メトロイドトータス〜鳥人族の後継者〜   作:ウエストモール

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三回目のメトロイド戦です


迫る脅威

『ノーマルミサイル、オンライン』

 

 ゼータメトロイドの顔面にミサイルが直撃し、十二個の赤い眼光がそれを放った張本人であるハジメへと向けられる。

 

「よし、釣れたか」

 

 ハジメは味方を戦いに巻き込まないようにするため、奴のヘイトを自身に集めた上で離れていく。優先順位はハジメの方が上なのか、まんまと食いついてくれた。

 

「気を付けてね、南雲……」

 

 明らかに強そうな相手とタイマンで戦うハジメのことを優花は心配する。あり得そうにないが、また彼の身に何か起こるのではないかと、何処かで思っているのだ。

 

「ん、心配はいらない。お父様はあれを倒す専門家だから。今度も勝つ」

「そんなに信頼しているんだね」

「お父様は最強だから」

 

 だが、ユエは勝利を確信している。その自信のある表情を見て、優花は信じてみることにした。

 

「賊徒共よ、覚悟せよ!」

 

 一方、パイレーツの軍勢に対して先陣を切ったのはティオだった。竜穿を発動して全身をアーマーで包み込み、顔面に至るまでの防御を固めている完全防備だ。

 

 すかさず進化体メトロイド達がティオを妨害しようと向かってくるが、奴らの相手は彼女ではない。数発の銃声が鳴り響き、肉体に火花が散ったことで強制的に奴らの注意は別方向へと逸らされた。

 

「てめえらの相手は俺達だ!」

「ですぅ!」

 

 進化体メトロイドと戦うのは、幸利とシアだ。幸利はフリーズガンというアイスビームに匹敵する効果の武器を貸し与えられており、シアについては言うまでもない。二人も交戦を開始した。

 

「ガァァァァ!!」

 

 立ち上がって二足歩行となったゼータメトロイドが口腔より火炎弾を飛ばしてくる。それと同時にハジメはスタートダッシュを切り、それを躱して接近していく。

 

 ハジメを狙って黄緑色の火炎弾が次々と放たれるが、サイドステップを挟んで何度も方向転換し、ジグザクな動きで連続回避する。

 

(やはり、進化しているな……)

 

 ゼータまで進化したトータスメトロイドは以前よりも俊敏性が強化されている。浮遊能力を失っているが、ガンマの時点で細かった四肢も強靭なものとなり、奴に高い機動力を与えていた。

 

 その俊敏性はハジメにも匹敵するだろう。攻撃手段もこれまでのような電撃ではなく火球になったことで正確性も上がり、少しでも気を抜けば被弾してしまうだろう。

 

 ハジメは火球をギリギリで回避しつつ、ゼータメトロイドの腹部にあるコアへとミサイルを叩き込みながら更に接近する。

 

 両者が至近距離にまで縮まったところで、奴は四足歩行に戻ると火炎放射を繰り出してくるが、それは予見済みだ。それを飛び越えてアームキャノンを振り下ろし、頭部へと打撃をお見舞いした。

 

「我が剣の錆にしてくれようぞ」

 

 ティオは幾多のビームに晒されながらも、竜人族の長所である防御力と全身に纏った風によりそれを無効化し、展開した竜翼をはためかせて突入する。

 

 神速の剣撃がパイレーツ戦闘員へと襲いかかり、防御すら出来ぬまま奴らは斬り捨てられていく。数の面で有利であり、四方八方を囲んでいるにも拘らず、彼女には隙がない。

 

 パイレーツが同時攻撃を仕掛けたとしても、彼女は全身が武器となる。時として腕や両足が槍のように鋭くなり、死角から攻撃を仕掛けたはずの同胞が貫かれて絶命するのだ。

 

「我がブレスを受けてみよ “竜砲” 」

 

 ティオの左腕が竜の頭部を模した巨大なアームキャノンと変形し、その内部へと魔力をチャージする。当然ながらその間は無防備だが、防御力が高いので問題はない。

 

 そのままアームキャノンを抜刀術のような動きで振り抜き、動作を開始から最後までの間のみ、ブレスの発射を行う。ブレスが巨大なブレードと化し、周囲のパイレーツが一撃で消し炭となった。

 

 さらに、高く掲げたアームキャノンからブレスを天空へと放ちながら振り下ろし、目の前の集団を消し飛ばした。

 

『アイスハンド、オンライン』

 

 一方、幸利とシアは進化体メトロイドとの戦いに突入していた。敵勢力はアルファが数十体にガンマが二体といったところだ。迫り来るエネルギー触手の群れを掻い潜りつつ、二人は肉薄する。

 

「うりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

 シアは絶対零度を両拳に宿し、アルファメトロイドのコアを殴りつけて一撃で撃破する。シアのパワーならばアルファ程度なら雑魚同然であり、凍結した瞬間に粉砕される始末だ。逃げるだけの当時とは異なり、対抗手段と身体強化を入手した彼女を前にして瞬く間に数を減らしていった。

