メトロイドトータス〜鳥人族の後継者〜   作:ウエストモール

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ミュウ、弟子(見習い)になる

「ほら、とっとと歩け!」

 

 保安署員によってオークション会場から黒服や客達が引きずり出され、両手を縛られた上で鉄格子を備えた馬車に詰め込まれていく。その様子をミュウと共に眺めていたハジメの所に、ユエがやって来た。

 

「ん、お疲れ様。それで、その子がミュウ?」

「あぁ、そうだ」

「この人は誰なの?」

 

 ミュウはハジメとシアのことしか知らず、ユエに会うのは初めてだ。ハジメと親しいことは感じ取れたようだが、若干の警戒もあった。

 

「彼女はユエ。俺の娘だ……血は繋がっていないけどな」

「ハジメお兄ちゃんってパパだったの!?」

 

 ミュウは驚く。親子関係であることに驚かれるのには慣れたものだ。

 

「……ミュウ。私はユエ。一人でよく頑張った。とっても偉い」

 

 ユエは優しげな表情でハジメに抱えられたミュウの頭を撫でる。その優しい手つきと温かい雰囲気にミュウは自然と気が緩みホロホロと涙を流し始め、やがて盛大に泣き始める。

 

 ハジメと再会した時は、まだ緊迫の中にあり、きちんと泣く事ができなかった。それが、今この瞬間、完全に気が緩んで今までの辛かった気持ちを全部吐き出したのだ。

 

「ミュウ、君は強い子だ。君の勇気が多くの子供達を助けた。君のことは勇者と呼んでもいい」

 

 そして、泣き止んだのを見計らってハジメはミュウのことを褒め称える。

 

「ミュウが、勇者……?」

「あぁ、そうだ。勇者とは勇気ある者のこと。君こそ勇者に相応しい」

 

 あの勇者のことを考えると、ミュウの方が精神的な面では勇者に相応しいだろう。

 

「でも、ミュウは戦えないの」

「戦えなくてもいい。それでも何か出来ることはある」

「ミュウは強くなりたいの!ママを守れるくらいに!」

「……君にはまだ早い」

 

 ミュウはハジメの強さに圧倒されていた。そして、自分もそのように強くなりたいと思ったようだ。ハジメにもその気持ちは理解できた。

 

「どうしてなの?」

「まだ若いからな。子供には子供時代を平和に暮らす権利がある。かつての俺とは違う」

「むぅ、難しい話なの……」

 

 ハジメは子供時代を子供らしく生きることが出来なかった。そのため、ミュウに自分と同じような道を幼い頃から歩んでほしくなかったのだ。

 

「でも、大きくなったらいいの?」

「まあ、そういうことになる。それまでに気が変わることだってある。それでも望むのなら、君を鍛えてもいい」

「いいの!?今度からお兄ちゃんのことをお師匠と呼ばせてもらうの!」

「待て、それは早すぎる。まだ決まったわけでは……」

「お兄ちゃんは将来の師匠なの!だから、お師匠と呼ばせてもらうの!」

 

 ハジメはミュウに苦戦する。パイレーツやメトロイドよりも彼女の方が手強いと思わせるほどだ。やがて、ハジメは白旗を上げた。

 

「分かった分かった。将来的に君を弟子にしてやる。ただし、今はまだ見習いだ。戦いは教えられない」

「ありがとなの!」

 

 ミュウは喜ぶ。二人目の弟子(見習い)が誕生した瞬間であり、ハジメが二人の弟子を抱える師匠になることが確定した瞬間だった。

 

 その後、ハジメ達はギルドへと移動する。通された応接室ではイルワが待っており、感謝を伝えてきた。

 

「まさか、フューレンの裏世界三大組織の一つを半日で壊滅させることができたなんて、今でも夢のようだよ。君には感謝しかない」

「イルワ、それができたのはあんたの根回しがあったからだ。それより、今後の方が大変なんじゃないか?」

「そうだね。裏社会の均衡が崩れてしまったわけだし、空いた穴を巡って他の組織による新たな抗争が繰り広げられる可能性もある。そこで、お願いがあるのだが……」

 

 イルワは、他の犯罪組織を牽制するためにハジメ達の名前を使いたいということをお願いしてきた。ハジメ達を支部長お抱えの金ランク冒険者として、悪いことをすると鬼が来るぞという風に宣伝するつもりなのだ。

 

 実際、他の二つの組織が勢力を伸ばそうと画策していたようだが、イルワがハジメ達の名前を使ったことで動きが抑制され、大きな混乱が起こることはなかった。

 

 それでも裏世界の均衡が崩れたことは事実であり、フューレンの行政や保安署、冒険者達は大忙しになるだろう。

 

「それで、そのミュウ君についてだけど……」

 

 そして、話はミュウのことになる。イルワがそれを切り出した瞬間、ミュウがビクッとする。またハジメ達と引き離されるのではないかと思ったのだ。

 

「こちらで預かって、正規の手続きでエリセンに送還するか、君達に預けて依頼という形で送還してもらうか……二つの方法がある。君達はどっちがいいかな?」

「俺達に預けても大丈夫なのか?」

 

 誘拐された海人族の子を公的機関に預けなくていいのかと首を傾げるハジメだったが、イルワによると、ハジメ達が金ランクという実力者であり、今回の騒動の発端がミュウの保護だったことから、任せてもいいということになったらしい。

