コポコポッ……
オルクス大迷宮の最深部。そこに位置する解放者の隠れ家の一画に巨大な試験管が鎮座している。内部は水で満たされ、水泡の音だけが響いていた。
「香織……」
そして、その中を不安そうな眼差しで覗き込む者が一人。それは南雲ハジメであり、試験管の中には呼吸用のマスクを装着した香織が体を丸めて浮かんでいた。
香織は試験管の中で眠っている。試験管の中の美少女は神秘的で、芸術作品のようにも思えた。彼女は薄着で最低限のものしか身に着けておらず、何故か髪が短くなっている。
「ハジメ殿、遺伝子の移植は順調に進んでおります。私の遺伝子を組み合わせたことが功を奏しましたな」
「ああ、そうだな。エルダー」
『報告:現時点で五十パーセント進行。各バイタルに異常は見られていません。非常に安定しています』
現在、香織はハジメから抽出した鳥人族の遺伝子の移植を受けている最中だ。当初はそんなことをするつもりはなかったのだが、とある出来事がハジメを動かした。
それは、今から三日前。王都の戦いが終わった後に遡る……
「ねえ、ハジメくん。ちょっといいかな」
王都の戦いが終わり、傷ついた王宮が再生魔法によって元通りになった後のことだった。
「どうした、香織?」
「ハジメくんは、私のためにパワードスーツを作ってくれてるって言ってたよね?」
「あぁ、そうだが……」
前から言われていたことだが、ハジメは自身のバリアスーツをベースにした廉価版のパワードスーツの開発を行っており、それを香織専用スーツとしてカスタマイズしたものを製作していた。
「それがあれば、私は本当の意味で貴方を支えることができる……そう思っていたの……」
「……いた、というのは……」
「ハジメくんには鳥人族の後を継ぐ使命があって、遺伝子も受け継いでる。でも、その使命の重さに苦しんでいるような気がした……」
香織は、ハジメが光輝に語っていた様子を見た際に感じたことを打ち明け、その全てを話した。
「私はね、貴方を本当の意味で支えるには貴方と同じような存在になるべきだと思ったの。だから……」
「香織、まさか……」
香織が何を言おうとしているか、ハジメは察した。自分と同じような存在になるということは、彼女も同じものを背負うということだ。
「……私にも鳥人族の遺伝子を移植してもらえたら、貴方と同じものを一緒に背負うことができるよね」
「だが、あまりにもそれは……」
鳥人族の遺伝子はハジメにとって重い意味を持つ。彼らの使命や運命を背負うという呪縛のようなもので、軽々しく他人に移植していいものではないのだ。そもそも、ハジメとしては香織にここまで背負わせるつもりはなく、ただ帰る場所になってほしかっただけなのだから。
「俺は、君にまで背負わせるのは望んでいない。あれを背負うのは俺や姉さんだけでいい……」
「私はそれを和らげてあげたい。貴方と同じものを背負って、最後まで添い遂げる。覚悟だってできてるよ……」
覚悟を決めた香織は簡単には止まらない暴走機関車だ。一部のクラスメイト達を救えなかった後悔や、ハジメを思う気持ち、己の力不足への怒り。その全てが彼女の原動力になっている。
「見てて、私の覚悟……!」
そして、香織は何処からか短剣を取り出すと己の長い髪に当ててバッサリと切ってしまう。艶やかな黒髪が無惨にも落ちていき、ハジメもその光景を信じられなかった。
「香織……君にそこまでされたら……」
「これが、私の覚悟だから。こうなっちゃったからには一歩も引けないね?」
「分かった……香織の覚悟は無駄にできない。本当に、君は強いな……」
香織の断髪でただならぬ覚悟を示され、退路を断たれたハジメは、香織に鳥人族の遺伝子を移植することに決めた。
「俺も覚悟を決めた。香織、俺は君と最後の瞬間まで添い遂げることを誓う。それが、君を巻き込んでしまった俺の責務だ」
「ありがとう、ハジメくん。これから末永く、よろしくお願いします」
