メトロイドトータス〜鳥人族の後継者〜   作:ウエストモール

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ミレディ・ライセン

 ライセン大迷宮へのファーストアタックから一週間が経過してしまった。その間、ハジメ達は何度も迷宮に挑んでいたが、数々のトラップとウザい文によって精神をゴリゴリと削られ続けた。振り出しに戻されることが七回、致死性のトラップに襲われることが四十八回、全く意味のない唯の嫌がらせが百六十九回である。

 

 全てが無駄に終わっているように思われるが、収穫がなかったわけではない。何度も挑んでいるうちに、ハジメ達はライセン大迷宮の構造の変化には法則性があるということを知った。

 

 スーツの自動マッピング機能で作成されたマップは全て保存されており、それらを見比べてみたところ、法則性を発見するに至ったのだ。

 

「迷宮の中だというのに、よく寝ている。まあ、疲れるのも無理はないか……」

 

 目の前ではユエとシアが寄り添って寝ている。ハジメはそんな二人の様子を微笑ましいと思い、優しい表情で見守っていた。

 

「休める時に休んでおけ。また疲れるだろうからな……」

 

 ハジメは二人の頭を交互に撫でる。二人ともハジメが側にいることに安心しており、穏やかな表情で眠っていたが、撫でられたことで更に表情がゆるくなっていた。

 

 しばらくして、二人が目を覚ましたので迷宮の攻略を再開する。振り出しに戻されないことを祈りつつ進んでいくのだが、ここでハジメにとって初見の部屋に出くわした。その部屋とは、ユエとシアが激闘を繰り広げたゴーレム騎士の部屋である。なお、今度は扉が最初から開いており、封印を解かなくても素通りできるようになっている。

 

「随分と二人が世話になったようだな……」

 

 すでに目の前ではゴーレム騎士達が隊列を組んで待ち構えており、まるで城壁のようにこちらの通行を阻んでいた。

 

「お前達にはたっぷりとお礼をしてやる」

 

 そう言ってアームキャノンを構えるハジメ。二人の報告では、ゴーレム騎士の耐久力はそこまで高いわけではなく、わざわざ破壊力の高い兵器を使う必要はない。

 

『スペイザー、オンライン』

 

 アームキャノンから投射された大量の光弾に曝され、ゴーレム騎士達は無惨にも破壊されていく。さらに……

 

『シーカーミサイル、オンライン』

 

 斉射された小型ミサイルがゴーレム騎士の集団に着弾する。次の瞬間には複数の爆発が発生し、ゴーレム騎士達はその衝撃によって原型を留めないレベルで滅茶苦茶に破壊された。彼らが再生するにも時間がかかるだろう。

 

「師匠の火力は素晴らしいですね。ゴーレム騎士がバタバタとやられていきますよ!」

「ん……それでも再生されてる」

 

 シアの言う通り、ゴーレム騎士達はハジメの圧倒的な火力によって蹴散らされているが、ゴーレム騎士には謎の再生能力が存在している。破壊された個体もしばらくすると復活して戦線に加わっていき、前線を少しずつだが押し上げていた。

 

(再生能力は厄介だ。連中の再生はどのような仕組みなのだろうか……?)

 

 そこで、ハジメは“鉱物系鑑定”を使ってゴーレム騎士の破片を分析してみた。

 

『感応石』

 

『魔力を定着させる性質を持つ鉱石。同質の魔力が定着した二つ以上の感応石は、一方の鉱石に触れていることで、もう一方の鉱石及び定着魔力を遠隔操作することができる』

 

 感応石で体が構成されているゴーレム騎士達は、この鉱石の特性によって遠隔操作されていた。また、再生だと思われていたのは、鉱石を直接操ったり、足りない部分を他から継ぎ足すことによる再構成であったようだ。床も感応石によって構成されており、そこから不足分を補っていたことが判明した。

 

