メトロイドトータス〜鳥人族の後継者〜   作:ウエストモール

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今回のメインは幸利vsフリードです


神代魔法の使い手

「終わったか……」

「南雲ぉ!そっちも終わったみたいだな!」

「あぁ、何とかな」

 

 二人は互いの無事を確認する。スペースパイレーツというイレギュラーとの遭遇戦であったが、ハジメ達の敵ではなかった。

 

「立ち止まってる暇はない。行くぞ」

「おうよ!」

 

 ゆっくりしてはいられないため、先へと進む二人。幸利が魔物を狩り、ときおり現れるパイレーツをハジメが蹴散らし続け、採掘も忘れずに行いつつ最後の地点までたどり着く。 

 

 その途中でミノタウロスみたいな奴にも遭遇していた。ハジメとユエが戦ったガーディアンの通常仕様であり、それでもお釣りが来るくらいの強さだったが、幸利の手で始末されている。

 

 そして、最後の試練は前と変わらない。迫り来る百体のマグマ蛇を倒すという持久戦形式だ。幸利は持てる全ての武装を使用してそれを突破し、解放者の隠れ家への道を拓いた。 

 

「よっしゃあ!これで攻略だ!」

「よくやったな、清水」

 

 これで攻略は完了したので、中央の島に存在するドームへと向かっていく二人。もう少しでたどり着くというときだった。

 

 その瞬間……

 

ズドォオオオオオオオオ!!!!

 

 頭上より極光が降り注いだ。以前、ハジメがオルクス大迷宮のガーディアンから受けて大ダメージを受けた攻撃にそっくりだが、それよりも遥かに強力な神罰の如き一撃。 

 

 狙われたのはハジメだ。ハジメは乗っていた足場ごと極光に巻き込まれ、崩壊した足場と共にそのまま落下し、マグマの海の中へと消えてしまった。

 

「南雲ぉぉぉ!!!」

 

 自身の後方にいたハジメが落下していく様を見て、絶叫する幸利。救助は間に合わず、ハジメの姿は見えなくなっている。少し焦ってしまうが、とあることを思い出して冷静さを取り戻した。

 

(いや、待てよ……南雲のパワードスーツなら即死はあり得ない。マグマに耐えられる装備もあったはず。南雲なら大丈夫だ……) 

 

 ハジメとした何気ない会話が、ハジメの無事を確信させることになった。それと同時に、無数の閃光が降り注いできた。

 

「チッ! “嵐空”!」

 

 幸利は咄嗟に風属性の中級防御魔法を発動し、圧縮された空気の壁によって防御する。魔法はあまり使ってこなかったので魔力に余裕があり、高い適性のある風属性なので守りは頑強だ。

 

 全ての閃光を受けきった後、頭上より男の声が聞こえてくる。それは、幸利にとって聞き覚えのあるものだった。

 

「ここで待ち伏せていて正解だった。鳥人族の後継者とやらも、この程度だったというわけだ……おや、誰かと思えば貴様は行方不明になった実験体ではないか」

「フリード!!」

 

 そこには、いつの間にか、そこにはおびただしい数の灰竜とそれらの竜とは比べ物にならないくらいの巨体を誇る純白の竜が飛んでおり、その白竜の背に赤髪で浅黒い肌、僅かに尖った耳を持つ魔人族の男がいた。

 

「まさか、生きていたとはな。まあいい、鳥人族の後継者に引き続き、お前の魂も神の元へと送ってやろう」

「死ぬのはお前だ。よくも俺をあんな目に遭わせてくれたな」

 

 幸利は殺意を全開にする。奴の名はフリード・バグアーといい、魔人族の将軍で幸利を改造した張本人である。

 

「私を殺せるとは思わないことだ。私は神代の力を手に入れた。故に私は、異教徒共に神罰を下す忠実なる神の使徒である。アルヴ様は私に直接語りかけて下さったのだ。“我が使徒”と!」

「この狂信者が……!」

 

 人間族がエヒトを崇めるように、魔人族はアルヴという神を崇めて人間族と対立している。なお、アルヴはエヒトの眷属なのでグルであり、受肉して魔王として君臨していたりする。

 

「狂信者?違うな、私は敬虔な神の使徒であるだけだ。我が主を侮辱するのであれば、相応の報いを受けてもらうぞ」

「やれるならやってみろ!」

 

 大火山の最深部にて、狂信者と竜人が激突する。方や異教徒を滅するため、方や自分を改造した相手に復讐するため。その力を行使する。戦いはまだ、終わらない。

 

 

 

 

 

「我が主の裁きを受けよ」

 

 フリードの命令で幾多の灰竜が顎門の砲列を敷き、小極光による斉射を行う。その場から大きく飛び退いて回避するが、乗っていた足場は破壊され、飛んだ先にも足場はない。

 

「愚かだ。わざわざ身動きのとれぬ空中へと逃れるとは。為す術なく死ぬがよい」

 