そして、二人は抱き合う。これ以降、地球に帰ってからも二人が別れてしまうようなことはなく、寿命が尽きるその瞬間まで添い遂げたという。
王都侵攻は魔人族の撤退により幕を閉じた。しかし、決して王国が勝利したわけではなく、ただ魔人族に止めを刺されなかっただけである。そもそも、ハジメ達がいなければ終わりだったのだ。
魔人族の攻撃で王都には深い傷跡が残された。しかし、それ以上に問題だったのは統治機構の空白だ。パイレーツの攻撃で上層部がまるごと消し飛び、国王も殺害されたことが混乱の引き金だった。
現在はリリアーナと無事だったルルアリアが陣頭指揮を執ることで王都の復興を進めており、一段落すればランデルが即位することになるだろう。
さらに、混乱の原因となっているのは聖教教会からの音沙汰がないことだ。王都を揺るがす大事件があったにも関わらず、戦後になっても姿を見せない教会に不信感や不安が広がっているようである。
実はたった一人の手で殆どが殺害されており、イシュタルなどの教会上層部は瓦礫に潰されて死んでしまっているなんて、誰が信じられるだろうか。なお、デビッド達は本山にいなかったことで命拾いしていた。
また、魔人族を撤退に追い込んだ空爆については“エヒト様”の放った異教徒への天罰であるという噂が広まっており、信仰心が強化されている。何とも痛い話だが、そこは幸利が機転を利かせて“豊穣の女神”の仕業にするためのカバーストーリーを考え、使徒として発信力のある雫がそれを流したという。恐ろしい程のコンビネーションである。
あれから五日が経過した現在、王都では復興作業が続いている。本日は壊滅した騎士団の再編をしているところであり、再生魔法で復旧した練兵場にて各隊の隊長職選抜を行っていた。なお、単に修復されただけでなく、フェイゾン汚染も完全に除去されていたりする。
ちなみに、新たな騎士団長の名はクゼリー・レイルといい、女騎士でリリアーナ付きの元近衛騎士である。副団長の名はニート・コモルドといい、何とも不名誉なネーミングだが元騎士団三番隊の隊長であった。
「お疲れ様でした。コウキさん」
光輝は選抜試験における模擬戦で騎士の相手をしていたところだ。彼が流した汗を拭っていると、リリアーナがやって来て労いの言葉をかけた。
「いや、これくらいどうってことないよ。……リリィの方こそ、ここ最近ほとんど寝てないんじゃないか? 本当にお疲れ様だよ」
「ええ、今は眠っている暇なんてありませんからね……」
リリアーナの仕事は多い。彼女によると、死傷者や遺族への対応、倒壊した建物の処理、行方不明者の確認、外壁と大結界の補修、各方面への連絡と対応、周辺の調査と兵の配備、再編成……等があるらしく、その大変さを吐露した。
「ですが、泣き言は言っていられません。お母様も分担してくれていますし、本当に辛いのは大切な人や財産を失った民なのです」
「リリィ、君は本当に……」
リリアーナも家族を失っているというのに、彼女は民のことを第一に考えて行動し、王族として責務を果たそうとしている。彼女は本当に強い心を持った王族の鑑だ。光輝はそう評した。
「ですが、本当に良かったです。コウキさんが立ち直ってくれて……」
自身も大変だというのに、リリアーナはあの日から光輝の精神状態を心配していた。しかし、現在の雰囲気は以前のように戻っており、彼女は安心したのだ。
「リリィ、俺は南雲のおかげで立ち直れた。でも、あいつに香織が取られると思って一方的に嫌っていたんだ。そのせいで過ちだって犯した……」
光輝はハジメに対する敵愾心から過ちを犯したことで、一部のクラスメイト達や二人の幼馴染の心が離れてしまったことを思い起こす。彼はそれを後悔していた。
「それでも、南雲は俺に手を差し伸べてくれた。あんなに嫌っていたのにも関わらずに……」