「現時点で再生を止める手段はないということか……ユエ、シア、騎士を操っている存在を倒すしかなさそうだ。ここは突破するぞ」

「んっ!」

「結局、突破するしかないんですね……」

 

 こうして、開いている扉へと前進するハジメ達。前方にいるゴーレム騎士達は放たれたビームやウォーターカッターで蹴散らされ、背後から迫る騎士は殿を務めるシアによって叩き潰されていく。二人だけだった時と比べると、比較的容易に扉へとたどり着いた。

 

 そのまま、三人は扉を潜り抜ける。ゴーレム騎士達の行動範囲が決まっているのか、追撃してくる者はいない。だが、立ち塞がる者達は存在していた。 

 

「師匠、新手のゴーレムです! しかもデカイです!」

「あぁ、それは見れば分かる」

 

 目の前に現れたのは、全長十メートルはある大型のゴーレム騎士だった。全身は漆黒の装甲で覆われており、その体躯に見合うほどのサイズの大剣を装備していた。

 

「ん……おそらく今までのゴーレム騎士よりも防御力が高いと思う」

「だが、倒せないわけではない」

 

 漆黒騎士は大剣を振り下ろしてくるが、ハジメはメレーカウンターでそれを弾き返すと、がら空きの胴体にミサイルを連続で叩き込んだ。漆黒騎士は衝撃波を連続で受けたことにより、動くことができない。

 

「どりゃぁっ!!」

 

 さらに、ハジメと入れ替わって前へと出てきたシアが跳び上がり、漆黒騎士へと右の拳を振りかぶる。ガントレットからは既に大型のブースターが展開されており、噴射の勢いを乗せたシアの鉄拳が漆黒騎士の胸部に突き刺さり、その巨体を大きく後退させた。

 

 二人の攻撃を受けて胸部装甲はヒビが入ったり歪んだりするなど、少なくないダメージが入っていたのだが、追撃は止まらない。

 

「“破断”」

 

 さらに、二本のウォーターカッターが飛ぶ。奴の装甲を切り裂くことは不可能であると判断したため、狙いは防御が弱いと思われる脚部の関節だ。何度も斬りつけると関節が限界を迎え、騎士は姿勢を崩して膝立ちの状態へとなり、大剣はただの杖になってしまった。

 

「こいつは再構成機能を持っていないようだな」

「ん……防御力が高い代わりに再構成機能が省略されているみたい」

「防御力が高いとはいえ、相手が悪すぎたみたいですね」

 

 ハジメはアームキャノンを構え、漆黒騎士の胸部へと向けると、そのままエネルギーを最大まで増幅してチャージビームとして解き放つ。漆黒騎士の胸部装甲は貫かれ、この個体だけが核を持っていたのか、完全に機能を停止した。

 

 

 

 

 

 扉を潜り抜け、漆黒騎士を三人で瞬殺してから五分ほどが経過した。その後も立ち塞がる存在を破壊しながら進んでいたのだが、その途中で特殊な通路に差し掛かる場面もあった。

 

「うわっ!?」

 

 突然、斥候として先行していたシアが悲鳴を上げ、浮遊して天井に叩きつけられてしまう。どうやら、重力が逆転して天井が床になったらしい。そこへゴーレム騎士が襲ってきたため、シアは逆さまの状態で反撃した。

 

 それは、場所によって重力が変動する通路だった。通過していると急に天井や壁だった場所が床になったりするのだ。そのため、ハジメ達は重力の変化に対応しながらゴーレム騎士や戦闘ドローンと戦うことを強いられていた。

 

「ん、面倒」

「それは同感だ」

 

 踏み出した先の重力がこれまでと同じである保証はない。突然、横や上に“落ちて”しまった上に敵が待ち構えているのだ。だが、その程度で怯むハジメ達ではない。重力の変化にも素早く対応し、敵を蹴散らしていった。

 

