メトロイドトータス〜鳥人族の後継者〜   作:ウエストモール

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高評価いただきありがとうございます。おかげさまで一時的ではありますが作品がランキングに載りました!


王都侵攻

「では、この後の行動を再確認しよう」

 

 数時間後、ハジメ達は王都近郊にある王族専用の抜け穴の出口に来ていた。すでに作戦の概要は分かっているが、念のため再確認である。

 

「まず、俺はティオさんと共に先生の救出に向かい、救出後は神山に隠された神代魔法を確保する」

 

 先生救出担当はハジメとティオだ。真の神の使徒と戦闘になることがほぼ確実であり、戦闘能力の高い二人が選ばれた。

 

「雫ちゃん達を保護するのは私達の役目だね」

「戦闘になれば俺の出番というわけだ」

 

 地球組を保護する担当は香織と恵里、優花、リリアーナ、幸利、浩介だ。香織であれば回復魔法があるし、リリアーナは結界魔法が得意なので保護に向いている。幸利は護衛であり、雫を助けたい思惑もあった。

 

「園部さんにはパワードスーツを渡してある。投術士の戦いに特化したカスタムをしているから、思う存分使ってくれ」

「うん、頑張ってみる」

 

 また、ハジメは優花にパワードスーツを贈っていた。ハウリアのものを彼女専用にカスタムしており、武装も投術士用となっている。

 

 なお、香織よりも先に装備を渡したことで焼き餅を焼かれたが、香織専用のパワードスーツを開発している途中なので、それで穴埋めする予定だ。

 

「ん、私はシアやノクサスと一緒に魔人族の軍勢に備える。作戦が終わるまでお父様やお母様に手出しはさせない」

 

 王都の外周部にはユエとシア、ノクサスが潜伏し、魔人族による侵攻に備える役目を担う。王都侵攻はほぼ確実であり、王都を守る大結界があるものの、例の白竜の存在を考えると破られる可能性もあるのだ。

 

 まるで王国側についたような行動だが、あくまでも救出作戦を妨害させないためであり、連中を何かの拍子に壊滅させたとしても事故のようなものだろう。

 

「王族の救出にはハウリア族が向かってくれる。聞いたところ、光学迷彩を装備した精鋭を派遣しているそうだ」

「え?私の家族も来るんですか?」

 

 今回の作戦にはハウリア族も関与している。ハジメのスターシップで王都の付近まで来ており、新装備を携えて潜入済みである。

 

「犠牲者を限りなく減らし、再びここに集まる。それが最重要事項だ。異論はないな?」

 

 誰にも、異論はなかった。

 

 

 

 

 

 夜陰に紛れ、隠し通路を進む人影が六つ。香織と恵里、優花、リリアーナ、幸利、浩介であり、彼らは何処かの客室へと出てきた。

 

 その一人、優花の姿はパワードスーツに包まれている。ハウリアのスーツをベースにしながらも、忍者のような意匠のパワードスーツだ。バイザーはV字になっており、ヒロイックなデザインになっている。

 

 右腕には某キャプテンのように円形のシールドが装備されており、アザンチウムを強化した特殊合金で構成される頑丈な盾であるとともに、外周に仕込まれたチェーンソーにより投擲武器として凶悪さを発揮する。

 

 腰回りにはスカートのようにブレード状のアーマーが装備されており、取り外して白兵戦に使用したり、単に投擲するだけではなく三つを組み合わることで手裏剣のようにもなる。シールド共々重力魔法が付与されているので、飛距離は無限といってもいいだろう。

 

「この時間なら、皆さん自室で就寝中でしょう。……取り敢えず、雫の部屋に向かおうと思います」

 

 闇に包まれた客室にて、リリアーナが声を潜める。向かう先は雫の部屋であり、下手に騒動を起こして愛子の身柄を移送されてしまっても困るので、隠密行動だ。

 

 リリアーナに従い、幸利と浩介が斥候として先に部屋を出る。雫達がいる棟は今いる場所とは別の棟であるため、そこへと続く月明かりが差し込む廊下を小走りで進む。

 

 そうして、しばらく進むとそれは起こった。

 

ズドォオオン!!

 

パキャァアアン!!

