メトロイドトータス〜鳥人族の後継者〜   作:ウエストモール

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メトロイドプライム4、とあるボスでスキャン漏れをするという痛恨のミスをしてしまった……


使徒、襲来

「ん、どうしてパイレーツが……」

 

 ブルックの町へと帰る道中、スペースパイレーツの部隊がハジメ達の目の前に立ち塞がっていた。

 

「おそらくだが、ブルックの町でも襲うつもりなんだろう」

「なら、この場で潰してしまいましょう」

 

 そもそも、スペースパイレーツである時点で排除の対象である。

 

「ん、重力魔法を試すのに丁度いい」

「そうだな。発動までの時間は俺達で稼ぐ」

 

 パイレーツは一斉にビームを放ってくるが、問題ない。シアのフィールドウォールが全てを防ぎ、シーカーミサイルが着弾して多数を吹き飛ばしていく。

 

 そのタイミングでユエが神代魔法の構築を完了させ、その発動のトリガーを引いた。

 

「“禍天”」

 

 パイレーツ達の頭上に現れたのは、直径四メートル程の黒く渦巻く球体だ。これは“禍天”といい、重力球を作り出して消費魔力に比例した重力で対象を押し潰す危険な技である。

 

 重力球がパイレーツ達に向かって落下し、彼らは上から超重力を受けて押し潰されていく。肉体が地面に磔にされ、歪んだ甲殻にはヒビが入り、そこから体液が吹き出し……

 

ベキベキベキッ……グシャァッ!!

 

 パイレーツ達は一瞬で押し潰されて大地の染みとして刻み込まれた。その辺の魔物よりも遥かに高い耐久力を持つ彼らでも、超重力には耐えられなかったようだ。

 

「逃がすか」

 

 そして、ハジメとシアによる残党狩りが開始される。

 

「私の拳が真っ赤に燃えますぅ!」

 

『ヒートハンド、オンライン』

 

『サンバースト』

 

 シアが灼熱の拳で正拳突きを放つと、その拳から太陽が発射されて着弾し、周囲のパイレーツを纏めて焼き尽くしてしまう。死体すら残らない程だ。

 

『フラッシュシフト、オンライン』

『ウインドクロウ、オンライン』

 

 ハジメは光を纏った高速移動で瞬時に距離を詰め、風爪でパイレーツを切り裂く。直後に方向転換して再び高速移動し、その先の敵にも同様な末路を辿らせる。更に高速移動を追加し、三体目へと左腕を振り下ろした。

 

 フラッシュシフトは一度の発動につき、三回までの高速移動が可能だ。ハジメは一度の高速移動で一人を切り裂き、離れた三箇所の敵を一瞬で始末したのだ。

 

「はぁ……はぁ……」 

 

 二人が残党を殲滅した一方、ユエは消耗した様子だった。

 

 重力魔法は自分に使う分には魔力消費は激しくないのだが、それ以外に行使する時は別だ。高い才能や解放者からの手解きがあったとはいえ、彼女はまだ初心者。数秒程の発動準備と多くの魔力が必要となってしまう。

 

「あんなの受けたら私でも死んじゃいますね」

「これが重力魔法の力……ユエ、よくやったな」

「ん……これで役に立てる」 

 

 目の前の障害を排除したので、ブルックの町に戻ろうとするハジメ達。だが、障害物はこれで終わりではなかった。

 

「ん?」

 

 ハジメは今までとは桁違いに強い気配を感じて上空を見上げる。そこからは雪のように多数の何かが地上に降り注いでおり、その一つ一つが銀色の羽であった。

 

 そして、銀の羽の発生源である存在が上空からその姿を現した。天使や戦乙女を思わせる神々しい風貌で、背中からは銀色に光る翼を展開している。ハジメはその正体を知っていた。 

 

「真の神の使徒……」

 

 ハジメを見下ろす瞳は氷の如き冷たさを放っており、ひたすらに無感情で機械的だ。そして、神の使徒は告げた。

 

「ツヴァイトと申します。イレギュラー……“神の使徒”としてあなたを主の盤上から排除します」

 

 それは、神からの宣戦布告。今ここで、“真の神の使徒”と“鳥人族の後継者”が激突する。

 

 

 

 

 

 それは突然の出来事だった。多数のパイレーツを撃破した直後、空から銀の羽が雪のように降り注ぎ、天使が舞い降りたのだ。これが天より遣わされた救世主であったら、どんなに良かったことか。