 

「師匠……私、絶対にこの子を守ります。だから……」

「分かっている……元からそのつもりだ。その代わり、姉弟子として手本になるように気をつけろ」

「師匠!」

「お師匠!」

 

 満面の笑みで喜びを表にするシアとミュウ。【海上の都市エリセン】に行く道中には【大火山】が存在するが、既に攻略済みなので彼女を連れて迷宮に挑むことにはならないため、問題はないだろう。

 

 イルワとの話し合いの後、宿に戻ってからミュウは女性陣の部屋に泊まることになる。妹のような存在として可愛がられ、もみくちゃにされた。

 

 ミュウが最も気に入っているのはシアであり、髪色も似ていることもあって本当の姉のように慕っていた。さながら姉妹である。

 

 ミュウによると彼女には自身が産まれる前に亡くなった姉がおり、友達にはいて自分にはいない姉という存在に憧れがあったらしい。

 

 この日、小さな仲間が一行に加わった。

 

 

 翌日、ライセン大峡谷と並行して走る街道を通過する二台のビークルがあった。一台はお馴染みのジャガーノートだが、片方は初めて見るものだ。

 

「シア、乗り心地はどうだ?」

「はい、師匠!とっても気持ちいいですぅ!」

 

 シアが乗っているのは魔力駆動二輪と言う。魔力の直接操作で操縦する近未来的なデザインのバイクであり、ハジメがご褒美としてシアに与えたものとなっている。設計者はハジメだ。

 

 今まで乗っていた六輪と異なり、体がむき出しになる乗り物であるため、風を切って走る感覚を全身で味わうことができる。シアはその感覚が気に入っており、あっという間に魔力駆動二輪の魅力に取りつかれてしまっていた。

 

「シア、そのバイクにはブースト機能がある。使ってみてくれ」

「えっと、こうですか?」

 

 シアが特定の部位に魔力を流すと、バイクが輝くオーラを纏って急加速する。エーテルアビリティを応用したものであり、攻撃性能も備わっている。

 

「凄く速いですぅ!」

「ん、轢かれたら死にそう」

 

 その後、シアはウィリーやドリフト、スライドブレーキといった様々な動きを試し続け、魔力駆動二輪を手足のように扱うようになった。

 

「お師匠、あれに乗ってみたいの!」

「それは難しいな。サイズ的にも仕組み的にもミュウでは操れない……」

「それは残念なの……」

 

 ミュウは残念がる。そもそも、ミュウの身体ではハンドルに手が届かないし、普通の亜人族なので魔力がなく、操作すら不可能なのだ。

 

「まあ、ミュウが乗れるサイズで魔力無しでも大丈夫なタイプを作ってやる」

「お師匠、ありがとなの!」

 

 ミュウは大喜びする。幼い子供が乗るものになるため、サイズは自転車くらいで安定性から三輪となり、怪我防止で専用のスーツも用意されることになるだろう。

 

「良かったな、作ってもらえるようで。ところで、俺には作ってくれないのか?」

「清水、お前は子供か。当然ながら作るが、何かリクエストは?」

「作ってくれるのかよ……できればチェーンソーを付けてほしい」

「あぁ、分かった」

 

 なお、実際に制作に取り掛かるのはエルダーや支援ユニット達である。あくまでハジメは設計のみであり、大忙しになること間違いなしである。

 

「イヴ、ホルアドまでどのくらいだ?」 

 

『一時間くらいになるかと』

 

「分かった。もう暫く頼む」

 

『了解。お任せください』

 

 次の目的地は宿場町ホルアドだ。本当なら素通りできるのだが、イルワからホルアドのギルド長に届けてほしい物があると依頼を受けているため、立ち寄ることになったのだ。

 

 ハジメは知らない。丁度、宿場町ホルアドには勇者達が滞在しており、オルクス大迷宮の攻略に挑んでいることを。そして、香織との再会が近づいていることを……

 

 

 

 

 

「ふう、ハー坊のおかげで助かったぜ……」

 

 フューレン近郊の川にて、一匹のリーマンが泳いでいた。あの時、水族館でハジメと交流したリーさんであり、約束通りに逃がしてもらえたのだ。

 

「再会するのが楽しみってもんだ……」

 

 彼は、ハジメによって逃がしてもらった時のことを思い出す。

 

“ハー坊、恩に着るぜ”

 

「だが、ここで大丈夫か?」

 

“大丈夫だ、問題ない”

 

 ハジメの持つバケツから放流され、彼は自由の身になる。水面から顔を出したまま、彼らは最後の言葉を交わした。

 

「リーさん、あんたは海に行くのか?」

 

“ああ、そうだ。故郷だからな”

 

「それなら良かった。俺達も海に行く予定なんだ。もしかしたら、また会えるかもしれない」

 

“そうか、そいつは楽しみだ!達者でな、ハー坊!”

 

 リーマンは水面下へと消え、泳ぎ去って別れる。そして、今に至るわけだ。

 

「取り敢えず、海を目指さないとな……」

 

 リーさんは川の流れに乗って故郷である海へと下っていく。かなり遠いので時間はかかるが、いつかはたどり着くだろう。こうして、彼の旅が始まった。




バイクのモチーフはメトロイドプライム4の例のマシンです。砂漠を走らせたら完全にそれになりますね
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