メトロイドトータス〜鳥人族の後継者〜   作:ウエストモール

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戦いは一番のクライマックスに入っていきます


悍ましき結末

 幸利不在の中、広場での戦いは困難を極めた。襲い来る傀儡騎士の多くは顔見知りであり、そこに友人であった元クラスメイトも加わったことで攻撃を渋ってしまうのだ。そもそも、戦える者が多くない。居残り組は怯えて動けず、戦えたとしても魔力封じの枷で能力が制限されている者もいる。

 

 チートスペックを強化された元クラスメイトに対しては抑え込むので精一杯であり、相当な数の騎士や兵士が殺されたのか、傀儡騎士は無尽蔵に湧いてくる始末。中途半端な攻撃では再び起き上がってくるため、枷を外す暇もなく純粋な身体能力のみで戦わなければならない。

 

 まともに戦えるのは枷のない雫と香織くらいだ。龍太郎や重吾といった前衛ならまだしも、後衛に至っては魔法が使えないので戦力外。居残り組は尚更だ。

 

 この場で最高戦力の光輝に至っては、檜山の傀儡と化したメルド団長に釘付けにされている。相手が相手だけに光輝も攻撃を渋る状態にあり、仲間の救援には向かえないだろう。

 

「いいのか、天之河?すぐにこいつを始末しねえと仲間が危ないぜ?」

「メルドさんを……こいつって言うんじゃない!!」

 

 光輝は怒気を強めながら、聖剣で受け止めていたメルドの剣を押し戻し、逆に弾き飛ばす。メルドが蹌踉めいたので反撃に転じるべきところだが、様々なことを教えてくれた師匠に対して攻撃できなかった。

 

「檜山!どうしてこんなことをするんだ!?」

「そんなの決まってんだろうが。南雲の野郎をぶっ殺すためだよ。アイツがここに来た時、顔見知りやクラスメイト全員が俺の傀儡だったらどう思うだろうなぁ?」

「ふざけるな!お前なんかのためにメルドさんを利用されてたまるか!」

「なら、倒してみせろよ。この腰抜け勇者がよぉ!?」

 

 檜山との問答の間にもメルド団長の王国最強クラスの剣技が牙を剥く。フェイゾンで強化されているために一撃一撃が重く、凌ぐのがやっとだ。

 

「俺は……腰抜けじゃない!やってやる!」

 

 光輝から光の奔流が立ち昇る。“限界突破”の最終派生であり、全ステータスを五倍に引き上げる技能、“覇潰"の発動だ。一気に攻勢に出た光輝はメルドを確実に追い詰め、トドメを刺そうとしたが……

 

「コウキ……なぜ、俺に剣を向ける…俺は、こんなこと、教えてはいないぞ…」

「なっ……メルドさん、俺は……」

 

 メルド団長は既に死んでいる。そんなことは分かっているはずだった。でも、まるで生きているかのように振る舞われたことで迷いが生じてしまった。まさに優柔不断だった。

 

「はっ!?」

 

 それは致命の隙だ。気づけばメルドの鋭い剣撃が唐竹に迫り、頭を叩き割ろうとする。咄嗟にその一撃を聖剣で受けるが、光輝の骨が悲鳴を上げ、足元に亀裂が走った。

 

「違う……メルドさんは……!」

 

 人殺しへの忌避感が邪魔をするも、光輝は“覇潰”によって上昇したステータスによってメルドを追い詰め、騎士剣を弾き飛ばす。一気に距離を詰め、首を刎ねようとした。

 

「……助けてくれ……コウキ」

「っ!?」

 

 だが、傀儡と化したメルドは光輝のことを惑わせる。首を刎ねる直前で聖剣が止まり、足元の騎士剣が足で跳ね上げられ、光輝と切り結んだ。光輝に先程のような勢いはなく、防戦一方といったところ。

 

「ッ!?ガハッ!?」

 