 重力に従って落下していく幸利を狙い、灰竜達が再び斉射を行う。落ちていく軌道を予測するのは容易であり、彼に閃光が迫るが……

 

「ところがどっこい」

 

 しかし、フリードの予想に反して幸利は竜翼を広げて上昇し、その下を斉射された小極光の群れが通過していく。

 

「貴様、それは竜人族の……」

 

 フリードは知らない。幸利が竜人族に拾われて彼らの血を受け入れて新生したということを。

 

「そうか、そうか……古に伝わる半端者共の秘術を受けたと……汚れた血め、その一滴に至るまで存在することを許さぬぞ!」

 

 三度目の斉射だ。今度は幸利を包囲するような陣形からの砲撃であり、確実に殲滅するつもりなのだろう。しかし、幸利は竜翼をはためかせて閃光へと突っ込んでいった。

 

「うぉぉぉぉっ!!」

 

 巧みな機動で閃光の中を突き抜け、リベリオンファングで砲撃を弾き、行く手を阻む灰竜をすれ違いざまに切り裂きつつ、包囲網を突破してフリードへと迫る。

 

「食らいやがれぇぇ!!」

 

 白竜に跨るフリードに向けて大剣を振り下ろし、真っ二つにしようとする。しかし、数頭の灰竜が奴の前に割り込むと、直後、正三角形が無数に組み合わさった赤黒い障壁が出現し、一撃を受け止めてしまった。

 

 何度も斬りつけ、ドラゴンブレスを何発か浴びせれば障壁にも亀裂が入って割れそうになるのだが、他の灰竜が射線上に入ると同じように障壁が何重にも展開されていき、思ったように突破が出来ない。

 

 よく見れば、灰竜の背中にはリクガメのような魔物が張り付いており、甲羅を赤黒く発光させて障壁を展開していた。

 

 さしずめ、あの亀は移動式のシールドジェネレーターなのだろう。その防御力の高さはさることながら、灰竜の高い機動力と組み合わさることで凶悪な性能を発揮する。

 

 ウルを襲ったものやオルクスで勇者一行を襲撃したもの、オアシスを汚染していた巨大スライムもそうだが、灰竜や障壁亀、奴の騎乗する巨大白竜も神代魔法による産物である。これら全てをフリードが創造したのだ。 

 

「私の連れている魔物が竜だけだと思ったか? この守りはそう簡単には抜けんよ。さぁ、見せてやろう。私が手にしたもう一つの力を。神代の力を!」

 

 そう言うと、フリードは極度の集中状態に入り、微動だにせずにブツブツと詠唱を唱え始めた。手には、何やら大きな布が持たれており、複雑怪奇な魔法陣が描かれているようだ。

 

 フリードがすでに大火山を攻略しているとしたら、彼の言うもう一つの神代魔法は空間魔法だろう。何を仕掛けてくるのかは分からないが、詠唱の妨害のために攻撃を続行する。

 

 しかし、灰竜達は障壁を突破されて墜落しても、後詰めがその穴を埋めて新たな障壁を展開してしまう。こちらはたった一人なので、明らかに手が足りなかった。やがて、奴の詠唱が完成してしまう。

 

「“界穿”!」

 

 魔法名が唱えられた瞬間、フリードと巨大な白竜の姿が消える。いや、実際には傍らに出現した光り輝く膜のようなものに飛び込んだだけだ。 

 

 界穿はワープゲートを生み出す空間魔法だ。かなり難易度が高く、十分に習熟した上で使用するものだ。それでも長い詠唱と複雑な魔法陣が必要なため、攻撃に晒されるような環境では本来なら使用されない。

 

 次の瞬間、幸利が気配を感じて振り向けば、目前に大口を開けた白竜とその背に乗って彼を睨むフリードの姿があった。白竜の口内には、既に膨大な熱量と魔力が臨界状態に達している。

 

「くっ、“竜魔転変………”」

 

 幸利の身体が光に包まれたのと、至近距離から極光が放たれたのは同時だ。爆発の影響で一時的に視界が劣悪となり、何も見えなくなる。

 

「どうだ、我が主の威光の前にひれ伏し……なっ!?」

 

 やがて、視界が回復するとそこには無傷な幸利の姿があった。全身が肥大化して竜鱗に覆われ、竜の要素が全身に広がっているのはウルの時と同じだが、その上から重厚な甲殻を鎧として纏っていた。

 

「少しは効いたぜ……」

「貴様、その姿は……このような芸当、私と同じく変成魔法を所持しているようだな」

「これでフェアだな」

 

 幸利が発動したのは“竜魔転変”を更に発展させ、パワーと防御に特化させた“竜魔転変・重装”である。ウルの戦いを経て竜の血が馴染み、変成魔法の技量も上がったことで余裕ができ、応用を利かせられるようになったのだ。

 

「やはり、貴様は危険だ!」

 

 灰竜の砲撃が殺到するが、重装甲となった幸利にダメージを与えることはできない。白竜の極光も発射されるも、幸利は腕を前で交差させるだけで真正面から防ぎきってしまった。

 

