メトロイドトータス〜鳥人族の後継者〜   作:ウエストモール

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パイレーツは犠牲となったのだ


戦いの行方と後始末

「ギャッ!?」「グギャァ!?」

 

 戦闘開始直後、ジェネラルパイレーツに随伴している一般兵は一瞬で排除された。甲殻の隙間を狙撃するのは慣れたもので、呼吸するのと変わらない程だ。

 

 問題は本命のジェネラルパイレーツである。奴は近距離と遠距離の攻撃手段を兼ね備え、防御力も高い上にシールドまで装備している。何も考えずに突っ込めば新たな犠牲者の誕生である。

 

「キシャァァァ!!!」

 

 ジェネラルが雄叫びを上げると、肩のキャノンが動き出してプラズマの砲弾を放ってくる。それがハジメの周囲に着弾し、衝撃に襲われた。

 

「くっ……」

 

 反撃でミサイルを放てば、奴の持つシールドでガードされる。腹部の装甲は比較的薄くなっており、それを理解する頭脳はあるのか必ず防御してくるのだ。

 

(まずは、プラズマキャノンから…)

 

 弱点を狙ったところで防御されてしまっては埒が明かず、至近距離から攻撃しようにも飛び道具が邪魔なので、ハジメは狙いを肩のプラズマキャノンへと切り替える。

 

『アイスビーム、オンライン』

 

 絶えることなく攻撃は迫るが、サイドステップを挟みつつ超低温のビームを数度撃ち込み、砲撃をセンスムーブで回避した直後に最大チャージしてお見舞いしてやる。

 

パキンッ!!

 

 瞬く間にプラズマキャノンは氷に閉ざされ、使用不能となった。ハジメは、そこへ何発かミサイルを叩き込むことで完全に破壊した。後は接近戦あるのみである。

 

「キシャァァ!!」

 

 接近して早々、奴はブレードを振り下ろしてくる。人間なら簡単に真っ二つにされるような威力だが、メレーカウンターの出番だ。

 

ガキンッ!!

 

『グラップリングビーム、オンライン』

 

 ブレードを弾き返されて奴が蹌踉めいた瞬間、左手からロープ状のビームをシールドに向けて射出し、力を込めて引っ張る。

 

グッ、グググッ……!!!

 

 グラップリングビームで動きを封じ、弱点の腹部へミサイルの発射を繰り返すこと数秒。綱引きの勝者はハジメとなり、シールドを奪い取ることに成功した。

 

 奪い取ったシールドは宙を舞うとハジメの背後に深々と突き刺さり、オブジェへと早変わりだ。ハジメは最大の防御手段を失った奴へ攻撃を開始する。

 

『シーカーミサイル、オンライン』

 

 五発の小型ミサイルが炸裂し、ジェネラルを同数の小爆発が襲う。そこへミサイルの連射を行い、振るわれたブレードを蹴りつけて離脱すると……

 

『スーパーミサイル、オンライン』

 

 アームキャノンを敵に向けて最大チャージし、そこに五発のミサイルを融合させてスーパーミサイルを完成させる。これこそ、現状で最強の威力を誇る兵装である。

 

「受けてみろ」

 

 変形したアームキャノンからスーパーミサイルが吐き出され、ブースターを噴射して目標へと猛進し、勢いよく着弾すると大爆発を起こした。

 

ズガァァァンッ!!!

 

 極太の弾頭が炸裂したことで強烈な爆風が撒き散らされ、ジェネラルパイレーツはそれを一身に受けてしまう。奴の状態は酷いもので、四肢は完全に潰れて甲殻がバキバキに砕け、体液が滝のように漏れ出していた。

 

「死に損なったか……」

 

 倒れ伏しても尚、奴はハジメを視界に捉えて殺意を向けている。そこで、ハジメはとある方法で奴を終わらせることにした。

 

『グラップリングビーム、オンライン』

 

 背後にあるシールドにグラップリングビームを接続すると、身体強化を全身にかけて頭上へと放り投げる。そのまま腕を振り下ろし、ビームで繋がれたシールドを奴の頭部に叩きつけた。

 

グシャァァッ!!