 メルドの技を凌ぐ中で、ついに“覇潰”のタイムリミットが来る。重い倦怠感で動きが鈍り、メルドの剣撃を鎧で守られていない部分に受けてしまった。そして、彼は蹴り飛ばされて地面をゴロゴロと転がされる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 傷口が痛み、血が滲んでくる。倦怠感から動くことはできず、上半身は起こせても膝を着いたままだ。そこへ、剣を構えたメルドが一歩ずつ接近してくる。それは、死神の足音だった。

 

「メルド団長、やっちまえ!」

 

(違う……!あんなのはメルドさんじゃない!)

 

 光輝はメルドの目を見る。感情の一欠片もないような冷たい瞳で、目の前の相手を殺すことだけを考えている機械のような血も涙もない冷酷な視線だ。

 

(そうだ……あれはメルドさんじゃない。メルドさんの形をしたもの……いや、魔物なんだ!)

 

 光輝はメルドを魔物だと思うことにした。正真正銘の彼で間違いないのだが、こうでもしなくては倒す覚悟を決められなかった。

 

 自らに暗示をかけた光輝は身体に鞭打ち、火事場の馬鹿力で無理やり起き上がる。そのまま、聖剣を構えると……

 

「うぉぉぉぉぉ! 万翔羽ばたき、天へと至れ “天翔閃”!!!」

 

 迷いを振り切るように叫ぶと、詠唱と共に振り下ろした聖剣から三日月状の光刃が飛び、メルド団長の肉体を斜めに切り裂く。

 

 それは完全に彼の肉体を貫通しており、直後に騎士鎧ごと上半身がズルリと滑り落ちる。真っ二つにされたことでメルドは活動を停止し、二度と動くことはなかった。

 

「あ〜あ、やっちまったな天之河?まさか、メルド団長を真っ二つにしちまうとはなぁ?」

「お、俺は……メルドさんを……」

 

 暗示はここまでだ。敬愛するメルド団長を火力のある天翔閃で真っ二つに切り裂き、無惨な状態にしてしまった事実が時間差でやって来た。

 

「うっ、う、うわぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

 光輝は絶叫し、その場にへたり込む。自分への恐怖と怒り、悲しみや後悔といった負の感情が一気に押し寄せて、彼は絶望から動けなくなってしまった。

 

 メルドを倒すことはできたが、結果的には本末転倒だ。光輝が戦力外になったことで仲間の救援に行くことが不可能なのだから。こうしている間にも、仲間達は徐々に追い詰められていった。

 

「出てこい、南雲ハジメ!!早くしねえと愛しの白崎も俺の傀儡にしちまうぞ!」

 

 檜山はハジメとの対決を望んでいた。クラスメイト達が追い詰められている姿を眺めながら、宿敵と勝手に認定している相手の名を挑発も交えながら叫ぶ。

 

「俺はここだ、檜山」

「は?」

 

 それに対する返事は早かった。広場に明瞭な声が響き、空中にいる檜山にチャージビームがプレゼントされる。奴は感電すると同時に凍結し、無様にも地面に叩きつけられて一時的に戦闘不能となった。

 

 そして、檜山の傀儡軍団とクラスメイト達の間に声の主が着地する。白銀のパワードスーツを纏った若き戦士、ハジメ・ナグモである。

 

「ハジメくん!」

「待たせたな、香織。先生は助けてあるが、これはどのような状況だ?」

「私もあまり理解できていないけれど、死体をフェイゾン?で操っているみたい」

「なるほど、檜山の奴……随分と悪趣味なことを……クラスメイトまで手にかけたか」

 

『スキャニング完了』

 

『生命反応の消失を確認。死因は心臓の破裂です。後天的にフェイゾンを注入されており、脳や神経系、筋肉に浸透したフェイゾンにより擬似的に生かされています』

 