「今度はこっちの番だ。“竜魔転変・疾走”」

 

 幸利は重装甲を捨て、戦闘機のように無駄を省いたスリムなシルエットに変わることでスピード特化形態となる。こちらも応用を利かせた成果であり、目にも留まらぬ速さで空中機動を行って障壁を張られる前に灰竜を叩き落としていく。

 

「何という早さだ!?」

 

 フリードは素早く指示を飛ばして灰竜を周囲に集め、全方向を球状の障壁で守る。そこに突っ込んだ幸利が腕のクローで攻撃するが、破ることはできなかった。

 

 疾走ではスピード特化となる代わりにパワーが大幅に下がる。防御を掻い潜って灰竜を落とすことはできても、障壁に対しては弱い部分があった。

 

「“重装”」

 

 そこで、フリードに接近した瞬間に重装甲形態に戻り、シールドとしても機能するクローを備えた豪腕を叩きつけると、数発で障壁が砕け散った。

 

「歯を食いしばれよ?」

 

 奴の懐に飛び込んだ幸利は、フリードへとクローを振り下ろす。体を後ろに傾けたこと、重装甲形態で鈍重だったことで致命傷は免れたが、右肩から左腰にかけて鎧が切り裂かれ、肉体に複数の切創が刻まれる。そして、白竜ごと殴り飛ばされて水平に吹き飛んでいった。

 

「おのれ、まさかこの私をここまで追い込むとはな……致し方ない、ここは一度引かせてもらうぞ」

 

 フリードは落下しながらも付近にいた灰竜に拾われ、不利を悟ったのか攻略の証を掲げて外へのショートカットを開く。白竜の背に乗り、生き残りの灰竜を引き連れて撤退した。

 

「流石だったぞ、清水」

 

 そして、振り返ってみればパワードスーツを紫色に変色させたハジメが浮遊している。

 

「南雲、見てたなら手伝ってくれよ」

「悪い、清水の力を見たいと思った」

 

 ハジメはグラビティ機能によりマグマとの接触に耐え、潜伏して幸利とフリードの戦いを見ていた。

 

「一先ず、戦いは終わったか……」

「しかし、奇襲されたときはビビったぜ。南雲がいきなりやられたからな……」

「あの時は気配を全く感じなかった。空間魔法で空間を歪めて潜んでいたのかもしれないな」

 

 この戦いにおいて、ハジメ達は空間魔法の脅威を改めて知った。そして、対抗できるのは基本的に空間魔法のみであり、対抗すべく新たな使い手が誕生しようとしていた。それは、幸利である 

 

「これが、空間魔法……」

 

 魔法陣によって記憶を読み取られ、パイレーツというイレギュラーはあったものの、幸利は攻略を認められ、脳に知識を刻まれた。 

 

「では、アンカジに戻るとしよう。帰りはスターシップだ。上空に呼んである」

 

 今度はハジメが攻略の証を掲げ、外へのショートカットを開く。あの時と同じようにスターシップが降りてきたので、それに乗り込んで離脱した。

 

 

「どうやら、無事に戻ったようじゃな」

 

 アンカジ近郊にスターシップを着陸させると、そこでは見知った人物が待っていた。

 

「姐さん、どうしてここに?」

「俺達の前に現れたということは、何か進展でも?」

 

 それはティオだ。しばらく離脱していた彼女が再び現れたのには、とある理由があった。

 

「妾は先日、神代魔法の一つである重力魔法を会得し、解放者ミレディ・ライセン、賢者エルダーバードと会談を行った」

「どのような話を?」

 

 そして、ティオは告げる。

 

「新たな解放者の結成じゃ。妾はノクサスと共に密かに計画していたのだが、彼らの力を借りる必要を感じておった」

「なるほど。複数の種族をまとめるには必要な人材だな」

 

 ティオの計画では、ハジメとユエ、シア、幸利、ノクサス、彼女自身を代表として新生・解放者の幹部に据え、お目付け役をミレディとエルダーが務める。傘下には竜人族と反魔王派、フェアベルゲンが入り、戦力や技術の面でサポートしてくれるだろう。

 

「そういえば、そなたの伴侶が待っておったぞ」

「すぐに行く。急ぎ薬の原料を届ける必要もあるからな」

 

 宝物庫を持ったハジメはスターシップを帰らせると医療院へと早足で向かう。この場に残されたのはティオと幸利だけだ。

 

「ここまでの定期報告、ご苦労であった。ところで、そなたが思いを寄せていたという女子とはどこまで進展したのじゃ?手は繋いだのかえ?」

「一応、キスまでは……」

「そ、そのようなことまで!?」

 

 キスをしたと聞き、ティオは顔を真っ赤にしてしまう。そして、幸利に詰め寄って根掘り葉掘り事の詳細を尋ねてきた。

 

(あ、この人……意外にも乙女だ……)

 

 ティオによる尋問はしばらく続いた。




今回の幸利の強化は、オーバーガヴとマスターガヴの切り替えみたいな感じです
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