをぶちかまし、歩行兵器に止めを刺す。四肢から力が失われて地面に伏し、煙を吹き出して完全に停止した。
ハジメはメカノイドとの戦闘を繰り返しつつ、ミサイルの補給を何度か挟んで金属製の空間を駆け抜けていく。しばらくすると、再び石材で構成された空間に出た。
「ここは……」
そこはドーム状になっていた。中央に円形の台地が存在し、鳥の頭部の形をした排水口のような機構が部屋の壁に配置されている。台地からは金属製の橋が伸び、その先にはカプセルに包まれた緑色の極太ミサイルが安置されている台座があった。
ハジメは階段で台地の上に登り、アイテムを獲得すべく金属製の橋へと差し掛かるのだが、そうは問屋が卸さない。ここは迷宮であり、何を得るにも試練が必要なのだから。
「!?」
突然、金属の橋が下へとスライドして消え、同時にアイテムの乗っていた台座が上昇する。その上からは外周に三つの鳥の頭部を備えた円形の機械が降りてきて、アイテムに覆いかぶさってしまった。
それだけではない。排水口からは絶えず紫色の液体が放出され、台地以外の場所を完全に水没させてしまう。スーツからは警告が鳴り、強力な溶解液であることが告げられた。
「まさか、ハイブトーテムなのか?」
ハジメの知識の中にそれはあった。資料で見た程度なのだが、それはターロンⅣの鳥人族が開発したメカノイドであるハイブトーテムそのものだった。
『スキャニング完了』
『メカノイド:ハイブトーテム』
『アイテム防御ユニット、ハイブトーテムの派生型と思われます。武装は一切存在せず、内部に多数の戦闘ドローンを確認。高硬度の金属装甲を備えますが、戦闘時には未装甲の部分が露出します』
本来、ハイブトーテムはブラッドワスプという原生生物を誘導することで迎撃戦闘を行うメカノイドだ。しかし、ここはターロンⅣではなくトータスであるため、ドローンで代用しているらしい。
「大体分かった」
ハイブトーテムに備えられた頭部が口を開け、そこから数体の蜂型戦闘ドローンが出撃してハジメの回りを周回する。本物の虫のように羽を高速で羽ばたかせており、羽音が全方向から聞こえてきた。
次の瞬間、ハジメの背後で一体がホバリングすると、腹の先端からドリルを出現させて突撃してくる。バイザーの端に投映されているレーダーで背後からの奇襲を察知し、ハジメは咄嗟に反転すると……
ドガッ!
真正面から相対し、瞬時に早撃ちを見舞う。ドローンはチャージビームに飛び込む形となり、その威力を味わって散った。
戦闘ドローンはその後もミサイルのロックオンを振り切るレベルの速度で周回してハジメを撹乱し、その内の一体が死角から奇襲を仕掛けてくる。これがハイブトーテムの基本戦術だ。
奴らの動きはシンプルだが、忍耐力がなければこれを突破することは不可能だ。羽音が周囲を動き回ることで集中を乱されるのだから。イライラして乱射すれば、ドローンの攻撃で溶解液に叩き落とされてお陀仏である。
しかし、ハジメは台地の中央で精神統一して待ち構え、目を閉じて感覚を研ぎ澄ましている。周囲の羽音に惑わされることはなく、死角に現れた機体を的確にチャージビームで始末していた。
そして、最後の一機が破壊されて溶解液に落下し、一瞬で溶けて消えてしまう。それと同時に口内に赤い弱点が出現したため、そこにミサイルを叩き込んで破壊してやった。
だが、戦いは終わらない。ハイブトーテムの上部ユニットが回転して二つ目の頭部が正面に移動し、口を開いて戦闘ドローン第二陣を出撃させた。
その数は明らかに第一陣よりも増えているのだが、問題なのは攻撃が変化したということだ。腹の先端から針をマシンガンのように飛ばすようになり、かなり危険度が上がったといってもいい。
「そう来たか」
本来のハイブトーテムではあり得ない攻撃だが、特に驚くことはない。攻撃を察知して半身になったハジメの真横を掃射が通り過ぎ、振り向き様に放たれたチャージビームで返り討ちにされる。
仕組みさえ分かってしまえば、後は消化試合だ。しばらくするとドローンを全滅させて第二の頭部を破壊し、やがて第三の頭部に対しても同様に王手をかけた。
「これで最後だ」
ミサイルが第三の頭部に叩き込まれ、口内の弱点が破壊される。すると、ハイブトーテムは機能を停止して元の位置へと戻り、アイテムを解放した。
溶解液が完全に抜け、橋が再び出現したのを見届けると、ハジメはその上を渡ってアイテムの場所まで到達した。
『スーパーミサイルを入手しました』
『チャージビーム一発とノーマルミサイル五発を組み合わせることで発射可能な強化型ミサイルです。高い威力を誇っており、着弾した際には周囲に強力な爆風を巻き起こします。入手時、ミサイルの最大保有数が十発増加します』
「これで火力が上がるな」
スーパーミサイルはミサイル系の中で最大の威力を誇る最強の武装だ。ミサイルの消費は増えてしまうが、それ以上に火力が跳ね上がるので問題にはならないだろう。
今後、メトロイドの更なる進化体やパイレーツの強化兵、真の神の使徒が立ちはだかることは想像に難くない。最大火力ではユエに劣っていたため、今回のパワーアップでその差を埋めることができたと言えるだろう。
ハイブトーテムの後ろにある通路を抜け、両側に壁のある左右が狭い縦長の空間に出る。ハジメは側壁を交互に蹴ることで上昇し、やがて頂点へと達した。
「おや、ハイブトーテムも突破したみたいだ」
ハジメの様子はミレディによってモニターされていた。ハジメの純粋な戦闘力を測るためのエリアであったため、かなり注目して見ていたようだ。
「実力的には申し分ないかな。エーテルアビリティとエネルギーシールドを封じられているのによくやるね。全く、誰がこんな縛りを入れたのやら……」
『ミレディ様です』
「うん、知ってた。ミレディさんです。でもさ、これくらいやらないと実力は分からないからね」
これまで手に入れてきた強化が使えなくなる事態でも、ハジメは冷静に戦い抜いてきた。かつて神敵に仕立て上げられて世界を敵に回した解放者として、逆境に立ち向かっていける精神力を求めており、お眼鏡にかなったのだ。
「とりあえず、彼は仮内定だね。後は、あの二人だけど……おや、頑張っているみたいだ」
ミレディはハジメから離れ、別の場所で戦っているユエとシアの方に切り替える。そこに映っていたのは、騎士の集団と激闘を繰り広げる二人の姿だった。
ハイブトーテムはメトロイドプライムからの出典です
四足歩行兵器はメトロイドフュージョンのボクスが元ネタになります