 

 かなりの重量物である自らのシールドにより、ジェネラルパイレーツは頭部を叩き潰された。あの魔人族と同様の末路であり、ハジメは彼女に代わって意趣返ししたのだ。

 

 これで、全てが終わった。そんな中、ハジメの方へと駆け出す誰かがいた。

 

「ハジメくん!! ……きゃあ!?」 

 

 それは香織だ。先ほどまでフラフラしていたのも忘れて駆け出したので、地面の突起に躓いてしまい、そのまま宙に投げ出されるのだが…… 

 

「白崎さん、大丈夫か?」

「あ、ありがとう……ハジメくん」

 

 香織はハジメによって抱き止められる。彼女の心拍数が急上昇し、顔が真っ赤に染まった。

 

「遅れてすまなかった。約束通り、俺は帰ってきた」

「よかった……本当によかったよ……ハジメくんが生きていてくれて……私、あなたの生存を信じて……」 

 

 そして、香織が感極まって泣いてしまう。ハジメはパワードスーツを解除すると、嗚咽を漏らしながら涙をこぼしている彼女を抱き締め、一言囁いた。 

 

「ただいま、白崎さん……」

「おかえりなさい、ハジメくん……」

 

 二人を邪魔する者はここにはいない。斯くして、ハジメと香織の再会は成った。

 

 

 

 

 

「清水、団長の容態はどうだ?」

 

 戦いの後、ハジメ達は救護活動を開始した。真っ先に取り掛かったのは、辛うじて生きていたメルド団長の治療である。

 

「危険な状態だった。ティオさんから預かっていた秘薬がなければの話だけどな」

「彼らにとって重要な薬だと聞いている。一応、彼には色々と世話になっているから使用に異論はない」

「団長は死なせるには惜しい人だ。ティオさんも理解してくれるはず」

 

 秘薬というのは、竜人族の里のとある泉より湧き出ている特殊な水のことである。その発生源は泉の奥深くに沈む、大地を流れる魔力が千年かけて結晶化した鉱石だ。そこから湧き出る液体は神水と呼ばれ、不死の霊薬として伝説になっていた。

 

 迫害から逃れてきた竜人族を救ったのは神水である。彼らは神水を秘薬として大切に保護しており、他種族に投与することなどあり得ないことなのだが、現場の判断で使用することにしたのだ。

 

「しかし、あの魔人族は無念だったに違いない。まさか、仲間であるはずのパイレーツに殺されたのだからな」

「パイレーツが信用に値しない連中であることは確かみたいだ。この世界なんて、単なる実験場扱いらしい」

 

 元の世界と同様、パイレーツは平和に仇なす行動を繰り返している。協力関係にある魔人族すら平気で殺すような連中を野放しにはできないだろう。 

 

「ハジメくん……メルドさんはどうなったの? 見た感じ、傷が塞がっているみたいだし呼吸も安定してる。致命傷だったはずなのに……」

 

 しばらくして、魔力回復薬を貰ってクラスメイト達の回復をしていた香織が、メルドの傍に膝を突いて詳しく容態を確かめながらハジメに尋ねてきた。

 

「特別な薬を使った。飲んだだけで瀕死から回復する程の代物だそうだ」

「そんなものがあったんだね……」

「白崎さん、他の皆の容態はどうだ?」

「取り敢えず、みんな動けるようにはなったよ。雫ちゃんも回復したし、誰も死ななくてよかった……ハジメくんのおかげだね」

 

 しかし、みんな動けるようになったということは、例のあの勇者までも回復したということでもある。

 

「香織、今すぐ南雲から離れるんだ!あいつは危険な武器を持っている。近づかない方がいい!」

「ちょっと、光輝!私達は助けてもらったのよ!そんな言い方はないでしょう?」

「そうだよ、どうしてそんなことを?」

 

 光輝の物言いに雫と香織が抗議するが、彼は様々な理由を並べ立ててハジメを貶めようとしてきた。やれパイレーツと内通してるだの、やれ力に酔った危険人物だの、選り取り見取りだ。

 

「南雲は武器に頼っている!強くなったと勘違いして、力に酔いしれているに違いない!」

「武器に頼っている、だと?」

「そうだ。あんなものは力じゃない!」

 

 とんでもない言いがかりである。光輝もまた、アーティファクトの聖剣や聖鎧を装備し、チートスペックや数々の技能を駆使するというのに。

 

「南雲、勇者である俺なら正しく力を使える。だから、あの装備を全て引き渡すんだ!」

「お前は何を言っているんだ。武器に頼ろうとしているのは、お前の方じゃないのか?」

「違う!危険人物から武器を取り上げようとしているだけだ!」

 