 様子のおかしい騎士やクラスメイト達を一通りスキャンしたことで、ハジメはそれが正しいことを知る。ソウルバイザーで見ても魂の存在を確認できず、間違いなく死んでいた。

 

「殺された上、死体を利用されて尊厳を奪われるとは……すぐに解放してやる」

 

 ハジメはバイザーの下で傀儡達を哀れむような目で見る。もはや彼らを救うことは不可能で、ハジメにはどうすることもできないのだ。

 

 願わくば、来世は幸せな人生を送ってほしい。彼らを倒すしかないことを内心で謝罪しつつ、ハジメはアームキャノンを向ける。そんなハジメの思いなど知ってか知らずか、傀儡軍団は襲いかかってきた。

 

 真っ先に突撃してきた近藤の突き出す高速の槍を掴み、動きを封じるとアームキャノンで胸を撃ち抜く。一撃で風穴が穿たれ、彼は崩れ落ちた。

 

「悪く思うな、近藤」

 

 そこに傀儡と化したクラスメイト達が続くが、ハジメの早撃ちが炸裂。近藤と同様に風穴が開く結果に終わる。

 

『ビームバースト、オンライン』

 

 ここから先は時間短縮だ。マシンガンの如く放たれるビームの嵐で薙ぎ払い、騎士や兵士その他多数を蜂の巣にしていく。圧倒的な火力の前に敵うはずがなく、檜山の傀儡軍団は一瞬で壊滅した。

 

「畜生が……よくもやりやがったな……南雲ハジメ……!!」

 

 やがて、檜山が起き上がってきた。まるで二日酔いの人のように頭を抑え、ふらつきながらも再び浮遊すると、猛スピードで突進してきた。

 

「野郎、ぶっ殺してやる!」

「くっ!?」

「ハジメくん!」

 

 ハジメは押し出され、いつの間にか背後に現れていた光の膜に突っ込んで檜山諸共消えてしまう。その行方を香織が心配していると、王宮敷地内のどこかから耳をつんざくような爆発音が聞こえてきた。

 

………ズガァァァンッ!!!!

 

「爆発が聞こえるってことは、多分ハジメくんは無事だね……」

「香織、どんな生存確認をしているの……そういえば、清水くんは大丈夫かしら……?」

 

 香織によるハジメの生存確認に雫はドン引きするのだが、ふと彼女は幸利の安否が気になった。金ピカに光る敵によって引き離されてから、一度も姿を見ていないのだ。

 

「八重樫さん……俺は……無事だ……」

 

 すると、広場に転がり込んでくるボロボロの人間がいた。清水幸利その人である。額から血を流し、赤いロングコートはズタズタになり、身体を引き摺るように雫の側へ行こうとするが、そのまま倒れてしまった。

 

「清水くん!?大丈夫!?しっかりしなさい!」

 

 慌てて駆け寄った雫は取り乱してしまうが、そんな彼女に対して幸利のサムズアップが掲げられる。雫は安堵し、その場にへたれこむのであった。

 

 

 

 

 

「へへへっ、これで二人きりだ。俺達の戦いを邪魔する奴はいねえ。さあ、殺し合いをしようぜ?」

「殺し合い?違うな、お前が死ぬだけだ。報いは受けてもらうぞ」

 

 ハジメが転移した先は王宮の練兵場だった。騎士も兵士も多くが殺されているので無人であり、二体のパワードスーツのみが向かい合う決戦場となった。

 

 檜山を見るハジメの目はいたって冷徹だった。奴に対する怒りだとか殺意だとか、そんなものは既に通り越しており、単に駆除する対象としか見ていない。ハジメは冷静に奴を殺す方法だけを思案していた。

 

「檜山、お前はあまりにもフェイゾン汚染が進み過ぎている。生かしておけば、最悪の汚染源となる。お前に次はない」

「南雲……あの時以来、俺はてめえをぶっ殺すことだけを考えてきた!フェイゾンの青き清浄なる輝きの下、この世の全てを手に入れてやらぁ!!」

 