 

 邪神エヒトが生み出した忠実なる人形であり、神に仇なす者や想定外の危険分子を排除するために送り込まれる存在。それが奴の正体である。

 

 次の瞬間、神の使徒ツヴァイトの肉体から銀色の魔力が噴き出し、常人であれば気絶してしまうようなプレッシャーが一帯を支配する。

 

 戦いを潜り抜けてきたユエとシアであっても体が硬直する程であり、冷や汗を滝のように流している。だが、そんな状況でも動じない男が一人……

 

「ようやく現れたか。一つ聞くが、パイレーツをこの世界に連れてきたのはお前達か?」

 

 ハジメだけは平常運行である。神の使徒から放たれるプレッシャーは確かに強力であるが、それでも凶暴な巨大クリーチャーやレイヴンビークにも遠く及ばない。この程度で動揺していては、多数の危険な存在が跋扈している宇宙では戦えないのだ。

 

 そんなハジメの様子を見て安心したのか、ユエとシアは硬直から解放される。そして、ハジメは言葉を発さずに手振りで逃げるように伝えた。

 

 ここから先は、ハジメ一人の戦いである。ハジメはグラビティ機能を発動し、パワードスーツの防御力を向上させて使徒と相対した。

 

「イレギュラー、あなたとのお喋りに付き合っている暇などありません。我が主のため、即刻消えていただきます」

「それはこちらの台詞だ。神の木偶人形……今すぐ消えろ」

 

ドガッ!ドガッ!

 

 ハジメの発砲が戦闘開始の合図だった。撃ち上げられた二発のビームがツヴァイトに迫るが、彼女は蝶のようにフワリと舞うことで容易に回避すると、背中の銀翼をはためかせる。

 

 その目的は飛翔のためではない。次の瞬間、その銀翼から銀羽のミサイルが大量に射出された。高い連射性能に加え、一発一発に“分解”の固有魔法が付与されており、最後まで獲物を追いかけ回してその存在を抹消するのだ。

 

 それに対抗するのは、生命のエネルギーより無限に生み出され、アームキャノンから高速で連射される無数の光弾だ。ハジメは全力で地面を蹴って後方に飛び退きながら、正面から迫り来る銀羽の群れをビームで次々と撃ち抜いていく。

 

 ハジメが地面に着地した直後、銀羽の弾幕を突き破るようにして銀色の砲撃が飛来してくる。これは分解砲撃といい、手数を重視する銀羽とは対照的に、威力を重視した一撃である。

 

「くっ!」

 

 ハジメは横方向に飛んで回避したが、その背後にあった大岩が文字通りに分解され、何もなかったかのように消滅してしまった。

 

「まさか、これほど放ったというのに全く被弾しないとは……これがイレギュラーの力ですか。評価を上方修正する必要があります」

「随分と舐められていたようだな……」

「イレギュラー、あなたを侮っていたことは認めましょう。ただし、今のは小手調べに過ぎません。今度こそあなたを排除します」

「あぁ、やれるものならな」

 

『ノーマルミサイル、オンライン』

 

 ハジメは上空のツヴァイトをロックオンし、ミサイルを連続で放つ。だが、あろうことか彼女はミサイルを双大剣で切り裂きながらハジメへと真っ直ぐに迫ってくる。

 

 突っ込んでくる彼女に対してチャージビームを放つが、交差させた双大剣によって防御されてしまう。そのまま、至近距離に踏み込んで来た彼女は回転して遠心力を乗せた大剣の一撃を浴びせてきた。

 

ガキィィィンッ!!!

 

 大剣の腹をアームキャノンでかち上げることで軌道をずらして回避する。もう片方の大剣も振り下ろされ、ハジメを真っ二つにしようとするが、咄嗟に半身になったことでシールドこそ貫通されたものの肩アーマーから火花を散らす程度に終わった。

 

『ウインドクロウ、オンライン』

 

 そして、ハジメは被弾しながらも風爪を纏った貫手を繰り出して使徒の顔面を狙う。いくら奴であっても人の姿をしている以上、顔面を破壊すれば死は免れないと判断したからだ。だが、驚異的な反射神経で目論見は阻止され、奴の頬に傷を刻んだだけだ。

 

「何故です。何故、“分解”が効いていないのです!?」

 