 光輝は適当な理由を付けてハジメから装備を奪おうとする。彼はあの戦闘を見た時からハジメのパワードスーツが欲しいと思っており、隠しきれていなかった。また、香織が自分から離れていくことへの焦りもそれを増長させていた。

 

 だが、そんな光輝の頭上から大量の水が振り注いだ。水浸しになりながらゲホッゲホッと咳き込む彼に対して、冷水以上に冷ややかな声がかけられる。それはユエだった。

 

「好き勝手言わないで。お父様はあの装備を使いこなすために何年も血の滲むような努力をしてきた。貴方のようなヒヨッコに扱えるとは到底思えない」

「ヒヨッコ?俺が?」

「貴方はチートスペックのようだけど、それに使われているだけ。能力に伴う精神も備わっていなければ、敵を殺す覚悟もない。恐怖に負けて逃げた負け犬にとやかく言う資格はない」

「なっ、俺は逃げてなんて……」

 

 実は、救援に向かう途中でユエは莫大な魔力の奔流を感じていた。その正体は光輝の発動した“覇潰“だ。あの状態の光輝なら魔人族の女を討てたはずだとユエは分かっており、その後の現場の状況と合わせて光輝が人殺しを躊躇い、そのためにあの窮地を招いたのだと看破していた。彼女の言葉はそこから来ていたのだ。

 

「お前は結局、力が欲しいだけだ。だが、力があったとしても、敵の命を奪う覚悟が無ければ意味がない」

「南雲には、それがあるというのか?」

「そうだ」

「どうして、覚悟を決められるんだ……」

「使命を受け継いだからだ。彼らのためにも、俺は戦いから逃げるわけにはいかない」

 

 ハジメの様子を見て、光輝は何も言えなくなってしまった。ハジメの力を巡って勝手に一人で騒いでいた自分が惨めに思えてきたのだ。

 

「すまん、光輝。全て俺の責任だ」

「メルドさん?」

 

 そんな中、意識を取り戻していたメルド団長が光輝に謝罪した。ここまでの会話は聞いていたらしく、彼らの教育係としての責任を感じていた。

 

「どうして、メルドさんが謝るんだ?」

「当然だろ。俺は教育係にも拘らず、戦う者として大事なことを教えなかった。人を殺す覚悟だ。本当は何らかの形で人殺しを経験させるつもりだったが、交流するうちに迷いが生じた。理由を付けて先延ばしにしていたら、この事態だった……お前達を死なせそうになったのは俺のせいだ。申し訳ない……」

 

 深く頭を下げるメルドに、クラスメイト達はあたふたと慰めに入る。どうやら、光輝達についてかなり悩んでいたようだ。団長としての使命と私人としての思いの狭間で揺れていたのだろう。

 

 王国の人間である以上、彼も聖教教会の信者だ。光輝達が魔人族と戦うことは、当然だとか名誉なことだとか思いそうだが、何とも人がいいというか、優しいというか、人格者と評してもいい。

 

「ハジメ、幸利、生きていてくれて良かった。光輝達を救ってくれたこと、貴重な薬を使ってまで俺の命を救ってくれたこと、感謝している。そして、大変申し訳ない」

 

 そして、メルドはハジメと幸利に対しても謝罪する。事の経緯は香織から聞いており、二人に対して後ろめたい気持ちがあったこともあって、土下座するような勢いだった。

 

「天之河、戦争に参加する以上は覚悟を決める必要がある。俺は参加しないが、仲間や大切な人を守るためなら手を汚す覚悟はできている。お前はどうだ?」

「お、俺は……」

 

 それは、光輝に対してだけではない。この場にいる全てのクラスメイトに対する問いかけでもある。ここにいるのは戦争への参加を決めた者だけであり、敵を殺す宿命から逃れることはできないのだから。

 

 ハジメの覚悟に皆が息をのむ。彼の言葉の節々には同級生とは思えない程に重みがあり、クラスメイト達の心に深々と突き刺さっていた。そして、光輝は最後まで返す言葉が見つからなかった。 

 

 今度こそ、オルクスで起きた一連の事件は幕を降ろした。だが、帰るまでが遠足である。ハジメ達は勇者パーティを護衛しながら、迷宮の外へ戻るべく移動を開始した。

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