「コウキさん、人は誰しも過ちを犯します。ナグモさんだって、それは分かっているはずです。だからこそ、貴方を助けたのでしょう」
ハジメが手を差し伸べてくれたことに対して、光輝としては複雑な感情を抱いていた。常に完璧であろうとした彼には、ハジメが手を差し伸べる理由など理解し難いものだったのだ。
「そうだな、リリィ。あいつ……いや、南雲には感謝しないとな……」
ふと、光輝は騎士団の方を見る。練兵場の中央で雫とグゼリーが何やら話しており、親しげな様子で編成について議論しているようだ。しかし、雫の視線が時折、別の方へと向いていることがあった。
それは、付近で別の騎士と模擬戦をしている幸利の方だ。ハジメ一行の多くが姿を消している中、彼だけが王都に残っていた。あれが地味だった幸利であるとは信じられないと思いつつ、光輝はリリアーナに聞いてみた。
「なあ、リリィ。雫と清水の間に何かあったのかい?」
「知らないんですか?あの二人はお付き合いしているそうですよ」
「え、そうだったのか!?」
どうやら、本気で知らなかったらしい。自分の幼馴染の片割れも他の男に意識を向けている事実を知り、少しショックを受けているように見えた。
「そういえば、南雲と香織の姿をしばらく見ていないような……」
そして、幼馴染に関連して香織の存在も思考に浮上してくる。ここ五日間、全く二人の姿を見ていないのだ。
「たしかにそうですね……」
だが、急に辺りにどよめきが走る。この場にいる全員が上空を見上げていて、剣に手をかけようとしている。光輝とリリアーナも見てみると、そこに謎の物体が浮遊していた。
「あぁ、みんな落ち着けよ。あれは南雲の船だ」
警戒する騎士達だが、その正体を知っている幸利が説明してやると落ち着いてくれた。そして、そこから降下してくる誰かがいた。
ズドォオン!!
そんな地響きを立てて着地を決め、もうもうと待っている砂埃の中から現れたのは、白銀の戦士……ハジメ・ナグモであった。その瞬間、雫と光輝は彼に詰め寄っていく。
「なあ、南雲。今まで何処に行っていたんだ?それに香織は?」
「南雲くん、香織は何処にいるのかしら?」
「落ち着け、二人とも。香織ならもうすぐ来る」
そう言って、ハジメは上空にある自分のスターシップを見上げる。光輝もそれに倣うのだが、純白の人影が猛スピードで落下してくるのを目撃した。
「きゃぁああああ!!ハジメく〜ん!受け止めてぇ~!!」
可愛らしい悲鳴も聞こえてくる。やがて、雫の優れた動体視力が捉えたのは、純白の装甲に身を包んだ無骨な人型が、手足を無様にバタバタと動かしながら落下してくるというシュールな光景だ。
明らかに助けを求めているのだが、ハジメが助ける素振りはない。落下してくる人型の顔面からは表情を読み取れないが、表示機能があったら涙目になっているだろう。
「ああっ、ぶつかる〜!?」
そのまま地面に激突しそうになるのだが、突如として背中から三対の水色のエネルギー翼が展開されたかと思えば、物理法則を無視して地面まで数センチのギリギリで停止した。
「ふう、助かった……うわっ!?」
しかし、急に物理法則が復活して地面に軽くぶつかってしまう。彼女は後頭部を掻きながら立ち上がると、自身を見つめている者達を見渡した。
「香織……なの?」
「そうだよ、雫ちゃん。貴方の親友だよ」
その正体は香織だ。身に纏っているのはバリアスーツによく似たパワードスーツで、純白のボディと水色のバイザー、平たく先端の尖った両肩のアーマー、下半身には地面まで届きそうなスカートがあり、彼女の纏っていた聖女としての服装に似通っている。
そして、香織はヘルメットを外す。そこから出てきたのは、黒髪をショートヘアーにした親友の姿だ。
「……南雲くん、説明してもらってもいいかしら?」
親友の姿が変わっていることを受け、雫はハジメに説明を求めた。すでに腰の振動刃ブレードに手をかけており、事と次第によっては斬り掛かってくるかもしれない。