 

 砲撃を受けたかのような轟音が響き渡り、直後にガラスが粉砕された時に近い破砕音が王都を駆け抜けたのだ。

 

「これはっ……まさか!?」

 

 リリアーナには思い当たりがあった。最悪のケースが脳裏をよぎり、顔面を蒼白にして窓に駆け寄ると、そこから落ちそうな程に身を乗り出して、その方向を凝視する。

 

「そんな……大結界が……砕かれた?」

 

 王都には三枚の巨大障壁が常に展開されている。その強度は折り紙付きで、長年に渡り魔人族の侵攻を防いできた歴史がある。人間族が今も存続し、一応だが戦況が互角に落ち着いているのは大結界のお陰だ。

 

 しかし、その守護神も目の前で粉々である。キラキラと輝く無数の粒子となって夜空で舞い散り、霧散していく光景が広がっていた。

 

「第二結界も……どうして……こんなに脆くなっているのです? これでは、直ぐに……」

 

 二つ目の結界も悲鳴を上げていて、破られるのも時間の問題だ。一枚目が破られた時の音で目が覚めたのか王宮が騒がしくなり、あちこちで明かりが灯されている。

 

「まさか、内通者が? ……でも、僅かな手勢ではむしろ……なら敵軍が? 一体どうやって……」

 

 リリアーナが思考を巡らせる中、その答えは別働隊からもたらされた。

 

『こちらノクサス。王都の南方一キロメートルの複数地点に転移ゲート及び魔人族と魔物の大軍を確認した。予想通りだ』

 

『ん、報告のあった白竜もいた。あれのブレスで結界が破壊されたみたい』

 

『でも、フリードとかいう魔人族の姿は見えないですぅ』

 

「まさか本当に敵軍が? そんな、一体どうやってこんなところまで……」

「リリアーナ王女、魔人族の将軍フリードは空間を司る魔法を操る。俺は一度奴と戦ったが、かなり厄介な魔法だ。それで軍を転移させたんだろう」

 

 幸利はフリードと交戦しただけではなく、自分自身も空間魔法を保有しているので、その脅威をよく知っていた。

 

「そんな、それでは……もはや距離や砦すら関係ないということではありませんか?」

 

『ただ、転移してきた地点には密かに巨大な魔法陣が作られていた。事前に転移先での準備が必要なこと……それだけが救いといったところだ』

 

 もはや、距離すらも無視して敵軍が転移してきてしまい、王都までの道中に築いた砦すら無意味となる現実。真正面の戦いだけではなく工作員すら警戒しなければならなくなり、戦争は変わってしまった。

 

 そうこうしているうちに、再びガラスが砕けるような音が響き渡った。第二の大結界までもが破られたのだ。残るは一枚のみであり、時間の問題だろう。

 

『ん、フリードとかいう奴が出てきたら、ひたすらにボコる。お父様に奇襲を仕掛けたのは許さない』

 

「ユエちゃん、程々にね?」

 

『ん、それでも半殺しにはする』

 

 ユエはフリードに対する殺意がマシマシである。フリードに会ったことはないが、ハジメに不意打ちを仕掛けたことにかなりご立腹だった。

 

『リリアーナ王女、我らはこれより魔人族と交戦する。だが、王国に加勢したわけではないことを忘れぬように』

 

「それは心得ています、ノクサス様。むしろ、母上と弟の救出に手を貸していただけて感謝に堪えません」

 

『私、この戦いが終わったらハジメさんとカオリさんとイチャイチャするですぅ』

 

「シアちゃん、その発言は……」

「おい待て、それは死亡フラグだぞ」

 

 それは、死地に赴く前に言ってはいけない言葉である。シアはいきなり死亡フラグを建ててしまった。それが回収されないことを祈るばかりだ。

 

「では、俺達はこちらの任務をやろう」

 

 しばらくして、リリアーナ達は雫達のいる別棟へと突入する。しかし、各部屋はもぬけの殻であり、クラスメイト達はどこにもいなかった。

 

「妙子、奈々、どこにいるの?」

「おかしいですね……通常なら就寝している時間帯のはずです。あの轟音で起きたとしても、部屋を去るまでが早すぎます」

「ということは、その前に雫ちゃん達は呼び出されたのかも。でも、居残りのみんなまでいないのは不自然だよ」

 

 香織は知っていた。勇者一行が何かしらの用事で呼び出される際、期待値の低い居残り組の存在は無視されていたことを。彼らは文字通りの居残り組なのだ。

 

「そういえば、裏では貴族の令嬢から使用人に至るまで居残り組のことを“穀潰し”と言っていたのを聞いたよ。僕達を召喚したくせに酷い話だよ」

「俺なんて影が薄いから至近距離でその話を聞いてたよ……」

「それは……返す言葉もありません……こちらの事情で呼び出したというのに、このような仕打ち……謝罪いたします」

 

 リリアーナは頭を下げる。居残り組に対する王国側の対応は彼女も知っていたが、自分だけではどうしようもない現状に申し訳ないと思っていた。

 

「リリィは何も悪くないよ。これから変えていけばいいからさ」

「すいません、カオリ……」

 

 戦いを拒否した居残り組は、何らかの後方作業に従事するなどしているが、リリアーナも知っているとおり王国からの風当たりは強い。そんな彼らまで呼び出されたとしたら、普通ではないことが起こっている証拠だった。