 

「俺も負けていられないな」

 

 幸利は部分竜化で展開した翼を駆使した機動でアルファメトロイドへと迫り、フリーズガンを連射して数体のコアを凍結させると、リベリオンファングのギミックを作動させた上で突きを繰り出す。

 

 蛇腹剣と転じたリベリオンファングの刃はまるで意思を持っているかのように滑らかな軌道を描き、凍結して落下する数体のコアを正確に貫いて撃破した。

 

「後は、お前達だけか」

 

 残りは二体のガンマメトロイドのみ。幸利とシアは同時にそれぞれのターゲットとの交戦を開始する。

 

「ギィィィィィィィ!!!」

 

 空中のガンマが放つ電撃をフィールドウォールで防御し、懐へと潜り込むと絶対零度を纏ったアッパーをコアに浴びせ、落下してきたところを倒立の要領で空高く蹴り飛ばした。

 

「でりゃぁ!!」

 

『ヒートハンド、オンライン』

 

 シアはそれを追って跳躍すると、勢いのままに凍結したコアへと灼熱の貫手をねじ込み……

 

「ヒートハンド、最大出力ですぅ!」

 

 コアの内部を超高温の熱波が蹂躙し、急激な温度変化によって体内組織が崩壊を開始する。そのまま、奴は空中で爆散した。

 

「へえ、まさか別系統の進化を遂げるとはな。メトロイドは本当に面白い」

 

 幸利の対峙するガンマメトロイドは完全に陸戦型になっており、エネルギーの触手ではなく鎌状の脚部が追加され、エネルギー刃を纏っている状態だった。現在、幸利は振り下ろされた二本の鎌をリベリオンファングで受け止めていた。

 

「細身の割にはパワーがあるな。だが、お遊びはここまでだ “堕識”」

 

 次の瞬間、ガンマの目前に漆黒の球体が出現する。それを見た途端に奴は一瞬だけ意識を失い、目を覚ました時には仰向けに転がされていた。

 

「俺の天職をお忘れか?」

 

 お忘れかもしれないが、幸利の天職は闇術師だ。デバフのプロであり、相手の意識を奪うことなど朝飯前である。幸利はその一瞬で鎌を弾き、頭部を蹴り上げてひっくり返したのだ。

 

 奴の腹部に飛び乗り、近距離からフリーズガンを連射してコアを凍結させる。そして、リベリオンファングを突き立て深々と差し込むことで絶命させた。

 

 敵は四人に釘付けとなっているが、彼らの目を掻い潜ってウィル達を狙おうとする輩もいた。しかし、ウィル達には最強の魔法使いが護衛についている。

 

 ある時、数体のパイレーツがビームを浴びせてくるのだが、ユエはすぐに反応してピンポイントで結界を張ることで非戦闘員を守る。

 

「ん、鬱陶しい。新しい装備を……」

 

 ユエの周囲に現れたのは、六基の十字架のようなデザインの黒い物体だ。それはクロスビットといい、ミレディが使ってきた武器をハジメが再現したものだ。

 

 生成魔法で重力魔法を付与した重力を中和させる重力石と、ミレディに貰った感応石と呼ばれるゴーレム騎士を操る元になっていた鉱石を組み込んだ浮遊ビーム砲台である。

 

「攻撃開始」

 

 しばらくユエの周囲を衛星のように周回していた六基のクロスビットが素早く動き出し、迫るパイレーツに対してビームを直撃させる。

 

「すげえ……」

「ファ◯ネル……ファ◯ネルじゃねえか!」

「ニュー◯イプだったのか……」

 

 絵面は完全にガ◯ダムである。護衛隊の男性陣が少し騒がしくなったが、ユエは気にせずに攻撃を続行する。

 

「この子達から逃れられる?」

 

 クロスビットはユエに操られ、まるで猟犬のように襲いかかる。奴らは迎撃を試みるも、一基すら捕捉することができず、その牙で命を刈り取られていく。漆黒の墓標による波状攻撃の前に襲撃者は尽く殲滅されることになった。

 

 

 

「ガァァァ!?」

 

『アイスビーム、オンライン』

 

 打撃によってゼータメトロイドの頭部が地面に叩きつけられ、少しばかり動きが止まる。ハジメはその傍に降り立つと、頭部を掴み、至近距離からアイスビームを叩き込むと、追い討ちのミサイルを連射していく。

 

 途中で復活したゼータが頭を振ったことで引き剥がされ、そこに横薙ぎのテールアタックが迫ってくるも、スライディングで潜り抜けて懐へと滑り込む。

 

「受けてみろ」

 

 アームキャノンの砲口は青く輝いており、ビームには凍結効果が重ねがけされている状態だ。ハジメは目の前にあるコアに対して、すれ違いざまにアイスビームをぶち込んだ。

 

「ギァァァァ!?」

 