「まず、香織専用にパワードスーツを開発した。香織が装着しているのがそれだ。そして、同時に行ったことがあるのだが、見てもらった方が早いかもしれないな……香織、生身で模擬戦はやれるか?」
「うん、大丈夫だよ」
練兵場の真ん中で、ハジメと香織は同時にパワードスーツを解除し、互いの得物を宝物庫から取り出す。また、香織の服装はハジメの色違いのようになっていた。
ハジメはスピアを、香織は聖弓を分割した双剣を逆手持ちで構えており、直後に香織が動き出した。彼女は素早い身のこなしでハジメに急接近すると、双剣による連撃を繰り出す。
「香織……!?いつからそんな動きが出来るようになったの!?」
「な、南雲についていけているだと!?」
雫や光輝のみならず、クラスメイトや騎士達も開いた口が塞がらない。彼女は多くを癒す聖女で勇者パーティの後衛で、前衛を張るような存在では無かったはずなのだ。
そうこうしている間にも香織はハジメを攻め立てているが、ハジメの方が一枚上手なのか簡単に受け流されている。やがて、聖弓が弾き飛ばされて勝負はついた。
「ええっと、詳しく説明してくれるかしら?私は今、冷静さを欠こうとしているわ」
「八重樫さん……落ち着いてくれ」
そう言いながらも、雫は振動刃ブレードを振り回してハジメに襲いかかっている。すぐに彼女は幸利によって取り押さえられ、一先ずこの場は収まるのであった。
雫が落ち着いた後、一行は食事処として使われている王宮内の大部屋へと移動していた。なお、クラスメイト全員とリリアーナ、愛子も同席している。
ちなみに、ユエとシア、ノクサスの三人はフェアベルゲンに滞在している。ティオに関してはグリューエン大火山の攻略をしている最中であり、王都にいるのはハジメと香織、幸利だけだ。
「ええと、要するに南雲くんは鳥人族という宇宙人に育てられて、その遺伝子が体内にあって、それを香織にも入れたってことよね」
「その理解で問題はないな」
まず、ハジメが話したのは香織に施したことについてだ。ハジメの過去も含めた長話であり、クラスメイト全員にカミングアウトすることになった。
「はあ……本当に貴女は昔から突拍子もないことをするわね……まさか、南雲君のために人間を越えるなんて……」
香織が遺伝子の移植を決意する経緯を知り、雫は頭を抱える。幼馴染である彼女によると香織は昔から奇行に及ぶことがあったが、これは群を抜いているという。
「迷惑かけてごめんね、雫ちゃん……でも、これは私の決めたことだから。きっと大変なこともあると思うけれど、私はハジメくんと添い遂げたい」
「大丈夫よ、香織。貴女は本当に強いわね」
香織と雫は抱き合う。まるで母娘のようであり、二人はしばらくそのままだった。
「南雲……そのパワードスーツは大切なものだったんだな。あんなことを言って悪かった」
一方、ハジメの過去の話を聞いた光輝はハジメに謝罪していた。どうやら、ハジメの過去の話が相当堪えたらしく、彼はかなり凹んでいたようなのだ。
ハジメのパワードスーツは命より大事といっても過言ではない代物だ。ハジメの辛い過去といい、それを知ってしまった光輝は、以前にオルクスでそれを取り上げようとした自分を恥じた。
「いや、話さなかった俺も悪い。気にするな」
この場に微妙な空気が流れたが、一応和解は成立する。そして、親友とのあれこれが一段落した雫が話題を先に進めた。
「あの日、先生が攫われた日に、先生が話そうとしていたことを聞いてもいいかしら?」
それは、結局聞くことの出来なかった愛子の話についてだ。ハジメが愛子に視線を向けると、彼女はハジメから聞いた狂神の話とハジメ達の旅の目的を話し、そして、自分が攫われた事や王都侵攻時の総本山での出来事を話し出した。
「なんだよ……俺達は神様の掌の上で踊っていただけということなのか?そんな……どうして早く話して……いや、俺は信じなかったかもしれない」