 ハジメから反撃を受け、無表情ではあるが驚きを隠せないツヴァイト。当然だが双大剣にも“分解”は付与されており、あらゆる物質を切り裂いてしまう危険な代物だ。

 

 パワードスーツに大剣が直撃し、エネルギーシールドを貫通したにも関わらず、切り裂くことができなかった事実に、彼女は驚いていた。

 

 ハジメのパワードスーツは彼の精神力によってその形態を維持しており、ハジメの精神が折れない限り分解に抗ってくれる。その上をエネルギーシールドが覆う二層構造であり、自己修復機能を備えたパワードスーツは簡単に切り裂かれることはないのだ。

 

「鳥人族が授けてくれたパワードスーツを簡単に貫けると思うな」

 

 ハジメはそう言い放ちながら、青いチャージビームを発射する。ツヴァイトは先ほどと同様に大剣を交差させて防御するが、それが間違いであったことを知る。今のビームは凍結効果が付与されたアイスビームであり、全身を氷漬けにされてしまったからだ。

 

 ツヴァイトは自身を覆っている氷を分解するが、その一瞬の隙をハジメに突かれてしまい、いつの間にか至近距離に迫られる。彼女の無防備な腹部には、輝くアームキャノンの先端が接触していた。

 

「この距離なら防げないな」

 

 その直後にゼロ距離から最大チャージビームが放たれ、ツヴァイトは弾かれるようにして吹き飛ばされた。

 

「ぐぉっ!?」

 

 吹き飛んだ彼女は森の中に突っ込み、進路上の木々を何本もへし折って停止する。ゼロ距離からチャージビームの直撃を受けた胴体部分の戦装束はボロボロになり、素肌は少しばかり爛れていた。

 

「凍結攻撃……そんなものは提供されたデータにはなかったはずです」

「情報共有を怠り過ぎだ」

 

 戦場は森の中へと移行する。薙ぎ払うように放たれた分解砲撃の下をスライディングで潜り抜け、アイスビームの連射で反撃する。この一瞬で多くの木々が消し飛び、氷漬けにされ、自然環境が破壊されていく。

 

『シーカーミサイル、オンライン』

 

 五発の小型ミサイルがツヴァイトに殺到するが、彼女は銀翼を大きく広げて自身を包み込み、着弾したミサイルを全て分解してしまった。だが、その直後に飛来したロープ状のビームに反応できず、片方の大剣の持ち手部分に巻き付かれる。

 

「これは!?」

 

 それはグラップリングビームである。ハジメは左腕に力を込めて彼女を引っ張り、ブンブンと振り回して近くの大木に背中から叩きつけた。

 

「ぐうぅっ!?」

 

 大木の太い幹に放射状の割れ目が走り、叩きつけられた衝撃でツヴァイトは片方の大剣を手放してしまう。

 

「こいつをくらえ」

 

 幹にめり込んだツヴァイトに向けてチャージビームを放つハジメ。しかし、咄嗟に回避されてしまい、大木を粉砕する結果に終わる。

 

「私の武器を奪うのは想定外でした。ですが、私の姉妹達に同じ手段が通用するとは思わないことです」

 

 そして、ツヴァイトは空高く舞い上がると、森の中にぽっかりと空いた空間にいるハジメを見下ろした。

 

「この森ごと貴方を焼き払います」

 

 ハジメがミサイルを連射するが、宙にばら撒かれた銀羽によって全てが相殺される。一部の銀羽は彼女の下方に集まると、何枚も重なって銀色に輝く魔方陣を形成する。次の瞬間…… 

 

「“劫火浪”」 

 

 発動されたのは、津波のような炎を生み出す最上級魔法。炎の大津波が頭上より落下してきて、森ごとハジメを飲み込んでしまった。

 

 森は瞬く間に炎に包まれ、激しく炎上する。酸素を含めた全てが例外無く燃え尽くされて超高温となり、発生した上昇気流によって炎を伴った旋風が巻き起こった。俗に言う火災旋風というものだ。

 

 だが、その中で立ち上がるシルエットが…

 

「耐えましたか……」

 

 それは、赤く変色した雷鎧をスーツの表面に纏うハジメであり、ライトニングアーマーの効果で“劫火浪”によるダメージは完全に無効化されていた。

 

 周囲に広がる超高温の環境についても、バリアスーツで熱気への耐性を得ており、マグマとの接触にも耐えられるグラビティ機能によって完全にシャットアウトされている。

 