 体内のフェイゾン濃度が高まった影響で、檜山の思考はフェイゾンの持つ増殖しようとする意思に引っ張られつつあり、奴の肉体やパワードスーツは汚染を広めるための方舟として利用されていた。

 

 ここで、檜山を何としても仕留めなければハジメのミッションは失敗だ。トータスは最終的にフェイゾン汚染により破滅の道を歩むだろう。もう二度と、奴を逃がしてやるつもりは微塵もない。

 

『スーパーミサイル、オンライン』

 

 故に、ハジメの繰り出した初手はミサイル系統の最大火力だ。ここが王宮だろうが関係はなく、檜山を仕留めることが最優先なのだから。

 

 発射されたスーパーミサイルは檜山に向けて一直線に突き進むが、奴の両肩のフェイゾン結晶が輝いてバリアが展開され、そこに着弾した。

 

ズガァァァンッ!!!!

 

 大爆発が巻き起こり、爆音が王宮全体に響き渡る。煙が晴れると、練兵場の地面が円形に抉り取られ、防壁が完全に崩落。その中心に無傷の檜山がいた。

 

「おいおい、容赦ねえなぁ?」

 

 檜山は浮遊すると、再び結晶を輝かせる。奴の姿が掻き消え、ハジメの目前に出現すると、青いフェイゾンエネルギーの奔流を右腕に集束させてブレードにし、叩き斬ろうとしてくる。

 

 檜山の動きは以前よりも早くなっており、ハジメの反応が僅かに遅れる。

 

「短距離ワープか」

 

 檜山はフェイゾン濃度の上昇に伴い、様々な能力を身に着けている。その一つが空間跳躍能力であり、単体で短距離ワープしたりワープゲートを形成するなど、部分的に空間魔法に匹敵していた。

 

 ハジメは振るわれたブレードをギリギリで避けるが、そこから漏れ出ているフェイゾンに接触してしまい、その強力な毒性によりダメージを受けてしまう。

 

「くっ……」

 

(フェイゾン……なんという毒性だ……)

 

 ハジメに休んでいる余裕はない。一撃目を避けられた檜山が背後にワープしてきて、二撃目を繰り出す。今度はモーフボールで急速に距離を取り、毒性の影響は回避した。

 

『フラッシュシフト、オンライン』

 

 檜山は何度もハジメの目前にワープしてフェイゾンブレードを振り回すが、三連続でフラッシュシフトによる高速移動で逃げられ、射程を把握されたことで一つも当たることはなかった。

 

「こいつ……避けるんじゃねぇ!」

「好き好んで当たる奴があるか」

 

 ブレードを振り下ろした後隙にアームキャノンで殴りつけ、その勢いを利用して後方回し蹴りを繰り出す。クリーンヒットしたかのように見えたが、奴が飛び退いたことでダメージはあまりない。

 

「南雲、死ねぇ!!」

 

 後方に飛び退きながら浮遊し、檜山はハジメから大きく距離を取ると周囲に複数の青い炎の槍を出現させて放ってきた。フェイゾンによる強化が施されたそれは、バリアスーツの防御も穿つことができるだろう。

 

『エーテルバイザー、オンライン』

 

 しかし、大元が魔法であることは変わらない。エーテルバイザーに変更すれば魔力の流れが見える特殊な視界となり、魔法の核を確認すると精密射撃を実施する。

 

「ふっ!」

 

 槍の中心にある核を正確かつ素早い射撃で撃ち抜いていけば、その実体を保てなくなった槍は瞬く間に霧散する。ハジメに届いたものは一つもなかった。

 

「お返しだ」

 

『プラズマビーム、オンライン』

 

 アームキャノンの砲口が緑色に妖しく輝き、集束されたプラズマエネルギーがチャージにより増幅され、最大の威力を誇る一撃が目標へ向けて飛び出す。

 

「そんなもの効くかよ!」

 