 

「でも、どうしよう……もしも、黒幕が仕掛けた罠だったら……雫ちゃんが危ないかも」

「そうだったらヤバいな……八重樫さん、無事でいてくれよ?」

「皆さんは王宮内の広場にいるかもしれません。全員が集まるならそこですし、出動前の集合場所ですから」

 

 リリアーナ達は王宮の別棟から、王宮内にある広場へと移動しようとする。しかし、別棟の窓を突き破って突入してきた者達がいた。それは……

 

「おいおい、パイレーツかよ!?」

「あれが、光輝さん達が戦ったという……」

 

 パイレーツは神出鬼没である。奴らは現れてほしくないタイミングで妨害してくるのだ。今回の事態にも一枚噛んでいるのだろう。

 

 両者は睨み合いとなり、一触即発だ。リリアーナが全員を囲む結界を咄嗟に張ったことで、一先ずは安全が確保されている。

 

「やはり、八重樫さんに危険が迫っているかもしれないな……これじゃ突破できても時間がかかるぞ……」

「なら、ここは私に任せたら?」

 

 優花が名乗りを上げた。彼女は一人でパイレーツの相手を引き受けようというのだ。

 

「園部、そいつはキツくないか?パワードスーツがあっても危険だ」

「私は南雲に助けられた。今度は私が恩返しする番だから……それに、清水は八重樫さんを助けたいんでしょ?」

「なら、僕も残るよ。優花ちゃんを一人残すわけにはいかないし、恩を返したいのは同じだからね」

「フッ、我が同胞のために力を貸そう。深淵からの使者……アビスゲートの深淵より深き闇の力、お見せしようではないか」

 

 そして、優花と恵里、浩介がここに残って戦い、足止めすることになった。一般パイレーツ程度なら彼らでも何とかなるだろう。

 

「皆さんの献身に感謝します」

「恵里ちゃん、優花ちゃん、気を付けてね」

「遠藤……悪いな」

「行け、我が友よ」

 

 次の瞬間、結界が解除されて双方が逆方向に動き出す。幸利が二挺拳銃の連射で包囲網を破り、香織とリリアーナを連れて突破したのを見届け、彼らはパイレーツとの戦いに突入した。

 

(南雲……力を貸して……!)

 

 優花はシールドをパイレーツに向けて投擲する。チェーンソーが唸りを上げて室内の調度品を切り裂いて進み、奴らを真っ二つにしていく。

 

 数体を血祭りに上げたシールドは再び戻ってくると、右腕のアーマーにピッタリとくっついて元の位置に収まる。アーマーに固定する技術はグラップリングビームの応用である。

 

 さらには腰回りのアーマーを全て取り外すと周囲に浮かばせ、ファンネルのように操ってパイレーツを襲わせる。それはさながら、狩りを行う肉食獣の群れだ。

 

「さあ、見るがいい!我が深淵の舞踏を!」

 

 浩介は狭い室内にて壁を駆け、天井すら利用して縦横無尽に動き回ってビームを回避し、奴らを翻弄する。パイレーツに急接近するとアサシンブレードで急所を狙って何度も刺突を繰り出し、終いには手にした小太刀で斬首していた。

 

 この小太刀はハジメ製だ。幸利と一緒に趣味で作ったものなのだが、振動刃になっていたり、パワードスーツを応用したエネルギー吸収能力が搭載されていたり、冷熱ハンド的な機能があったりと、技術と資源の無駄使いな問題作でもある。

 

「氷結の刃よ!ここに吹雪を!」

 

 小太刀に冷気が纏われる。それを一閃すれば室内に吹雪が巻き起こり、パイレーツ達は凍結する。そこへ華麗なステップで踏み込んだ浩介は、時折スタイリッシュで無駄な動きを挟みつつも氷像を斬り捨てていった。

 

「二人とも、よくやってるね。僕も負けていられないよ」

 

 一方、恵里は複数体の亡霊を同時に制御して戦闘を組み立てている。大盾を持った騎士達を前面に押し出してパイレーツの攻撃を防ぎ、黒猫の触手攻撃で反撃していた。

 

 そこに天井へ張り付いていたパイレーツが飛び降りて奇襲を仕掛けてくるが、別方向から飛来したシールドで真っ二つになり、目論見は阻止される。

 

「助かるよ、優花ちゃん。でも、後ろから来てるよ」

 

 今度は黒猫の触手が優花の方へと放たれ、彼女の背後にいるパイレーツを貫いて始末する。お互いにカバーに入ることで彼らは戦いを優位に進めた。

 

(南雲、先生のことをお願い……)

 

 そんなことを思いつつも、優花は手にしたブレードでパイレーツを串刺しにし、シールドで撲殺するのであった。

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