メトロイドトータス〜鳥人族の後継者〜   作:ウエストモール

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前作では空気になってしまっていたブラスターを使わせることができました


犯罪組織を殲滅せよ

「南雲、そっちも大変だったみたいだな」

 

 襲ってきたチンピラ集団を蹴散らした後、合流したハジメ一行はイルワに相談するために冒険者ギルドへと来ていた。

 

 例の地点にはミュウはいなかった。その代わりに武装した大勢のチンピラがおり、ハジメを殺してシアをいただく算段だった。だが、結果はお察しの通りである。

 

 チンピラの何人かは生け捕りにしていて、グルグル巻きにされた状態でギルドの床に転がっている。全て幸利によって洗脳済みなので、情報源として申し分ないだろう。

 

「ん、大体何かしらに巻き込まれてる」

 

 ハジメ達はトラブル体質である。色々と目立つことから人の目を集めやすく、何らかの標的として目をつけられる可能性が高いのだ。

 

「本当に君達を見ていると飽きないよ。君達を支援して正解だったね」 

 

 すると、報告を受けたであろうイルワがギルドの奥から出てくる。たった一日ぶりの再会である。 

 

「おそらく、君達に喧嘩を吹っ掛けたのはフリートホーフかもしれない。私達も全容は把握できていないけれど、都市でかなりの勢力を誇っている」

「イルワ、俺達はそのフリートホーフとやらを壊滅させる。だが、勝手にやるわけにはいかないだろう」

「別に構わないよ。奴らには私達も手を焼いていてね、君達の力を借りられるなら文句はない」

 

 冒険者ギルドは警察組織と連携してフリートホーフの対策に取り組んできた。しかし、冒険者な保安員の中に内通者がいたり、切り捨てられた末端しか逮捕できずにいた。

 

 しかし、ハジメ達は完全に外部の存在であり、フリートホーフの被害者でもあるため、奴らと通じている心配はない。実力も申し分なく、イルワとしても有難かった。

 

「関係各所への根回しは任せてくれ。それと、一つだけ注文させてもらうけど、フリートホーフと関係のない人員や資産への被害は抑えてもられると助かるよ」

「元からそのつもりだ」

「奴らは痛い目に遭わせてやるですぅ」

 

 シアに至ってはやる気満々である。懐いてくれたミュウが攫われたこともあり、容赦するつもりはないだろう。

 

「清水、ユエのことは引き続き頼む」

「あぁ、任せろ」

「ん、ユキトシのことは信頼してる」

 

 今回、彼らは二手に別れてフリートホーフの拠点を片っ端から強襲する。幸利による尋問で位置は割れているため、敵の命を考慮しない速やかな制圧が行われるだろう。

 

 これは、商業都市の裏社会の勢力図が一日で塗り変わった出来事として記憶され、後に〈フューレンの変〉と呼ばれることになる事件の始まりであった。

 

 

 

 

 

 商業区の中でも外壁に近く、観光区からも職人区からも離れた場所。そこは当局の目の届かない裏社会であり、大都市の闇だ。昼間でも薄暗い雰囲気であり、道行く人々もどこか陰気な感じだった。

 

 そんな裏社会の一角に七階建ての大きな建物があった。表向きは人材派遣を商いとしているが、裏では人身売買の総元締をしている裏組織“フリートホーフ”の本拠地である。 

 

 本来なら静かで不気味な雰囲気を放っているのだが、今に関しては慌ただしく人々が出入りしていた。その量は普段の数十倍であり、潜入するのにはもってこいだ。

 

 本拠地にて大勢がバタバタする中を、ローブで全身を覆ったコンビが進んでいく。人を避けながら進み続け、ついには最上階の部屋の前に立った。その扉からは男の野太い怒鳴り声が廊下まで漏れ出している。 

 

「ふざんけてんじゃねぇぞ! アァ!? てめぇ、もう一度言ってみやがれ!」

「ひぃ! で、ですから、潰されたアジトは既に五十軒を超えました。襲ってきてるのはたったの四人です!」

「じゃあ、何か? たった四人のクソ共にフリートホーフがいいように殺られてるってのか? あぁ?」

「そ、そうなりまッへぶ!?」

 

 フリートホーフのボスであるハンセンは伝令の男を殴り倒した。彼はたった四人に自らの組織が蹴散らされていることに苛立っていた。

 