 檜山はスーパーミサイルをも防いだバリアを再び展開し、プラズマビームも同様に無効化しようとする。しかし、その守りは一撃で貫かれてしまい、奴は被弾してしまった。

 

「ぐあぁぁっ!?」

 

 プラズマビームの直撃をもらった檜山は吹き飛ばされ、あまりの激痛に浮遊することもできずに瓦礫の山に突っ込む。

 

「クソッ……痛えじゃねえか……うっ、うう……何なんだよ……」

 

 チャージプラズマビームにより檜山の胸部は抉られていた。アーマーを貫通して肉体に達している状態である。それを受けても身体がバラバラになったり蒸発しなかったのは、フェイゾンにより規格外の存在になったことの証明だろう。

 

「プラズマビームを受けても立ち上がるか……」

「南雲……!よくもやりやがったな!!」

 

 胸に穴が穿たれている状態にも関わらず、檜山は立ち上がってきた。そして、奴が激昂すると胸の穴が青白い光で満たされ、次の瞬間には塞がっていた。

 

「フェイゾンで修復した……?」

「どうだ、南雲!俺の傷はフェイゾンの輝きさえあれば塞がるんだ!テメエに勝ち目はねえ!!」

「お前はもはや人間ではない。単なるフェイゾンの器に過ぎない存在だ。やはり、お前は操り人形のままで進歩していないな」

「また俺を馬鹿にしやがって……!」

 

 ハジメは檜山を煽っている間にスキャンを実行する。すると、無限に再生するのではないかと思われた奴にも弱点があることが判明した。

 

『再生部位の脆弱性を確認。また、再生能力や一部能力の使用には両肩のフェイゾン結晶が密接に関係しているようです』

 

「檜山、俺には勝ち目がないと言ったな?なら、すぐにでも俺を殺してみせろ。そうか、できないのか?」

「野郎……ぶっ殺してやる!!」

 

 ハジメの煽りに怒り、我を忘れた檜山は距離を詰めて我武者羅にフェイゾンブレードを振り回してくる。それを飛び越えて避け、上下逆さまの世界でチャージビームを放つ。その狙いは、片方のフェイゾン結晶だ。

 

「ぐぅっ!?」

 

 頭上からの一撃で結晶が砕け散り、痛覚は通っているらしく檜山が苦悶の声を漏らす。さらに、三メートル近くある奴の身体に着地すると、アームキャノンをもう片方にも押し付け……

 

ドガァァ!!!

 

 ハジメは至近距離からチャージビームの威力を解放し、もう片方のフェイゾン結晶も破壊する。離脱して檜山の姿を見てみれば、奴の両肩はスリムになっていた。

 

「クソッ……だがな、俺にはフェイゾンの加護が……な、何!?再生しないだとぉ!?」

「お前は自分の能力も把握していないのか。お前の弱点は両肩の結晶だ。それを破壊すれば、お前は再生することもバリアを張ることすらできない」

「クソが!全部お前のせいだ!」

 

 檜山は自分の失態を認めず、それどころか逆ギレして攻撃してくる。今度は“蒼天”にも匹敵するような熱量の巨大な青い火球を作り出し、ハジメに向けて落としてきた。

 

「ユエの魔法の方が上だな」

 

『ライトニングアーマー、オンライン』

 

 一帯を焼き尽くす炎の天井が落下してくるが、ハジメは冷静にライトニングアーマーを展開して接触に備える。直後、ハジメの周囲は全てを焼き尽くす青い高温地帯へと変貌した。

 

「はははははっ!!ざまあねえなぁ、南雲!」

 

 青い太陽にハジメが飲み込まれた光景を見て、檜山は高笑いする。どうやら、もうハジメに勝ったつもりらしい。だが、戦いでは敵が確実に息絶えるまで気を抜いてはいけない。

 

「檜山、これは新手のサウナか何かか?」

「なっ!?どうして生きてやがる!?」

「隙だらけだ」

 