 急所のコアが凍結し、ゼータは悲鳴を上げて大きく怯む。ハジメが下をすり抜けた直後、その場から大きく飛び退いた。

 

「ガァァァァァァ!!!」

 

 ゼータは怒り心頭だった。北の山脈地帯の魔物を蹴散らし続けていた奴は自分にダメージを与えた存在と遭遇したことがなく、ここまでやられたことに怒りと恐怖を感じていた。そして、思った。目の前の存在を排除しなければならないと。

 

 怒りのままにハジメへと接近し、強靭な脚部で殴り殺そうとするが、それを見切ったハジメが繰り出したメレーカウンターで打ち上げられる。

 

 ここからハジメの猛攻が始まる。空中に浮いたゼータにミサイルを撃って滞空時間を伸ばし、尻尾を掴んで仰向けの体勢になるように地面へと叩き付けると、完全に剥き出しのコアにミサイルを連射する。

 

 ゼータも負けじと強烈な蹴りを放って引き離すと、怯んだハジメに飛びかかる。そのままハジメを押し潰したように見え、クラスメイト達の方からは悲鳴が上がるが……

 

「危ないな……」

 

 ハジメは片足だけでゼータの巨体を支えていた。コアは相変わらずキルゾーンに入っているのでミサイル連射が続き、ラストに最大チャージアイスビームをぶちかますと、身体強化を両足にかけて蹴り飛ばした。

 

「グアァァァ!?!?」

 

 ゼータメトロイドが再び立ち上がることは叶わない。全身の甲殻は赤く変色し、コアからは激しく電撃が放出され、悲鳴を上げながら爆死した。

 

 

 

 

 

 進化体メトロイドが全て討伐されたことで、パイレーツは総崩れとなった。その多くはティオに撃破されたが、三人が合流してきたことで殲滅にはそう時間はかからなかった。

 

「南雲、こいつらの残留思念を読み取ったが、とあることが判明した」

 

 闇術師である幸利は、降霊術師には劣るものの残留思念に干渉することも可能だ。それにより、パイレーツの生存者はいないが、奴らの陰謀を暴くことができた。

 

「こいつらが山脈地帯で暴れていたのは、メトロイドの性能試験だけじゃない。魔物をここら一帯から追い出し、魔人族が闇魔法で操ってウルの町へと嗾ける計画らしい」

 

 どうやら、スペースパイレーツと魔人族との間に協力関係があるようだ。ウルの町は農業における重要拠点であり、真っ先に落としに来たのだ。

 

「そうか……魔物の軍勢か。イヴ、周囲にそのような影はあるか?」

 

『報告:数万の魔物を確認。進行方向はウルの町であり、翌日の夕方頃に到達します』

 

 随行支援ユニットから立体映像が出る。そこには数万の魔物の姿が映っており、報告を聞いて全員が目を見開く。しかも、どうやら既に進軍を開始しているようだ。方角はウルの町がある方向で、半日もしない内に山を下って一日で町に到達するだろう。

 

「は、早く町に知らせないと! 避難させて、王都から救援を呼んで……それから、それから……」 

 

 万単位の魔物が攻めて来るなど、もはや戦争である。馬車での移動中、散発的に襲ってきていた少数の魔物との戦闘とは訳が違う。経験したことのない深刻な事態に、愛子は慌てていた。

 

 チートスペックとはいえ少数の生徒達では、たちまち物量に押し潰されてしまうだろう。そのため、少しでも早く町へと緊急事態を伝え、救援が来るまで避難するのが得策だ。 

 

 と、皆が動揺する中、ウィルはハジメに対して提案する。

 

「ナグモ殿……あなた方なら、この脅威を何とかできませんか? 一度救っていただいたというのに烏滸がましいかもしれませんが、あなた方の力が必要なのです」

 

 その言葉で、全員が一斉にハジメ達の方を見る。パイレーツを蹴散らしたハジメ達ならば万単位の魔物であっても対処できるのではないかと、その瞳は期待の色に染まっていた。

 

「出来なくはない。だが、この地形では討ち漏らしが出てしまう。残党が町に向かうようなことがあれば、新たな犠牲者を生むことになる。どちらにせよ、一刻も早く町に報告して避難を呼び掛ける必要がある」

 

 ハジメは自身の意見を伝える。迎撃すること自体には賛成だが、ここでは起伏の激しい地形が遮蔽物となってしまうために殲滅戦がやりずらく、討ち漏らしが戦力不在の町を襲うようなことがあれば、人的被害が出てしまうと考えていた。

 

「分かりました、南雲くん。町に戻りましょう」

 

 愛子が町へと戻ることを了承したので、すかさずハジメがアームキャノンを操作して置いてきたビークルを呼び寄せる。数分足らずで無人のジャガーノートが轟音と共に到着し、目の前に停車した。

 

 事態は一刻を争う。全員が素早く乗り込んだのを確認すると、ハジメはジャガーノートを発進させる。一行は背後に大群という暗雲を背負い、ウルの町へと戻った。




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