「てめぇら、何としてでも、そのクソ共を生きて俺の前に連れて来い。生きてさえいれば状態は問わねぇ。このままじゃあ、フリートホーフのメンツは丸潰れだ。そいつらに生きたまま地獄を見せて、見せしめにする必要がある。連れてきたヤツには、一人につき五百万ルタを即金で出してやる!」

 

 室内にいる複数人の構成員にハンセンは号令する。彼らはボスの命令を組織の隅々まで伝えるため、部屋を出ていこうとしたのだが、ローブを纏った者達が扉を蹴破って突入してきた 

 

「ここが、フリートホーフの本拠地で間違いないか?」

「何だてめえ!?」

 

 ハジメとシアは素早くローブを取り去る。二人の容姿は目立つものであり、ハンセンはすぐに正体に気付いた。

 

「てめぇら、例の襲撃者の一味か……そっちの兎人族はシアとかいったか。なるほど確かに見た目は極上だ。おい、今すぐ投降するなら、命だけは助けてやるぞ? まさか、フリートホーフの本拠地に手を出して生きて帰れるとは思……」

 

バシュッ!

 

「があっ!?俺の足がぁぁぁ!?」

 

 その瞬間、ハジメはブラスターを素早く引き抜き、ハンセンの足を撃ち抜く。そのまま、奴はぶっ倒れた。

 

「シア、外の奴らは任せた」

「了解ですぅ」

 

 直後、部屋にいたチンピラが襲ってくる。

 

「クソがっ!」

 

 チンピラの一人が手斧を振りかざしてくるが、驚異的な速度の早撃ちで頭部と胸部を撃ち抜かれて死亡する。

 

 ハジメは手放されて落下する手斧をキャッチすると、振り向きながら背後より迫るチンピラへと投げつけ、頭部をかち割ってしまう。

 

 斧が深々と食い込んだ頭部から鮮血を噴き出しながら、チンピラは後ろへと倒れ込む。その惨い死に様を見て、奴らは恐怖した。

 

「う、うわぁぁぁ!!」

 

 ナイフ持ちが突進してくるが、それを奪い取るとその胸に突き立てる。ナイフを引き抜いて奴を蹴り飛ばし、反対側から来ていた素手のチンピラが振り下ろす腕を捻り上げ、ナイフで頸動脈を切り裂いた。

 

「うおぁぁぁぁ!?!?!」

 

 鮮血が飛び散る中、胸を真っ赤に染めたチンピラが錯乱して何も考えずに向かってくる。ハジメは冷静に腹部と首筋を連続で刺突して仕留めた。

 

 チンピラ達は誰もハジメに掠り傷を付けることすら出来ず、流れ作業のように全員がほぼ一撃で屠られていく。殺傷するのに特化した攻撃が正確に急所へ叩き込まれており、効率的に処理されていた。

 

 無論、こんなに暴れていて存在がバレないはずはなく、階下からドタドタと大勢のチンピラが向かってくる足音が響いてくる。だが、彼らがボスの元へ駆け付けられることはない。

 

「ここは通さないですぅ!」

 

 狭い階段を駆け上がってくるチンピラ達だが、シアが地の利を生かして立ち塞がり、目にも留まらぬ速さの連続蹴りを繰り出して粉砕する。俗に言う百裂脚というやつだ。

 

 シアの全力の蹴りを受けて生きていられる者はいない。衝撃波で内臓が破裂し、全身骨折し、四肢が千切れるなど、必殺の威力を持っているのだ。

 

 さらに、シアは奴らに追い討ちをかける。ヒートハンドを起動すると、エネルギーを最大までチャージして掌を翳し……

 

『フレイムスローワー』

 

 掌から噴き出したのは高温の火炎だ。ヒートハンドの第二の機能であり、サンバーストよりも熱量は低いが雑魚の処理に適している。階段は瞬く間に火の海へと変わり、チンピラは火達磨になるか火の壁で阻まれて近づくことができなかった。

 

 弟子が外のチンピラを引き受けている間に、床に倒れているハンセンに歩み寄り、念のため無事な手足にもブラスターを撃ち込む。奴の悲鳴が響き渡った。

 

「俺の質問に答えろ」

「助けてくれ……金なら好きに持って行っていい……もう、関わったりはしない……」

「ミュウという海人族の子を知っているか?」 

 

 ハンセンはそれを聞かれて思い至ったのか、激痛で飛びそうな意識の中で必死に答えた。どうやら、今日の夕方頃に行われる裏オークションの会場の地下に移送されたようだ。

 

「そうか、ありがとう」

「た、助け……医者を……」

「それは無理だ。罪無き人々の人生を食い物にしてきたお前には、汚い床の上で冷たくなるのがお似合いだ」

 

バシュッ!!