 次の瞬間、赤い電撃を左腕に纏ったハジメが煙の中から飛び出してきて、フラッシュシフトの連続使用で檜山の懐に飛び込む。

 

 そのまま、ハジメは渾身の左ストレートを胸部にぶち当てると同時に、ライトニングアーマーの受けたダメージを増幅した強烈な衝撃波を解き放つ。再生した部位は脆弱になっており、再び胸部に穴が穿たれた。

 

「があぁぁぁぁ!?!?」

 

 檜山は吹き飛ばされ、古傷が復活すると共に全身のアーマーにヒビを刻んだ状態で瓦礫に叩きつけられることになった。

 

「ぐっ、ぐぅぅぅぅっ……」

「檜山……今度こそ終わりだ」

 

 ハジメは檜山に接近する。もう、檜山を殺すことを邪魔する存在はおらず、いつでも処刑することは可能だ。しかし……

 

「……まだだ。まだ終わってねぇ……MB!俺にもっと力を寄越せぇ!!!」

「そうだろうとは思っていました、ヒヤマ」

「誰だ?」

 

 いつの間にか、檜山の背後に金髪の少女が現れていた。人間と見紛うような容姿だが、その目からは全く感情が感じられず、口調は機械的。ハジメはとある存在を思い起こした。

 

「マザーブレイン?」

「半分は正解です、ハジメ・ナグモ。私はマザーブレインをコピーした分身体の一つです。貴方には面白いものをお見せします」

 

 すると、MBはフェイゾンが詰め込まれた大きな注射器のようなものを取り出し、檜山の背中に突き刺してフェイゾンを注入する。

 

「あぁ……感じるぜ……素晴らしいフェイゾンの力を……うっ……苦じい……か、身体が……膨らんで……うぁぁぁぁぁ!?」

 

 檜山は激しく苦しみ、その肉体が膨張していく。パワードスーツのアーマーは割れて弾け飛び、皮膚は内部から突き破られて異形の肉体が姿を見せ、瞬く間に巨大化した。

 

ズシンッ……!

 

 やがて、王宮の地面を揺らしたのは全長十メートル程はあるような異形の化け物だ。辛うじて人型は留めているが、言葉にするのも憚られるような悍ましい姿で、獣のように四つん這いだ。檜山に訪れたのは、畜生以下に堕ちるという結末だった。

 

「ガアァァァァァッ!!!!」

「もう終わりにしよう、檜山」

 

 もはや、檜山に対して怒りの感情すら出てこない。相手が鬼畜の所業を行った存在であっても、こんな結末を迎えてしまったことに対する憐れみと同情だけがそこにあった。

 

『ハイパーモード、オンライン』

 

「俺がお前を終わらせる」

「……ナグモォ!シネェェ!!!」

 

 悍ましい獣と化した檜山が立ち上がり、巨大な腕を振り下ろしてくる。それをバックステップで回避したハジメは、確実に奴を仕留めるための攻撃を実施した。もう二度と、目覚めることがないように……

 

『スーパーミサイル、アップグレード』

 

『ハイパーミサイル、オンライン』

 

 ハイパーモードにより生じた膨大なエネルギーをアームキャノンに集中させて圧縮・増幅する。それを五発分のミサイルと組み合わせ、必殺の一撃を完成させた。

 

「消え失せろ」

 

 次の瞬間、アームキャノンから飛び出したのは赤い閃光を纏った極太のミサイルだ。それは檜山の巨大な身体に深々と食い込み、体内に達すると超高温の熱波と爆風、衝撃波を撒き散らした。

 

「グ、グァァァァァァッ!?!?」

 

 檜山の体内から水が噴き出るようにして閃光が飛び出し、肉体が膨張し、体内に発生した灼熱によって包みこまれる。奴の肉体は一欠片も残すことなく焼却され、この世から消滅した。

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