 重力変動通路における戦いを制したハジメ達が辿り着いたのは、超巨大な球状の空間であった。直径は二キロメートル以上あり、多様な形や大きさの岩石ブロックが浮遊して滑らかな動きで不規則に移動している。

 

 重力変動通路との大きな違いは、完全に重力を無視した空間であるということだ。だが、不思議なことにハジメ達はしっかりと重力に引かれている。おそらく、この部屋の特定の物質だけが重力の制限を受けないのだろう。

 

 また、ハジメ達はとあることにも気づいた。 

 

「なんか、フィールドウォールの出力が元に戻ってる気がします」

「そのようだな……俺もエネルギーシールドの出力が元に戻っている」

 

 この空間に入った瞬間、今まで受けていたエネルギーシールド系統の弱体化が消えていた。普通に考えたら喜ばしいことだろう。だが、いきなりデバフがなくなるからには、それ相応の理由があるはずだ。

 

「これで、ガントレットも最大限の力を発揮できそうですね」

「だが、喜んでばかりではいられない。防御面が強くなるということは、敵の攻撃も強力なものになるということだからな」

「ん……油断はできない」 

 

 とりあえず、ハジメ達はブロックの一つに乗ってみる。そのブロックは入り口付近から移動を始め、空間の中央に近づいていくのだが…… 

 

「逃げてぇ!」

「「!?」」

 

 突然、シアの焦燥に満ちた声が響く。毎度お馴染みの“未来視”による危険の察知であり、その場から弾かれたかのように退避すると、近くを通りかかった別のブロックに飛び乗った。

 

その直後……

 

ズゥガガガン!!

 

 上から高速で飛来した巨大な何かがハジメ達のいたブロックに激突し、隕石が落下したかのような衝撃を発生させてブロックを木っ端微塵に破壊すると、勢いそのままに通り過ぎていった。

 

 直撃を受けていた場合、即死とまではいかないが最悪の場合は瀕死くらいにはなっていただろう。その可能性に冷や汗を流しながらも次の攻撃を警戒していると、何処からか声が聞こえてきた。

 

「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~!」

 

 ハジメ達がその方向へ一斉に向くと、少し高い位置を浮遊するブロックの上に金髪の少女が立っていた。 

 

「あんたがミレディ・ライセンか。俺はハジメ・ナグモ。鳥人族の後継者を名乗らせてもらっている」

「君達のことは聞いてるよ。私達、解放者の意思を継いでくれるんでしょ? ミレディさん、感動しちゃったよ。でもね、それだけで神代魔法をあげるわけにはいかないからさ……最後の試練、行こっか?」

「あぁ、そうだな」

「じゃあ、それで決まりだね〜☆それで、試練の内容なんだけど、君達には最後の戦いをしてもらいます。ミレディちゃんの最強ゴーレム君とね!」

 

 戦いの二文字を聞いたとたん、戦闘態勢に移行する三人。それを見たミレディはなだらかな胸を最大限に張り、腕組みをして足を肩幅より少し広めに開くと叫んだ。 

 

「いでよ、スーパーミレディゴーレム!」

 

 ゴゴゴゴゴ……という音と共に、全長が二十〜三十メートルはあるような超巨大なゴーレムがミレディの背後に浮上してくる。ポージングは彼女と同じであり、腕組みをした状態である。

 

「彼こそがミレディちゃん達の最高傑作、スーパーミレディゴーレム君です。せいぜい、無様に死なないように頑張りなよ? それじゃあ、ミレディちゃんはクールに去るぜ」

 

 ミレディがその場から姿を消した後、頭部の赤いモノアイが輝き、ハジメ達をロックオンする。肩の二連レールキャノンや腰のガトリング砲、背部の光翼といった装備が動き始め、三人と同様に戦闘態勢へと移行したようだ。

 

「行くぞ……ユエ、シア!」

「んっ!」

「はいっ!」

 

 こうして、ライセン大迷宮における最後の戦いのゴングが鳴らされた。

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