光輝に第二のショックが襲いかかる。その話を何故オルクスの時にしなかったのかと非難しかけたが、当時の自分を省みて自制したようだ。
クラスメイト達やリリアーナもショックを受けているようだ。これまで、自分達のしてきたことが無意味だと突きつけられたようなものなのだから。
「南雲、俺にも神と戦わせてくれ!俺は許せないんだ……この戦いが仕組まれていたことに……何よりも、踊らされていただけの自分が許せないんだ……」
「光輝……」
光輝は土下座にも近い勢いで頼み込んできた。これは当初から予想されていたことであり、ハジメは特に驚くことはない。
「天之河、これはお前を否定するわけじゃないが、今のままでは勝ち目が薄い。真の神の使徒についても話したが、連中は量産型であっても天之河より強いからな」
量産型である下級使徒は全ステータスがオール1200だ。通常の光輝では苦戦必須で、限界突破でようやく渡り合える相手であり、数の暴力を受ければ瞬く間に終わりなのだ。
「なら、南雲が集めている神代魔法を俺達も手に入れたい……どうか、俺達を連れて行ってほしい」
「まあ、神代魔法があれば戦力強化には繋がる。だが、ただ同行するだけでは手に入らない。人任せにしないことを約束できるなら……」
「南雲、いいのか!?」
ハジメとしては光輝達を同行させることに異論はなかった。いくらプラズマビームがあるとはいえ、一人で大勢の神の使徒とやり合うのはキツイ部分がある。全員の戦力を底上げするのは理に適っていた。
「数日以内にここを発つ。遅れるなよ」
「南雲、ありがとう……」
次の目的地はハルツィナ樹海にある大迷宮だ。光輝や雫、龍太郎や鈴も参加する大所帯での迷宮攻略になるだろう。
しかし、ハジメ達が去ることに難色を示す者もいた。それは、王国の未来を背負うことになった才女、リリアーナである。
「ナグモさん、これは我儘になってしまいますが、王都の防衛態勢が整うまで残っていただくことはできませんか?せめて、魔人族を撤退に追い込んだあの攻撃だけでも……」
「残念だが、俺達にも予定がある。それに、あまり一つの勢力に肩入れし過ぎるのは避けておきたいからな」
「そう、ですか……」
リリアーナはガクリと肩を落とす。彼女としては藁にもすがるような思いだった。王都には何もかも足りておらず、大結界も魔人族の攻撃で全て破壊されているため、ハジメ達の抑止力が頼みの綱なのだ。
「だが、大結界だけでも直していこう」
「ナグモさん!ありがとうございます!」
リリアーナの表情が一気に明るくなる。流石に自分より幼い身で色々と背負うことになった彼女を見捨てるのは気が引けたのだ。
「そういえば、南雲君達はどちらに向かうの?西から帰って来たなら、次は樹海にある大迷宮かしら?」
「そのつもりだ。このまま真っ直ぐに東へ向かう予定だ」
ハジメの予定を聞いて、リリアーナが何か思いついたような表情をする。
「では、帝国領も通るのですか?」
「そうなるな……」
「でしたら、私もついて行って宜しいでしょうか?」
「帝国に用事でもあるのか?」
「今回の王都侵攻で帝国とも話し合わねばならない事が山ほどあります。既に使者と大使の方が帝国に向かわれましたが、会談は早ければ早いほうがいい。ナグモさんの乗り物なら帝国まですぐでしょう?それなら、直接私が乗り込んで向こうで話し合ってしまおうと思いまして」
何とも大胆でフットワークの軽い王女である。そもそも、一人で王都から脱出して助けを求めに来た時点でそんな感じはしていたのだが。
「まあ、通り道に降ろすくらいなら協力はできる。流石に会談に同行するのは難しいが」
「ふふ、そこまで図々しいこと言いませんよ。送って下さるだけで十分です」
リリアーナは苦笑いを浮かべる。こうして、次の旅はリリアーナも同行することになった。これがまた新しい波乱を巻き起こすのだが、そんなことはまだ誰も知らない。