 

 ハジメのブラスターが火を吹き、ハンセンの脳天をぶち抜く。奴はこれまでの報いを受けるようにして、無様に絶命することになった。

 

 

 

 

 

 情報を得たハジメはオークションの会場へと急行していた。このままではミュウが売られてしまうため、早く救出する必要があった。

 

 オークションの会場前には黒服を着た二人の巨漢が門番として立っており、ハジメなら余裕で倒せるが、こちらの存在が露見したらミュウが移送される可能性があるため、錬成で地下から潜入することにした。

 

 やがて、穴が繋がった先で最初に見たものは無数の監獄だった。入り口に監視はいるがやる気がないのか居眠りしており、目覚めたら困るので首の骨を折って始末する。

 

 監獄の中には子供達が何十人もおり、冷たい石畳の劣悪な環境の中で身を寄せ合って蹲っていた。十中八九、今日のオークションで売りに出される子供達だろう。

 

 基本的に人間族の多くは聖教教会の信者であることから、そのような人間を奴隷や売り物にすることは禁じられている。しかし、神を裏切った犯罪者はその例外として奴隷化や売買が許されているのだが、目の前の子供達が犯罪者だとは思えない。違法に捕らえられて売り物にされているのは確定だ。

 

 ハジメは、突然入ってきた人影に怯える子供達と鉄格子越しに屈んで視線を合わせると、静かな声音で尋ねた。

 

「ここに、海人族の女の子は来たか?」

 

 てっきり、自分達の順番だと怯えていた子供達は、予想外の質問に戸惑ったように顔を見合わせる。しばらく沈黙を貫く子供達だったが、決心したのか一人の少年が答えてくれた。

 

「えっと、海人族の子なら少し前に連れて行かれたよ……お兄さんは誰なの?」

「助けに来た。もう少しの辛抱だ、君達も家に帰れるぞ」

「えっ!? 助けてくれるの!」

 

 ハジメの言葉に、少年は驚愕と喜色を浮かべて大声を出す。他の子供達も喜びを露にして歓声を上げているが、こんなに五月蝿くても監視が起きることはない。そして、ハジメは錬成で鉄格子を分解して解放してあげた。

 

「君達はここで待ってるんだ。俺の仲間……水色の髪の毛をした兎人族が迎えにいく」

 

 ハジメは地下牢から錬成で上階への通路を作ると、子供達をこの場で待機させてオークション会場へ急ごうとしたが、そこで先程の少年がハジメを呼び止める。

 

「兄ちゃん! 助けてくれてありがとう! あの子も絶対助けてやってくれよ! すっげー怯えてたんだ。俺、なんも出来なくて……」

 

 少年は自らの無力さに俯く。彼は異種族にも関わらずにミュウを励まそうとしていたらしく、自分も捕まっていたというのに中々根性のある少年だ。ハジメは、そんな彼の頭をわしゃわしゃと撫で回した。

 

「わっ、な、なに?」

「できることからやればいいさ。鍛えれば強くなれる。今は、俺に任せてくれ。そのために俺がいる」

 

 それだけ言うと、ハジメは踵を返して地下牢を出て行った。呆然と両手で撫でられた頭を抑えていた少年は、次の瞬間には目をキラキラさせて少し男らしい顔つきでグッと握り拳を握った。

 

 表向きには美術館とされている建物が裏オークションの会場だった。中には百人程の仮面をつけた客がおり、素性が分からない状態となっている。彼らは、目当ての商品が出てくる度に番号札を静かに上げていく。

 

 素性がバレないように沈黙を保っている彼らだったが、ある商品が出てきた瞬間、思わず驚愕の声を漏らした。

 

 それは、海人族の少女であるミュウだった。彼らが声を漏らすのも当然だろう。何故なら、海人族は王国によって公式に保護されている種族であり、それが商品にされているなんてあり得ないからだ。

 

 ミュウは二メートル四方の水槽に裸で入れられており、水槽の隅で膝を抱えて縮こまっている。海人族は水中でも呼吸出来るので、本物の海人族であると証明するために入れられているのだろう。一度逃げ出したせいか、今度は手足に金属製の枷をはめられている。小さな手足には酷く痛々しい光景だ。