「当然だ」

 

『スーパーミサイル、オンライン』

 

 そして、間髪入れずにハジメは反撃する。空中のツヴァイトに向けてスーパーミサイルが高速で飛翔し、銀羽による迎撃すら物ともせずに着弾。強烈な爆風を拡散させた。

 

 爆風に包まれてツヴァイトの姿が消える。だが、ハジメは着弾の寸前に銀翼で自身を包み込む奴の姿を見ており、確実にトドメを刺すべく動き出す。

 

『ハイパーモード、オンライン』

 

 ハジメは胸部に備えられたエーテル強化装置(EED)を二度タップし、心臓の鼓動のような音を伴って赤く輝くオーラを全身より噴き上がらせる。ハイパーモードの発動状態だ。

 

 一方、ツヴァイトはスーパーミサイルの爆風の中から少しボロボロの状態で現れる。全身を包み込む分解の銀翼によって致命傷だけは避けたらしい。

 

「その力は危険です。必ず排除します!」

 

 銀色の光を纏い、激しく輝くツヴァイト。その姿は夕暮れで薄暗くなり始めている空でかなり目立つ。彼女は擬似的な限界突破である“禁域開放”という技能を使用しており、全ステータスが数倍に引き上げられているのだ。

 

 そのまま、奴は一振りの大剣を構えて突っ込んでくる。その背後には幾多の残像を引き連れ、姿が何重にもブレて見える程の速さである。対するハジメはどっしりと構えていた。

 

『チャージビーム、アップグレード』

 

『ハイパービーム、オンライン』

 

 EEDを使用したハイパーモードでは、特定のアビリティに集中して任意で強化を施すことが可能だ。その効果は通常のハイパーモードよりも高く、攻撃系のアビリティであれば必殺級の威力を発揮する。

 

 アームキャノンに多くのエネルギーが集中し、一際赤く輝いている。そのエネルギー量は、もはや計測不能。解放されれば、多大な破壊をもたらすのだろう。

 

 ハジメは突っ込んでくるツヴァイトに赤く輝くアームキャノンを向け、エネルギーを圧縮するためにチャージを開始する。

 

 その妨害のために何発もの銀羽が飛来するが、ハイパーモードを発動したハジメの防御力の前では無駄だ。自慢の“分解”も通用しなかった。

 

 やがて、計測不能な程のエネルギーがアームキャノンの内部で最大まで圧縮される。どこかにエネルギーを逃がさなければ、アームキャノンは吹き飛んでしまうだろう。 

 

「消え失せろ!」 

 

 ハジメの叫びに合わせて解放されたエネルギー。それは極太の赤い光芒となり、ハジメの至近距離まで迫っていたツヴァイトの視界は真っ赤な光に覆われた。

 

「ありえません、こんなことがッ…!!」

 

 ツヴァイトはハイパービームに飲み込まれ、断末魔の声と共に文字通り消し飛ばされる結果に終わった。

 

「終わったな……」

 

 戦いの爪痕が深く刻み込まれた灼熱の中、ハジメは一人立ち尽くす。ハイパーモードの発動から三十秒が経過し、すでに解除された状態だ。

 

 ハジメは持てるアビリティや戦闘技術の殆どを投入して神の使徒と戦い、これに勝利したのだ。鳥人族や解放者の意志を受け継ぎ、仲間と共に歩んだ旅路。それがハジメに力を与えたと言えよう。

 

「しかし、難敵だったな……」

 

 上級使徒のステータスはパワードスーツを装備したハジメの基本能力に匹敵する。チャージビームのゼロ距離射撃を受けても、アイスビームで氷漬けにされても死ぬことはなく、さらには戦闘経験が他の個体にフィードバックされる仕様になっているため、次からは同じ手段が通用しなくなる。

 

 だが、人間は努力して成長し、反省して先に進むことのできる心を持った生き物だ。データからしか学ぶことができない心持たぬ神の使徒と大きく異なる点であり、人間の長所である。

 

 戦闘データがフィードバックされてしまうのであれば、常に努力を重ねて進化することによって敵の予想を上回ればいい。心を持つ者こそが勝利するのだ。

 

「俺は、もっと強くなる……」

 

 こちらへ走ってくる二人の姿が視界に捉えられる。まだ見ぬ使徒との戦いを見据え、ハジメは更なる強さを求めることを決意した。




ちなみに三体目のボスを倒すところまで来ました
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