 

「お兄ちゃん……お姉ちゃん……」

 

 多数の視線に晒され、ミュウは怯える。自分の今後を想像して不安に押し潰されそうな彼女が思い浮かべたのは、ハジメとシアの姿だった。

 

 そして、思う。オークションで売られそうになっているのは、自分が悪い子だからなのではないかと。あの時、良い子にしていればハジメ達に会えると約束されたのだ。今から良い子にするから、またハジメとシアに会いたい。それがミュウの願いだった。

 

 やがて、縮こまって動かないミュウの姿を見て、仮面の黒服が怒鳴りながら水槽を蹴り始める。値段を吊り上げるために泳いでいる姿を見せたいらしいが、そんなことでは逆効果だろう。当然、ミュウはますます動かなくなった。

 

「全く、辛気臭いガキですね。人間様の手を煩わせているんじゃありませんよ。半端者の能無しのごときが!」

 

 それでも動かない姿に、司会の男が悪態をつく。男は長い棒を持ってくると、脚立に登って水槽の中に棒を差し込み、あろうことかミュウを突き飛ばした。ミュウのことを棒で突いて動かそうというのだ。

 

「いやっ!」

 

 男はミュウのことを何回か突く。彼女が弾かれまいと踏ん張っていたため、強引に動かすべくかなりの強さで棒を突き下ろす。当たり所によっては死ぬかもしれない一撃が迫り、ミュウはギュウと目を瞑り、衝撃に備える。

 

 だが、やってくるはずの衝撃の代わりに届いたのは……聞きたかった人の声だった。

 

「この外道が」

 

 次の瞬間、天井から舞い降りた人影が司会の男の頭を踏みつけると、足裏からジェット噴射を浴びせかけ、頭部をこんがりと焼き上げる。男は元の顔が分からない程の無残な姿で死に絶えて落下した。

 

 天井から現れた男、ハジメは水槽の傍らに降り立つとガラスを蹴りつけて一撃で粉砕する。透明な多数の破片と共に中の水が一気に流れ出し、縮こまるミュウだけが残された。

 

「お兄ちゃん!」

「ミュウ、助けに来たぞ」

 

 ハジメはびしょ濡れのミュウを抱える。彼女はまん丸の瞳を潤ませると、ハジメの首元に抱きついて嗚咽を漏らし始めた。無言で小さな背中をポンポンと叩くと、そのまま毛布で包んでやる。

 

 だが、水を差すように黒服を着た男達がハジメとミュウを取り囲んだ。その手には手斧が握られている。客席は何とかなるだろうと思っているのか、未だ逃げ出す様子はない。

 

「クソガキ、フリートホーフに手を出すとは相当頭が悪いようだな。その商品を置いていくなら、苦しまずに殺してやるぞ?」

「遺言はそれだけか?」

 

 ハジメの返しに黒服は額に青筋を浮かべ……

 

「舐めやがって!商品に傷を付けるな、ガキは殺してしまえ!」

 

 リーダー格の号令で二十人程の黒服が手斧を振りかざして向かってくる。ミュウが不安そうにハジメを見上げるが、全く恐れていない様子を見て安心し、完全に体をハジメに預けた。

 

 そこから先は蹂躙だった。ブラスターを一発撃つ毎に一人の黒服が頭部を撃ち抜かれていく。仮に接近できたとしても蹴りで迎撃され、骨を砕かれて地面に伏せることになった。

 

 やがて、立っている者はハジメだけとなる。周囲には多くの黒服が倒れており、客達は仮面を付けているにも関わらず、明らかに動揺が滲み出ていた。ハジメはそんな彼らの方を向いて睨むと……

 

「オークションは終わりだ。永遠にな」

 

 ついでに客達も色々と終わりになるだろう。実際、客の中にはそれなりの社会的地位にあるものも多かったりする。

 

「ミュウ、こんなところから出よう」

「うん……」

 

 ハジメはミュウを抱えたまま、動揺する客達の間を素通りして会場から出ていく。それと入れ替わるように盾と棍棒を持った保安署員が会場へ踏み込んできた。

 

「全員、動くな!」

「検挙しろ!」

 

 客達に為す術はない。保安署員によって一網打尽に検挙され、全員仲良くお縄につくことになった。




フレイムスローワーはメトロイドプライム1からの出典です。使い勝手が悪くてほぼ使わなかった記憶が……
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